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ひとり出版社夏葉社を立ち上げ素敵な本を出し続けている島田さんが、出版社を作ることになった経緯や様々な苦労、本作りにかける思いなどを綴ったエッセイ。
夏葉社を立ち上げることになったいきさつは、『あしたから出版社』でも書かれているので、結構知られていることだと思うが、とても仲の良かった従兄の事故での急逝、息子を亡くしてしまった叔父、叔母の心を支えるために、ヘンリー・スコット・ホランドというイギリスの神学者の書いた一編の詩を本に仕立て、プレゼントしよう、その夢を実現するため出版社を立ち上げたのだった。
起業に当たってA4一枚の事業計画書を作り、その事業目的に「何度も読み返される、定番といわれるような本を、一冊一冊妥協せずにつくる…」としたことに、島田さんの本に対する思い、出版社という事業、仕事をしようとした思いが良く表れていると思う。
夏葉社の本は装丁や版型を含め丁寧な本作りだなあと感じていたが、本書ではそういった本を出していくための島田さんの哲学、考え方が丁寧に説明され、また、実際の仕事の進め方や全国の書店への営業、金銭的な苦労についての話などが具体的に書かれていて、自分たち読者にこうして一冊の本が届くのかとの感慨も覚えた。
「人生が一度きりなのであれば、ぼくはいまの仕事をできるだけ長く続けたい。/それくらい、ぼくはいまの自分の仕事が好きだ。/大好きだ。」(はじめに)
こんな思いで仕事をしたかったものだ。(嘆息)