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あなたと日本の防衛を考えたい みんなのレビュー
- 日本経済新聞社政治・外交グループ (編)
- 税込価格:1,320円(12pt)
- 出版社:日経BP日本経済新聞出版
- 発売日:2023/04/07
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紙の本
防衛は軍事だけ?国民保護は自治体に押し付け、救出は民間頼み
2023/07/18 10:09
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本経済新聞社政治・外交グループが編集したものであり、急速に軍備拡大が進む場面に出版されることは重要だと思う。しかし、「はじめに」で、防衛はイデオロギーでなく、冷徹な事実を認めるところから始めるというが、勘違いであろう。アメリカの軍事費は年100兆円を超えるが、アメリカの国益、イデオロギーに基づくことは明確になっている。また、ウクライナがNATOに加盟、アメリカ軍がいればロシアは侵攻しなかったというが、ウクライナがNATO加盟を希望してもすべての構成国が了解するとか、ハードルは高い。いささか現状認識に甘いものがある。GDP2%といっても、財源問題は大きいが、財源不足は防衛費に限ったことでない。それよりも、30年余り、日本経済の成長がほとんどなかったことが問題であろう。目次を見ると、
はじめに
第1章 プーチンが招いた新しい戦争
1 無人機の時代
2 サイバーが変えた戦争のかたち
3 台湾有事のリアリティー
第2章 戦後安保は国を守れるか
1 縦割りの日本防衛
2 弾薬もない自衛隊
3 戦略見えない防衛戦略
4 人材軽視の防衛省
5 予算不足の装備品
6 後回しの国民保護
7 置き去りの防衛産業
第3章 国家安保戦略を読み解く
1 点検・安保3文書
2 日米同盟 新時代へ
第4章 新戦略の先へ「私の提言」
1 私の提言
2 防衛大70年の現在地
3 歴史で見る戦後安保
第5章 一目で分かる重要文書
1 防衛力に関する有識者会議の報告書
2 安保関連3文書の要旨
3 日米首脳共同声明 となっている。
以上のように、政治・外交グループがまとめたことになっているが、軍事に偏っている。外交で閣僚や外交官が機動的に動くための専用機が少ないという指摘は適切だが、外交力の分析や強化提言がない。縦割りと言っても、日本の行政機構全体がそうである。人材軽視は日本のお家芸とも言える。日本の高度成長を実現したのは、朝鮮戦争で外貨を稼ぎ、国際的に競争相手も少なかった時代で、日本の優れた現場力というのが一般的であろう。沖ノ鳥島の海没問題も、気候変動に正面から取り組まず、海中に没しても領土扱いという議論は亜流にすぎない。継戦能力で弾薬が不足というが、ウクライナにアメリカが供給する弾薬は不足しており、日本に限ったことでない。米韓の軍事指揮権が統合されているが、朝鮮戦争でアメリカ軍が握り、ようやく、平時は韓国軍が指揮できるように改善させてきた歴史を無視している。日本の場合、アメリカ軍が占領時代と同様に動けるように日米地位協定や密約が結ばれ、これによる被害は未だに続いている。軍事の前に、まさに政治・外交の課題を出してほしかった。軍事に限ってはコンパクトにまとめられているので、一読してほしい本である。
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