登場する建築物の写真が秀逸です。
2023/12/31 20:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
著名な建築家である著者が、日本の建築物や著名建築家を振り返り、分析して書籍化した1冊です。
著者をはじめ、名前を聞いたことがある建築家が多数紹介され、彼らの建築様式を客観的に分析しており、スマートなつくりの書籍に仕上がっています。
文中、彼ら著名建築家が作った建物のモノクロ写真が多数掲載されています。モノクロ写真でありながら、どの建物も圧倒される芸術性が感じられ、実に秀逸な写真群と思いました。読み応えも写真を見るのも満足いく1冊です。
ユニークな視点での分析に納得
2024/03/23 15:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国立競技場や高輪ゲイトウエイ駅、東京駅前のKITTEなどで知られる建築家・隈研吾による日本建築論。社会的・政治的・経済的・時代的な背景や建築家の置かれた立場を踏まえながら、日本建築を“ナマモノ”として論じる。村野健吾や藤井厚二、堀口捨己、吉田五十八、丹下健三といった日本の建築家たちが、日本の伝統をどのように消化・理解して、建築に生かしたのかを紹介する。建築家としてのユニークな視点での分析や充実した建築物の写真は十分に楽しめる(写真は新書版なので限界はあるが)。建築好きにはお薦めの1冊である。
冒頭が桂離宮を高く評価したブルーノ・タウトで始まるのも嬉しいし、建築における京都(西)と東京(東)の対比、バウハウスなど西洋の建築との対比は興味深い。西と東の建築については、品の良さと悪さ、小ささと大きさの観点から議論を展開する。
日本建築では、まず硬い素材から施工を始め、そのあとに徐々にやわらかい素材をそこにはめたりはったりしていく。この施工手順によって現場での様々な微調整が可能となり、いい加減にもゆるいモデュラーコーディネーションが、見事に合理的で柔軟なシステムとして機能する。施工の順序という時間軸が内蔵されていることが日本建築を日本建築たらしめているという。
投稿元:
レビューを見る
読前にはタイトルを見て「日本の建築」ね、と軽く考えていた読者ではあるが、著者が「エッセイのようなものですませたくはなかった」と書いているだけに、深く心に迫る新書であると思います。まさに「日本の」とは何かを、国際的な時代の動きも含めて立体的に描かれている一冊。
投稿元:
レビューを見る
私は賃貸の集合住宅に住んでいる。大袈裟だけど、どのようにしてこの建物に住むのが正解なのか、考えるきっかけにしようと思い手に取った。日本の団地の部屋の面白さやよさは、重心の低さや引き戸にあったという。これは今住む自分の部屋にも生かせる考え方だと思った。紙、木、畳などの天然の「弱い」素材や外の庭との連続など、自然とつながる感覚を大切にするという考えも魅力的。畳の部屋を生かした部屋作りをしたいと思った。外の景色は変えられず残念だけど。
職人の技、日本のよさを大切にした、地に足の着いた建築を作ろうとする姿勢が素晴らしいと思った。建築の世界の思想や政治的力学についても、ちょっと複雑だけど面白く読めたし、何より名建築ガイドとして使える本。
投稿元:
レビューを見る
隈研吾。いまさら説明は不要であろう。「和の大家」(本人は強く否定)が論考する日本建築の伝統。注目する建築家として挙げたのが、藤井厚二、堀口捨己、吉田五十八、村野藤吾、レーモンド、ぺリアンの6名。特に「小さな建築」を標榜し、「増改築の達人」とも称される村野藤吾を熱く論じている。西欧的な時間概念に対する辛辣な批判者として再発見されるべき存在。普段は明かされることのない多忙な建築家の思考回路が読み取れて興味深い。アルヴァ・アアルトも「小さな建築」の大家として少しだけ触れられている。
投稿元:
レビューを見る
単なる二項対立でない建築史観は、近年の複眼的な歴史の再構築といった流れと重なるものであり、まさに今だからこそ生まれた本だと感じた。
投稿元:
レビューを見る
建築家 隈研吾氏が、日本の建築について8年にわたり研究した成果をまとめたもの。日本の建築といってもブルーノ・タウトが訪日した1930年代以降を対象としており、主として藤井厚二、堀口捨巳、吉田五十八、村野藤吾、丹下健三らについて述べている。建築家同士の対立があり、建築史の変遷をある程度つかむことができた。建築家には芸術家のような人、科学者や数学者のような人、官僚的な人など様々なタイプの人がおり、建築物を通して多くの人々に影響を与えてきたことがわかる。興味深い。
「(タウトの誕生日の桂離宮訪問)自然と人工との間に宙吊りにされたような特殊な生垣を目にして、タウトは落涙したと伝えられている。「純粋で余計なもののない建築。心を打つ、無垢、そう、子どものように。今日のわれわれの情景の実現。おそらく最もすばらしい誕生日であっただろう」」p8
「建築史家の藤岡道夫は、このタウトの指摘に答えるかのように、その著書『京都御所』で御所の細部を徹底的に調査し、世界各国の宮殿建築との比較の上で、このように質素な宮殿建築は世界に例がないという一文で締め括った」p11
「人は自分のことが一番わからない。自分の場所が一番わからない。誰かによって発見、移動されることを通じて、人ははじめて自分を知るのである。タウトの発見は事実、その後の日本建築にも大きな影響を与え、日本建築を変えていった」p22
「木造の細い柱は、コンクリートや鉄骨の柱と違い、薄い壁の中に消去することができた。日本では柱を消去する技法が徹底的に追求され進化を遂げていた。それを可能としたのは、柱以外の補助的な部材、柱と柱の間を埋める土壁・格子・障子・襖のような、まったく構造を負担していないように見える華奢な部材が陰で助け合って建築を支えるという、世界にも類を見ない繊細なエンジニアリングであった」p60
「(数奇屋は民衆のための建築である(村野藤吾))数奇屋とは基本的に茶道のための空間であり、日本において、茶道がしばしば限られた人のための、しきたりに縛られた閉鎖的な芸事になっていることを村野藤吾は警戒していた。茶道こそが村野の一番嫌った「形式主義とペダンティズム」となっていたのである」p145
「柱のような、建築全体を支える主要部材でさえ、日本人は中間粒子とすることに成功した。天井と屋根との間を和小屋と呼ばれるリジットな構造体で埋めてしまうことによって、天井の下に位置する柱はいかようにも移動することができるという、世界に例のないフレキシブルな構造システムを日本人は発明した。柱は移動できないというのが世界の建築の不変の大原則である。しかし日本人は増改築において、当たり前のように、柱を動かしてしまう。木造建築の技術は大陸から伝わったが、この移動する柱は中国にも朝鮮半島にも存在しない。室町時代に完成したといわれるこの和小屋システムによって、日本人は柱さえも中間粒子として再定義したのである」p149
「西欧において、建築とは象徴的でなければならないと同時に、永劫の存在でなければならなかった。永劫のものなど、この世に存在しないというのが、村野の時間に対する哲学なのである。だから村野はあれほどのエネルギー���もって増改築に取り組み、リノベーションの傑作を世の中に残すことができた」p153
「吉村順三の手でデザインされた現代の書院造は「松風荘(しょうふうそう)」と名付けられた。そこで吉村がモデルとした書院造は、天台宗寺門宗総本山の滋賀の園城寺、別称三井寺の境内に建つ国宝、光浄院であった」p183
「MoMAの中庭の建築(松風荘)を、丹下健三ではなく吉村順三が設計したということは、その後の日本建築の歩みに大きな影を落とした(丹下健三の怨念により伝統論争に発展した)」p189
「(高知県檮原町(ゆすはらまち)での体験)そこで教わったことは、僕の一生の宝となった。そこでは単に、建築の施工についての諸々の細かく具体的な知識を身につけることができただけではなかった。自分にしみついてしまった設計の方法論に代わる、新しい方法論を、檮原の現場で学んだのである。それは「頭で設計する」のではなく、「モノから考える」方法であり、「上からの設計」ではなく「下からの設計」という方法論であった」p240
「「コンクリート化」が国家目標であった戦後の日本では、コンクリートが上等であり,高級であり、難易度も高いということになっていた。コンクリートの建物を設計できる一級建築士の方がレベルが高く、木造しか設計できない二級建築士は低レベルと見なされてきた。しかし僕の経験からいえば、木造設計の方がずっと難しい」p241
投稿元:
レビューを見る
(2024/04/23 2h)
建築について全く無知なわたしが「建物ってこんな面白く作れるんだ〜!」という驚きとともに建築について知りたいと思うキッカケになったのが、隈研吾の設計した建築群でした。
建築に関する本を読むのは初めてでしたが、分かりやすく興味深いです。新書なので気負わずにサラッと読めたのも嬉しいところ。
あとがきで8 年かけて執筆されたとあったので、サラッと読んでしまって申し訳ないと思いつつ……。日本の建築の魅力を門外漢にも分かりやすく広めてくれることに感謝です。
投稿元:
レビューを見る
著者の隈研吾は現在日本で1番有名な建築家
特に国立競技場の設計以降はその地位を確立したと思う。
そんな彼が建築会の和の巨匠、大家などと言われることに抵抗があり、この本を角に立ったと初めにで書いている。
日本の建築において海外の影響などはとても強く受けていることもよくわかる。
しかしその反面、海外の有名建築家が日本の家屋からインスピレーションを得て、世界の名建築を生み出していると言うこともここで紹介されていた。
日本は建築や設計の面では、世界のトップグループに入る国だと思った