katoktさんのレビュー一覧
投稿者:katokt
紙の本羊たちの沈黙
2001/03/06 22:35
シリーズでは間違いなく一番よい
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続作『ハンニバル』が世間をにぎわしているようである。だいたい人から本の題名をきくと、この本ははやってるんだなってことがよくわかる。そう言う意味で、映画化もされたこの本の題名は広く人口に膾炙したなぁ。ジュディー・フォスターの好き嫌いで映画の方は評価が分かれるようだが、とにかく賛成できるのは3冊シリーズの本の中で一番面白いのは当書であるということ。
紙の本レッド・ドラゴン 上
2001/03/06 22:22
3部作は最初が一番楽しいことが多いんだけど
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この3部作の翻訳をみると、1作目『レッドドラゴン』ではハンニバル(ハヤカワ文庫)→2作目『羊たちの沈黙』でハニバル(新潮文庫)→3作目『ハンニバル』(新潮文庫)といった具合なわけね。2作目訳した人も、まさかこんなにヒットして、また3作目で題名になるなんて思わなかったんだろうな。出版社もそれぐらいチェックすれば? でも人名の翻訳って難しいんだって、読みやすくとかも考えるし。他にも経緯があったりするのかな?
とはいってもこのシリーズは2作目が傑出したできだな。
ただこの作品にもウィリアム・ブレイクの絵の話とかミニ知識の話があるので、そういう部分で楽しむことは可能か?なんだか、ヴァン・ダインの推理小説みたいだな。ちなみにそうやって楽しんだ部分は…
続き
紙の本ハンニバル 上巻
2001/03/06 22:18
沈黙は金なりって昔の人は言ってるよ
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一般の続編から言えばレベルは高いことは認めざる得ないが、明らかに前作よりは劣っている。
楽しめるのはこの本にまつわるゴシップやラストのハーレークインロマンス調はまったくもっていただけないといった意見ぐらいか。まあ友達とかとこういう話ができることが、ベストセラーにのるような最近の本をよむほとんど唯一といっていい利点だったりするが。
ジュディーフォスターは今回は台本を読んで自分から降りた。なんてゴシップは確かに面白い。
いやそもそもゴシップに走るようでは小説としての面白さって何ってことにもなるんだが、まあ少なくとも1回は読んで楽しめる。
詳しくは
紙の本東京いい店やれる店 Tokyo beauty & the beast
2001/03/05 01:04
明確な方針のもとにぎりぎり踏みとどまった一冊
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いやー方針が明確でいいね。瞬間最大風速的にかなり売れたんじゃないかな。何気なく行くデフュージョンの店の重要性を思い知ったよ。
レストランガイドなんかも店の宣伝+2〜3の方針の違う評価を知れば、大体感じはつかめるよね。店の宣伝なんか知ってどうするの? なんて聞く向きもあるかもしれないけど、店のことを一番よく知っているのはその店の人なわけで、そこでメインに書かれていること(=一番のお奨め)、書かれていないこと(=期待できないこと)という貴重な情報が得られる。
そういう意味で、レストランのホームページが充実してくるここ10年くらいは新しい評価が下せる楽しい時期であり、わくわくしないこともない。まぁレストランに限らないことではあるが。
初出
紙の本それでも真っ当な料理店
2001/03/05 01:03
真っ当なレストラン批評
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最近は、すっかり知事として人気者らしいが、レストラン評論家としての活動は熱心じゃないんだろうな、残念。
レストランの評論なんてちょっと考えればむなしいもので、「おいしい」なんて書かれても食べてみなきゃわからないのが本当のところでしょう。そこをあえて言葉で説明を試みるところに挑戦があり、その専門のテクニカルな世界に閉じこもらない姿には共感できる。
サービスの大事さと、レストランで虚心坦懐にメートルに尋ねる勇気は彼に教わったことのような気がするなぁ。ささいなことかもしれないけど、それを知らなかったら、確実に雰囲気を含めたある種の食事の楽しさを知らずに過ごしたと思う。
初出
2001/03/05 01:01
「言文絵一致」運動
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わかりやすく文学を読み解いている。特に繰り返しふれられている言文一致(話し言葉と書き言葉の一致)について少し考えてみよう。
マンガの影響を考えると言文絵一致なんて考えてもいいかもしれない。言と一致した文と絵によって語られるマンガは、文学や映画の亜流ではなくそれ独自の表現を確かに確立している。むしろ映画ほどに大規模な製作体制を必要とせず、文学ほどに自由に語られるゆえに袋小路へと迷い込んでしまい共感を得にくい表現形態の中間の形として、読者にとって一番大きな影響を与えてきたのである。
現在では、マンガからの文学(吉本ばなな)、映画(アニメ)に及ぼす影響を見たほうがむしろ自然ではないだろうか? ただその影響をうけながらも、言と一致した文だけでしか語れない、絵で表せない思想も確かに存在するわけで、その流れを山形浩生に見るのはファン心理ゆえの誉めすぎなんだろうな、たぶん。
初出
紙の本伊豆の踊り子・温泉宿 他4編 改版
2001/03/05 00:58
涙が零れるようにすがすがしく
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ラストを語るならこの本が欠かせないな、これも今でも学校の教科書にのってるのかな? 載ってないなら必読の短編。ラストを引用しておきましょう。
「私はどんなに親切にされても、それを大変自然に受け入れられるような美しい空虚な気持ちだった。中略、船室の洋燈が消えてしまった。船に積んだ生魚と潮の匂いが強くなった。真暗ななかで少年の体温に温まりながら、私は涙を出任せにしていた。頭が澄んだ水になってしまっていて、それがぼろぼろ零れ、その後には何も残らないような甘い快さだった」
会話の部分にはさすがに古さを感じるが、今でも十分読める言葉だと思う。言葉に表される気持ちの流れがよどみなく、まさに涙が零れるようにすがすがしく読むものの心にしみこんでくる。
紙の本雪国 改版
2001/03/05 00:56
雪と国に注目
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この本は書き出しだけの注目度が非常に高いが、それだけで終わるのはいかにももったいない。雪についての引用。
「雪のなかで糸をつくり、雪のなかで織り、雪の水に洗い、雪の上に晒す。績み始めてから織り終わるまで、すべては雪のなかであった。雪ありて縮あり、雪は縮の親というべし」
そして国。国が言葉であり、言葉が国であり、言葉は受け継がれ、そして新たに作られる。今から振りかえってみると、漢語の最後の流れと新しい口語の流れの美しい邂逅がここに見られると思う。
初出
2001/03/05 00:53
この本を読むと、私は人生の浅薄さを見つめてしまう
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『〜極上の憂鬱』(日本のレストラン訪問編)もお奨め。実は作者の実在を疑ってて、訳者が作ってるんじゃないかなぁと思ったりするわけだけど、別にそんなことはどうでもよくて面白いところをひとつ引用。「旅に出ると、私は人生の深遠を見つめてしまう」
美しい写真をめくりながら読み終わると、ホントにどこかに旅したくなる。でも狭い飛行機での長い移動時間を考えると二の足を踏むんだよ、たしかに近所の図書館まで行くのも旅っちゃあ、旅なんだけど。
初出
紙の本詩人と狂人たち
2001/03/05 00:49
心理、空想的な推理小説
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最近の翻訳の一部の世界ではコナン・ドイルは人気あるけど、チェスタトンなんかはあんまり人気なさそう。確かに物理的・冒険談まじりの推理小説の方が訳したり、読んだりするのに楽だしねぇ。でも純粋に心理、空想的な推理小説にも捨てがたい味わいはある。
チェスタトン自身はジャーナリスト、評論家、エッセイストなんだが、本人からして熱心な推理小説の愛好家だったらしいからその作品が受け継がれて行くのはうれしいだろう。
初出
紙の本檸檬 改版
2001/03/05 00:46
レモンエロウ
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表題作の檸檬は、単行本のページで10枚足らずの短い小説だが、そのレモンエロウの色合いはいま再読してもいよいよ鮮明になりこそすれ、褪せることはない。
「レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの竹の詰った紡錘型の格好も」
よく読めば、レモンエロウで解放される焦燥というか嫌悪、私を居堪らずさせるものの描写がさらっとしすぎていて物足りない感じがするぐらいか。
初出
紙の本孤独の発明
2001/03/05 00:44
構成の強さと詩の弱さ
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全体の構成としては、2つの中編から成立しているんだが、前半の「見えない人間の肖像」はその外面的な人生を、後半の「記憶の書」がその内面的な人生を語っている。前半では息子の目で父親が語られ、後半は視点は一定ではないがAという名でその人生が語られている。ただ全体を通して感じるのは、散文のなかの詩的な表現が生きているのと対照的に、散文にはさみこまれた詩の部分の弱さかな。
初出
紙の本伽藍とバザール オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト
2001/03/05 00:42
もちろんお金だけが全てのモチベーションじゃない
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まあ論文の方はとにかく必読でしょ、読んだあとにプロジェクト杉田玄白なんかで行動もつけ加わればいうことなしかな。(笑)
インタービューから引用を。ガンマニアなのに武道もするのかと問われて
「ぼくは銃の使い方を修得しない武道家はインチキだと思うな。だって武道は、そもそもはある種の戦闘技術として生まれてきているわけだ。だから、その時代で支配的な攻撃手段についてきちんと勉強して、それに対してどういうふうに抵抗するかを考えない武道というのは、現実に対して目を閉ざしているわけだ。銃ってものがあることを否定するわけにはいかないだろう。それがないふりをするのはごまかしだよ」
こう活用してみましょうか。
僕らみんなの中に何かをしたい気持ちはあるわけで、それはお金のためでもなければ、誰かに誉められたいからでも認められたいからでもない。その気持ちがないふりをして、なんにもしないで生きてくのはごまかしだよ。
初出
2001/03/05 00:39
自尊心をくすぐるのかな
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題名が上手いよなぁ、買う人の自尊心をくすぐるのかな、でも「賢いはずのあなたが、なぜお金で失敗するのか」、それは実はあなたが賢くないからじゃないのかな(笑)
特にこの本の218ページ以降を読んで賢くなりましょう。
「年に9パーセントから10パーセントの収益をあげる投資対象は、最近では動きが鈍く思えるかもしれないが、実際はめったにない優良株なのだ」
適正な基準は何事にも必要なわけだが、どうやって適正な基準を持てるか、またその適正さに満足できるかがポイントなんだろうな。投資に関わらず。
初出
紙の本鉄道員
2001/03/05 00:34
いやー、典型的な「ラブレター」賛歌に対する一つの見方
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別にもう一つの書評を意識したわけではないが、一人が思ってる背景には、10人の同じことを思ってる人はいるということなので、「ラブレター」なんぞ取り上げて見ましょうか。
どこかで一番よかった恋愛小説なんて書いてあったけど、かわいそうに。いい小説読んだことがないんだね。たしかにいい小説になれる可能性を秘めてたことは認めるけど、なりそこねてるよ。
「もし会えたなら、お願いひとつだけ。私を吾郎さんのお墓に入れてくれますか」
もっとましなお願いを思いつかなかったんだろうか、この話では手紙の外が汚れていれば汚れているほど、手紙の中がキレイじゃなきゃいけないはずなのに、そのキレイさが徹底していない。例えば中国語でももっとキレイな言葉を見つけられるはず。そこらへんの書き飛ばしを感じずに、一番よかった恋愛小説なんていってるのはやっぱりかわいそう…
初出