719hさんのレビュー一覧
投稿者:719h

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
2024/03/29 04:04
兵器一覧と人物評伝ばかりの軍事史に飽き足らぬ向きに是非
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本書は250頁に満たないながらも、
手堅い作りの研究書です。
本文には、東部戦線における情勢変化に応じた
独ソ両軍の配置図が随所に挿入されている他、
巻末には詳細な解説付きの参考文献目録と
簡便な用語集も収められており、
自分の興味関心に沿ってこの分野を
深堀りしたい方にとって、打って付けの一書でしょう。
著者ヮ、日本における当該分野の研究水準に不満があり、
少なからず物申したいように見受けられます。
その思いが発露したかのような部分が、
文献目録で守屋純氏の訳書の誤訳部分を
槍玉に挙げている箇所です。
なお、本文中でヮわざわざ当該箇所を
訳し直して引用する、といった念の入れようです。
忘れずに付け加えておきますが、
この時代に、この主題を扱い、
このような何のひねりもない表題を付けて、
2020年3月時点で10万部以上も売れた本に
仕立ててしまった、岩波書店の編集者、
永沼浩一氏の手腕にも座布団一枚。

紋章学入門
2024/03/29 04:06
眺めるだけでは何のこっちゃ
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
欧州各地の市町村の役所や
古城などでよく目にする、
多種多様な図柄のしるしについて、
多数の図版を用いて、素人向けに
丁寧に解説してくれている本です。
文庫本の値段にしてヮ手頃とヮ言い難いですが、
本書の元版である、河出書房新社の
「ヨーロッパの紋章」が5000円近くし、
その元々版である三省堂の「ヨーロッパの紋章」を
復刊した日本図書センターの
「ヨーロッパ紋章百科」が35000円ほども
することを考えると、専門の研究者でもない限り、
手元に置いておく気になるのヮ本書かと。
2021/11/07 00:39
ただの漁師の子ではなかった
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
相手によって文体や語り口を変えて
手紙を綴ったという、かの宗教家の
書簡集です。
当時、房総地方で使われていた方言の
記録としても極めて貴重な文書です。

世界史の考え方
2023/03/17 17:13
イマイチ食いきれぬ、消化しきれぬ本
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
高校の歴史科目の改変に合わせて
企画されたと思しき教材本です。
各歴史分野の専門家による寄稿を一冊に
纏めたことに特色があり、またそこに意気込みを
感じヮするのですけれど、やや盛り込みすぎ、
或いヮ、ごった煮感、のある本です。
2022/04/16 03:39
著者なのか監修者なのか
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
古代ギリシャの哲学者、
ルネッサンスの芸術家など、
世界の歴史に足跡をとどめた
人々の業績を外観した文章に、
あの佐藤氏が論評を加えた本です。
氏の愛好者向けかと。

英語類義語活用辞典
2023/03/17 04:58
英語上級者を自負するあなたゑ
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
TOEICなら900点以上をとっている、
ペーパーバックなら曲がりなりにも辞書なしで読める、
という方にオススメ。
今まで似通った意味をもつものとして、
頭の中で一つの箱の中に
無造作に放りこんであった英単語達の、
色合いや肌触りの違いが感じられるようになり、
更にヮそれらの使い分け方にも理解が及ぶ筈です。

大衆の反逆
2022/09/13 17:02
原著にもあたらずに、数頁の解説を読んだだけで理解できてしまうほど易しくも甘くもない本
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ちくま学芸文庫でも、中公クラシックスでも
白水Uブックスでも出ているこの作品の新訳を、
敢えて出そうとしたことに、訳者の佐々木氏の
強い意気込みを感じます。
スペイン語文献の邦訳書が充実しているとは
言い難い岩波文庫の収録書目の中で、
きらりと光る一冊。
2022/02/27 02:13
400年近く昔の健康法も馬鹿にできぬ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
江戸初期の福岡藩の儒学者が
著した健康書です。
酒や茶を含む飲食については勿論、
情事や排便に関しても、80歳以上生きた
著者の実体験に基づいた意見が開陳されており、
読んでいて飽きる暇がありません。
現代語訳と解説を担当したのは、
かの「定本育児の百科」を
著した松田道雄氏。
2024/03/29 04:08
岩波文庫版を生理的に受け付けないという人なら
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
岩波文庫版に何らの不足も感じないので、
個人的には屋上屋を架した感のある、
かの名著の新版です。
現代の政治、社会状況に照らした
編者の解説が読みたい向きにヮ
おすすめできるのかもしれません。
ただ、現代語訳が岩波版のそれと比較して
味気なく、「読み劣り」します。
兆民の書いた文章の現代語訳で、
文頭に「なので」を持ってくる表現に
でくわそうとヮ、想像だにしませんでした。

戦国日本の軍事革命 鉄炮が一変させた戦場と統治
2022/03/27 03:02
確かに火縄銃は革命的だったろうけれど
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
火縄銃が革命的な兵器だったことと、
最初にそれを大規模に利用したのが
織田信長だったという、日本人なら
誰もが日本史の授業で習っているはずの
ことを、やや詳細に解説している本です。
2024/07/31 22:21
無免許の天才外科医ブラック・ジャックが大活躍する医学漫画
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
終戦後ほどなく作品の発表を始めるや
40年以上も日本の漫画界に君臨し、
のちに「漫画の神様」と称されるに至った、
不世出の漫画家の電子書籍版作品集です。
本品に収録されているのは、
ブラック・ジャックの全22巻。

漢詩 美の在りか
2023/12/06 00:23
漢詩が日本で愛され続けてきた理由とヮ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
漢詩ヮ、言うまでもなく、
漢民族の言語で書かれた詩です。
それをわざわざ日本語に直して
鑑賞するという、一見回りくどい営みが、
なにゆえ1200年この方、この列島で延々と、
続けられてきたのか、という問に、
一つの答えを与えてくれる書です。
内容の虜になってしまった結果、
思わず読了直後に再読してしまった、
忘れ難い一冊です。
漢詩を愛おしむ方々なら、一読ののちに、
その気持ちが増すこと請け合いです。
最後に一言付け加えると、良書なのにも拘らず、
全くもって惜しいことに、
この投稿時点で版元でヮ品切れのようです。
2021/06/01 15:41
20年近く前、授業中に没頭していた、隠れ読書を思い出しました
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
キャラが立っている、
という語句を人生で初めて耳にした時、
自分の読書体験の中から、
真っ先に脳裏に浮かんだ作品が、これでした。
ああ、こういう物語のことを指す表現なのかな、
と妙に腑に落ちたりして。
敢えて口走ってしまいましょうかね。
この書が、三国志や水滸伝のように、
末永く幅広く読みつがれていきますように、と。

漢詩入門
2021/06/01 15:33
漢詩の鑑賞にあたって最初に読むべき本か
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
このところ漢詩がちょっと気になっています。
といっても、作詩などできる水準など
望むべくもありません。
ただ、盛唐期の気に入った作品の
読みくだし文を音読したりして
悦に入っている程度で。
そんな自分が、漢詩の何たるかを
もう少しまともに知ろうとして手にとったのが
本書です。
初学者の知っておくべき基本事項を
しっかりとおさえてくれているあたりは、
岩波ジュニア新書の面目躍如たるところ
でしょうか。