「大阪暮色」も忘れないでね
2023/05/01 10:20
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今でこそ、韓国の音楽といえば世界に冠するK-POPだけど1980年代までの韓国音楽といえば「演歌」だった、チョー・ヨンピルの「釜山港へ帰れ」、そして私の大好きなケイ・ウンスクの「大阪暮色」
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はじめに―K‐POPとは何か
第1章 K‐POP前史―韓国大衆音楽の誕生と発展
第2章 戦後日韓関係と「韓国ブーム」―「韓国といえば演歌」の時代
第3章 K‐POPの誕生と越境―民主化・ネット社会・韓流
第4章 ソーシャルメディア時代のK‐POPブーム―少女時代・KARA・TWICE・NiziU
第5章 世界化するK‐POP―BTS成功の秘密
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いやー、ちくま新書にK-POPの本が、と思ったんだけど、以前、岩波新書の『K-POP 新感覚のメディア』(金成玟著)という本も読んでいた。いずれにしろ、こうした正統派の新書ブランドでもK-POPがテーマになる時代だということ。
さて、この本はわりとざっくりと韓国大衆音楽の変遷を紹介してくれている。後半の2000年代以降のK-POPの流れはかなり紙幅が割いてあるんだけど、それ以前のことについてはわりとさーっと流している感じ。そこが期待はずれではあったんだけど、一方で前半は韓国がたどってきた近代史がけっこうしっかり書かれている。あれ、これ韓国史の本だったっけというくらい。そして、それがけっこうためになった。韓国や朝鮮半島の歴史を取り上げた本はあまたあるけど、わりと専門的に深く入りすぎていて読んでも読んでもうろ覚えという感じなんだけど、この本のざっくりながらもポイントをしっかりと書き込んだ韓国近代史は読みやすくてよかった。
そしてこれだけ歴史と絡んでいるというのもむべなるかなというもので、韓国の大衆音楽が韓国がたどってきた歩みと深くシンクロしているということだろう。よく「歌は世につれ、世は歌につれ」というが、人生の喜怒哀楽に耳に入ってきたり口ずさむものが歌なのだから、歴史と大衆音楽とは密接な間柄のものということだろう。
そして過酷な近代を歩んできた韓国においては、歌もまたその過酷な時代の帆走者として力(思い)が込められてきたということではなかろうか。著者は本書の最後をこんなふうに締めくくっている(p.246)。
バラバラになった社会を結びつけるもの、失われた他者との共感、そして自分自身への愛情、そういったものを蘇らせようという叫びがK-POPにはある。
それは「音楽市場が狭いから」実現したわけでもなく、「政府が支援しているから」可能になったのでもない。市場の狭さは海外へと進出する動機にはなるが、だからといって海外の人々がその音楽を自動的に受容するわけではない。政府の支援も然りである。
K-POPには多様な音楽的要素を取り入れ、植民地支配や戦争、独裁、そして現在の新自由主義といった社会的苦難に向き合いつつ、人々の苦しみや悩みに寄り添い、自由を求めてきた歴史がある。だからこそ、世界の人々はK-POPを聴き、魅力を感じるのである。
ま、ちょっと歯が浮くような過剰さがないでもないけど、決して戦略的に海外進出したのが成功したというだけでなく、K-POP に込められたマインドが人々のマインドをつかんでいるという見方。
K-POP 流行の理由というと国家的な戦略なんだとかいった手法ばかりが言われるが、これだけ世界ではやる理由は確かに戦略だけではないのかもしれない。前述の『K-POP 新感覚のメディア』でも、既存の境界や秩序を解体するものみたいなことを言っていた。また、書中で紹介されているように、日本のK-POPフリークの女子たちが嫌韓系の男性家族に反旗を翻すようにK-POPにハマっているというのも、ME TOO運動的な感じがしてくる。著者ほど言い切れないけど、本当にK-POPなるものには世界を変えていく微力な者たちの支えとなる何かがある���かもしれない。
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K-POPをひたすら追ってきた山本浄邦氏によるK-POPのアイドルの隆盛記録。BoAよりも以前に登場したソテジワアイドゥル、SMエンターテイメント創設者李秀満など、日本では知られていないキーパーソンや中国やタイで活躍しているK-POPグループも網羅されている。分析というよりは記録として読むのが面白いか。