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朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。さんのレビュー一覧

投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。

137 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

紙の本働く女子の運命

2016/02/14 02:10

日本型雇用と女子の関連

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

働く女子の問題に「日本型雇用」という補助線を引いて、女性論として他書には乏しい付加価値をつけた、と筆者。

『育休世代のジレンマ』から生まれた「マミートラック」分析も行われており、日本型雇用システムがわかっていないと、育休時代のジレンマに悩む総合職女性が増えるままだよ、と警告します。

欠員補充としてジョブの穴埋めをする社会感覚がジョブ型社会。日本は、会社と社員の婚姻関係であり、日本はメンバーシップ型社会です。そして、日本の賃金は家族賃金論です。生活保障を大前提とする賃金体系なので、「お父さんがこれくらいの給料なら、女房子供も養えるだろう」というのが給料の基準です。

意外なことに、その昔、そんな考えが労働組合が賃金要求活動に理論的根拠を与えるものとして、多くの組合に受け入れられ、支持されたという文章に出くわします。

労働再生産は、労働者がずっと働き続けられる程度の生活がギリギリできるお金の程度。賃金は労働者が行う量と質に応じて支払うというのは、マル経からしたら間違っています。マル経では労働力の価値分割があって、女性が労働力化すると、労働力の価値が下がります。介護とかそうですよね?賃金は、労働の価値ではなく、労働力の価格であるというマル経の考え方は、この生活給のロジックを超えて、日本社会で支配的なメンバーシップ型労働社会のあり方と密接な論理的因果関係を有しています。

今は知的熟練論が盛んです。しかし、本流に「女房子どもを支える生活給思想」が根強く残っています。もともと賃金は本人及び家族の生活が成り立つ水準でなければならないことは、アダム・スミスが唱えたことで、こうした限界効用理論に立つ世帯賃金論、賃金生存説にしても忘れ去られ、個人別賃金論が制覇し始めています。

そして出てくるのが「どこもみんな苦しいんだから」です。これが進めば、労働力の生産・再生産の基礎となる家族が解体されるから、労働力供給は先細りとなります。こうしてパラサイトシングルや晩婚化によって少子化となります。

だから、若者に元気がどうのこうのっていう問題じゃない構造が浮かび上がってきます。日本では仕事に値段がつくのか、人に値段がつくのか、という賃金論の最初が無視され、職務無限定というデフォルトがそのまま生き残っている中、その見直しがなく「成果が上がってないから賃金下げる」であり、職務の定めなき成果主義強行だと指摘しています。

企業と社員の親和的関係でうまくいっていた時代はありましたが制度疲労を起こしており、専門職で生きていく女性、特に看護師がそうですが、看護師の育児休業を求めたのは、労働組合ではなく、旧厚生省です。出産育児で退職されては困るのが特定職種の人たちですので、女性の「手に職つける」志向は当然の流れだったんですね。

海老原嗣生さんの、入り口は日本型のままで35歳くらいからジョブ型に着地しては?という雇用モデルについてもコメントしています。女性という変数を加えるとどうなるのか?詳しくは本書の最後の方で。

非正規雇用について書こうとしたら文章が多くなって「この本一冊分くらいの分量が必要だった」から削ったとのこと。という事は、非正規労働者論はいつか出してくれるのかしら?待ってます。

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紙の本

大人が読んでも面白い塾の本。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

首都圏学力上位層には、鉄緑会とサピックスって当然の選択肢なんだそうです。東大医学部合格者の6割以上が鉄緑会出身、進学校の築駒の合格者の7割以上がサピックス出身って…。一番頭いい子はZ会の通信教育っていうのが私の世代です。あ、年、ばれるわ。

でも奥さん、知識詰め込みなんでしょ?って思っていたら、東大にも記述式の問題があり、ちゃんと論理構成力が必要な問題があり、一昔前の「暗記でOK」ってのは無理だとわかります。サピックスは暗記科目の社会でも、教材は親が読んでも「なぜこうなったの?」が示されていて、確かに面白い。

『歴史が面白くなる東大のディープな日本史』とか、「東大 歴史」で検索したら確かに順序だって話の流れがわかる面白い本が書店にありますもんね。

今まで、東大合格出身校ランキングみたいなのが毎年、週刊誌に出てきますが、実は学校歴×塾歴という多様性があるんだよ、って教えてくれる本です。高校進学率がアップし、教育の平等化が果たせたと思った瞬間、誰かが早歩きになっていたから、知らない間に周りのみんながいつの間にか全力疾走になっていたってのが、国民的教育競争が始まりました。

少しでも隣の子よりかはちょっと優位になりたいっていう個々のニーズの集約が世の中のニーズとなり、塾は急成長します。

塾は民間教育であり、自ら求める教育である自由がある。その意味で塾は学校教育を陰で支えるパートナーで、対立構造のものではありません。

そんな塾では、「エリートの集まり」だから「そこそこ」でも合格できるという安心感。切磋琢磨できる相手が身近にいることでモチベーションが高まる。学校とは違ったコミュニティを形成できる。学校では人間関係があるけど、塾は適度な距離が保て、純粋に学力だけの「ものさし」は楽というメリットがあります。

デメリットは、結果にコミットするスポーツジムみたいな感じなので、自分で勉強法を考える手間が省けたため、大量の課題をこなす処理能力と忍耐力だけしかいらなくなった。立身出世であるために、教育を受けたことによる利益は本人のみが享受する商取引のようになります。

「社会の成熟化が進み「正解」が多様化し常に変化する中で必要になるのは、早く「正解」に辿り着く能力ではなく、問いを問いとして抱え続ける力なのではないか。簡単には「正解」を出してしまわない胆力なのではないか。」

動的な問題、つまり、社会の変数が変わると結論が変わる問題とか、トレードオフな問題はあえて、経過を診ることも必要になります。正解やクリアカットな基準がない状態に私たちは耐性が弱くなっています。

回り道とか、無駄を極力排除したい効率至上主義を私たちは望んでいます。ランキングや順位付けは私たちの生理に関わってきます。死というリスクを極力減らしたいOSを古代から持っていましたから。特に、社会がしんどい今の時期は、その人の本性が表面化しやすいです。

「大卒プレミアムは、高いお金を投資として支払って将来高い賃金を得る資本なんだ」という考えに陰りが見え、低所得層は金銭的理由から手を引きはじめています。教育の不確実性のため、逆にがんばる親は「もっと投資したらできるんじゃね?もっと頑張ったらそこそこ行くんじゃね?」って思います。だってうちの国は再チャレンジには冷ややかな国ですから。

塾は子どものことだろ?って思っていたら、私たちの生き方、考え方に跳ね返るわけです。「子どもは親の鏡」とは、よく言ったもんですね。

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紙の本

紙の本「リベラル保守」宣言

2016/01/13 02:27

保守のマインドを通史的に読める。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

西部邁さんの雑誌『表現者』に載っていた論考が、さらに文庫本化したものです。ネットで「愛国者です」って感じでお手軽保守宣言ができる世でして「保守への敷居」が低くなったような気がします。

左翼思想というのは、人間の理性によって理想社会を作ることが可能と考える立場です。基本、人間の可能性に対する信頼があります。努力次第で完成形に到達できるという確信があります。

国家を使った平等主義の具体例が欧州の社会民主主義です。彼らの福祉国家的構想の中には、国家による平等社会の実現という設定主義的合理主義があります。政治工学を重視し、人間社会の複雑さや歴史の継続性はあんまり重視しません。

保守は、人間は絶対完璧じゃないよ、って捉えます。だから保守は「進歩」という立場を取りません。とはいえ、ノスタルジックに「復古」という立場もとりません。なぜなら、未来の人間が不完全であるのと同様に過去の人間も不完全だから。高齢化社会だし、保守は時代に応じた斬新的改革を施行する、とします。

あれですよ。老舗のラーメン屋さんで「この変わらない味がいいんだよ」みたいなことを私たちオールドファンはドヤ顔して舌鼓打っても、実は時代に応じて客層の味の好みに対して、気づかれないような感じでマイナーチェンジしてますよ的なもんです。

「決められる政治」ってのに私たちは弱く、民意は流動的で、脆弱です。だからかえって「ぶっちゃけ」って感じの切れ味もあって、毒舌な人をリーダーにしてもいいんじゃない?ってマインドになるのは、はるか昔、プラトンも指摘します。

保守派は死者の数とかを指標にする功利主義的立場を打破したい。保守にとって大事なのは、生まれた土地や伝統、そしてそこで培われた歴史的集合的価値感です。

それでも、「自分磨き」とかですね、進歩をするってのは、人間の快楽に結びついています。進歩こそが人間の普遍的衝動であり、豊かさを得てきました。設計社会があるからリスクも管理できるようなマインドにもなります。しかし、保守思想はこのようなラディカルな合理主義に対して懐疑的。

面白いのは、夢野久作の関東大震災の振り返りで、震災で下町からトポス(居場所)がなくなり、江戸っ子は、行政が用意した避難民バラックに落ち着きます。以降、東京は各地から集まった人々の様々な顔をによって構成される流動的都市空間となりました。昔は「顔」という人類最高のパスを持っていたけど、あっと言う間にそのパスが効くところがなくなりました。

そして、筆者は「取り戻すべきはトポス。中間共同体を厚くしなければならない。社会的包摂を強化し、地域における相互扶助の関係を再構築しなければいけない。」と提案するわけです。

しかし、地域にとどまったムラ社会的安心社会は流動性によって再構築はほぼ不可能ですし、進歩を重んじる私たちのマインドって結構、左派なんです。「俺らにとっての、マジの国体」って思いを馳せることはないのです。

でも、アトム化で今、セーフティネットの網目から落ち行く人もいるわけでして、中島さんの「リベラル保守」という考えは「思考の軌跡の途中経過」と記していますので、今後、どのような思索に辿り着くのか見守りたいです。保守思想が衰退しているのか?それともパイの縮小は今後も排外主義を促進するのか?

文章は読みやすく、この国の保守思想について通史的な理解ができますので、続きは是非本書を開いてみてください。

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紙の本

紙の本戦略がすべて

2016/01/08 01:53

僕はチミたちに書評を配りたい

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『僕は君たちに武器を配りたい』でビジネス書大賞受賞の作者がその考えをもとに、地方創生やオリンピック、AKBなどいろんな社会問題を分析しています。

 そもそも、そこそこの性能でいいやっていう家電は、炊飯器とかいろいろあるんですが、こうしたコモディティ化の波は、人材についても押し寄せてきています。マックジョブ化で、大勢の人が低賃金で責任が軽めの職に就き、少数の人たちがプロデューサーとなる世界。

 「大抵の学習可能なスキルは高報酬に繋がらないと私は考えている。たとえ弁護士や医師などの専門職でも同じだ。」

 その中でドラクエの話が出てくるんですよ。戦士とか、魔法使いとかジョブごとの分業システムとかキーアイテムのショートカットが存在するとか。

 それで「無意味にレベル上げに熱中する人は企業目標を無視して、自分のスタイルを追求する可能性があり、一スタッフとしては使い道もあろうが、大きな意思決定をする立場には不適格である。」と述べます。あ、これ私だわ。

 で、『僕は君たちに…』と違って「勘違いしないで欲しいのだが、わたしは起業を進めているのではない。真に大切なのは自分のポジショニングの点検と新しい仕組みというイノベーティブな発想ができるか。」と書いていて、『僕は君たちに…』だと若者向けだったので、もっと「起業してこーぜ」的なアツいものがあったんですが、ちゃんと読み手を意識した書き方になっています。
 
 瀧本さん、ええ人やわぁ。 

 そして正解の見えない世界でおススメするのが、教養なんです。で、裏をとるというスタイルでなく、逆を取る。自分の考えとは違うものをどんどん吸収しようという述べます。ディベートなんかでよく言われますね。こういうスタイル。反論のための敵情分析。

 自分の「ものさし」以外の「ものさし」をもっと見ようと。

 例えば、政策で言えば、「政策形成が霞が関限定」「財政上の制約が大きい」「内閣支持率をベンチマークにしてほどほどの政策にする」から「政策に違いがない」ように思われます。

 そんな世界だからこそ、ワンフレーズ選挙が「合理的」で、アメリカやイギリスでも似通った政策となっていて、差別化は難しく、単純化が起こっており、不合理なくらいのイメージ性や感情的なストーリー性を希求していた方がより効果的なんだそうです。

 知的アッパー層は「愚民化だぁ!」って言いますが、ワンフレーズポリティクスになるのはそれなりの理由があったわけです。 

 安倍政権の経済政策に賛成したつもりで、アベノミクス選挙に投票したら、抱き合わせ販売で「安全保障政策にも賛成」したことになっている私たち。総理が憲法解釈において「最高責任者は私だ」「私が責任をもって、そのうえで選挙で審判を受ける」というのに戸惑った人も多いんじゃないかしら?低反発枕買ったのに知らないうちに高枝切りばさみも届いてました、みたいな。高枝切りばさみ届くならちゃんと前もって言ってくれよ!って不消化感です。

 安保や経済とかいった政策には、バラ売りで支持をしたい私たちは極端な抱き合わせ販売につき合わされています。実はこの瀧本さんの考えは消費財マーケティングの考えをヒントにしているのだそうです。

 まるっきり違う分野から「こういう考えと似ている」というヒントから問題解決には至らなくても、構造が理解できるだけでもスッキリするのかもしれませんね。

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紙の本

紙の本ニッポン沈没

2015/12/10 01:13

10人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おそらく日本でもトップクラスに入るんじゃない?ってくらいの本読みの斎藤さんの書評って、辛いですね。さらに書評本の書評って、萎縮しちゃう。

 どのくらいすごいか?って言ったらですね、各トピックに3冊本が載っているんですが(斎藤さんが気に入らない本も載っているのがすごい)、もう斎藤さんの書評を読んだら3冊本を読破したっていう読後感に浸れます。

 ね?萎縮するでしょ?

 縮小したパイをめぐって私たちは、多くのトレードオフ(あちらが立てば、こちらが立たず)につき合わされています。

 中年のおじさんは「夢よ、もう一度」とパイを増やすことに集中したり、トレードオフな世界がない場所に行こうとする人、そもそもトレードオフに「もっとはっきりしろよ」と他罰的に怒る。パイが少ないのは、きっとあいつが犯人だ、と敵を設定して叩く。いずれにせよ、排外主義が先鋭化し、それを口に出したり、行動にしている事に斎藤さんは腹が立っているようです。

 斎藤さんにとって「震災、原発、安倍政権誕生」が人災です。

 特によかったのは集団的自衛権に関することで、新聞等の報道だけでこの件を理解するのはほぼ不可能で、本の何冊かを読めば議論に参加できるレベルってところです。

 とくに最近はトレードオフな問題について池上さん的な人がクリアカットに説明するので支持されているのですが、問題の門前としてはいいんだけど、なんか消化不良。とはいえ、それぞれのトピックでいい本なのか悪い本なのかを選定する時間もない、って時にものすごくいい入門書として本書はあり、専門書へと接続します。

 斎藤さんはまるで3冊(それ以上の時もありますが)の本を読みながら軽快に自分の考えを述べ、読み手に話しかけているかのような記載をします。コンパクトに3冊の本を読んだうえで自分の考えまで入れるって、すごく難しいです。

 ああ、そうか。斎藤さんの本って、書評のようでいて、実は文献を読む要約能力と鋭い書き口があるから、その問題の背景や意義を考える上質な「文献研究」みたいな香りがするのか。

 いい書評ってのは、書評した本を読みたくなる、買ってみたくなるという読み手の知的アクセルがいかに踏めたか?が評価できるポイントだと思います。実際、この本で紹介された3冊ほどは買って読んでみたくなりました。

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紙の本

学際的であり、豊富な事例紹介にあふれた本

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日常、なんとなく感じていることを、脳科学が脳活動の変化を客観的に指標化して証明する事例がたくさん載っている本です。

 怖がっている人に、愛し合っている人が手を握ってあげると、島皮質という恐怖を感じる脳部位の活動が減るとか、事例が豊富なだけなら、こんなに人気は出ない。

 面白いのは、思ってもみなかったけど、脳にはこんな機能があるのか!とか単純なようでいて、へんてこりんな作りでもあり、なんともアンバランスな脳。

 例えば、ネズミの脳の報酬系のある部分に電極を差し込んで刺激し続けると、寝食も忘れて餓死するんです。マズローっていう人がいて、人間の欲求はいろいろあるけど、ピラミッド構造で、生理的欲求とかそういうのが満たされてから、安全の欲求とか、承認欲求に行くとか言ってましたが、そんなことなかったんですね。

 でも、旧バージョンの知識がいまだに看護や福祉の教科書に載っています。薬物等のアディクションが生理的欲求よりも優先順位が高いってのは、もっとアナウンスされてもいいと思うんです。

 苦さは本来、毒物の危険信号だから、ブラックコーヒーとかビールといった苦味に対して「リスクを侵す快感」があって子どもはそういうの、わかんないけど、学習によって後天的学習ってのができるってのは、大人な私にグッとくるものがありました。

 この本で「他人の心が理解できるのはなぜ?」ってのがあって、痛みがあるからこそ、危険を察知する能力が長けて、無意識のうちに痛みを感じないように身体に過剰な負担をかけないようにします。

 ここで実験があって、3人でバレーボールのテレビゲームをやって、対戦相手は見えない状態で、トスで3人全員でボールを回し合う。で、この対戦相手の2人がグルで、この2人がコンピューターで楽しくトスしあっていたのに、突然、本人だけがのけ者にされて、コンピューターの2人間でボールをトスしあうっていう「のけ者」状態にした時、その人の脳のMRIは、痛みに反応する脳部位と同じ領域が活動したとのことです。

 だから心が痛いってのは、ホントに痛みがある。のけ者にされたくないってのは身体が損傷を受けるくらいに痛みを感知する感覚システムで、社会的な痛みってのは、ホントに痛いわけです。

 仲間からの疎外を感知するために痛みが伴う。だから家族の人から愛情たっぷりに育てられた人からしたら、無縁とか下流とかいった他人の痛みを想像して、痛覚系回路が活性化することがある。だから、池谷さんは共感の心も痛みから生まれている、とします。

 脳科学がすごく学際的な学問で、ひょっとしたら脳の分析によって、これからもっと研究が進んで、私たちの脳のクセがわかってきたら、もっとケアの場で、がんとかの社会的苦痛についても新しい知見が起こるかもしれませんね。

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紙の本

紙の本脳はこんなに悩ましい

2015/12/04 21:33

よくできた文系向けの脳科学の本。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もう「まえがき」で池谷さんが「過去の自分の本のなかで一番楽しかった」って書いています。こういうのってなかなか言えそうで言えないことです。で、対談相手が中村さんである理由は「まえがき」でちゃんと書いています。

「しゃべりすぎちゃったぁ」みたいなことを池谷さんは書いていますが、中村さんの指摘も鋭くて、一方的な専門家VS非専門家って感じの対談本じゃなかったのはよかったと思います。

ただの紙のお金に「快」の情報をつけて、価値を転移させる抽象化において、わけわからんものには値段しか価値のおける価値体系がないから、ぼろい壺を見て「あ、それ3000万円です」「どうりで、この渋みが」ってなります。

だからお金が汚いものとして社会規律として意味をなすってのは「おお、そうなのか」って思いました。性欲や食欲みたいに身体が満足したらそこで欲求は高止まりするけど、お金はそうじゃないから欲求に天井はないんですね。

逆に言ったら筋肉や皮膚の感覚や視覚をモニターできるから体の境界が自在に変わる事ができて車が運転できます。運転中の身体は車に拡張する。

進化論における「適者生存」は、キリンの首がなぜ長いの?みたいな話から入っていて頭にスッと入ってきました。人は無毛になったからこそ、その欠損に「服を着る」という進化を得ます。まさに必要は発明の母。

まさしく前頭葉の知的な脳が喜ぶ本でした。報酬系つつかれまくり。なるほど納得な実感が「安心」です。

池谷さんの高校生向けの講義を読んだ後に読んだので、「濡れたマ〇コ」ってのを、池谷さんが話しているのを見て盛大に吹きました。

大人ゆえに下世話な話が出てきます。認知構造がどうとかより、自分の生活に「脳科学ってどんくらい役立つの?」っていう地に足のついた知識を大人は求めます。

科学を一般的に噛み砕くアウトリーチ的な立場であると、上下関係ができてしまい、こうした下ネタにストッパーがかかってしまうところですが、中村さんの問いを真剣に受け止めるからこその「マ〇コ」であり、対談の本気度が伝わってきます。

文系の大人が読む脳科学の本としては、かなり間口の大きな門前書ではないでしょうか。実際、私も「べき則」についてもっと学んでみたいと思ったわけですし。

あ、これだと「バカ本」と思われたらいけないので、いい事を1個だけ拝借しておきます。チンパンジーは未来の予測能力は低いんだそうです。だから未来の自分に期待しない。そのかわり「絶望」から解放されます。

私が生まれてこの方、「未来は明るい」なんて一切なかったです。中村さんは自身の人生を振り返って、公害問題もあり、そうした実感はごく短い期間でしかなかったと言います。

なんとなく私も「今は乱世」とか不安をかきたてるニュースに煽られながらの人生でした。ま、だからこそ、そこにビジネスチャンスがあるんですが。

「明るい未来」なんてないかもしれないけど、あまりおおきな「絶望」をしなくてもいいのが今の世の中ってのを本から感じ取る事ができました。

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紙の本

紙の本バーナード嬢曰く。

2015/09/28 22:20

読むと2,30冊読破したっぽい雰囲気になる。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

見る人によっては「あるある」っていう人や、読書苦手な人は「こういうもんなんだ」っていう世界。
 
 「説教されている気分になるところにカジュアルな態度で本と向き合う読書マンガがあっていい」と作者。

 読書せずして読んだ雰囲気重視という主人公のスタイルは、読書家ならではの「上から目線」、時には「通」ぶりたい虚栄や本音を指摘しています。

 で、最後に参考文献見たら、すげー勉強量なんですね。ホントに本が好きっていう熱意・愛情が伝わります。

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紙の本

お前誰だよ的表紙。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前巻よりも、ちょいギャグが多めだから安心しました。お金にガメつくて声が大きい人が活躍しています。ヅラがタイマンしてます。声が大きい人とヅラのお話から、リーダー論がちょこっと入っています。

まぁ、難しい事はよくわかねーけど、簡潔に言うとですね、陸奥ちゃんかわいい。

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紙の本

『翔んで埼玉』の時代的考察

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この本のおまけマンガで「埼玉県についての風土記的考察」っていうのがあったので、それをモジってみました。

本書はいわゆる「埼玉叩き本」で、埼玉の描写がとても江戸時代のような極端な描き方になっています。初出が1982~83年。著者の大ヒット作『パタリロ!』がアニメ化されたのが82年です。

作品の感想は他の書評におまかせします。ここで話すのは、なんであんなにも「ど田舎差別ネタ描写なのか?」です。今、こういう描写で世の中に出したら炎上確定です。

80年代は高速道路や新幹線ができて流動性が高まる過程のまだ「地方と都市」が均質化されていない時代でした。

ツービートはブスと田舎者の悪口を言い、あんまりよくわからない「地方」のことを笑える時代だったのですが、「埼玉に海がない」とか、埼玉県民がリアルに気にしているネタは言わずに地方独特の話し方を誇張してみたり、地方の世界を極端な描写にして、第三者が見ても「いや、そこまでひどくはないのは知っているし、パロディだよね」という誇張による担保があって地方の悪口が成り立っていたんです。

敗戦からコンプレックスの固まりで戦ってきたけど、気づいた時には「ジャパンアズナンバーワン」ともてはやされ、それなりの「ふるまい」として見栄を張るようになった80年代。『金魂巻』の「まる金」「まるビ」という「貧乏」がギャグとして受け入れられていました。

「東京対地方」において、日本はパリコレに進出し、若い人たちは自分のファッションに自信を持ち、豊かで平等な社会という印象があって、土建国家的資本が地方に流入し、余滴が中央から地方に分配される時代。流動性が今みたいに高くないがゆえに「周辺としての地方」がありました。均質的なものから個性が尊ばれ、東京から風土や歴史がノイズとして消去され、個性的な周辺としての「地方」に魅力があった時代。豊かになるという総中流の同一性だからこそ「大衆」というのを嫌い「ダサい」「イモ」という差異をかえって欲しがっていた時代だったわけです。

今「貧乏ディスり」っていうのがギャグにならないのは、パイの縮小があって、貧しいことがリアルになり、今の貧困が特定の属性を持つ人たちに集中して発生していて、それは都会や地方という住む場所という「属性」に限らなくなってきたから、と考えられます。

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紙の本

紙の本10年後破綻する人、幸福な人

2016/03/03 09:46

国家リスクと個人リスクは切り離せるか?

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荻原さんがもし保険の外交員だったら、もうその保険商品買っちゃう、みたいな話の理路整然とした、しかも枝葉で「こうしたほうがいいよ」と背中をそっと叩く筆致ってのがあります。

お金の価値が下がってモノの価値が上がるという日銀の金融政策の「読み」どおりになっていません。「給料も上がっていないのにモノを買う訳ないじゃん!」という本音の部分が私たちにはあって、それを荻原さんが代弁してくれています。

政府は東証一部上場企業の多くが賃上げしたとPRしました。しかし、アンケートに答えた企業で賃上げしていない企業はけしからんから企業名を公表するとか言ったものだから約半数がアンケートに答えず、大企業で賃上げは2割程度という見立てをあげ、そもそも会社務めの人の7割が中小企業務めなので実感がないという本音を序盤の30ページで説き「なるほど、もっと読んでみたい」という気にさせます。

マイナンバーは税金徴取をもっと確実にするための方法でデメリットの方が多く、小規模経営のところではセキュリティシステムにかけるコストもかかりますが、消費停滞がありながら、国家財政を増やして破たんリスクを減らす「良い面」も指摘しています。なお、2017年4月の消費税が10%へのアップというのが景気弾力条項がないから上がるのは確実とされており、これは知らなかったので、びっくりしました。

平成バブルと東京オリンピックバブルの違いは、平成バブルは日銀の金融緩和でしたが、個人と企業が中心に回していまして、今回のオリンピックバブルは先行き不透明感があって、官が頑張って膨らませるバブルなのだそうです。

オリンピック後は悲観的な見方です。給料が多少上がっても、それ以上に物価や税金、社会保険料の負担増、グローバル化の進展が理由です。そのために、老後資金より、ローンなどの借金返済を先にした方がいいと考えます。

年金については、「保険料上げる」「支給額下げる」「支給年齢上げる」の方法を維持すれば形式上は100年安心なのですが、積立に移行したくてもできない台所事情があり、不安定な耐震偽装の中古住宅なので、騙し騙し住み続けるほかないとのこと。

なんと本書では、マクロ経済スライドから考えた各年齢別の年金支給額や年金支給を希望したら60歳でも70歳でももらえますが、その「損益分岐点」が記載されています。それもハッキリと。

介護離職については、介護でかかる費用より、フィットネスクラブの方が安上がりかもしれないと述べ、荻原さんは介護オバケに不安がるよりも、介護ロボットなど、10年後の介護状況は個人の予防や努力で改善できる余地はまだあるんじゃないの?と冷静になることをすすめています。

極端な事は述べず、気になることのメリットやデメリットを丁寧に説明してくれています。それでいて切れ味がいい文章。テレビで登用される理由も、なるほどですね。

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紙の本

被災地外からの勝手な忖度にならないために

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「東日本大震災からあなたが学んだことを具体的にいくつ挙げられますか?」5年経ち、やはり私たちは根底では、あの映像で驚いただけにとどまっていないでしょうか?と筆者の金菱さんは問いかけます。

もともと震災に関する本は、開沼博さんの仕事が丁寧で、震災本はこれだけでいいやって思っていたのですが、筆者の金菱さんは東北の大学の教授なのでつい、買いました。よかったです。この本。

どういう本かと言うと、災害を文化的現象、社会的現象として取り出して、人間社会ってどうなのさ?と考える本です。

だから震災の規模がどうこうっていうよりも、復興のロードマップで何が起こっているのか、急性期の対応とかその後は、東北に住まない人たちにとってどうなのか?っていうところを書いてくれています。

心のケアについては、痛みを除去するよりも、被災者自らが記録を書いたりし、痛みを温存する考え、また、個人が癒されるよりも、コミュニティの互助機能を生かした方が自然という考えは「なるほど」でした。

なかでも独居になるとアルコール依存になるという「常識」が私たちにはありますが、あえて飲みたくなる気持ちを阻害せず、会を開いて、飲み過ぎないようにするという柔軟性が紹介されています。

共同飲食して相互扶助関係が生まれたり、まさにその人「のみ」の経験を尊重する関わりが紹介されています。私たちだってヤケになったら放っておいてほしいとか、ありますよね?

「被災者だから」というラベリングにおいて特別にケアしないといけないという負担を私たちは感じてしまいますが、衝撃的な経験を持った人たちゆえに、被災者以外の「世間」がウチであり、ソトの人として考えようとしてしまいますが、もともと同じ人間だという事に気づけば…ということにページをめくっていくうちに気づかされたんです。

津波にさらわれ、行方不明の括弧つきの「死者」をどのように受け止める過程を経るのか?という霊性にまで話が及んでいます。でもいろんなテーマに触れつつも、読後感はそんなに雑多な印象は残りません。

亡くなった命は戻りません。しかし、阪神淡路大震災があったから、復興住宅で孤独死が増えた、そしてボランティア元年という教訓を得て、今回の東日本大震災に活かされた「教訓」だってあるはず。

あとがきで金菱さんはこう述べています。

「他者の悲劇にそのときは共感するものの、あとは忘れてしまうようであってはならない。「あなたの尊い犠牲があって教えてもらったものが役に立っている」と伝えることのほうが、どれだけ価値があるかを、今の私たちは知っている。」

新書サイズですが、まるで被災地の方々が「俺たちの思いは、ホントはこうなんだ。」と本の紙から聞こえてきそうな中身の濃い一冊です。ここまで読んで「引っ掛かり」を感じた方は、ぜひ本書を。

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紙の本

紙の本名作うしろ読みプレミアム

2016/02/21 23:05

次は味噌ラーメンをお願いします。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『名作うしろ読み』の姉妹版です。ラストの一文から書評するスタイルです。で「プレミアム」って何がプレミアムかと申しますと、海外文学やSFにまで食指を広げたもので、前著が「あっさり醤油味」、本作が「こってり豚骨味・トッピング全部のせ」だと、「はじめに」で書かれています。

ほんまかいな、って感じで読んでみました。ほんまでした。

まさか童話にまで食指が及んでいるとは。特に、ゾラの『居酒屋』、斎藤隆介『ベロ出しチョンマ』は知らなかった作品ですが、みずみずしいタッチの書評に触れ、今度、読んでみたいと思いました。いい書評っていかに「読んでみたい」というスイッチが入るか?っていう基準で考えるなら、斎藤さんの書評は本当に面白いですね。

日本三大奇書や歴史小説にも解説があったので、ビックリしました。斎藤さんの『モダンガール論』を読んだ時に「この御仁はフェミニストの方かしらん?」って思い込んでいたので、おっさんしか読まないような本にまで解説が及んでいるとは思ってもおらず、最後の方には電話帳が出てくるんじゃないか?ってくらいの守備範囲の広さです。

「フィニッシュをピタッと決めるだけが「いい終わり方」とは限らないのだ。」

この本のラストの一文がこれです。『名作うしろ読み』では、こういう自著のつっこみあるだろうなぁってことで作者が解説していているのですが、今回はなかったです。しかし、ラストに目を凝らし、物語を吟味し直すと新たな作品の解釈や発見につながるとしています。

男くさい時代小説まで読みこんでいるっていう姿勢。私たちは「このジャンルは嫌いだから読まない」って考えがちです。しかし、このジャンルがつまらないという決めつけは排外主義です。その点、斎藤さんの書評は切れ味はすごく良いけど、切る素材は問わない「トマトもまな板も切れますよ」っていう包丁なので、それがまた小気味いいんでしょうね。

文学嫌いの私は『名作うしろ読み』でちょっと文学部系な本が多くてギャフン!って言っちゃったのですが、この本はどのページから読んでも、楽しめるトッピングの充実さだと思います。

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紙の本

冷徹な一撃か、若者への檄文か

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「反安保のデモ、盛り上がってるなぁ」って感じていて、最近じゃ「民主主義の危機が!」みたいな書籍が多くなりました。しかし、日常生活を送っていて、あんまりピンときません。アベノミクスに賛成していたけど、安保にも賛成票を投じた「抱き合わせ販売」みたいな部分で、なんともなぁって考えておりました。

原発や安保に反対するデモは多くの人を巻き込みました。週末なんかに時間を作って参加するほど、デモは敷居が低くなりました。なんか時代が動いているのか?って感じですが、しかしその上のフェーズを考えたら、リベラルの弱さが露呈します。

安倍政権に原発や安保の撤回をせまるカードをリベラルが持っていないんです。大正初期のデモの成功は、その7年前のデモが暴徒化し、日比谷焼打ち事件があった印象があったとしています。言論の不自由さがあった時代です。

今は、デモへの参加への抵抗感が薄まっていますが、権力の側からしたら逮捕者を10名ほど出したら蜘蛛の子のように散っていくと分析し、自公は3割が組織票で、10万人のデモで潜在的に多めに見積もって2000万の声があっても、3000万の組織票には届かないリアルがあります。

自主的でクリーンなイメージのあるデモの前に「人命」を盾にデモ礼賛をされたら私たちは何も言えません。私たちは仕事があるので、立場のない人は気軽にデモに参加できますが、その身軽さゆえに政治的結集という部分には結びついていません。

ということで、知識人には次のフェーズに向かうには組織化や交通整理が必要です。しかしリベラルはデモ当事者を持ち上げますが、次のステップが見えてこないので、政策担当側に足元を見られ、彼らの票がなくとも勝てる算段がついているので、譲歩の「じ」の字も出てこないのが現実です。

リベラル論客はリアルな勝ち負けよりもデモという行為自体に自分の考えを照らし合わせ、脳内バーチャルで満足しちゃっていると論考します。彼らにとっての民主主義が宗教として他者を想定しない世界なら、なるほどです。

反原発やデモにおいても、どこまでの譲歩が可能か?という優先順位が外からだと見えてこないし、ここを突き詰めるとデモ参加者の敷居が高くなるというジレンマがあります。

とはいえ、浅羽さんは、反戦を考えるなら大東亜戦争じゃなくて、国際世論におさえて日本も参加したシベリア出兵とかフォークランド紛争から戦争を捉えなおしてみては?と問いかけ、単なる「リベラルディスり本」じゃないバランスのよさが垣間見られます。

政策は結局、未来という不確定要素を変数に抱えるから知的分析が限界になったら、あとは「賭け」になっちゃうけど、私たちはどこまでを容認できるか?が鍵になると思われます。反戦や反安保は弱者という立場上、責任を問われることがないいわば「安全区域」にいるのですが、現実には、世論調査では原発を関心のある政策課題と考える人は8%にも満ちません。

どんな言葉、どんな立ち振る舞いでリベラルは脳内バーチャルにとどまらない現実世界での道しるべを見出すか。カジュアルなデモから見えたのは、全国規模で見たら、募金をお願いしている若者を通り過ぎる圧倒的多数の通行人の多さなのかもしれません。

リベラルにとって耳の痛いお話ですが、避けては通れない問題ですので、逆に考えたら、闘争の参考書としてリベラルにとっても良書だと言えます。

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紙の本

生き残るって、難しいね。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、マンガ「暗殺教室」から教育や身体の使い方、はたまた戦争責任なテーマを交え闊達に対談しています。「暗殺教室」ってまた、セレクトがいいですね。内田氏は「ワンピース」の派生本のあとがきも書いているからマンガにも強い。

教育はシステムであり、秩序と安定が前提ですので、安定した社会となりました。腐ったミカンがいた時期もありましたが、公的装置で排除してきた。でもフレンドリーに「お前のことを思って言っているんだから」という「ものわかり」よさげな態度をベースにした支配は、きゅうくつなものです。

今、そういう人って会社でもいますもんね。

で、スポーツのように身体能力を測るものさしが、数値化されて単一であるのですが、本当の勝敗は「生き残ること」であり、親も社会もクリアカットな格付けを求めます。私の年代だったらドラゴンボール的な成長のインフレ化を青少年期に目の当たりにし、その社会パターンが身に染みているけど、「暗殺教室」のみならず、最近のアニメはセカイ系とか新たな枠ができています。

これまで内田氏の身体論の本を複数読んできたのですが、読後感はちょっと「もやもや」していたものがあって、正直あまりピンとこなかったのです。でも光岡氏のお話でそれが氷解しました。

本の中にの米俵、1俵あたり60キロを背負う女性の写真が出てきます。で、1俵60キロの根拠は明治当時「誰にとっても肩に担げる持ち運びやすい重さが60キロ」という理屈でして「なんじゃぁそりゃぁ!」ですよ。だってその写真の女性2人はですね、それぞれ5俵担いでいるんですよ。(43ページ)

もうね、この写真見ただけで、購入金額のもと、とれましたわ。田植えとか、薪割りとか、中腰で作業する足腰の強さが根本的な身体能力として備わっており、まわりの人がそうだったから自然とそうなったという身体観の常識が昔はあった。ビジュアルにズドンときましたわ。

そういや、職場でですね、古武術介護ってのをやってみたんですよ。感想としては、「うーん、役には立つけど思ったほどの驚きじゃないなぁ」でして、腰痛を自覚する時だけ意識的に古武術介護で自己の身体に負荷をかけない程度に実践していました。

でも、たった160年前の、生活習慣に裏打ちされた身体の基礎と今の私たちのあまりに違い過ぎ、まず身体がスタート地点で立っていなかったから、私が古武術介護を使おうとしても、それは現在の感覚、身体観で使っており、便利を求める心理があったわけです。「今日は体の調子いいから、じゃぁ、ちょっと300キロ担いでみようか?」って気になりませんもん。技術どうこうよりも、まず、過去の身体観と今の私の身体は完全に分断されたものなんだ、ってことを自覚しました。

「暗殺教室」を媒介として争いや師を超えること、共生とは?という完全管理社会下で、ふわふわした自己の身体・生命という疑問に応じる本になっています。

上記の写真を見るだけでも、ぜひ。

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