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茨城が実家だった自分にとって、東京に行くといったら上野駅。今でこそ常磐線も上野東京ラインにより東京駅まで直通運転されるようになったが、それまでは上野駅と言えば正に東京の玄関口、東京のどこに行くにせよ、出発地は上野駅だった。最近の上野駅はだいぶきれいになったが、昭和の末の頃は、本書でも言及されている戦災孤児たちの仮の宿となっていた地下道はまだ薄暗く(74頁)、大勢のホームレスが壁に凭れて座っていた記憶が残っている。また、就職して間もなく、1年という短い期間ではあったが上野に勤めていたこともある。そんな所縁もある上野を取り上げているということで、本書を手に取った。
上野駅中央改札の真上に「馬や犬、牛、傘をさした人物、海女、漁師、スキーヤーといった人物が描かれた巨大な壁画」があることが紹介される(29頁)。猪熊弦一郎の「自由」という作品だそうだ。これまで何十回となく出入りしたところなのに、これまで全く気付かなかった。ことほどさように、関心を持って見ないと何も見ていないのと同じなのだ。
上野と言えば、国立科学博物館、東京国立博物館、国立西洋美術館、上野動物園といった上野の山にある多くの文化施設を普通の人は連想するだろうが、本書で取り上げられるのは、アンダーグラウンドとしての上野。徒歩圏内の狭いエリアに聖と俗が背中合わせにある上野、そんな上野に著者一行の探訪巡りが続く。
著者ならではの ”九龍城ビル”にある中国エステや出会い喫茶への潜入取材ルポのほか、同好の士を求めて摺鉢山に集まる男色の男たち、不忍池に集まる個性豊かな人々、日本最大の宝飾問屋街、闇市から始まったアメ横、コリアンタウンを象徴するパチンコ村とキムチ横丁などなど、ディープな世界が次々と取り上げられる。加えて、今まであまり聞いたことのない有名、無名問わずのエピソードが盛り沢山に披露される。
都心にありながら、地方都市のような野暮ったさの残る場所、上野。そんな上野をまた歩きなくなった。
本書元版が出たのが2016年、8年後の文庫化に伴うあとがきでは、主な登場人物のその後も紹介される。正に人生いろいろの感。
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上野という街を深堀里した本。自分自身が比較的上野近くに住んでたこともあり、非常に興味深かった。上野は大都会東京の古い部分、庶民的な部分を表す街だと思っており、もっとその影の部分を突っ込んて欲しかった。筆者の著書ににありがちな、話を拡げ過ぎて散漫になっている点が残念。
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もう初版からだいぶ経ったので変わっていることは多いが(コロナ禍、インバウンド、パチンコ不況など)、上野の独特な様子は伝わってくる。後書きで補足もされている。恩賜公園やアメ横だけでなく、キムチ横丁やジュエリー街の歴史を紐解いてくれるのでありがたい。ポートレートが掲載されていることもあり、不忍池の写真家のエピソードは興味深く読んだ。