アメリカ合衆国史の第一巻
2025/01/22 21:01
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
全四冊の岩波新書のアメリカ合衆国史の第一巻。もとより今日アメリカ史を描くのであるからピルグリムファーザーズの神話から始まるわけはなく、先住民の歴史から、「星条旗よ永遠なれ」が生まれるきっかけとなったアメリカナショナリズムが高揚する一八一二年戦争までが描かれる。「大西洋史」の視点も取り入れた幅の広い記述になっているので昔の感覚でいる人も再入門としていいだろう。
楽しいアメリカ合衆国史
2019/04/24 09:54
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ合衆国の歴史の本は数多くある。本書は、4巻本の第一巻である。続編にはまだお目にかかっていないが、長すぎず短すぎず、ちょうど良い。つまり、何巻もあり詳しいが長すぎて読むのが疲れることはなく、かといって短すぎて中身がスカスカと言うこともないと言うことだ。本書は、植民地から建国に至る経過や理念がわかりやすく説明されていて、2日で全部読めてしまいました。次が楽しみです。
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2019年5月読了。
これは期待のシリーズということで早速読み始めた。
東部植民地としての発生から21世紀までのシリーズで、
本書は入植から独立を経て19世紀初頭までを描く。
56ページ
人間の移動という視点から植民地北米を見ると、半数以上が年季契約奉公人もしくは流刑囚。皆が希望を持って新大陸に渡ったとするのはミスリーディングでは。戦前の日本から満州に渡った人の属性を見たらどんなことが分かるか、興味深い。移民はいつの世も立場の弱い者ということなのかもしれない。
61ページ
南部はプランテーション経営が伸展することで性別による役割分業が進行し、家父長主義的家族が形成されたという説。なるほど「南部の保守性」というのは、そういう土台があったのねという感。
70ページ
意外にも大西洋を中心に置いた(つまり欧州と北米大陸の関係性に着目したら)歴史叙述はこれまで少なかったのだとか。どのように交易をしていたのかを示す図が掲載されている。
112ページ
アメリカがどうして独立しなければならなかったのかの三つの構成要素 ①自然法にもとづく革命権 ②ジョージ3世による悪政 ③本国からの分離独立は論理的な帰結である。
134ページ
クロニクル記念碑の写真。異論のない「正当さ」を示す存在が国民統合の象徴として機能するのは、国のレベルでも(我が国であれば天皇)、企業のレベルでも(カリスマ経営者や伝説的な製品やサービス)さして変わりはないように思う。
160ページ
アメリカ独立宣言は1776年に出された。日本は田沼意次の時代。
161ページ
民主=デモクラティックと共和=リパブリックの違い。民衆の力や支配を意味するのが民主、公共善の防衛を謳い「有徳の市民」=選ばれた者が支配するのがリパブリック。今の民主党と共和党の考えも、さして変わらないのでは。
195ページ
自由の国の都・ワシントンは、多数の「圧倒的に不自由な黒人奴隷」を動員して建設された。なんというアンビバレンツ。
205ページ
3代大統領ジェファーソンは、自分のプランテーションで「使用」した黒人奴隷の間に子をもうけ、剰えその異父母姉妹とも関係していたという。凄まじい性的搾取。
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また楽しみなシリーズが始まった。
当たり前だけどアメリカ大陸の発見から、アメリカ独立宣言まで270年もある。メイフラワー号による入植も1620年だから、大陸発見からは100年以上経過している。けっこう知らないことばかりだ。そして当然だけど建国にいたるまでの道のりが現在のアメリカを形づくっているわけで、いろいろと楽しく読ませてもらった。アメリカで紙幣文化進んだ理由や、アメリカ大統領の任期はなぜ2期8年なのか? やっぱり歴史があるよね。
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アメリカ史の概説書シリーズとして刊行。ポカホンタスとか、ヴァージニア・デアのようなあまり知られていないところにも触れられていて良かった。ハミルトンが決闘で命を落としていたり、ジェファソンがアメリカのスフィンクスとよばれる多面的な人物で黒人奴隷の少女を愛したことなどは面白かった。ワシントンは大統領就任を拒んだが、おしきられ、辛い気持ちで引き受けた。それくらいの覚悟をもった政治家が今後も出現してほしい。
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アメリカ史第1巻。最新の知見と共に、大西洋史や記憶史(当時の史実だけではなくその後の時代での扱いの盛衰)も取り入れて書かれているそうで、面白かった。
特に所々ちりばめているエピソード的な出来事が興味深い。
・ボストン茶会事件は別にパーティがあった訳じゃ無い
・黒人奴隷制度のおぞましさ
・イギリスとは何度も戦って独立を勝ち取り、その後も戦っている
・マラトンの戦いの故事を彷彿とさせる出来事が今のボストンマラソンに繋がっている
・独立後政府の中心人物だったハミルトンが決闘で死んでいる
・今の米大統領が2期までなのは、初代ワシントンが2期で辞めちゃったから
・・・
分かりやすく書かれているので、一気に読めるのが嬉しい。
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アメリカ合衆国史、シリーズ第一巻。
シリーズ全体を通して、一国史の視点ではなく、全体的に合衆国史を捉えようとして書かれる通史。
冒頭、独立宣言50周年の1826年7月4日、第二代大統領ジョン・アダムズと第三代大統領ジェファソンが、ともに亡くなったとのエピソードが紹介される。偶然とは言え、建国の日が神聖視される出来事であった。
36ページ 13植民地の成立と展開。ニューイングランド植民地、中部植民地、南部植民地。(南北戦争につながる差異)
54ページ 南北アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アフリカ大陸という大西洋を囲む四大陸の相互連関を考究対象とする大西洋史のアプローチ。
64ページ 白人、先住民、黒人、三人種の遭遇。白人の入植者には、「自由」(フリー)かつ「ただの」(フリー)広大な土地が開放された。(無主物先占の法理)
90ページ〜独立革命の展開
175ページ 首都ワシントン。妥協により、メリーランド州とヴァージニア州の境に置かれることとなったが、つまり奴隷制黙認を意味した。
記念碑、星条旗等に関する記憶史の記述も、アメリカ人はこのように独立に関する記憶を大事にしていることが窺えて、大変興味深かった。
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1776年にイギリスから独立し、南北戦争という内乱を経て形成された、民主主義と資本主義の最も発達した先進国の一つ。
その程度の認識しかなかったアメリカという国を、「図書」1月号の対談を読み、岡本隆司さん・貴堂嘉之さんの対談を読み、もっと根本からこの国を理解したいと思い、読み始めました。
本書は、単なるアメリカという一国史を辿るのではなく、「大西洋世界(大西洋史)」と「現代(記憶史)」の2つの視点からアメリカ合衆国の成立から現在までの光と影をく描いています。
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トランプさんだ、人種問題だとやたらお騒がせなアメリカが気になって、トランプ本とかなぜ中間層は没落したかとか読んで、やっぱりこういう歴史かと思って読んだ本。いろいろよく分かりました。このシリーズ優秀。すごくためになりました。
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コロンブスの新大陸到達から500年あまり、合衆国独立からでもまもなく250年経とうとしている。アメリカは決して歴史のない国でも新しい国でもないとのこと。たしかに同じ政体の枠組みが続いているという意味では、明治維新や敗戦をあいだにはさんでいる日本よりよほど長い。18世紀に憲法制定をめぐってたたかわされた議論が、今日の国のあり方にもけっこう直接的に影響している。たとえば上院の定数とか。他にも、北部と南部では植民地時代の初期から成り立ちが違うなど、高校の世界史でもアメリカ史についてそんなに詳しく勉強した覚えがないのであらためて知識の整理ができた。
また本書の著者が力を入れているのは「記憶史」というもので、起こった当初はさほど重要視されていなかった事柄が、その後の言説によって意味付けをされていくような過程の研究。たとえば独立宣言書なんかもその対象に。
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13の植民地から始まったアメリカ合衆国の建国物語だが、タバコと砂糖が重要だったことを知った.イギリスと戦争で独立を果たすが、当時のヨーロッパ諸国特にフランス、スペインとの葛藤もあったようだ.初代大統領ワシントンの元で活躍したハミルトンの話は面白かった.別の教材で彼のことを学んでいたので特に楽しめた.大西洋史の視座での著述は非常に新鮮で、米国史の見方を変えるものになると感じた.
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アメリカという国の成り立ちに興味があった。
彼の国は、どうして世界一の国になったのだろう。
宗教的迫害、貧困、冒険心、
いろいろな理由であるが、
イギリス本国から
自由を求めてやって来た人たち。
植民地支配から
自由を戦って勝ち取る。
そこから始まる国づくり。
本書では、入植者目線で書かれているが
奴隷として連れて来られた人たち
先住民の人たちにとっての
歴史的見方も知りたいです。
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・本シリーズはアメリカ合衆国の通史。シリーズ一巻目の本書は、先住民の暮らしから19世紀初頭の米英戦争までを扱う。
・(特に植民地時代)アトランティック・ヒストリーの考え方が新鮮だった。アメリカ史に限らず、国家の歴史を考える上では一国史観にとらわれず、グローバル・ヒストリーの視座が重要だと思った
・著者が指摘するように、歴史というものは静態的なものではなく、常に再解釈・再構成を迫られる動態的なものだと捉える必要がある。そのように考えるならば、本書で言えば独立宣言や、あるいはいわゆる「建国神話」に関しても、同時代からそうであったというよりも、寧ろ後世の国民国家形成の中で発掘されてきたものと捉えるべき。歴史は開かれたものであり、だからこそ最新の書物に当たる意義、延いては歴史学の意義があるのだろう。
・建国時(合衆国憲法制定時)には、政党政治が想定されていなかったことは発見だった。このあたりの、第一次政党制から始まる政党政治については、本シリーズ(4冊)読了後に、復習として『アメリカの政党政治』(中公新書)にて整理したい。
・何度か、アンダーソン『想像の共同体』への言及が見られた。『想像の共同体』は、専らインドネシアのナショナリズム研究の書物だと思い込んでいた。政治学を学ぶ人間として、近いうちに一度は通読しておきたい。
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アメリカ合衆国憲法制定から230年。短いとみるか長いと見るか。
予想通り1492年コロンブスの頃からが本題。それ以前の先住民などについてはさらっと書かれているのみ。紙面を割くほどの情報はないということか。
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メインに扱われるのは、フレンチインディアン戦争の講和条約である1763年のパリ条約と、独立革命の講和条約である1783年のパリ条約という二つのパリ条約の間の20年間。その20年を、1773年のボストン茶会事件で前半・後半に区切っている。それに加えて独立後の制度設計の5年間と、トータル25年間で独立革命を俯瞰している。
ただし、その前段階として北米の古代文明やイギリスによる大西洋沿岸への植民活動、第二次独立戦争とも言われる米英戦争についても丁寧に扱われている。特に13植民地の形成に関してはそれぞれの入植の事情も大きく異なる上、大きく分けて北部と南部の経済基盤の違いが後の南北戦争に関係してくる重要なポイントでもある。
仏との第二次百年戦争に勝利し北米から仏を駆逐すると、国王宣言による移住制限、各種税法などをめぐり本国と植民地は次第に対立を深めていく。独立戦争の基本的な流れに加えて、植民地人たちの「アメリカ人意識」の形成過程やポール・リヴィア、ベッツィ・ロスらの建国神話にも触れられているので興味深く読める。