紙の本
『アボカドの種』
2023/12/19 18:49
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年から2023年まで足かけ4年の375首を収録した俵万智の第七歌集、2023年10月刊
Iは2022年秋以降、6年暮らした宮崎から両親のいる仙台に越してから
IIは2020年夏から2年あまり、Iの時期とも重なって入院、コロナ、息子の受験など
それぞれから一首ずつ
「どんぶりで食べたい」というほめ言葉息子は今日も言ってくれたり
「糸」を聴く父と母とを見ておれば私を包む暖かき布
歌集のタイトルはつぎの歌から
言葉から言葉つむがずテーブルにアボカドの種芽吹くのを待つ
〈言葉から言葉をつむぐだけなら、たとえばAIにだってできるだろう。心から言葉をつむぐとき、歌は命を持つのだと感じる。〉──「あとがき」より
そして、「サラダ記念日」俵万智の真骨頂を一首
一瞬の君の微笑み永遠にするため僕は歌い続ける
還暦を迎えた歌人の心からつむがれて命を持った歌を座右に
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俵万智さん、この度は紫綬褒章、おめでとうございます。
『サラダ記念日』からの四十年近くにわたるご活躍。
俵万智さんが大好きで、今年から私も読売歌壇の俵先生充てに何十回も短歌を投稿しましたが、一度も採っていただけませんが、これに懲りず、また投稿するのでよろしくお願いいたします。
さて、俵さんの最新歌集です。
息子さんは二十歳になられ、俵さんも、新しい恋をされたり、闘病もされ、転居もされて、ご両親もご高齢になられ、人生いろいろありますね。
NHKの朝ドラ『舞いあがれ!』に向けて詠まれた歌も。
勇気をもらいました。
ありがとうございます!
<手間ひまをかけて生きれば甘くなることもあるよと笑う干し柿>
<スマートフォン持たないことの豊かさを思う日暮れのバスケットボール>
<デパートの地下に並べる富有柿お金で買える甘さあります>
<恋の歌追えばするりと逃げてゆく 三人で見るイルミネーション>
<滑走路に光の粒が広がってあの日の夏の日の糸島の海>
<ハッピーバースデーあの日あなたを生んだこと、今夜ケーキを分けあえること>
<不純物沈殿したるビーカーの上澄みの恋、六十代は>
<ああ島の飲み会あるある12分遅刻の我が一番乗りだ>
<わたしたち変わらないのにチビたちは思春期になり照れ笑いする>
<両親と「千の風になって」聴くこの日を思い出す日のあらん>
<「バッチグー」と息子にLINE送りしが「死語はつつしむように」言われる>
<卵かけご飯か鯛茶かオムレツか豊かに迷い朝が始まる>
〇以下『舞いあがれ!』に対する歌です。
<非公式応援歌人と呼ばれてる妄想短歌とまらぬ我は>
<おそろいの弁当のフタ開けるとき君と僕とは家族と思う>
<君だけに見える昼間の星となり一生かけてそばにおりたい>
<灯し火になりたいなんて言ったけどあなたが私の灯し火でした>
以上『舞いあがれ!』より
<芸人のモノマネをする息子いて元を知らねど笑いたい夏>
<しっかりと飯を食わせるだけの日々 息子のおさがりTシャツを着て>
<三十首作ってみようと励ませば二百首作ってくるヤツがいる>
<新聞をとることゴミを捨てること一日百歩の父のリハビリ>
<人生は長いひとつの連作であとがきはまだ書かないでおく>
<つかうほど増えてゆくもの かけるほど子が育つもの 答えは言葉>
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例えるなら秋。俵万智さんの短歌はずっと好きで、全部読んだ(はず)ほどには、今日まで追っかけを続けている。
サラダ記念日が春ならこの短歌集は秋。
人生のすいもあまいも経験した女性として、
子の親として、また自分の親の子としての立場で読まれた数々の歌は、あまりに身近で日記を盗み見ているような。
ドキッとして見てはいけなかったのでは、と思うくらいその時の温度感で、その時の色彩が褪せることのないまま31文字のタイムカプセルとして手元にある。
俵さんにとって短歌は息をすることとおそらく同様なのだろう。
(韓ドラにハマり、テンションが上がっているポイントが私の母とピンポイントで合っていて不思議な気持ちだった)
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現実的な出来事が短歌として並んでいた。特別な感動はなく、生活の中で雑多に交差する人々の内側にこうした出来事のかけらが散りばめられていると思い出すような一冊だった。
地に足つけて生きてます。歩いてます。
友人から、手作りのお菓子のお礼にといただいた。
選んでもらったのではなく、私が欲しかったもの。
ありがとう、すごくいい時間でした。
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ヨン様を知らない〜の歌。
音楽番組でドラマ主題歌特集をしていると、私の母が「2000年のドラマは何も覚えてないなあ。あなたが生まれた年だからね」と言っていたのを思い出した。子を産み、育てるって大変だ。
季節の移り変わりやライフスタイルの変化をぐんぐんと感じる歌集で、日記を読むようだった。
マチ ソンセンニム! チョンマル サランヘヨ〜!
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○ドキュメンタリーの撮影を楽しんでらしたのだなあとか、韓流ドラマ沼とか、朝ドラ沼とか、息子さんの成長と巣立ちとか、病院のことご両親のことなど、万智さんの日常がほろりとこぼれ落ちてくるような短歌集でした
ホストさんのも良かったな!
好きな短歌
人間かどうか機械に試されて人間として答え続ける
背のびして柿の実ドレミ青空に音符を吊るような手作業
アボカドのサラダ作ってあげることもうないだろうレシピ聞かれる
占領のかさぶたありて牛乳は946ミリリットル
「楽しくじゃなく正しく弾くんだね」子に見抜かれる私のピアノ
灯し火になりたいなんて言ったけどあなたが私の灯し火でした
ニワトリを飼う少年より届きたる卵六個よ六つの命
作品は副産物と思うまで詠むとは心掘り当てること
耳遠くなって青葉の風吹いて母の戸ごとは父に届かず
切り札のようにダサレル死のカード私も一枚持っているけど
優しさにひとつ気がつく×ではなく○でかならず終わる日本語
触れたくて触れられなかった指先に念を残すと書いて残念
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大好きな俵万智さん。今年二月NHK『プロフェッショナル』拝聴時の作品もあるんだなあと感激。
自己肯定感とともに他者を迎え入れる懐の深さを感じる眼差しの優しい歌が並ぶ。
ご両親のことや住み慣れた街の日常を詠い生活感があるけれども軽やか。まるで清涼飲料水を飲んでいるような爽やかさ。体調や介護のことを触れるのは今まで多くは語られてなかったが、苦しい心情や深刻さを包むこむように表現している。
わかりやすい皆が知ってる言葉の歌、簡単そうで詠えない。随所にワザが感じられて美しい日本語を再認識させられる。
人間かどうか機械に試されて人間として答えつづける
40+20=60 母として成人している還暦の朝
占領のかさぶたありて牛乳は946ミリリットル
おそろいの弁当のフタ開けるとき君と僕とは家族と思う
書棚から取り出している第二歌集ひらけば君の匂いこぼれる
尊敬はしないが感謝はしていると子に言われたり十六の春
ちぐはぐなパッチワークを見るように五輪のニュース、コロナのニュース
会話って会って話すと書くんだなあ七カ月ぶりに友と会話す
一円の得にもならぬ歌を詠みホストが迷う「の」と「が」の違い
年末は家族のことが詠まれがちホストにわりとばあちゃん子多し
ペットボトル散乱しているリビングは男子の楽しい時間の遺跡
人生は長いひとつの連作であとがきはまだ書かないでおく
言葉から言葉つむがずテーブルにアボカドの種芽吹くのを待つ
福岡女学院短歌コンクールで佳作となり、先日授賞式に行ってきました。交通費は出ませんが、受賞参加者全員に賞状授与は感動しました!
対面の講義に戻り欠伸する生徒の頬に差す午後の陽は
俵万智さんからの有難い講評をいただきました。
「「日常が戻って安心している今、のんびりとした対面での学校生活の様子を詠って良い感じ」とコメントくださり感激しております!
反省点があります。ここは授業とするべきでした。
講義は主に大学の授業 生徒は中高生 学生は大学生
今後もちゃんと推敲していこうと思いました
あとから電子データとして掲載されます
https://www0.fukujo.ac.jp/competition/
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「心には管制官がいないから着陸の場所自分で探す」
「洗いもの雑に終えればこの家の妖精たちがくすくす笑う」「一人暮らし始めたばかりの子の部屋の冷蔵庫にて冷える缶詰」…老親との関係、息子との関係、自分の恋、病気など、31文字に切り取られた景色は自分自身とも近くて、共感したり想像したり。自分もいつか、残しておきたいと思える日常の景色を歌にしてみたいと思った。
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”プロフェッショナル〜”でアボガドの種を育てていたわ。
芽が出るまで3ヶ月を要するとか。
気長がに気長がに育てるんだね。
すごくお元気そうなのに(”プロフェッショナル”でも薬を飲んでいた)病気を抱えているご様子、そんな短歌もあってちょっと心配。
あとご両親のことお父様は亡くなられたらしいけど、この頃は入退院を繰り返していて闘病のことやお母様の看病の大変さや愚痴など綺麗事ばかりでないことも歌にしている。
それと息子さんね。
ほんと著者に似て聡明そうな(プロフェッショナルにもちらっと出でた)青年に育っていて先が楽しみだね。
特に好きだった2首。
会話って会って話すと書くんだなぁ七ヶ月ぶりに友と会話す
優しさにひとつ気がつく ✕でなく◯で必ず終わる日本語
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日々の出来事を、言葉で短くまとめて表現すること、さりげないけど難しそう。
それを長年実践してこられたのが俵万智さん。
ドキュメンタリを見た時、私が使っているのと同じ手帳に、びっしりと言葉が書かれているのを見て、短い言葉なのにあんなにたくさん、と思ってしまった。
寝る時もそばに置き、目覚めるとすぐに書き留めておられた。
その中から選ばれてここに収められたうたは、1ページに3首。その白い隙間には、没になったたくさんのうたが潜んでいるのだろう。
読んでいくと、時々ドキッと自分の心に刺さってくる言葉やうたに出会う。全部ではないが、それは私が俵さんの人生を生きてないので仕方ない。
それでも気に入ったうたをいくつか、私も手帳に書き留めた。何度も読ませてもらえるように。
カテゴリに短歌の設定を決めてなかったと今気づく。
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今更ながら、短歌の味わい深さに気づく。厳選された言葉を並べるから、より濃く、より深く背景を想像できる。歌だけで、どんな生活を送り、どんな気持ちでいるのかが分かる日本語はすごい。
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三十一文字でこんなに瑞々しい感情が著されることに感動しかない。
母であること、子であること、コロナ禍のこと…ダイレクトに伝わってくる。
たくさんの歌に付箋をつけたが、一番好きな歌を見つけてみようと思う。