紙の本
子供の自主性を磨く
2024/05/15 07:22
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一年に一日だけ、理由も言わずに学校を休んで良い「トクベツキューカ」という校則がある小学校。それぞれ悩みを抱えながらも、純粋な繋がりが心の氷を溶かしていく、四季を感じるやさしい連作短編集。
一日だけ、という所に『さよならの向う側』が重なった。条件をつける事で時間の有効活用の重要性を学ぶ事が出来て、児童書としてとても良い。私はお小遣い制ではなく都度制だったので、自分で管理する方が計画性が身に付くだろうと今となっては感じていて、本作はそれの時間(休暇)管理バージョン。
休暇利用の理由はネガティブな話に偏るだろうと予測して読み始めたが、蓋を開けたら実に彩り豊かな5つの物語に感動と驚きをもらった。
雪で寒い、友達と遠出、と言った一見すると楽観的な理由から、休みがちな子の心の安定剤代わりになったりと、たかが一日の休暇が子供たちにもたらす様々な効果が多面的に描かれている
休むのも行くのも勇気がいる時がある。どちらの勇気を使わせるべきなのか。どちらを選んでも無理をさせると悪い結果になる。計画性も必要だけど、いざとなったら休めばいいという開き直り、いつでも休めるという保険に、心が救われる事もある。子供たちがしっかり考えた上で正しいと選択した行動なら、それが少し周りと違っていても、大人も信じる勇気が必要だと訓えられた。
目に見えないだけで、みんな何かを抱えている。人の心の深くを慮る、そんな想像力を与えてくれる作品。やわらかいイラストが温もりと活気を加え、そっと物語に寄り添う姿に、大人としてのあり方を示しているようで感慨深かった。
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著者の児童書は初めてですが、優しい世界観がとても好きでした。
特別な校則をめぐる5つの連作短編集。
それぞれに違った味わいがあって良かった。
大人にも優しく響くストーリー。
キューカをどんな風に過ごすのか。
トクベツな1日をどんな風に捉えるのか。
読んでいて小学生の頃の友だち関係や不安、ちょっと背伸びしたい気持ち、小さな冒険など、自身のことを懐かしく思い出しました。
また、読み終えてふと思いました。
“好きな理由で”って、どんな場合でも、大人にとっても、楽しみにも救いにもなるんじゃないかなって。
良いなと感じるフレーズがあちこちにあって、我が子が小さい頃に出会っていたらきっと親子で読んでいたと思います。
いろいろな読み方があるなぁと感じた読書でもありました。
読みやすく連作短編ならではの楽しみも味わえる素敵な作品でした。
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1年に1回、どんな理由で休んでも良い「トクベツキューカ」という制度がある小学校が舞台。
使い方は人それぞれ、家族旅行やイベントへの参加、友だちと遊ぶため、なんとなく行きたくない日、などなど。
理由を親や先生に伝える必要はなく、いつ休みを取るのかも児童本人の判断に委ねられるこの休暇制度、本当にあったらいいのになぁと思う。
子どもって毎日忙しい。
そんな気も休まらない日々の中で、このトクベツキューカが切り札として手にあるだけで、気持ちが楽になったり、もうひと踏ん張りできる力になると思う。
自分だったら、どんな風に使っただろうかと考えると、わくわくしてくる。
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千葉県のとある小学校の校則には、1年に1回学校にも親にも理由を伝えずに休めるというトクベツキューカ制度なるものがある。
1年に1回だけ使えるこのキューカ。
登場人物である小学生達はどんな日に使うのだろうか。
そしてトクベツキューカは、トクベツな日に使うのか、あるいはトクベツキューカをとる日はトクベツなことが起こるのか。
休みをとるということにたくさんのトクベツが詰まった作品です。
児童書ということで、文字数、ページ数は少なめ。でも、読む児童に理解ができないといけないという要望もあるはずで、書くのは相当大変だろうなと思う児童書の本作品を読んで思うのは
そんな休暇、私もほしい!
何?この冷やし中華はじめましたくらいのノリのタイトルの作品?くらいに思われるかもしれませんが、日々、有給休暇なんて病欠休みの保険くらいにしか思えない私には羨ましい休みやないか!と思ったのが本作品に対する印象です。
さて、そんな気持ちで読み進めていくと、キューカは全てトクベツなもの。
些細な休みでも、君といればトクベツというものもあれば、トクベツな友達と過ごす休みもトクベツ、何なら毎日がトクベツなのかもしれません。
そんなそれぞれのトクベツキューカに触れると、私はそのトクベツキューカをどう使いんだろうなぁ…と読みながら考えるようになりました。
そして、結論としてでたのは
トクベツキューカを使ってまでやりたいことや、使いたいことがない
という悲しい事実でした。
日々に追われていのか、1日誰もいないところで何も気にせずゴロゴロしたい!と思っても、仕事が気になって休めそうにない。
友達と遊びたいと思っても、その友達とは疎遠。
小学生の時なんか、休みになったら1日ゲームができるとか、目を輝かしていたし、友達と遊ぶのも楽しかったし、友達が転校すると悲しかった。
そう。
全身全霊で思いっきり生きていたなと思います。
そんな記憶があるだけでも私は幸せなのかもしれませんが、今は仕事はもちろんしてますし、楽しいと思うこともありますが、あんなに全力で生きていただろうか?と思いながら。
実は無邪気な頃の日々そのものがトクベツであり、トクベツキューカとは私にとってはあの頃の日々なのかもしれない。
そんなことを思うアラフォーでございました。
そして、今からでもトクベツキューカをはじめることはできるかもしれないと思いました。