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レビューアーランキング
先月(2017年2月)

稲葉芳明さんのレビュー一覧

投稿者:稲葉芳明

9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本人類と建築の歴史

2005/09/29 06:39

<住居>から<建築>へ−−深く洞察力を持つ、啓蒙的入門書

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 えてして、大学のエライ先生の書く「入門書」は細部にばかり拘っていて全体像がまるで見えてこず、ちっとも「入門」的でない書物になりがちである。その点、この藤森氏の著作は、素人にもとっつき易い間口の広さを持つと同時に、面白半分に覗いてみた分野が如何に奥深いものかを教えてくれる優れた啓蒙書になっている。
 そもそも建築史など、ぼく自身はさほど興味を抱いておらず知識も皆無で、書店で拾い読みした際の感触が良かったので何となく買ったに過ぎないが、一読驚嘆、これは凄い拾い物だった。
 筆者は、文明発祥から現在までの建築史を6つの段階に分ける:1)世界共通の石器時代、2)四大文明に分かれる青銅器時代、3)多様さが最大となる四大宗教時代、4)多様性が減退に向かう大航海時代、5)欧州以外では各国の固有性が衰退する産業革命時代、6)世界が一つとなる20世紀モダニズム——この6つである。
このような区分がすっと頭に入るのは、筆者が建築史を表層的に捉える(語る)のではなく、文化人類学的方法で建築を観るからである。その結果、1万年余の大河の歴史を一気に見渡す、息を飲むような素晴らしい鳥瞰図を提示してくれた。
 例えば・・・。旧石器時代は、地母信仰に基づく<住まい>しかなかった。しかし、新石器時代においては太陽信仰が、神の存在を知らしめす表現として建物が作られた。これが<建築>の誕生である——と、筆者は言うのである。
 ××時代の建築は○○が特徴で、これは△△時代の影響で云々という、無味乾燥な歴史教科書でしか<建築>を教わったことの無い人間にとって、このような分析は目から鱗が百枚程落ちるものである。歴史の流れに基づいて個々の建築を並べ立てる従来の「演繹」的建築史に対し、歴史の大きなうねりから根底に在る変革を見出そうとする「帰納」的建築史と言ってもいいかもしれない。
 人間の<生きる>という営為と<建築>が、このように表裏一体となって発達(発展)してきたのだという軌跡を一気呵成に概観して、何か清々しい感動に包まれた。

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事実は小説と同じくらい奇なり

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ』(Wag the Dog)というアメリカ映画があった。これは、大統領のセクハラ・スキャンダルを防ぐために側近が「スピン・ドクター=揉み消し屋」(ロバート・デニーロ)を雇うが、彼は何とヤラセ(でっち上げ)の戦争を仕掛けることで、大統領スキャンダルから国民の目をそらそうと、ハリウッドのプロデューサー(ダスティン・ホフマン)を雇って架空の戦争を捏造していく・・・いう物語だった。ところがこの映画が97年に封切られた時、クリントンの不倫疑惑とイラク危機が勃発したので、あたかも現実が映画を模倣したかのような様相を呈した。

 ぼくがこの本を読んで連想したのも、映画を見た人なら分かってもらえると思う。この書が扱っているのは、勿論架空でもなんでもない一大悲劇<ボスニア紛争>だが、ボスニア・ヘルツェゴビナが情報戦を有利に進めることで、如何にしてセルビアを悪役に仕立て、最終的には国際社会で<勝利>を収めたかを−−ちょっとニュー・ジャーナリズム的手法も思わせる−−綿密な取材で浮き彫りにした労作である。
 筆者の労力に感心するのは勿論だが、この書が面白いのは、何より巨虚実々の情報戦の過程。この情報戦が一歩道を誤ると、それこそ『ワグ・ザ・ドッグ』の世界に突入してしまうのだろうと思う。と同時に−−本書の中で日本の政府、特に外務省は痛烈に罵倒されているが−−こういう生き馬の目を抜く国際社会でサバイバルするには、これ位タフでなければダメなのだなあとも思う。
 ともあれ、この書を読んで面白く思った人は『ワグ・ザ・ドッグ』を見ましょう。『ワグ・ザ・ドッグ』を見て楽しんだ人は、この本を読みましょう。

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夏=甲子園=阪神タイガース!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ぼくも幼い頃は「巨人、大鵬、玉子焼き」だった。幼い頃より(今現在も!)夕刊が無く、TVは日本テレビ系の民放が一局のみ(のちにフジテレビ系のUHF局が増えただけ)という文化超後進県F県で生まれ育つと、プロ野球は巨人しか目に入らなくなる。だから当然の如く、全盛期の長嶋や王が大好きだった。
 でも巨人の王者の牙城を脅かす村山や江夏や田淵の存在には、恐れつつも惹きつけられた。特に江夏!巨人vs阪神三連戦の時は、決まって初戦に先発し、その快速球でバッタバッタと巨人の打者をなで斬りにした。
 その後、江川事件があり、長嶋政権第一期の時の突如解任があり、巨人〜読売新聞の正体が見えてきて、巨人ファンを辞めた。それ以来熱心な阪神ファンとなり、爾来二十余年である。そんなぼくが、発刊以来幾度と無く頁を繰り、阪神の快勝と冷たいビールの相乗効果で酩酊している時などは、随所でついつい涙腺が刺激されてしまうのが、本書なのである。
 何故「阪神タイガース」は、かくも熱狂的に(多分世界一熱狂的に)ファンに愛され続けるのか?「阪神タイガース」とは、大阪および日本にとってどういう存在なのか?何故「星野阪神タイガース」は、こんなに強くなったのか?等々、これらの疑問を社会学的に分析して答えを出しつつ、なおかつ虎ファンの胸を熱くしてくれる名著が、何と五百円玉を出してお釣りが来る超破格値で買えるのだ。近年稀に見る、コスト・パフォーマンスがめっちゃ高い書物である。
 阪神ファンも、アンチ阪神も(特に虚人ファンは)絶対買うべし!読むべし!
 そして、今年こそ、日本シリーズを制覇出来るよう、熱いエールを送ろう!

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紙の本キス・キス

2006/02/10 13:27

映画『チャーリーとチョコレート工場』で初めてロアルド・ダールの名を知ったあなたが次に絶対手に取るべき本

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 昨年の大ヒット映画のおかげで初めてロアルド・ダールという作家の存在を知った/初めて読んだ、という人も少なからずいるでしょう。しかし、筆者にとっては、ダールとはまず『あなたに似た人』や『キス・キス』という傑作短編集の書き手なのです。昨秋早川書房が創立60周年記念出版として<異色作家短編集>シリーズを復刊してくれましたが、その第一回配本がフレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』と、この『キス・キス』でした。
 この短編集に収録された作品は、<奇妙な味>の作品が多いですね。最初はごく普通の物語として始まるものの、途中からどんどん世界が捩れていき/歪んでいき、果ては読み手を不安定な宙ぶらりん状態で放り出す手腕は、ワン・アンド・オンリーなもの。「女主人」とか「ローヤルゼリー」、「ジョージイ・ポーギイ」はその典型ですね。
 ブラックユーモア横溢の「天国への登り道」や「豚」のオチも、実に後をひきます。現実には充分ありうる話しで、結末も大体読めるんだけど、その語り口で有無を言わさず引っ張られるのが「牧師のたのしみ」とか「ビクスビイ夫人と大佐のコート」。「ほしぶどう作戦」は、そのオフビートのユーモア感覚が絶妙です。
 昨年、「このミステリーがすごい!」を始めとしたミステリ・ベストテンでは短編集が軒並み上位にランクインしましたが、(新作ではないものの)この短編集にノミネート資格があったら、筆者は迷うことなくベストワンに推しますね。

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アメリカという大きな林檎の果肉と芯と種子=ミシシッピ河

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者のバーダマン氏は、1947年テネシー生まれで、現在は早稲田大で英文学を教えている大学の先生。専門はアメリカ南部の歴史と文化だそうで、この本もミシシッピ川を歴史と文化の二つの側面から分析しながら4000キロの道のり(川のり?)を辿っていく。
本書冒頭部で、東海岸や西海岸は大きな林檎の薄い皮膜にしか過ぎず、「ミシシッピ川流域はアメリカ経済の屋台骨であり、また何より重要なことに、国家の精神的な中心でもある」と説く。つまりアメリカという林檎を林檎足らしめているものこそ、ミシシッピ川であるというのだ。
ミシシッピのみを俎上に上げてこれだけ詳しく述べた署は他に類が無いと思われるが、河口からニューオリンズ、デルタ、セントルイス、源流へと遡って行く紀行文として楽しみつつ、その都度歴史や文化的背景を丁寧に解説していく、正に<オール・アバウト・ミシシッピ>。また、先日のハリケーン・カトリーナが何故あのような大災害を引き起こしたのか、その遠因を予言するかのように、河川改良について鋭く分析した箇所もある。
この本を読んで、ぼくはアメリカのバックボーン=ミシシッピを猛烈に訪れたくなった。ニューオリンズが復興した折には、再度本書を読み直し、アメリカ南部へ足を運んでみよう。

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紙の本誤読日記

2005/10/06 06:21

三種の神器

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 斎藤氏の本はどれも面白い。新刊が出たら必ず買うが、ぼくのような活字フェチにとって、斎藤氏の著は砂漠のオアシス、もしくは霧の中を航海する船にとっての灯台的存在になりつつある。今回の著作は、ベストセラーを含む話題の新刊全175冊のレヴュー。

 氏の語り口は平易だから文章を追うのはとても楽だが、その内容は実に奥が深く、且つ致死量の毒が含まれている。この書もしかり。新聞広告やら書評やら雑誌の記事で、読んでないのに読んだつもりになってしまっている話題の書を、わざわざこんな本を読むのは沽券に関わると何故か思い込んでいるうるさ型の読者に成り代わって読んであげ、その本の面白さも詰まらなさをきちんと分析してあげようという、至れり尽くせりの書。
 斎藤氏の凄いのは、本の本質を見抜き、一言でズバッと言い表せるところ。以前あちこちの雑誌にコラムを書き、その鋭い舌鋒で大向こうを唸らせた小林信彦氏のエンタテインメント時評に近いものがある。例えば、村上春樹氏の新訳で話題になった『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は、「一種のリフォーム」だと指摘する。あるいは、丸谷才一『闊歩する漱石』は、その詰まらなさを、丸谷氏の文体模写で指摘する。
 本質を見抜ける慧眼、それを簡潔にまとめるジャーナリスティックな感性、それに加えて知的な遊び心。文筆家にとっての三種の神器を備えているようなもんですね。
 ちなみに、この書でぼくが一番気に入ったのは、P209の『追悼!噂の真相 休刊記念別冊』のレヴュー。ぼくも『噂真』は長年愛読していたが、この一文には大いに笑い、その後唸りました。愛読者だった人、ここの部分だけでも立ち読みする価値アリ、ですよ。

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ラブ&ピースだけじゃだめなんだ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 北朝鮮による拉致被害事件がその典型的な例だと思うが、何故そのような事件が起きたのか、その直接的要因(北朝鮮側の理不尽極まりない動機)と間接的要因(北朝鮮にそこまでの無茶に走らせた背景)をきちんと分析・解明することが、いやしくもジャーナリズムの本来の責務だと思う。ところが実際は——とりわけTVがひどいが——<家族愛>のお題目の元、芸能界報道のノリで枝葉末節のみが誇張される報道にはつくづくうんざりする。
 こういう時こそ、「学者」「知識人」は自らの長年の研究と卓見を、我々に届く言葉で語りかけ、指針を示すべきなのに、そういう真っ当な知識人は皆無に近い。その数少ない例外の一人が、藤原帰一氏である。氏の『デモクラシーの帝国』も啓蒙的な書であったが、本書には、一層深い感銘を受けた。
 二人のインタビューアに答えるという形をとっているので、まずとっつき易いのが何より。しかし、中身は深く、濃い。『「正しい」戦争は本当にあるのか』という極めて重いテーゼを考えながら、平和、現在の国際関係、アジアにおける日本の位置づけを論考していく。東大卒で現在は東大の教授を勤めているなんて、もう絵に描いたような<学者><知識人>だけど、時代の推移と空間の広がり(アジア〜ヨーロッパ〜アメリカ等々)を踏まえた上で、事象を整理し、読者(=一般人)が考察・判断出来得るだけの素材を提供しようとするその姿勢に真摯で清々しいものを感じる。
 平易な言葉で語られているからこそ、国際政治に門外漢のぼくでも胸に染み入るものがあるのだが、中でも最も感銘を受けた箇所の一つを以下にご紹介する:
 「平和って、理想とかなんとかじゃないんです。平和は青年の若々しい理想だとぼくは思わない。暴力でガツンとやればなんとかなるっていうのが若者の理想なんですよ。そして、そんな思い上がった過信じゃなく、汚い取引や談合を繰り返すことで保たれるのが平和。この方がみんなにとって結局いい結論になるんだよ、年若い君にとっては納得できないだろうけれどもっていう、打算に満ちた老人の知恵みたいなもんです。」

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芝居を堪能した人は、古書店で原作を探して読もう!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

9月から10月にかけて渋谷シアター・コクーンで上演された『天保十二年のシェイクスピア』。原作:井上ひさし〜演出:蜷川幸雄〜音楽:宇崎竜童という重量級のスタッフもさることながら、唐沢寿明・藤原竜也・篠原涼子・夏木マリ等々主役級人気俳優がずらり一同に会したキャストも大いに話題になり、連日立ち見までぎっしりの大入り満員(チケット争奪戦も凄かった)。ぼくは10月8日土曜日夜の部をA席(2階席右端)で見たが、休憩20分を挟む4時間の大作を、一瞬も飽きることなく、もう200%楽しんで観た。
井上ひさしの原作は、1973年12月に「書き下ろし新潮劇場」の一冊として刊行され、翌74年1月に西武劇場(現PARCO劇場)で公演された。何せ(初演時は)4時間半を越える大作なのでなかなか再演される機会が無く、今回が3度目の上演とのこと。また、極めて残念なのは、原作が現在入手困難であることだ(単行本は無論、本戯曲を収録した84年刊『井上ひさし全芝居 その二』も絶版状態。新潮文庫あたりで復刊させて欲しい)。
さて、この破天荒な面白さに満ちた芝居を満喫した後、本棚からその『井上ひさし全芝居 その二』を久方ぶりに引っ張り出してきて読んでみた。
井上氏は、いわゆる観念的で新劇的でお上品ぶった従来のシェイクスピア芝居を一旦全て破壊し、語呂合わせ・駄洒落・卑猥語・オノマトペーを駆使して、そこに性的で野卑な匂いを存分に漂わせた一種のピカレスクロマンを創りあげた。言い換えれば、この戯曲は「宝井琴凌の『天保水滸伝』をはじめとする侠客講談を父とし、シェイクスピアの全作品を母として」生まれた——と冒頭の献辞にあるように、江戸侠客の世界に、『リア王』『リチャード三世』『マクベス』『オセロ』等々沙翁全戯曲37編をぶち込んでぐつぐつ煮込んだ、<大量殺人色欲地獄>ファルスである。扇田昭彦氏は、「趣向の執拗さと過剰さで際立つ作者の初期戯曲の特質と、残酷な味のする『藪原検校』のグロテスク志向が合体した」と評しているが、個々の場面の<趣向=沙翁芝居の本歌取り>を楽しみつつ、全体としては、混沌であることに快感を覚えるようなエネルギッシュで攻撃的で祝祭的な芝居である。
原作を復刊すると同時に、近い将来の再演を是非是非望みたい!

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ThereiseverythingbuthopeinJapan.「日本には<希望>だけが、存在しない」

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者の山田昌弘氏は、以前『パラサイト・シングルの時代』『パラサイト社会のゆくえ』(ともにちくま新書刊)で、地殻変動を起こしている日本社会の一つの象徴的な事例として<フリーター>を分析し、和製英語の「パラサイト・シングル」なる言葉を広く膾炙させた社会学者(東京学芸大教授)である。
 これらの本では、まだ書く方にも書かれる対象の方にも余裕があった。ところが、この『希望格差社会』ではそのような余裕はもはや存在しない。何せ、「五年後の生活の見通しも立たないのに、五十年後の生活の心配が出来るか」という理由で年金の掛け金を払わない(払えない)若者が分析の対象なのだから。
 筆者の主張を簡単にまとめるとこうなる:大量生産・大量消費型の「オールド・エコノミー」が、グローバライゼーションやIT化に象徴される「ニュー・エコノミー」にとって代わられた結果、社会人は専門職と単純作業専門にデヴァイドされる。要は「勝ち組」と「負け組」の二極分化である。これだけならまだいい。かつては、「負け組」に属していても、本人の努力次第で「勝ち組」に入れるだろうという(少なくとも)希望は抱けるシステムが作動していたのに、今はその<希望>すら抱けない、徹底的な二極化が生じてしまった・・・。

 富める者はより豊かに、貧しい者はさらに貧しく、という強者と弱者の段差が益々大きく、その溝が益々深くなりつつある日本は、アメリカに象徴される先進諸国を正に後追いしている。「夢」と分かっていても、それが実現する可能性が若干でもあるうちは、「夢」は希望と活力を与えてくれるが、「夢」が単なる「絵空事」以上でも以下でもない現実を突きつけられた場合、その絶望感は限りなく大きく、現実逃避(オタクや引きこもり)や反社会的行動(池田小乱入事件や、先般の奈良県での少女誘拐殺害事件がその典型)に走る例が珍しくなくなってくる。

 正直言って、気がめいる書物だ。しかし、現実を鋭く、正確に分析していることも疑いのない事実だ。自分は「オールド・エコノミー」に属している人種だからまだしも、これから「ニュー・エコノミー」に入っていかねばならぬ自分の子供達のことを考えると、一体何を道標としてやればいいのかと、正直途方にくれてしまう。日本国は全くあてにならないし、村上龍じゃないが、「エクソダス」を真剣に考慮すべきなのかも・・・。

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