ジミーぺージさんのレビュー一覧
投稿者:ジミーぺージ
紙の本柔らかな頰 上
2020/04/10 15:21
カスミという女
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この小説は、恋愛小説ではなく、官能小説でもない。
主人公カスミの長女が、突然、行方不明になるミステリー小説です。
ですが、ミステリーに小説の主軸はなく、登場人物の生き方、
生きる糧にテーマがあります。
主人公のカスミ、夫、不倫相手、死を目前にしている男、
カスミを中心としたヒューマンドラマといった方が分かり易いかも知れません。
カスミは、何が不満だったのか。
カスミは何が欲しかったのか。
それを考えさせることが、この小説のテーマだと思いました。
2019/11/22 11:38
日本のための政治と国民感情
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1905年9月4日、アメリカ・ニューハンプシャー州ポーツマスにて結ばれた
日露講和条約の成立にいたる話です。
日露戦争において優勢であった日本は、日本に有利な条件での講和を図るため
アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトに仲介を依頼し、
講和会議が始まった。
ロシア側は大国の威信を賭けて日本からの条約案を突っぱねる。
講和会議は、小村全権とウィッテ全権とのせめぎあいが長期間続いたが、
戦争を早く終結したかった日本側は、天皇の平和回復への考えもあって
譲歩し、条約を締結した。
この条約締結に対し、日本国民はロシアに屈したもの、
日本人の誇りが汚されて締結したものと思い、
小村全権、関係閣僚、元老に対し怒り心頭となり東京で大騒擾事件が勃発する。
とにかく国民は滅茶苦茶に怒ったのだ。
そのため、小村全権は命懸けでの日本帰国となった。
日本国民のために小村全権は命懸けで日露講和条約の成立に奔走したのに
日本国民には最後まで理解されないず生涯を終える。
小村の葬儀の会葬者は、勅使をはじめ約一千名であったが、市内に弔旗をかかげる家はなかったという。
なんとも切ない気持ちになってしまう。
2019/10/13 16:06
ベンチャー的な生き方
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サイバーエージェント誕生物語です。
小説として読んでも大変面白いです。
この会社は、IT企業の成功者だと思っていましたが、
IT企業の営業のみを専門にやる会社からIT企業へ移行した会社で、
社長の藤田さんはIT関連の専門家ではなく営業畑のみの人で、
それも社会人たった1年で起業し成功した人です。
一番優れている部分は、度胸ハッタリとマネージメント能力で、
それも仕事をガムシャラにすることから学習した能力のようです。
この本は起承転結がハッキリしているので読みやすく、分かりやすいです。
起業にあたって一番必要なことは、右腕となる人材の確保と人脈で、
いくら優れた能力があってもそれを仕事の営業・受注や会社の理念、
将来計画の明確でない経営者はそれなりで終わってしまうのでしょう。
この本は、ベンチャー企業の醍醐味が味わえる作品だと思います。
起業を目指す人にお勧めです。
紙の本うちの子が結婚しないので
2019/10/01 16:06
結婚感
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結婚を考える良い小説です。
結婚はしなければならないのか?
世間体が悪いからか?
老後が不安だからか?
この小説は、娘をもつ母親目線で書かれています。
本人が行う婚活があるなか、親が行う親婚活たるものが存在します。
子供に変わって親同士が 「うちの子と会って見て下さい」 と、
お互いの身上書を交換することから始まり、本来のお見合いへと展開します。
結婚相手に対するこだわりが強い一方、独身という生き方も近年増加傾向にあり、
また、結婚して上手くいかずに離婚する夫婦も増加傾向にあります。
この本は、親結婚を通して色々な問題が提起されています。
すでに結婚されている方にも、今一度、結婚について考える本としてお薦めです。
紙の本老後の資金がありません
2019/08/15 16:48
てんこ盛り
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現代社会が抱える問題がてんこ盛りの現代小説です。
50代の主婦にお薦めです!こんな問題が!
*何でこんなにお金が掛かるのか!
(1)子供の結婚式
(2)ケアマンション(老人ホーム)
(3)親の葬式
*世知辛い世の中
(1)リストラ
(2)年金問題
(3)DV問題
(4)親の世話
(5)夫の浮気
(6)商売負組
(7)引き篭り
(8)老々介護
紙の本羊と鋼の森
2019/03/27 10:51
自分の選んだ仕事の役割
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本屋大賞作品です。
ピアノの調律にたった一度立ち会っただけで、それに魅せられて調律師になった
青年のお話しです。
ピアノの調律は、ピアノの置かれている場所、広さ、演奏者の技量、演奏者の
欲する音色、鍵盤やペダルの感触など、それらを反映して行われていることを知り
ビックリしました。
主人公は調律師の仕事を次のように言っています。
『ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、七つの音が(正確には半音も入るから十二の音だが)
抽出され、名前をつけられて、星座のように輝いている。それを膨大な音の海の中
から正確に拾い上げ、美しく揃え、響かせるのが調律師の仕事だ。』
この本に登場する人物はみんな心が綺麗な人ばかりで、気持ちに清潔感が溢れて
います。純粋な人たち。
もし、今の仕事に迷いがある人は是非読んでみて下さい。
きっと、自分が選んだ仕事を深く考えるきっかけになると思います。
紙の本わたしを離さないで
2019/03/05 09:55
これは未来小説ではない!
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2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんの作品です。
日本では、この 「わたしを離さないで」 をTVドラマ化しています。
この物語は、臓器移植のために育てられたクローン人間たちの話です。
未来小説のように感じますが、裏社会ではすでに貧困による臓器売買が
現実化しています。
登場人物たちは、自分たちが生まれてきた意味・使命を受け入れて生きていきます。
それが、この本を読み終わった後に、いたたまれなさと虚しさで心を埋めてしまう結果となります。
いつになったら、全世界が平等で公平な社会になるのだろうか!
2019/01/14 15:57
徳川家康 26 立命往生の巻
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家康は天下泰平の最終仕上げを行う。
家康は、天下泰平のために豊臣秀頼を助けることができな
かったことと引き替えに自分の子である忠輝の処分のあり方
に窮することとなる。
これは、伊達政宗の娘の五郎八姫と夫婦になった忠輝が
伊達政宗の影響を強く受け、将軍家の乗っ取りの策略が
見えていたためであった。
そのため、家康は、忠輝に家康との永対面禁止を言い渡し、
実質上の隠居、謹慎処分とし、また、政宗を押さえ込むこと
によって今後盤石な天下泰平を整えたのであった。
家康75年の生涯は、天下泰平のために尽力し、人間が所有する
ものは全て天からの預かりものであり、天下はひとりの天下にあらず
天下は天下の天下なりと言い残すのであった。
家康は質素倹約の人生を貫き、日本の未来に向けた天下泰平の
仕組みを確立し、徳川幕府は256年の長きに渡り日本を統治する
ことになるのであった。
この本には幾多の人生の教えがあり、生き方が描かれている。
自分が最も共感できる人物は人それぞれと思うが、戦国時代の生き方は
世の理想を目指して突き進む英雄たちの生き様を現代と照らして見るのも
面白いことと思う。
紙の本女たちのジハード
2017/11/21 20:07
あっぱれな女たち
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実にたくましい女たちです。元気をもらえます。行動力が実にすばらしいです。
ここに出てくる女たちは会社の同僚で、親友という訳ではありませんが、
お互いの距離感がよくて、新鮮です。
読んだ方はきっと誰かのファンになるでしょう。
私は、康子のファンになりました。
人生にお悩みの方にお勧めです。
紙の本壊れた脳生存する知
2014/02/24 19:23
人間の脳
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脳が壊れると何も分からなると思っていましたが、
実は状況は分かっているけれど
どのように行動したらよいかがわからないとか、
このようにしたのに、そう体が動いてくれないということが
実体験で書かれていて、わかりやすかったです。
また、いくら脳がこわれても、脳は学習をまた開始するということには
驚きました。
著者が負けずきらいで、明るい性格なので
応援しながら読ませて頂きました。
紙の本オレたちバブル入行組
2014/01/17 10:51
爽快感
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窮地に立たされているのに読み手にストレスがたまらない。
それは、半沢のぶち切れる言動が爽快であるためだ。
忠臣蔵にも似ている。証拠を整えながら、じっと時を待つ。
いつ支店長をとっちめるのかワクワクしながら読み進み、そして、その瞬間を味わう。
でも、支店長の家族には同情してしまいます。
嫌いな上司にこき使われているサラリーマンにお勧めです。
2021/02/06 15:44
iPS細胞の可能性を教えてくれた!
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この本は3つの部分で構成されています。
1つが山本伸弥さんが医学を志し、臨床医から基礎医学に転身し、
現在の再生医療で活躍するまでの自伝です。
2つ目は、iPS細胞を生み出すまでの話で、ES細胞、iPS細胞の
基礎知識から人体生理学の細胞に関するちょっと難しい感じの内容を
出来るだけ分かり易く解説しています。
3つ目がインタビューでの対談話です。
山中先生は天才肌のイメージでしたが、この本を読むと体育会系のスポーツマンで
また、自己嫌悪に落ちて自己啓蒙本を何冊も読むような普通のひとでした。
でも、何かをなす人は凡人とは何かが違うのでしょう。
この本を読んで、将来的な再生医療の期待感がかなり膨らみました。
研究者のみささん頑張って下さい。
お願い致します。
紙の本うわさのズッコケ株式会社
2020/10/02 15:00
小学生が株式会社を作ったらどうなるか?
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この本の主人公は3人の小学生。
彼らが株式会社もどきを作って儲けようとする話。
この本は、小学生向けに書かれていて、漢字は少なく、
文章もマンガを読んでいる感覚です。
是非、小学生に読んで欲しい作品です。
私がこの本を読むきっかけになったのは、
ある投資家ユーチュバーが、この本に株式の
本質があるようなことをおっしゃっていたからです。
内容は、小学生向けだと思って下さい。
それくらい、やさしい本ということです。
でも、確かに株式会社の本質は突いていると思います。
紙の本昭和16年夏の敗戦 新版
2020/09/27 18:00
船頭多くして船山に上る(天皇、内閣、統帥部)日本の戦争
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天皇の止めることのできない戦争は、誰も止めることはできません。
この本は、誰もが負けると分かっていた太平洋戦争について、
どうして止められなかったのかについての詳細なやりとりの本ではなく、
当時の資料をもとに組み立てられた開戦前から東京裁判までをざっくり
まとめたものです。
概ね、以下のことが書かれていますので、これらを詳しく知りたい人に
お薦めします。
**************
天皇は英米蘭との戦争はしたくはなかった。
しかし、陸軍の主戦論は強く、それを押さえるには、
陸軍大臣の東條を首相にし、東條に軍を押さえ込ませるというものであった。
これは、木戸内大臣による提案である。
また、戦闘機の燃料である石油の備蓄は先が見えており、
南方等からの入手ルートを断たれれば戦争にならないことは周知のことであった。
開戦に先立ち、戦争是非について、実内閣に平行して模擬内閣が設置された。
これは、昭和16年12月8日よりわずか4ヶ月前の8月16日に平均年齢33歳の内閣総力研究所
研究生で組織されたものだった。
模擬内閣による研究結果は、必敗するとの結論であった。
一方、米国との外交交渉では、米国側要望がハル・ノートとして示されたが、
その内容はとても聞き入れられるものではなく、統帥部は開戦やむなしと結論する。
統帥部の勢力は強く、開戦に進むしかなくなった東條は、子供っぽい発言だが、
『日露戦争で我が大日本帝国は勝てるとは思わなかった。しかし、勝ったのであります。』
と、言うしかなかった。
紙の本ペスト
2020/05/14 13:46
新型コロナウイルス感染症が終息したあとに教えてくれるもの
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
オランという港町に突然ペストが発生し、ロックダウンされた社会の中で、
人々の行動や心理状態を描いた作品です。
ペストという巨大な殺人兵器に立ち向かうすべはなく、ターゲットにされるのは
悪人も善人もなく、大人も子供もなく、老若男女の区別もありません。
そのため、この町から脱出するか、神にすがるか、愛する人と今ままでどおり暮すか、
好きなように欲望を満たすかしかないのです。
こんな時でも、医師は患者の命を助けるのが仕事で、これは命懸けの行為です。
仕事なのか、責任なのか、役割なのか・・・・・・・
この本は、「不条理の絶望」ということがテーマにあり、この町の全ての住民が
その絶望の対象者としてこの不条理な世界で生きることになります。
やがて、ペストは終息していきます。
このペストとの勝負で勝ち得たものは、
「ペストを知ったこと、そしてそれを思い出すということ、友情を知ったこと、そして
それを思い出すということ、愛情を知り、そしていつの日かそれを思い出すことになる
とういこと」と本文にあります。
現在、2020年、
世界的なパンデミックとなった「新型コロナウイルス感染症」が終息したあとに得るものは、
「新型コロナウイルスを知ったこと、そしてそれを思い出すということ、友情を知ったこと、
そしてそれを思い出すということ、愛情を知り、そしていつの日かそれを思い出すことになる
とういこと」と、思います。
この本は、新型コロナウイルスによって自由を奪われ、不条理な世界に生きることの困難さを
感じている人にお薦めです。