素敵な作品集です。
2019/05/05 19:57
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投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
最晩年の作品だとか。
今回も海坂藩が出てきて、やはり藤沢作品はこうあってほしいと思いました。
犬を食べる話には驚きましたが、当時はこういうこともあったのでしょう。
「静かな木」を含め、ユーモアをまじえてハッピーエンドで、心豊かに読み終えました。
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藤沢周平の短編3作。晩年の作品。
字も大きく、薄い本だが、藤沢ワールドがぎっしり詰まっている。読んでいてほっとする。
*「岡安家の犬」
岡安家の犬、アカをめぐっての当主甚之丞と野地家の当主金之助の争いをコミカルに描いている。最初は心を痛める話(動物愛好家にとっては)もあるが、読み終わった時の安堵感は何ともいえない。隠居した十左衛門の存在も心地よい。
*「静かな木」
藤沢ワールド全開な感じがする。隠居した布施孫左衛門は、末子の邦之助が鳥飼の息子と果し合いをすると聞き、どうにか見逃してもらえるように奮闘するという話。
しかし、内容はそう単純なものではない。かつて、孫左衛門は当時勘定方であった鳥飼の不正をかばい、家禄を減らされたのである。そのような事情もあり、孫左衛門は鳥飼を倒すのだが、欅(けやき)の木と孫左衛門の姿、そして「生きていれば、よいこともある。」という言葉に救われた。
*「偉丈夫」
体は大きいが小心者の片桐権兵衛がコミカルである。最後の権兵衛の顔を赤くするシーンは微笑ましい。
乾ききった心に潤いを与えてくれるかもしれない。できれば、藤沢の代表作(『橋ものがたり』『風の果て』『蝉しぐれ』)を読んだ後の方が、面白いかもしれない。
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藤沢周平晩年の作品とのこと
わずか3編の短編集ではあるが、タイトル作「静かな木」は、藤沢氏の晩年の境地とオーバーラップしているのだろうか?
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藤沢周平の短編集。
文字も大きく、30分くらいで読めてしまう。
薄っぺらい本。
しかし侮るなかれ。
藤沢ワールド炸裂。
「岡安家の犬」では散々読者をひやひやわくわくさせておいて、ラストはあっさり。
でもこれがまたいいのだ。
このラストで読者は心和ませるのだ。
人間と人間のつき合いはこうでなくちゃ。
「静かな木」では欅の木のすっと立つ潔さに隠居した自分の人生を見つめるきっかけを得る孫左衛門。藤沢周平らしい安心感のあるストーリー展開と、
頑張って腰が痛くなってしまう主人公の人間くささに親しみを持つ。
とにもかくにも短編でこれだけ読者を満足させるとは、さすが藤沢周平。
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藤沢 周平「静かな木」読了。「岡安家の犬」愛犬を友人にいたずらで犬鍋にして食べさせられ、絶縁する話。現代の愛犬家はこんな事で納得しない思う。「静かな木」私ならもう1転するかな。「偉丈夫」何か物足りない。総評:藤沢周平初めて読んだけど、オチの方向性と娯楽性が私の感性とは違うなぁ。
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【本の内容】
藩の勘定方を退いてはや五年、孫左衛門もあと二年で還暦を迎える。
城下の寺にたつ欅の大木に心ひかれた彼は、見あげるたびにわが身を重ね合せ、平穏であるべき老境の日々を想い描いていた。
ところが…。
舞台は東北の小藩、著者が数々の物語を紡ぎだしてきた、かの海坂。
澹々としたなかに気迫あり、滑稽味もある練達の筆がとらえた人の世の哀歓。
藤沢周平最晩年の境地を伝える三篇。
[ 目次 ]
[ POP ]
円熟した巧さを感じる、海坂藩もの短篇3作です。
うち1作は以前にもあったようなストーリーですが、前後2作はユーモラスさが堪らなく嬉しい内容となっています。
海坂藩の支藩として“海上藩”が登場するのですが、藤沢周平は、終章で孫左衛門にこのように語らせています。
「--生きていれば、よいこともある」
老いの身であっても、死を待つ身であっても、ここに存在することが誰かのためになるのであれば、それは望外の幸せなんでしょうね(笑)
残り少ない時間、残り少ない力が誰かのために使えるのであれば「生きていれば、よいこともある」のだと思います。
久し振りの」藤沢周平の小説を読みましたが、掌編でしたが十分楽しめました(笑)
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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最後の短編「偉丈夫」を含む短編3篇からなる。
岡安家の犬/静かな木/偉丈夫
おなじみ海坂藩が舞台。
他のシリーズ中に登場する、道場や人名がでてくるのでファンなら思わずにやりとする場面もあり。
「偉丈夫」は最後の短編とのことだが、悲劇ではなくどちらかというと喜劇よりの作品というのが、印象深かった。
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藤沢さんの最晩年の作品たち。どれもこれもやさしい話ばかりだったような気がします。主人公たちへの愛情が感じられました。藤沢さん入門にもオススメです
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短編小説『静かな木』は、日本の秋を舞台に始まる。
稲刈りも終えた秋の頃、遠く西の空から、かすかに日差しがさしこむ。その日差しをうけながら欅(けやき)の木は少しの赤味をとどめつつ静かにたたずむ。
この老木を見ながら、
「あのような最期を迎えられればよい」
との思いが主人公の布施孫左衛門のあたまの中をふとよぎる。
その後、この物語は大きく進展、
「ふむ、生きている限りはなかなかああいうふうにいさぎよくはいかんものらしいて」と思うとともに、
「こうしてじたばたすることが、生きている証(あかし)というのかも知れない」
と思う。
やがて、物語はクライマックスを向かえるなかで春が訪れる。
やわらかな春の日を浴びながら静かにたっている欅の木を、まぶしいばかりの青葉が覆いつくす。
以前は、かりの姿のようにも見えたが、しかし今は
「これも、わるくない」
そして物語は、
「生きていれば、よいこともある」
で締めくくられる。すごくと共感をするところの多かったこの『静かな木』、短編小説でありながらも心に深く刻み込まれる作品でした。
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表題作の静かな木は、これから先老いていく自分が何度となく味わう感情がやさしく描かれている気がした。五十年先にこの作品を読んだ時にどうかんじるか、それが私がどういう人生を過ごしたかの示唆なのかもしれない。
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著者最晩年の短編集。ファンおなじみの海坂藩もので、三作どれをとっても味わい深く、藤沢周平の世界を堪能しました。
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三つの短編からなる、海坂藩を舞台の「静かな木」。三編の中では、タイトルにもなってる静かな木が一番良かった。
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ー生きていれば、よいこともある。
孫左衛門はごく平凡なことを思った。
軽い風が吹き通り、青葉の欅はわずかに梢をゆすった。
孫左衛門の事件の前とはうってかわった感想を笑ったようでもある。
(岡安家の犬/静かな木/偉丈夫)
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藤沢周平の晩年に書かれた短篇を3篇収録。いずれも愛読者にはお馴染みの海坂藩を舞台にしたもの。作家の晩年の作だからか、2篇までは隠居老人を主人公にしたもの。いずれも、いわば枯淡の味わいがあるが、白眉はやはり表題作だろう。欅の大木をシンボルとし、またメタファーとして、主人公孫左衛門の人生の決算とその最後のヤマを見事に、しかも淡々と描き出している。他の2篇も含めて藤沢周平の世界を、いわば回顧するかのような短篇小説群だ。
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藤沢周平氏 「寒梅忌」にちなんで読了。間に合いませんでしたが…^^;
藤沢氏の晩年の作にふさわしく静かながら味のある短編3作。『岡安家の犬』は、てっきり冗談だと思ったのですが、本当に食べてしまったのですね。アカという名前から既に不吉な気がしていましたけれど。
3作の中では『偉丈夫』が良かったです。
もう藤沢氏の“新作”を読むことは出来ないと思うと寂しいですし残念です。せめて今ある作品をもっともっと大切に読みたいと思いました。合掌。