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  3. トリフィドさんのレビュー一覧

トリフィドさんのレビュー一覧

投稿者:トリフィド

312 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

紙の本カルパチアの城

2002/03/14 22:19

カルパチアの城

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 ヴェルヌにしては珍しい、怪奇趣味の横溢する作品だ。舞台はトランシルヴァニア地方。いまなお迷信が大きな力を持つこの地方で、無人のはずの古城から煙が立ち昇るのが目撃されたことに端を発したさまざまな怪奇現象が、純朴な村人たちを脅かす——

 と書くと、オカルトか? と思ってしまうが、さすがにヴェルヌの料理法はひと味違う。しかしこれを気に入るか、反対にしらけるかは人によるかもしれない。

 さて、やがて物語は、ある歌姫を巡る二人の男の確執を中心にして進行し、ついには狂おしい思いに駆られた狂気の行動が破局を呼ぶことになる。ヴェルヌの晩年の作品の例に洩れず、人間の心の闇を抉り出す、昏いペシミズムに彩られた重苦しいものを残す作品である。ヴェルヌの前期の頃の力強いオプティミズムが横溢する(良く知られた)傑作群とは実に対照的。しかしこれもまたヴェルヌなのである。

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紙の本

紙の本スター・キングへの帰還

2002/03/03 04:45

宿敵がぞろぞろ

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 『スター・キング』の続篇。前作において、恐るべき暗黒星雲の支配者の手から中央銀河帝国の危機を救った20世紀の人間ゴードンは、今度は精神と肉体を持った彼自身として、ふたたび20万年後の中央銀河帝国へと帰還する。愛しい王女リアンナとの再会も束の間、ふたたび恐るべき魔の手が、中央銀河帝国の平和を脅かそうとしていた——

 これ以上書くとネタばれになってしまうのが苦しい。『スター・キング』執筆から少々間をおいて書かれた続篇だが、魅力的なキャラクターが再登場する、読者サービスも満点の続篇である。

 『スター・キング』に続けて一気に読むことをお勧めする。

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紙の本

紙の本ドラゴンの騎士 上

2002/02/13 01:45

細かすぎ

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 ユーモアファンタジーの傑作『ドラゴンになった青年』の続篇。

 前作は非常に面白かったのだが、残念ながらこの第2弾は、理屈をこねすぎ、細部にこだわりすぎて、面白さが損なわれる結果になってしまっていると思う。

 この作品は、もっと続くシリーズの第2作であるとのことで、第1作では曖昧だった設定が厳密化され、地理的時代的設定がなされ、世界の状態や権力関係が描かれる。さらにさまざまなしきたり、慣習、掟、義務、風習、なれあい、策謀。それが細かい。細かすぎ。

 この面白い世界、もっと伸び伸びと描いて欲しかったのだが。

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紙の本

紙の本白銀の聖域

2002/02/02 05:03

はてしない氷原、氷上を翔ける帆船……

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 世界構築が非常にすばらしい、ムアコックの冒険SFだ。

 遥かな未来、氷河期を迎え、全世界が氷に覆われた時代。氷に閉ざされたクレヴァス内部の都市、氷上を翔ける帆船、陸鯨の群れを追う捕鯨船。かつての科学技術は失われ、因習に捕らわれた人々、滅びゆく世界。そして変貌した地球が見せるさまざまな貌。このすばらしい物語世界は、異世界を舞台とする冒険SFを読む楽しみをぞんぶんに味あわせてくれる。

 ところで、わたしは以前にもこの世界を見たことがあったのである。それは、アンソロジー『ホークスビル収容所』に収められたキース・ロバーツの短篇「コランダ」だ。本当に同じ世界なのでどうなっているのかと思ったら、なるほど、『白銀の聖域』を読んだロバーツが、ムアコックに承諾を得た上で、この世界を借りて自分を作品を書いたとのこと。うむ、確かにこの作品世界は出色の出来である。ちなみに、「コランダ」は数多のSF短篇の中でも異彩を放ち、ストーリーが心に残っていたほど印象が深かった作品だ。

 さて、何度も書くが、ロバーツが魅了されたように、この作品の舞台の世界は本当にすばらしい。しかし物語の方は、少々期待はずれだった。このラストは、物語を損ねていると思う。まあもっとも、後書きによると習作に近い作品であるようなのだが。

 しかし、この作品世界を見るためだけにでも読む価値はある。ムアコックのファンの人もお見逃しなく。

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紙の本

人気ファンタジーシリーズの外伝集その1

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 人気ファンタジーシリーズの外伝集。ハヤカワ文庫30周年記念出版ということで、SF版の『遥かなる地平』と共に、2000年の秋に出されたアンソロジーシリーズである。

 第1巻には以下の作品が収録されている。

 「エルーリアの修道女」 〈暗黒の塔〉 スティーヴン・キング
 「第七の神殿」 〈マジプール〉 ロバート・シルヴァーバーグ
 「笑う男」 〈アルヴィン・メイカー〉 オースン・スコット・カード
 「薪運びの少年 —リフトウォー小話—」 〈リフトウォー・サーガ〉 レイモンド・E・フィースト

 「エルーリアの修道女」、キングの諸作と同様、これはどちらかというとホラーに近いだろう。例によって、読んでいるだけでそれが映像化されたときの絵が浮かんできてしまうほどのヴィジョン優先の作品だ。「第七の神殿」、懐かしい〈マジプール〉を舞台にした遺蹟発掘ものとミステリーをミックスさせた作品で、なぜこのアンソロジーに収められているのだろうと思いつつも、とても面白く読んだ。「笑う男」、カードの説教臭さはあいかわらず。「薪運びの少年」、この巻では唯一の正統派エピックファンタジーシリーズからの物語。しかしこれは、ほかの多くのファンタジーシリーズの世界を舞台にしても成立するストーリーではないのか? その物語世界自体も、ファンタジーシリーズの大きな要素なのだということをあらためて思い起こさせてくれた小品であった。

 この巻に収められてた諸作の舞台となったファンタジーシリーズは、それぞれ毛色が大きく異なる。特徴がなくて、なんとなく印象の薄い巻である。

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紙の本

紙の本凍月

2001/11/30 04:36

政治と新興宗教と

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 ベアが最近手掛けている、とても薄味の〈ナノテク/量子論理〉シリーズの一篇。『火星転位』でも重要な役割を持つ月の空隙の話である。
 この物語がテーマとしているのは、政治と新興宗教である。若くして政治の世界にふみこむ主人公の成長の物語の形をとりながら、政治への無関心や根拠のない敵意への非難と、科学と宗教をデタラメに捏ね合わせた教義を信仰する、よく変な事件を起こしたりする類の新興宗教への攻撃を行なっている。
 しかし、カルトな新興宗教に関しての作者の認識はちょっと甘いのではないかと思わざるを得ない。現実に異常なカルト集団がどのように生き残るのかを現実の問題として知ってしまった今、この物語で記されているような出来事で、ああいう類の新興宗教の息の根を止めることなど、絵空事だとしか思えない。

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紙の本

紙の本2061年宇宙の旅

2001/09/08 05:24

幕間劇的な作品

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 『2001年宇宙の旅』、『2010年宇宙の旅』と続くシリーズの3冊目である。

 幕間劇的な作品であり、はっきり言って作品自体の力は弱い。しかし興味深い点もある作品である。こういう楽しみ方は本筋ではないのだろうが、この連作の各作品で描かれる宇宙船の進歩の様子が面白いのだ。

 この作品の舞台である2061年というのは、宇宙船技術の進歩により、まさに太陽系全域が人類の活動範囲になる時代を目前に控えた時期として設定されている。2001年の〈ディスカバリー号〉、2010年の〈レオーノフ号と、時代が進むにつれ宇宙船は進歩してきた。そして2061年の科学技術の粋が建造した〈ユニバース号〉〈ギャラクシー号〉は、祖先たちと比べて帆船と飛行機くらいの差がある高性能機なのだ。

 ただひとつのミッションのために建造され、それを果たしたら寿命を迎える〈ディスカバリー号〉と〈レオーノフ号〉、だが〈ギャラクシー号〉と〈ユニバース号〉は、顧客の要求に応じて太陽系内をあっちへ行ったりこっちへ行ったりする貨物と客を運ぶ船なのである。

 「太陽系」というものの意味が変革した時代、「太陽系」が行く場所から居る場所へと変化したその時代なのである。

 しかしこのユニークな点も、あの残念なクラークのちゃぶ台ひっくり返し『3001年終局への旅』を知ってしまった今となってはあまり高く評価できない。

 クラークには、モノリスの出てこない太陽系開発ものの連作を書いてほしかったなと思ったりする。

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紙の本

紙の本世界の支配者

2001/09/05 03:44

「世界の支配者」の自滅

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 自在に空を駆け巡る驚異の空中船〈あほうどり号〉が強い印象を残した『征服者ロビュール』の続篇である。

 ネットに点在するジュール・ヴェルヌのファンサイトを見てみると、この本はあまり高く評価されていないようである。どんなものだろうかと思いつつ読んでみたのだが、なるほどたしかにこれは残念ながら小説としては高く評価できないものであった。

 しかし読むだけ時間の無駄というような駄作というわけでもない。いろいろと考えさせられてしまう内容を持つ本である。

 『征服者ロビュール』においては、ロビュールは、不可解かつ傲慢な存在ではあったものの、堂々と敵陣にあらわれて名前を名乗り、公然と挑戦を行なった。どう評価したものか判断に困る人物ではあったが、その毅然とした態度には気持ちのよいものがあった。

 それがこの作品ではどうだろう。こそこそと動きまわり、謎めいた署名の脅迫文を送りつけたりする。自己の発明によるスーパーマシンも、堂々と披露することなく、それとなくあちこちに現れて人々に不可解な思いをさせるだけ。なんとみっともくぶざまなことだろう。

 後半、ロビュールに囚われた主人公の警部は、ロビュールと近しく対面することになる。だが彼の見たロビュールは、すでに傲慢という名の病に犯され、狂気のきざはしをかなり先までくだり降りてしまった人物であった。

 そして、この作品においてロビュールが駆るスーパーマシン〈エプヴァント号〉は、陸上を突っ走り、水面を疾走し、水中を突き進み、そして大空に羽ばたく万能艇である。前作の〈あほうどり号〉よりもすぐれたマシンであり、男の子ならだれでも一度は夢見るような夢の乗物であるはずなのだが、これもどこか病的な雰囲気を漂わせ
ている。

 前作のラスト、ロビュールは傲慢にも、「(空を飛ぶ機械は)キミたちにはまだ早い」と人々に言い放って立ち去ったわけである。ここでロビュールは、いわばみずからを凡庸な人間の枠外に置いていたわけだ。しかしこの作品では、その当のロビュール自身でさえもまた、人間の持つ欠点から自由でなかったことが露呈されてしまっているのだ。

 以前のヴェルヌ作品では、人間への批判をしつつも、科学技術への夢と希望をたもち続けていたように思う。「いまの人間はだめかもしれないが、いつかきっとなんとかなる」と、どこか希望の灯火が残っていたように思う。

 しかしこの作品は真っ暗である。

 鬱々とした読後感を残す本である。

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紙の本

紙の本グランド・バンクスの幻影

2001/07/30 04:39

タイタニック号の引き上げ

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 西暦2012年、巨大客船タイタニック号の沈没から100周年。それを記念して、海底に横たわるタイタニック号の船体の引き上げプロジェクトが開始される。

 技術的な問題、資金調達、プロジェクトメンバーの確保、思わぬ発見が引き起こす波乱、マスコミや世論への対処。巨大プロジェクトを行なう際に直面するさまざまな問題が立ちふさがり、それらをひとつひとつ解決してゆく。物語はその様子を淡々と描く。

 二つに割れて海底に横たわる船体。二つの異なったチームがそれぞれの引き上げを担当するのだが、両チームとも、驚くべき方法でそれを行なうのだ。

 決して派手さはないが、ひとつひとつのディテールがリアルで、まるで現実のプロジェクトの過程を追ったドキュメントを読んでいるかのようだ。

 プロジェクトがどのような結末を迎えるか、あとは本書を読んでいただきたい。地味な作品だが、クラーク節全開である。

 ただひとつ、マンデルブロ集合にかかわるエピソード。あれは蛇足だと思う。興ざめであった。

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紙の本

紙の本ストーカーの心理

2001/06/18 03:55

4人のストーカーとの面談

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 本書の著者は、リンデン・グロスの『ストーカー』(日本で「ストーカー」という名前が広まる契機となった本)の翻訳プロデュースや自著『愛と狂気のストーカー』の執筆などを契機にストーキングの被害者や加害者の相談を受けるようになり、心理カウンセラーとなった人なのだそうである。

 この本は、著者の元を訪れ、自分の行なったストーキングについて赤裸々に語った4人のストーカーの話を軸に、ストーカーとはどういう人間なのか、その実像に思索を巡らせたものである。また桶川ストーカー殺人事件についても触れており、さらに最終章ではストーキングと関係する社会や家庭の現状や問題について触れ、自分の子どもをストーカーにしないための心得やストーキングの被害にあった時の対処の仕方について触れている。

 ストーカーとはどんな人間なのかに興味を持つ者にとっては、4人のストーカーとの面談の記述は非常に興味深いだろう。もっともそのあまりの身勝手さに読んでいて背すじが寒くなったり腹が立ったりするかもしれないが。

 重複した記述があったり、客観的な記述をしつつ端々にストーカーに対する非難が顔を出していたりして、少々作りが雑な印象を禁じ得なかった。著者の考えを綴ったところなどは、正直なところ首をかしげてしまうところも少なくない。しかしまあ、そんなに肩肘を張って読む本ではないのだろう。4人のストーカーとの面談の話だけで、この本を手に取るには充分だ。

 ストーカーの問題に関して関心を持つ人がこの本も読むのは良いだろうと思う。しかしこの本しか読まないというのもどうかと思う。この本はあくまでも副読本的なものと見るべきだだろう。初学者の方は、いろいろな人の本を読んでみてほしい。特に本書でも言及されている福島章氏の『ストーカーの心理学』をおすすめしたい。

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紙の本

紙の本スノウ・クラッシュ 上

2001/06/15 04:41

ふざけたSFである

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 これはSFコミックスやヤングアダルト系によくあるような、軽いSFなのですね。基本設定から登場人物たちはもちろんのこと、エピソードからガジェットに至るまで徹底的にふざけていて、ゲラゲラ笑いながら読むような本だ。

 そんなことは表紙を見れば一目瞭然と思うかもしれない。だが読んでいるとついつい忘れてしまう。なんと言ってもイラストがないし、登場人物たちの言葉づかいはスクエアだし、コアとなるアイデアはシリアスなものだし。シリアスな話をふざけて書いているのか?  ふざけた話にシリアスな異物が混入しているのか? という感じだ。

 シリアスなコアとふざけたスタイルがうまく融け合ってそれなりにいい味を出している作品もあるのだが、この作品はどうもいけない。異物の混入を強く感じる。

 そしてそのシリアスな異物、コアとなるアイデアも、今となっては「ああ、あれか」と認識してしまうほどの見知った概念だ。作中でハッカーたちがその正体を直観しないことを不自然に感じてしまうほどのありふれたアイデアである。もっともその外枠はサイバー空間の枠組みを越えていたりして、ちょっと良かったけれども。

 と云うわけで、「古い」ということも、この本に強く感じることだ。

 コンピュータやネットワークに対するビジョンが10年前のものなのだ。まあ、1992年の作品だから相応だと云えないこともない。読むのが遅すぎたのかと云えないこともないのだが、しかしまだ10年しか経っていないのだ。コンピュータやネットワーク関係を扱ったSFは本当に古びてしまうのが早い。

 コンピュータやネットワークに関しては、それを扱ったSFより、現実のそれや関連の論文、すなわち科学者たちのアイデアの結実の方が、よほどSense of Wonderに満ち満ちていると思う。SF作家たちにはもっとがんばってもらいたいものだ。

 ケチばかりつけたが、別につまらないわけではない。軽いバカSFを読みたい人はどうぞ。

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紙の本

紙の本神の鉄槌

2001/05/18 04:35

小惑星衝突モノの「スタンダード」

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 巨匠クラークによる「小惑星衝突モノ」のSF。なんというかその、オーソドックスというかスタンダードというか平均的というか、正道のそのまたど真ん中を行くような、クセのない「フツー」の作品に仕上がっています。

 いえ、決してつまらないわけではないのです。例によって淡々とエピソードが連ねられて話が進んで行くわけですが、それ自体は読ませてくれます。クラーク節は健在です。

 しかしまあ、印象が薄いのも事実。描写は地球への衝突コースをひた走る小惑星へと向かった宇宙船にほとんど限られ、地球の様子がほとんど描写されていません。そのため現実感に乏しいところもありました。社会情勢などかなり良い方向に行っているらしきことが端々に語られているのですが、そのため、そのユートピア的社会の人々がどのように反応しているのか現在の世界からは類推することもできず、実感がわかなかったりします。

 とは言え、このようなオーソドックスなプロットの作品を1993年になって堂々と書いてしまうあたりがクラークならではと言ってしまうこともできるでしょうか。

 クラークのファンは読んでおきましょうという感じかな。

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紙の本

紙の本電脳社会の日本語

2001/03/31 03:11

奇々怪々な文字コードの世界

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 文字化けに悩んだことのある人なら、漢字を表す文字コードの世界がややこしく入り組んでいることをご存知だろう。本書は、さまざまなコード系がどのようにして成り立ったのか、なぜそのように作られているのかなどについて、計算機の文字コード系以前の、常用漢字、当用漢字(これらがまた奇々怪々な成り立ちを持っているのだ)にまでさかのぼって解説している。文字コード系の世界を概観するにはよい本である。

 文字コード系の国際標準の世界もまたややこしいことになっている。各国の(一部の勢力の)思惑が絡み、また一部では情けないほどの無知と誤解も関係して、もはや泥沼である。

 この本は一般向けなので、技術的な詳細には踏み込んでいない。文字コード系に入門するためにまず読んでみる本としてはおすすめできる。

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紙の本

紙の本華宴

2002/06/14 00:35

日本情緒あふれる官能の世界

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

官能小説というものは、えてして下品だったりえげつなかったりす
るところが好みではなく、あまり親しんではいないのである。しか
し、女流作家藍川京の処女作『華宴』は、その風情のある雰囲気に
おいて稀有な存在だとの話をネットで目にして興味を持ち、手に取っ
てみたのだった。

解説の題名に「典雅なエロティシズム漂う官能絵巻」とある。これ
はまさにその通りの作品で、日本情緒あふれる伝統美の世界に、妖
しい官能の世界が繰り広げられる物語である。かなり直接的な描写
もあるのだが、品のある言葉を用いて卑俗なところを排し、あくま
でも優雅で上品な、雅やかな耽美と官能の世界を作り上げている。

女性的な作品——と言ってしまって良いのだろうか、女性作家の藍
川女史が自分のためだけに書きつづった作品だとのこと、女性に親
和性が高いかもしれない。官能小説に接することのない人にもおす
すめしたい秀逸な作品である。

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紙の本

捕食者たち

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 サイコパス(精神病質者)と呼ばれる人々がいるのだそうである。彼らは良心の呵責を感じず、他人に感情移入できず、利己的で自分の利益しか念頭になく、そして恐るべきことに人を魅了し操る能力に長けている。彼らは厚生も治療も受け付けず、本質的に社会の捕食者なのだという。

 本書は、このような良心の欠落した「捕食人間」についての解説であり、その性質や見分け方や対処法について記したものである。

 この本を読んだ多くの人は、ゾッとして恐くなるだけでなく、「ああ、あの人はそうだったのか」とうなずくのではないだろうか。極端なサイコパスは兇悪で異常な犯罪を起こし刑務所にいるが、ふつうのサイコパスは誰の身近にもいるのである。そうでなくても、映画や書物が、数多くの冷血なサイコパスを描き出している。

 とかく見過ごされがちな(いや、見たくないのかもしれないが)この社会の一側面について、学んでみるのもよいのではないだろうか。

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