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#平凡社ライブラリー #吉田健一
「余生の文学」 言葉、批評、近代の豊富と無秩序をテーマとした文学論
「批評と文芸時評」
詩は、人間がいい気持ちになったから作る
小説は、人に話をして聞かせたいから書く
批評は、あることについて自分の態度を決めたいから書く
「文章論」
言葉は生きものであるから同じ一つの文章でも同じ顔つきをしているとは限らない
「時評」
人間は言葉を使って考える〜言葉と考えは同じ
文学で求められているものを一言で言い表すなら、真である
文学はもっと泥臭いもの〜人の心を満足させるもの
言葉が我々を動かし、揺さぶる時に〜何度繰り返し読んでも〜我々はその言葉を新しいと感じる
「文学は道楽か」
人生の叡智〜文学でしか出来ないもの、言葉でしか表せない
「言葉」
文学の特徴の一つ〜何の役に立つ保証もなしにその世界はどこまでも拡がり、その拡がり方が限界がないことを感じさせる
言葉に魅せられることから始めなければ文学と付き合うことはできない
言葉で表現されたものをそのもの自体と見るならば、言葉には愛も、情熱も、ダヴィンチも〜自殺もある。何でも言葉で表されたものはそこにあることになり〜一切のものは言葉になった時に始めて実在するということが成立し、言葉だけが実在する
人間は言葉を使って考え、その考えるというのは言葉を探すことである
文学は言葉を組み合わせたものであり、そうして組み合わせる技術である文学は、我々の精神活動に何か役に立つか
善悪の区別でなく、我々が生きていくのに道を照らしてくれるもの〜叡智がある言葉を伝えるために文学がある〜文学のほかにそれを伝えるものはない
「批評」
何かと取り組んで、それに対する自分の態度を決めるに至る言葉の作業が批評
批評は、ものを書く場合の基本的な態度、形式
「近代と頽廃」
極度の豊富は虚無と同じ〜豊富が無秩序を呼び、無秩序が豊富を収拾がつかないものにした
「余生の文学」
自分に何ができるか解らなくて、それでも何かやってみたいというのは厄介な状態であるが、若いうちはその状態にある
どうにもならない目に会っている人間に対しては、見て見ない振りをするのが礼儀である
年をとって自分に何が出来るか解るのは、自分の限界を知ることであって〜それだけ仕事の狙いを定め易くする
何かはっきりした目的があって、それが他のことに優先している間は文学の仕事はできなくて〜もの欲しげな所がないというのが文学の一つの定義になっている