紙の本
フィクションであると書いてあるのにノンフィクションと思い込みそう・・・
2024/05/02 22:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:再び本の虜に - この投稿者のレビュー一覧を見る
ニジンスキーという名前をタイトルで見つけて読みたいと思い手にした一冊。初めはなかなか物語に入っていけなくて読みあぐねていました。お嬢様が一目ぼれしてニジンスキーを追いかけまわすという設定が先ず素っ頓狂に思えました。しかしニジンスキーがお嬢様のロモラに結婚を申し込む件は、もっとわかりにくかったです。とにかくどんどん変化していく物語に圧倒されながら読み続けて、ついには宝塚歌劇団のスターまで出てきてビックリ。それと男女の結婚、同性婚などについてはカルチャーショック。でもロモラさんが孤軍奮闘して生活力を発揮していくところは応援してしまいます。ラストが希望を持てる雰囲気で終わったのは救いがあり良かったです。著者の初めての単行本ということで私もそういう出会いは初めてなので忘れられない一冊にとなりました。
投稿元:
レビューを見る
少し逸れた方向へ猪突猛進する粘着質な愛情を書かせたら、右に出る人いないなと思う笑
読みやすいけど、深い話。
彼女の極端な燃え上がり方も、近すぎる距離感も、現代に生きていれば、受け止める言葉と作法があったのに…といった視点で描かれているから、終始ロモラが愛おしい。
投稿元:
レビューを見る
ファンだった早霧せいなさんがニジンスキーという演目をやっていて見てはないけどニジンスキーがバレエダンサーということだけは知っていた。その奥さまとなった方が一目ニジンスキーを見てから推しを押し倒す勢いで結婚してその後も波瀾万丈で晩年に宝塚のトップスターを推すまでを書いた本といった所か。フィクション要素もあると思うけど、バイタリティに圧倒される。推しは活力だけど、実際に恋愛とは似て非なるものなのかなと思った。生き方に賛否両論はあれど結局の所は好きなことを貫き通した者の勝ちだなあと感じた。
投稿元:
レビューを見る
バレエやヨーロッパの歴史などに全然詳しくなくても読みやすかった。
そして以前よりそれらに興味を持てるようになった。
好きなものにここまでのめり込めるのも才能…
父親もそうだったようで、遺伝(もしくは環境要因)もあるのかな…
今の日本にもそういった方は多そう。
私も推しはたくさんいるが、結婚したい!まで思うことはないから、フレデリカなど、周りの人のロモラに憧れる気持ちも少しわかる気がする。
それぞれのヨーロッパの景色を調べてまた読み返したい。
あと、あの人もあの人もバレエ・リュス好きだったの!?もしくは同性愛者だったり色々スキャンダラスだったりしたのね!という驚きもあり、そこまで本書で語られないそれぞれの人の思想なども気になった。
投稿元:
レビューを見る
2024.4.16市立図書館
"もし「推し」ということばがまだこの世になかったら、あなたはこの想いになんという名前をつけますか?"
「ベートーヴェン捏造」→「ベートーヴェンの愛弟子」に続くかげはら史帆さんの最新刊はノンフィクションでも伝記でもなく、伝説的なダンサー/振付師ニジンスキーの生涯や文献から想を得たフィクション(小説)。1年前に出たときからちょっと気になっていたけれど、去年の秋に「ベートーヴェン捏造」に出会ってすぐに図書館の順番待ちに名を連ねてようやく(新学期がなんとか滑り出して連休前というまあまあのタイミングで)予約の順番が回ってきた。
表紙と裏表紙はアール・デコのイラストレーター、ジョルジュ・バルビエによる「牧神」の姿のニジンスキー。伝説のダンサー、ワツラフ・ニジンスキーその人が主役かと思いきや、彼の舞台に一瞬でほれこみ追っかけとなりバレエ団に入り妻となってしまった娘ロモラの視点から物語が進んでゆく。(以下、人によってはネタバレ要素あり)
短いact1は「神(推し)」を見出してしまったロモラの第一の願いが成就するまで、幹となるact2はその後のロモラ(とニジンスキー)の迷走する波乱の日々、最後のact3は1958年の宝塚から始まるおどろきの展開で(それで「銀橋」なとどいう語がタイトルに…)、一冊を通してハンガリーの貴族の令嬢だったタマラ・ニジンスキーをモチーフに、つねに体当たりで自分自身を探す波乱に満ちた、ある意味業が深い、ある意味やるせない旅路をたっぷりと描いたフィクションだった。ニジンスキーの生涯についての基本的な知識はあったからact2までの話の展開に驚かされることはなかったが、史実の点と点をむすぶ空想でえがかれたロモラの言動や心情があまりに自然で、どこから創作なのかちょっとロモラ自身の出した本などの現物をチェックしなくてはいけないかもしれない(noteでact1を『わたしが推した神』として連載していた当時はノンフィクションか小説かあいまいで、けっきょく小説に振り切って改稿した作品とのこと)。
それにしても、ロモラのように肉親だから家族だからという理由だけでは愛情をおぼえられず心を閉ざし、「神(推し)」の人生や周辺に深入りしすぎてしまう危うさは、「推し活」という言葉が生まれている現代ではかなり身近な話で、人ごととばかり言っていられないなと思いながら読んでいた。そして、アーティスト(母、姉、夫…)の身近にいる者として「アーティストならざる者だからこそできる、芸術のために尽くすべき大切な使命(ロモラの父の言)」は現代の私達も常に問われていると痛感した。
それにしても(その2)、こうした人生を怖れとともに振り返る彼女の問いにまだ若き日の河合隼雄がそんなすてきな回答をしていたとは…
(返しにいった流れで、巻末の文献リストからひとまず芳賀直子「ビジュアル版 バレエ・ヒストリー」と河合隼雄「未来への記憶(上・下)」(岩波新書)を借りてしまった。act3はたしかに河合隼雄の回想に依拠していることがすぐ確認できた)