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ナチスの政策に賛同する人をコテンパンに批判するスタンスなので、一見中立的に見えないかもしれないが、歴史や政策の見方の基礎を教えてくれる面白い本だった。
歴史を認識する段階には、「事実」「解釈」「意見」の三つのレイヤーがある。意見の相違は、事実の誤認よりも、解釈のレイヤーを飛ばして「意見」に飛びついてしまうことによることが多い。例えば、手厚い家庭支援に見える政策も、「民族共同体」を構築するために、人種差別を伴いながら行われたという「文脈」「目的」の解釈を理解しないと、誤った意見に辿り着いてしまう。
上述のレイヤーに基づいてナチスの政策の良し悪しを判断する際、著者は判断基準の一つとして、その政策の「先進性」「目的」「結果」という三つの視点をあげている。ナチスの政策をこれらの視点から見ると、決して良いことをしたとは言えないとのこと。私としては、政策の良し悪しを判断する際に先進性は不要ではないかと思うし、目的も著者が言うほど一概に決めることはできないのではないかとは思うのだが、ナチスが結果も残せていなかったと言うのは意外な事実だった。一次情報にあたらずに、ネット上の言説に飛びつかないように気をつけなくてはならないと思った。
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結論「していない」。
定期的に現れるこれらの言説は、蓄積された研究、歴史学専門知によってほぼ全て否定されているにも関わらず、SNSなどであたかも真実であるかのように拡散されている。
ナチズム研究者が、これらの「良いこともした」を最新の研究成果を踏まえて、検証していく。
SNSやネット空間にある短くて、切り取られた情報で知った気になるということはよくあることで、とても危ういということがわかる。専門知を丁寧に学んでいくことが必要で、それはナチスに関して、あるいは歴史に関してだけではなく、全て対してそうであって、市民としてはきちんと学び続けることが必要ということだろう。
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ナチ党の様々な施策を検証し、結局どれもこれも良いことではなく、良いことと錯覚させる宣伝を強力に推進していたに過ぎないと示す。今なお「良いこともした」論者がいるのはつまり、この宣伝の効果が今なお持続していることを意味し、こうした論者が現代の(プーチン・トランプらの仕掛ける)プロパガンダ戦においても脆弱であることが危惧される。
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ナチスの政策の良い面とされる部分を、オリジナルであったか、その目的、歴史的結果から分析、整理したまさに入門書。
文書の平易さや構成のわかりやすさは言うまでもなく。
良いというのは一面を切り取った情報に過ぎないという結論に至る。
個人的にははじめにと終わりにがとても良かった。
はじめには本書執筆の経緯に軽く触れつつ、歴史と相対するということ、無色透明な100%客観的な歴史などなく、学問的アプローチの中で相互補完的に修正されいくものである、という姿勢について記載されている。
あとがきについては、ナチスの肯定的なツイートにツッコミを入れたら「専門家なのに良いことしてるのも知らねーのか」と炎上したことが書かれていた。
そして、専門家としての責任と現実の狭間で、正しい情報をと執筆してくださった経緯も。
執筆経緯とアカデミア側としての葛藤と責任等、本筋の部分ではないところも含めて興味深く読むことができた。
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話題の本。早くも2刷。ナチに限らず何かを批判するには、それに対して勉強する事が必要かつ重要なんだと思う。
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話題の本。
歴史学には〈事実〉と〈解釈〉と〈意見〉との三層がある、そして、〈解釈〉の層が極めて重要で、「歴史研究の蓄積を無視して、〈事実〉のレベルから〈意見〉の層へと飛躍してしまうと、「全体像」や文脈が見えないまま、個別の事象について誤った判断を下す結果となることが多い(p.8)」という指摘に尽きる。意見を持つことは自由だが、事実を踏まえた上で、解釈の蓄積をおさえておかねばならない。すべての研究において、研究史が重要な所以である。
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「ナチスは実は良いこともした」という昨今ネット上に流れる言説に対する、専門家からの丁寧な解説書。
歴史は事実と解釈と意見の3つの観点があるため、その事実がなぜ起こったのかという解釈を理解しないと、事実の表面だけをさらって意見としてしまう。この本は解釈の部分を丁寧に解説してくれている。
ナチスがオリジナルに良いこともしたというのはナチスのプロパガンダでしかなく、当時すでに存在した政策をナチスの手柄として宣伝するのが非常に上手かったのだと思った。そして現代ですらそのプロパガンダを受け取ってしまっている。
良く見える政策であっても、それは戦争準備のためやドイツ民族を優遇することで、そこに入らないユダヤ人なんかを排除するためのものであった。
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時々出現するナチス礼賛者、最近はSNSなどで広がったりするらしい。ナチスのしたと言われる「良いこと」を、ドイツ現代史の専門家が一つ一つ検証する。
そもそも誰のための「良いこと」なのかが問題。健康なアーリア人のためだけの「良いこと」は、ユダヤ人や障害者などを無くす(=消す)ことの上に成り立っているのだ。すべてナチス政権の都合良い政策だったということ。少し考えれば気が付きそうな事に、なぜ気づかず賛同してしまうのか、そこも考えてみたい。
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ナチスは「良いこと」もしたのだろうか?
本書では時系列を混同したり大雑把に語られがちな「ナチスの功績」をひとつひとつ具体的に整理し数字を上げて検証していく。有無を言わさず“否“と答えは出るのだけど、同時に現代日本の政治状況とナチスとの類似性にも気付いてしまう。
そうかー。ウマミが有るから彼らは一生懸命「良いこともしたもん」って言いたくなるのか!
2013年に「(ナチスの)手口を学んだらどうか」と発言した麻生氏も、いよいよ政界引退するとのこと。本来ならその時に議員辞職させるべきでした。
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いまだに礼賛者が多いのは、ナチの政策がよほど人間の暗黒面に相性がいいのではないかと。ゆえに、怖いと思うのです。昔のこと、ドイツだからといった、小さく評価せずに、未来の我が事として考えてほしいと思うのでした。
日本の優生保護政策なんて、戦後ですら生き残ってましたから。
P4 「ルビコン川」の意味を読者に押さえさせる必要があるかと。
軍隊を入れてはいけない境界線だって
P12 国民社会主義。訳語として、国家社会主義より適切
P45 アウトバーンの舗装が薄い
わずかな滑走路転用可能な高規格をすくって大がかりな宣伝をしたということ?
P48 ライヒスバンク=国立銀行の意味が不明
国立銀行といったら、国立銀行条例で設立された銀行で、銀行券を発券できる銀行のこと。元ネタは合衆国の州法銀行の一形態か。当時は、連邦準備制度がまだだったから。中央銀行なら、そういうふうに書けと。
P66 「善意」の政策など存在しない
P67 "ARBEITSFREUDE"=労働の美
意訳なのか、独英訳だと、労働の喜び、楽しみになるけど?
P68 「日帰り/数日の国内旅行」ごときに、国家的政策はいる?
P72 「たくさん産むと借金チャラ」
日本でもやろうとしていますが
P80 米国のニューディール政策の効果もアレで、結局は経済回復は戦争のおかげというのは、悲しい現実
P103 「民族体」
ワクチンを打たないヤツは排除の理論も同じか?
P109 専門家にケンカを売るとはね
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素晴らしい。
SNSに徘徊するクズたちのかましツイートを正確に、そして丁寧に優しく粉砕していく。
そもそも知識とは、歴史認識やその文脈、前後関係等を加味した上で発信しなければ、ただの断続的な豆知識レベルだし、そんなもの実用性もない上に、あげくの果ては、誤った認識を多く生み出してしまう可能性もある、まさに繊細で複雑なものだ。
だからこそ専門家は入念に下調べし、資料を漁り、多数の書物を読破する。
ナチスなんて特に一国家レベルの壮大な規模、一歩間違えれば浅すぎる認識に陥るし、そんな浮薄な人間にしっかりとした批判を下す著者のその姿勢からは、専門家の崇高な意地を感じた。
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昨今のSNSで定期的に話題となる「ナチスは良いこともした」という言説に対して、丹念にナチスを巡る歴史学の研究を追いつつ、実証的な検証をまとめた1冊。非常に薄い岩波ブックレットの一冊ということもありページ数こそ少ないものの、シンプルながら非常に理路整然と著者の主張がわかる1冊となっている。
本書ではよく耳にするようなナチスによるドイツの急速な経済回復、子育て支援などの育児政策、環境保護政策など、いわゆるネトウヨ的な人種がSNSでつぶやく種々の「ナチスは良いこともした」という主張1つ1つに対して、最新の歴史学の研究を踏まえて実証的な見解を示す。主張によってはある局面だけを取り上げれば良いことをしたと言える側面が多少あったとしても、政策の影響をトータルで良かったと言える類のものではない、というのが本書での結論である。
こうした実証を通じて、物事の価値というのは一側面から見るのでは決してわからず、多様な観点から見て初めてクリアになるものである、という当たり前の認識論を痛感させられる点で、一側面(と言えない場合すらあるが)から見ただけでそれが全てであるかのように語るSNS時代の言論やニュースを冷静に見ることの大切さを教えてくれる。
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国にとって、自分たちにとって、「良いこと」。
でもそれも、「良いと思ったこと」であって、実際に良かったかどうかはわからない。
今の日本だってそうね、誰かにとって「良い」と思うからやってるんだろうけど。
なのでこの本にはサブタイトルがついてるんですね。
「歴史学からみてナチスに評価できる点はあるか?」って。
視点を定めないと評価はできないから。
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そうですよねという結論に落ち着いて安心したけど。
専門家が「いちいち火消しするほどのものではないだろう」と沈黙していると、偽書や江戸しぐさや似非科学や最近では土偶の“新”解釈のような、専門家ではない人による言説がネットで一気に拡散して賛同者を得てしまうから、怖いな。
中二病的な歴史修正主義者が次々わいてくるのを見るにつけ、日本人の知性が低下してきているのかなぁと心配になる。
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これを読めばはっきりとナチスの計画がわかり、タイトルに対してNOと確実に言える。
良いことと言われている対策は、結局戦争が目的の対策であって、偽りだ。