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つばめさんのレビュー一覧

投稿者:つばめ

308 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

特定企業への忖度?!

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著者は流通および物流の研究を行う大学教授である。物流における2024年問題・産業と物流の相関史・ロボット化の現状・災害と物流・SDGsに配慮した物流の在り方が本書の内容であり、広範な物流問題についての知見を得ることができる。ただし、トヨタ自動車に代表されるジャストインシステムと物流の関係については、少々突っ込み不足と感じた。以下、その理由を記す。
<本書解説の概要>
◆ジャストインシステム(JIT)は、世界に誇る日本の自動車メーカー・トヨタ自動車によって考案された秀逸な生産システムである。◆JITは必要な部品を、必要な時に、必要な量だけ取りに行き、必要な数だけ自動車をつくる方法である。これにより、過剰在庫や不良在庫を抱えるリスクがほぼなくなる。◆光には影がある。道路渋滞により、届くはずの部品が定時に届かなかったゆえに、生産ライン自体が停止したことがある。◆コンビニ・チェーンで、店内在庫を最小化するため、納入業者に小口多頻度配送を要求していた。この結果、納入業者の人件費や燃料費の負担が増え、なおかつ配送車両の放出する排気ガスで環境悪化の問題を引き起こした。
<突っ込み不足と感じた理由>
この影は、自動車メーカーの自業自得であり、解説すべきは、この生産システムにより多頻度かつ定時に部品輸送を行わなければならない輸送業者に多大の負担がかかる,物流問題について言及すべきであろう。この課題について、自動車メーカーをスルーして、コンビニ・チェーンの小口多頻度配送による問題にすり替えている。もちろん、コンビニの多頻度輸送も問題ではあるが・・・。大学教授の著作にしては、「世界に誇る・・・トヨタ自動車」、「秀逸な生産システム」など特定企業に阿た記述が散見されるとともに、JITに関する物流問題について、正面から切り込んでいない点が残念である。
<物流の時間厳守に関連して>
JR西日本福知山線の脱線大惨事についての背景として、阪急電鉄への対抗上、なんと秒単位での定刻運行を目標にしていたとの解説がある。いかにも、JR西日本が特別なことをしていたような書きぶりであるが、10秒ないし15秒単位で列車ダイヤを作成し運行しているのは、日本の鉄道各社では当たり前のことである。

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紙の本

紙の本歴史としての二十世紀

2024/04/14 20:59

知的巨人の30年以上前の講演録

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「本書は、国際政治学者で京都大学教授であった高坂正堯が1990年に行った全六回の連続講演の記録を活字化して刊行されたものである。「流麗な柔らかな文章で、二十世紀を概観する。そのようなスケールの大きな知的な作業は、高坂のような知的巨人でなければとうてい不可能であろう」という趣旨のことを本書の「はじめに」で細谷雄一慶応大学教授が記している。文章は平易であるが、凡人にとっては、そのすべてを理解することは難解であった。凡人が特に印象に残った内容を次に紹介する。◆国際政治で敵か味方か不明な場合、最善の方法は仲間にすること。十九世紀の英外務大臣カースルレーは、「イギリスにとって最大の脅威はロシアである。だから、仲間にして取り込んでおとなしくさせるのがいい」と発言。フランスが率先した欧州統合も同じ発想で、ドイツをグループ内でおとなしくさせようとする外交的知恵。◆歴史上の大事件で我々の生活に大きな影響を与えた事柄であっても、その原因はわからないことが多く、人間が知り得る歴史的教訓は意外と限られている。◆アメリカの禁酒法制定の過程をみると、人間は理想に酔うと何も見えなくなる。◆歴史上、物不足の主因は人々の買いだめで、絶対量の不足からということは滅多にない。第二世界大戦後、欧州救済のため物資を提供したマーシャル・プランが成功した理由も、ヨーロッパ人が隠匿していた物資が流出したため。◆政治は未来の力ではなく現在の力を反映する。国の前途と運命に配慮すれば、現状よりも将来性にかけるしかないが、政府にそのような大胆な選択はできない。◆政治家の良し悪しを判断する基準、「税金を取ります」と言う政治家はいい政治家、「税金を取りません」という政治家はまやかし。
一方で、講演から30年以上が経過した現時点からみると、次に示すように、いささか「?」と思う内容もある。◆「アメリカの繁栄も永遠には続かず、その絶頂期はどうも早く終わりすぎたようである」との記述がある。アメリカのIT産業の隆盛をみるまでもなく、果たしてそうであろうか?◆「ゴルバチョフが来日を一番後回しにしたのは、日本への最大の敬意である。ソ連にとって、こんなに御しにくい国はない。ソ連は日本の経済協力に期待しているが、日本のビジネスマンや銀行はしっかりしているから、その期待には応えないだろう。下手すると北方領土を返してくれるだけの話になる」との趣旨の記述がある。これも、その後の展開をみると残念と言うしかない。
知的巨人の思考回路にふれられるとともに、たとえ知的巨人であっても将来を予測することの難しさも実感させてくれる一冊であった。

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紙の本

紙の本鉄道文学傑作選

2024/03/24 21:15

目利きの選とは

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本書は、17の詩歌・小説などの全編または抄録とそれについての編者の解説から構成されている。編者は、『寝台急行「昭和」行』、『汽車旅放浪記』といった鉄道関連の著作も出している小説家である。鉄道に目利きのある小説家が鉄道関連の文学を選定、どのような文学が選ばれているかも本書の注目点である。小説家のプライドからか、この文学が鉄道と関連しているのかと、凡人には理解しがたい「選」もあるが、文学的視野を広めるための一冊と思えば・・・。終戦の日、宮脇俊三が汽車が時刻どおり運転していることに感動する米坂線今泉駅でのシーンは有名である。吉村昭著「電車、列車のこと」でも夜間空襲の翌日、山手線の電車が定刻で動いているのを目にして感動する場面があることを本書で知った。以下、編者の解説についての感想を二点ほど。◆地味な小湊鉄道をえがいた、おそらく唯一の小説であると編者が指摘している上林暁著「鄙の長路」で、電車があまりにも混むので、途中下車して次を待つ場面がある。駅員が次は気動車だから、ずっと楽だと話しかけるのだが、小湊鉄道は非電化ですべて気動車のはずだが?鉄道に造詣の深い編者の解説を楽しみにしたが、これについての解説はなかった。◆多くの鉄道紀行を執筆している宮脇俊三の作品から、編者が「循環急行と只見線全通の日」を選んだ理由も是非知りたいが、それには触れられていない。

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紙の本

簡易軌道(殖民軌道)の全貌がわかる

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著者は釧路市立博物館の学芸員と、乳業会社勤務の傍ら簡易軌道が生乳輸送に果たした役割について調査を続けているサラリーマンである。本書は大正時代末期から昭和40年代にかけて、北海道の道東や道北を中心に存在した25の簡易軌道についての解説書である。写真・地図を交えて、その歴史、構造物、車両、運行状況などについて取りまとめられた内容は、一読の価値があると思う。廃止時期さえ明確になっていない簡易軌道もあることからも、簡易軌道に関する公文書の管理状況は推して知るべしである。こうした中、各所に散在する資料を見つけ出し、資料調査や現地踏査に多くの時間と労力を割いた労作であり、一読をお勧めする。その内容の一部を以下に紹介する。◆北海道の簡易軌道のトンネルは歌登村営軌道の1箇所のみ。◆当初、馬牽引の別海村の簡易軌道では、1行程で2日を要した。◆当初、馬牽引の鶴居村の簡易軌道では、夜行も存在。◆鶴居村の簡易軌道は、雄別鉄道と立体交差。◆簡易軌道の機関車は4両が保存されており、鶴居村簡易軌道のディーゼル機関車は、丸瀬布森林公園で動態保存。
欲を言えば、以下の点についての解説があれば、一層価値ある一冊になると思う。◆車両については、製造メーカーが随所で明記されている。一方、レールについては、9k、10k、12kなど通常の鉄道では使用しない軽量レールを使用していたと解説があるが、このメーカーについての記述がない。この特殊なレールを製造していたのは、どこだろうか?◆極寒の北海道、冬の暖房はどのような設備であったのだろうか?一部の簡易軌道についての解説に留まっている。◆一部の簡易軌道では、年間の貨物輸送トン数が明示されているが、貨物の重量の計量はどのように行っていたのだろうか?計量設備が整っていたとも思えぬが。
鉄桁をガーターと記載しているが、これはガーダーが正しい。濁点あり・なしでは、意味が全く異なる。

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紙の本

機械工学の門外漢には少々難解であるが・・・

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著者は鉄道車両のディーゼル機関、液体変速機の製造メーカーでディーゼルエンジンを含め各種機械の設計に従事してきた技術者である。本書では、ディーゼル車に対する従来の評価と異なる著者の見解が随所に見られ、興味深く読み進めることができた。ただし、機械工学の門外漢の一般人には、本書の内容を100%理解するのは、少々困難ではないかと思う。
その内容の一部を以下に紹介する。◆革新機構満載のキハ181系は、運転当初、エンジントラブル多発とされているが、実際には変速機の不調が60%以上。◆列車の運転方向を変える場合に使用するキハ181系の逆転機の不具合が、しばしば発生したようである。これが、運転途中で方向転換を必要とする、「ひだ」、「くろしお」に181系が投入されなかった理由ではないか。◆福島・米沢間の急勾配でのキハ181系のトラブルは、屋根上放熱器の放熱能力に問題があってオーバーヒートを起こしたとされているが、放熱器の能力に問題はない。不調の原因は、排気温度が高いことにあったと推定。排気管の口径が大出力エンジンの排気ガス量に見合っていないため、ピストン・シリンダに排気ガスが残り、燃焼不良を起こし、燃料消費量が増え、結果として排気温度が上がる。つまり出力不足となる。◆キハ40系は出力が低い割に車両重量が重く、鈍重といわれるが、故障しないエンジン・変速機に改良した結果、長寿命となった。
JR以降に採用された高出力エンジンやハイブリッド車両についての著者の見解を続編として、期待したい。

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紙の本長篠合戦 鉄砲戦の虚像と実像

2024/01/29 20:38

歴史通向き

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著者は東京大学史料編纂所教授である。一般人向けの日本史に関連する著作を多く出版している本郷和人教授の同僚であるらしい。馬防柵と鉄砲の交代射撃(いわゆる、三段撃ち)により織田・徳川軍が武田軍騎馬隊を撃退したといわれている長篠合戦。鉄砲の交代射撃は、後世の軍記が創作した虚構であるとの指摘が早くからなされており、この戦術は現在ではほぼ否定されるに至っている。この鮮烈なイメージがどのように形作られてきたのかを様々な関連史料や絵画史料(合戦図屏風)を検証し、決戦の実像に迫るというのが、本書の趣旨である。様々な史料に基づく詳細な記述は、歴史通には興味深いだろうが、一般人には少々読みづらいのではないだろうか。終章の「刷新された長篠合戦像」で、おびただしい鉄砲が使われたとの記述はあるが、三段撃ちについては何の記述もない。やや消化不良の終章に思えた。因みに本郷和人教授著作の『徳川家康という人』では、長篠合戦について、次のように論じている。<「三段撃ち」があったかなかったかとは、歴史を見る上でどうでもいいことだと思います。…歴史として大切なのは、ここで野戦築城が導入され、戦場に大量の鉄砲が投入され、火力で武田を圧倒した事実。それでいいと思います。そういう戦いだった。>

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JRの今を知ることができる

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「読売新聞」に2022年7月から2023年6月まで連載された「JR考」を基に、大幅に加筆、改題されたのが本書である。本書のメインテーマは、「都会の稼ぎで地方を支える」構図を維持できなくなりつつあるJRが採算性と公共性のはざまで、どこへ向かおうとしているのか、にあり、国鉄時代からの様々な事例を引き合いに、話題は展開されている。メインテーマとは関係のない話題も多いが、それも今のJRを知るうえで貴重な内容である。その一部を以下に紹介する。◆国鉄民営化の時点で債務は37兆円、国が25.5兆円を引き継ぎ、このうち13.8兆円が国民負担に回された。政府がことあるごとに、クギを刺す、JRのアキレス腱となっている。2020年時点で国民が負担している国鉄の巨額債務は15.9兆円。政府は税金を投じたり赤字国債を発行して毎年返済。完済は2058年の予定。◆JRのロゴマークは一筆書き、「経営が分割されても鉄路は全国で一つに繋がっている」とのメッセージが込められ、100を超える図案から選ばれた。◆JR北海道・四国の経営は厳しく、JR北海道では会長・社長の専用車はなく、列車通勤。東京出張時の移動にタクシー利用なし。◆JR東日本の2022年9月中間決算は、3年ぶりの黒字。Suicaの入金残高の一部を会計手法の変更により利益に計上、従来通りの算定であれば、運輸事業は50億円の赤字。◆交通決済で米クレジットカード「Visa」の「タッチ決済」が急速に普及している。タッチ決済は、交通系ICカードに比べ導入や運用のコストが1/6と大幅に低く抑えられる。◆JR各社はレールを鉄鋼メーカーから購入しているが、JR東日本が代表して価格交渉を実施。
番外編として、福知山線の大事故以来、公の場に出ていない井手正敬 元JR西日本会長のインタビューがある。JR西日本が、JR四国や九州に「一緒になろう」と水面下で声をかけた話題など興味深い内容である。

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紙の本鉄道ほとんど不要論

2024/01/02 16:45

鉄道に冷たい意見

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著者は国鉄、JR東日本勤務を経て、今は大学教授である。モータリゼーションの進展と飛行機利用の大衆化で、鉄道はほとんど不要になったが、幸いなことに世界でも稀な人口集積のおかげで、他の輸送手段では対応できない「すき間」が日本にはまだ多く残っている。この「すき間」に限られた資源を集中し、鉄道が日本経済にとって意義ある存在であり続けるには、どうしたらよいか。この問いに対する著者の見解が、本書の内容である。経済学者らしく、データに基づく解説や国鉄民営分割化に伴う国鉄エリート幹部の心情など多岐に亘る内容である。その一部を紹介する。◆国の行き当たりばったりの鉄道政策の政策で、第三セクターや首都圏通勤路線で大きな運賃格差が生じている。例えば、資金調達における優遇措置の甚だしい不公平が、首都圏にある東葉高速鉄道とTXの著しい運賃格差をもたらした。◆JR西日本の富山港線はLRT化によって、利便性が向上し、利用者も大幅に増加したローカル線再生の成功例として挙げられているが、疑問である。1980年度の富山港線の輸送密度6427人に対し、LRT化後の2018年のそれは3270人と半減である。◆輸送密度に比べて列車本数が相対的に一番多い、つまり利用者当たりの列車頻度を高い水準で維持しているJR四国の輸送量減少が、全JR旅客会社の中で最大である。◆JR貨物はビジネスとして成り立っているかのように見せかけるため、使用実態に応じた線路使用料をJR旅客会社に支払っていない。適正な線路使用料を支払っても採算が合う規模まで縮小するか、それができないならば、全面撤退すべき。◆北海道や九州の整備新幹線では、建設費のごく一部をJR北海道・九州は建設費のごく一部を負担しているに過ぎない。将来的には、大規模な維持更新投資が必要となるが、JR北海道や九州にその体力はない。◆国土交通省による背任まがいの取引を無理強いされた、結果的に本州3社は3島会社に数千億円の支援を行った。本州3社に配属された国鉄キャリアには、心ならずも4社に配属された同僚へのうしろめたさがあり、それが支援に応じた理由の一つであったと思える。◆際立って高収益である東海道新幹線を路線にもつJR東海は、経営努力とは関係なく、極端に儲かる会社となった。国民全体の観点からいえば、東海道新幹線の超過収益を国鉄債務返済財源とする制度を確立すべきであった。以上、興味深い読み応えある内容であるが、以下、若干の疑問点を記す。◆「JR貨物は日本の貨物輸送トンキロの99%を占める」との記述がある。せいぜい数%程度と思われるが? ◆JR各社、大手民鉄の列車頻度(本数/日)の算定根拠が不明である。例えばJR東日本95本/日とあるが、ローカル線も多いが、首都圏の大量輸送を担うJR東日本の列車頻度は、この程度であろうか?

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紙の本0系新幹線運転台日記

2023/12/30 15:07

新幹線運転士の体験記

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著者は1969年に国鉄に就職、東海道新幹線の運転士を務めた。本書は、著者が業務上体験したエピソードを取りまとめた読み物である。以下、その一部を紹介する。◆車内販売の女性が運転台に立ち寄り、運転手へのドリンクサービスがあった。◆春になると、蜜蜂が運転台窓ガラスにプチプチと音をたてて当たり、蜂蜜で窓ガラスが汚れる。◆新幹線運転士は、新幹線通勤が可能であり、静岡や名古屋から東京まで通勤していた例もあった。0系新幹線には、先頭車に運転台以外に乗務員室があり、通勤の運転士が利用。乗務員室が満室の場合、先頭部の運転室前の「ボンネット室」に入ることもあり、折り畳み椅子に腰かけての通勤となった。◆東京~新大阪間、ひかりの所要時分が3時間10分の時代、10分程度の余裕時分があったらしい。この余裕時分を活用し、熱海の花火大会の時、正規の熱海の通過速度160kmを30kmまで速度を落とし、乗客に花火見物のサービスを提供。名古屋には定時に到着させたベテラン運転士もいた。◆国鉄時代のひかりは、運転士が2名乗務、途中で交代しながら、東京~新大阪を運転。このため、運転しない時間に食堂車から弁当を取り寄せ、運転台で食事をとった。◆素晴らしい接客に感動し、乗客から300通以上のお礼状をもらった車掌もいた。その車掌は、退職後、地元の小中学校の道徳授業の講師として活躍。
様々なエピソードは、楽しく読み進めることができる。一方で、運転士のみが体験し知り得る車両特性や定時運転を行う上での創意工夫等を知りたいと思っている読者には、若干不満が残るかもしれない。

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紙の本

機関助士時代の話題が中心

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著者は1964年に国鉄に就職、その後34年にわたり旅客列車、貨物列車の電気機関士を務めた。本書は、著者が機関士を目指し、1970年代のブルートレインや貨物列車を牽引するEF58、EF65、EF66に機関助士として乗務した奮闘記である。その一部を次に紹介する。◆少々乱暴に連結しても壊れない貨物列車に対して、客車と同じ構造の荷物列車は、連結時の当たりが強いと必ずトイレの便器が割れてしまった。◆機関助士になると、最短1カ月、最長3カ月、同じ機関士と同乗する勤務であった。気難しい機関士と同乗すると最悪で、2カ月間、ろくすっぽ口を利いてくれなかったこともあった。◆国鉄時代、機関士の免許証はなかった。機関士の試験に合格、機関助士から昇格した際の発令通知が免許証となる。これ以外にも東海道線沿線の小学生との心温まる交流など、国鉄時代の雰囲気が垣間見られる一冊であるが、機関助士時代の内容であるため、機関車の性能や運転特性等、機関士のみが知り得る情報に期待する読者には、少々期待外れかと思われる。また、EF66について、「車両建築限界一杯まで車体が大きくなり」との解説がある。「車両建築限界」は、「車両限界」が正しい。鉄道では、「車両限界」と「建築限界」が定められており、「車両建築限界」なるものはない。本書の最初で、<全国紙が大井川鐡道井川線のアプト式区間を走る列車を「アプト式電車」と説明していたのである。・・・アプト式の電気機関車が客車を引っ張っているのである。「アプト式電車」なるものはない。はたまた、名のある写真家が、非電化区間を走るディーゼルカーを「電車」と説明していたりすると、かつての鉄道人としては厳重に抗議したくなるのである。>と鉄道人としてのプライドを強調されている。鉄道人として、「車両建築限界」なる造語は、少々残念である。

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半世紀の著者の蓄積が凝縮

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本書は、『中央公論』に連載の「地図のある人生」を取りまとめた新書である。地図を中心に時刻表、駅名、踏切名、フランスやドイツの古書店での古地図の物色など広範な話題が盛り込まれた新書である。書名の『地図バカ』は編集部の案らしい。地図やそれに関連する著者の含蓄ある話題に引き込まれる。興味ある内容の一部を以下に紹介する。◆昭和13年の時刻表によると東京~横須賀間の所要時間は68分と、現在よりおおむね8分短い。◆「五人乗はニセモノです。当社遊覧車は婦人案内人附大型(十六人乗、三十人乗)」、これは昭和8年発行の『汽車汽舩ポケット旅行案内』に掲載された東京の定期遊覧バスの広告記事の一部。◆昭和11年発行の『大日本市町村案内』によると、小笠原の硫黄島は、定期船の寄港が年6回。父島の北に位置する嫁島は1戸2人。◆複線鉄道の立体分岐は昭和3年の阪急電鉄の桂駅に始まり、ついで小田急電鉄の大野信号所(現・相模大野駅)は昭和4年。◆1854年のロンドンでのコレラ大発生に際して、医師が患者の発生場所を地図にプロット。患者が特定の井戸を中心に分布していることを究明。日本でも地図に記載の患者発生分布が、富山県のイタイイタイ病の原因究明につながった。
踏切には、名前が付いており改名される事もほぼ無いため、その土地の歴史の生き証人の役割を果たしているとの趣旨の解説がある。このとおりであろうが、鉄道会社によっては、駅間の踏切名を起点側の駅から順番に数字で命名している場合もある。例えば○○1号、○○2号。厳密性にこだわる著者の著作なら、踏切名に関しては、こうした例があることも記載があってもよかったのではなかろうか。

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新幹線輸出の舞台裏

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著者は民放のアナウンサーから朝日新聞記者に転じ、北京の大学で中国語研修を受け中国に通算8年間駐在、中国や日中関係を主に取材してきた経歴の持ち主であり、列車の旅を好む乗り鉄でもあるらしい。本書は二部構成で、第一部は中国が高速鉄道の建設を計画してから、日欧の技術を吸収して世界最長の高速鉄道路線網を実現し、輸出にも乗り出すようになっていく動きを追っている。第二部は中国、香港、台湾、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど著者が訪れたルポであり、各国の高速鉄道の建設や計画の話題が中心となっている。多くの文献やオンライン資料と、新聞記者ならではの関係者への取材に基づく内容は、関係者の本音が垣間見え、臨場感に溢れる内容となっている。
その一例は次のとおりである。中国政府は高速鉄道車両の入札で、外資系単独の入札を認めず、中国メーカーとパートナーを組み、技術を移転することを条件とした。巨大市場をエサに、日欧をおびきよせ、巧みに競わせ、安価に技術を最大限引き出そうとした。日本はJR東日本や川崎重工が日本連合として応札した。運輸審議官が日本連合の関係者に「中国は将来、同じレベルで高速鉄道を売り込む恐れはないか」と質問。それに対しJR幹部は、「日本の技術は年々進歩しているので心配はいらない」と回答。川崎重工の会長も「技術を売ったお金で、また新しい技術を開発する」と言っていたと回顧。その後の中国の高速鉄道の躍進ぶりを目の当たりにして、関係者の心中はいかばかりか。
ただし、著者が上海リニアに乗車した際の感想は「振動が不自然」、同じく中国の高速鉄道に乗車した時の感想は、車内販売のまずい弁当の話題が大半を占めており、乗り鉄で鉄道に関心のある新聞記者の感想としては、不満の残る内容である。さらに「セメントの橋」、「山肌にはトンネルの穴が見える」、「橋は戦後建て替えられた」など、長年新聞記者を務めた識者の記述とは思えぬ。「セメント」はコンクリート(セメントに水と骨材を混ぜたコンクリートで橋は構築される)、「穴」は坑口(こうぐち)もしくは断面、「建て替え」は架け替えとすべきであろう。

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日本は衰退途上国

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本書は「ダイヤモンド・オンライン」、「東洋経済オンライン」、「現代ビジネス」、「金融財政ビジネス」に公表された内容を基にしている。著者は既往の多くの著作で、日本が経済先進国から衰退途上国に転落していくと警告を発しているが、本書でも当然ながらその主張に変わりはない。印象に残った一部を以下に紹介する。◆「日本の賃金は低いが、物やサービスの価格も低いから、生活水準は維持されている」という考え方がある。日本が必要とする全ての財やサービスを自国で作れるのであれば、「賃金は低いが物価も安い」という閉鎖経済を維持すればよい。現実に自国ですべてを賄うことは不可能。このままの事態が続けば、日本人には手が届かないものが続出することになる。◆デジタル化の遅れが日本の遅れの根本原因。デジタル化を推進するための高度専門家の待遇がデジタル先進国に比べ、日本は著しく低い。アメリカの先端的IT企業の場合、トップクラスの技術者の給与は年収1億円程度になる場合が珍しくない。このため高度人材の日本からの流出が始まっている。高度専門家は新しい技術の開発に不可欠。その海外流出は、将来の日本の発展にとって極めて大きい問題を引き起こす。高度専門家の国際的獲得競争は、アメリカ並みの報酬を支払えるかどうか、という問題である。◆日本の大学の質が低下している。これは、日本の経済パフォーマンス悪化と密接な関係がある。イギリスの教育研究評価機関による世界大学ランキングによると、上位100位以内に入る大学数は、日本2、アメリカ34、中国9、韓国3、香港5、シンガポール3。人口当たりの上位100位の大学数を日本の指数を1とすると、前記の各国は6.38、0.40、3.63、42.22、35.37となる。人口が数百万人の香港とシンガポールの指数は突出している。◆ジョブ型雇用へ移行し、高度人材の待遇を改善しないと、有能な人材の海外流出を防ぐことはできない。政府に求められることは、補助金のバラマキで旧来のシステムの延命に手を貸すことではなく、ジョブ型雇用などの社会制度の改革にある。
いつもながら、日本の現状と将来に強い危惧を抱く著者の主張は一読の価値がある。ただし、マイナンバーカードとマイナンバーについての解説は、デジタル社会との関連性に関する記述もなく、若干説明不足ではないかと感じた。
著者は1940年生まれ、80歳超である。普通なら断筆の世代と思われるが、現在も多くの著書を執筆、それも過去の蓄積によるものでなく、最先端のAIや仮想通貨に関する内容の著作も多い。この知的活力の源泉はどこにあるのだろうか?著者お得意の「超」シリーズの一環で、『超 健康法』あるいは『超 頭の健康法』なる著作を期待したい。

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国鉄時代の貨物輸送の仕組みの概要がわかる

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著者は『東海道新幹線の不思議と謎』、『東北新幹線沿線の不思議と謎』など鉄道関連の著作もあるフォトライター、ジャーナリストである。本書は国鉄の貨物輸送量がピークにあった1960年代後半の国鉄貨物輸送
の仕組みの概要、国鉄末期にかけての貨物輸送の変化・衰退についての解説が大宗を占める。最終章には、1970年時点で活躍していた機関車(SL、DL、EL)、貨車、タンク車の簡潔明瞭な解説があり、国鉄時代の貨物輸送の状況を知ることができる。以下、内容の一部を紹介する。◆1931年にコンテナ輸送に用いる1トン積のイ号コンテナが登場。その後150kg積のロ号コンテナが、南樺太や北海道で生産されたバターの東京への輸送に用いられた。夏季にはコンテナ内部に綿布団を敷き詰め、ドライアイスによる冷蔵輸送が行われた。◆1968年当時の貨物運賃制度は複雑怪奇。貨車がどのルートを経由して目的地に到着するか不明のため、運賃計算キロは最短ルートで算定。運賃計算キロに貨物1トン当たりの賃率を掛けて貨物運賃を計算。貨物の品目別に1級から4級までの等級があり、賃率が異なる。642品目について、等級が定められていた。例えば活魚は1等級、鮮魚(上級)は2等級、鮮魚(下級)は4等級。1966年に制度改正があるまでは、1135品目の等級が定められていた。◆鉄道郵便輸送は、1872年に品川~横浜間で仮開業した時から行われていた。1892年から郵便物の仕分けを鉄道車両(郵便車)内で実施。郵便車の乗務は過酷であった。郵便物の飛散防止のため、窓の開放は厳禁。夏には灼熱地獄、係員の汗で湿度が上昇、郵便物の文字が滲む事態も発生。このため、1960年代後半から旅客列車に先駆けて郵便車への冷房装置の導入が進められた。
ただし、上記の貨物運賃制度での複雑な品目別等級の適用が適正に行われていたのか?、重量のある貨物の計量はどのように行われていたのか?このあたりについての解説があれば、尚価値ある一冊になったように思う。

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路線名の由来に留まらない内容

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著者は地図に造詣が深く、鉄道に関する多くの著作を執筆している。本書は日本加除出版の月刊誌『住民行政の窓』に連載の内容を取りまとめたものである。鉄道路線名の由来をその路線の形成過程などを踏まえて、著者が考察、開業当時の時刻表や地図による解説は一読の価値がある。線名の由来に留まらず、開業当時の状況に関する興味深い内容に富んでいる。その一部を紹介する。◆五能線は東能代と川部を結ぶローカル線である。沿線に五所川原、能代があり、この合成名(五能)とも考えられるが、南から北上した能代線と北から南下した五所川原線が結ばれて全通した結果、この線名から五能線と命名されたとの著者の考察は明快である。◆現在の羽越本線は余目駅の北で1回最上川を渡るが、橋梁名はなぜか「第二最上川橋梁」。羽越本線の一部、余目~酒田間はかつて酒田線という別の路線であった。この路線の起点は新庄。酒田線の時代、2回、最上川を渡っており、その歴史的背景により「第二最上川橋梁」となっている。◆坊っちゃん列車のモデルとされる松山と三津を結んでいた伊予鉄道は、明治27年当時、一日16往復運転。一方山手線のルーツにあたる赤羽~池袋~品川間は同年、1日9往復運転。◆高徳線の前身、阿波電気鉄道・国鉄阿波線の時代、吉野川に橋梁はなく、川船による連絡(鉄道連絡船)であった。本書に掲載の大正14年発行の時刻表には、中原・新町橋間モーターボートの記載。
著者の地名に対する正確さを追求する心意気が各所に感じられる一冊である。例えば、旭川(あさひかわ)駅は、明治38年に「あさひがわ」に変更、昭和36年に「あさひかわ」に再変更。
ただし、南武線の解説で、国鉄の中では数少ない黒字線であったとの記述があるが、黒字でなかった年度もあり、もう少し詳しく誤解のない解説があれば・・・。

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