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seimeiさんのレビュー一覧

投稿者:seimei

50 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本モンスターフルーツの熟れる時

2001/08/24 10:29

支配する種族

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 “魔王”と呼ばれる作家がいるとすれば、小林恭二が当てはまるとわたしは思う。そんな“魔王”の新作は猿楽町を舞台にしたサーガである。歴史が生み出すヒエラルキーの闘争を神話的な支配者によるうねりとして描いてみせた。語り手である“わたし”を愛した女神たち、第一話、圧倒的な性の力、生み出す力を持つ女、第二話、霊的な美しさを持ち、それを広める女を出逢いから滅びまで描き、第三話からは、わたしの正体をめぐる回帰と蹂躪に仕立て上げる。それぞれのパートには、SS、ネプチューンメンと支配する種族を提示し、権力闘争が描かれる。そして、生み出される“王”とは。

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紙の本厄落とし

2001/08/24 10:27

瀬川ことびという毒を

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 「厄落とし」故郷に住む親友からの年明けの電話「正月早々に墓堀りすることになったんよ」、このことから恭子に親友のご先祖が取りつく。特典は美肌効果、恐怖つき。
 「テディMYラブ」何かと凝る妻が凝り出したのはテディベア造り、そこから始まる夫とクマの家庭内のはーどぼいるどな惨劇。武器はチタンのゴルフクラブ。
 「初心者のための能楽観賞」好きな子から誘われた能楽定例公演。公演は「杜若」、そして二回目は「猩々」彼女の説明を受け、気持ちよく睡眠に入ると隣に誰かがいるような奇妙な感覚が、そして夢には猩々が。蚊に好かれると婿殿になれるらしい。
 「形見分け」母が知人から貰ってきた形見の品々、江戸題材のレポートにいいかもと思いながら、着物や三面鏡の前に立つとそこには…。
 「戦慄の湯けむり旅情」若い女性4人組が目指すは秘湯の露天風呂。漫才をしながら着いたのは冥土温泉に三途旅館。そしてモチロン惨劇が…。
 最高! 各編の主人公と親友との、部下との、恋人未満の女の子との押しの強い母、元気な妹とのやりとりが、軽くて楽しく、傍から見たらお馬鹿な気のおけない者同士のやりとりが頷きながら読める。そのすっとぼけた語り口から、恐怖も生活だという落ちへの繋がり、演出効果も巧い。とにかく健康に良いすっとぼけた毒のあるホラーだ。この作品にある一文、毒も少量ならば薬になるのと同じ論理。夏の暑さに瀬川ことびという毒を、ホラーを。

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新シリーズはヒロイックファンタジー

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 サムライガンの新シリーズはヒロイックファンタジーになっている。前シリーズでは良くも悪くも時代劇の持つ淫靡な雰囲気を、スチームパンク絡みの幕末ものという個性溢れる手法で大人の闘う理由、その虚無の行方を描き出した傑作だった。黒と赤に別れたサムライガンたちの闘いを新政府樹立後を舞台に描く新シリーズでは、一転して主人公は倒幕を裏で支えた評議会の長、西郷隆盛の養子である少年月光。そして彼を愛する“赤の異形”お絹。各国の諜報組織の暗躍、選ばれた少年と少女、舞台は蝦夷へ。さて、王となるべく少年はどのような修羅の道を辿るのか。

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紙の本ドッグファイト

2001/06/24 10:29

日本の知性化シリーズとなれるか。

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 テレパスで犬と交感し共同体クランを作り上げ生活する犬飼いが住む惑星ピジョンにある日、地球統合府統治軍がテレパスの指揮する軍用ロボット“ディザスター”を中心に侵略をする。犬飼いの有族シリウスの名を持つユス、友人のクルス、キューズを中心にしたパルチザンは、“ディザスター”の眼を通り抜けられる犬たちで反攻を開始する。
 日本にもスペクタクルなSFを描ける作家が出たのかと嬉しくなりました。テレパスの使い方は斬新とは言えませんが、戦術としての犬の運用が巧いし、その戦闘ゆえの悲劇と主人公の悲哀も納得できる構成になっている。クルス、キューズの描きこみ不足によるパルチザンの葛藤や最後の駆け足の、この宇宙世界の未来史となる骨格となるであろう外縁宇宙から生まれたシャドウ(異聖人の幽霊といわれている)の影響下による主人公の意識の拡大の唐突さなど欠点も目立つ。
 デモ、人類の遺伝子の進化シミュレーションをしているサンクチュアリ、そこから生まれた精神感応力を持つ能力者アフタースケール、地球統合府統治軍がもつ一方の進化シミュレーションを行なっているジオ、そして外縁星への侵略など、スケールの大きいキーワードで楽しませてくれる。もしこの設定で未来史シリーズを描くならば、この本書はブリンの知性化シリーズの『知性化戦争』の位置となる予感がする。順番は逆になるが、次で『スタータイドライジング』並の傑作を期待したい。

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送られたものと遺されたもの

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 生きることは送ることであり、遺すものなのかもしれない。「Calling you」ひとりぼっちなわたしには携帯がない。心の中で理想の携帯の手触りを想像し楽しんでいた。そんな矢先、その携帯にくるはずのない着信メロディーが流れ出す。
 人の心に真摯に向き合おうとして相手の望む対応が出来ないと嘲られる、そんな世界。臆病になる。人と通い合わせられなくなる。そんな少女が出会ったもうひとつの孤独な寂しい魂からのSOS。
 孤独はひとりひとり持つものは異なるかもしれないけれど、似た寂しさ、共有できる人がいる、そんな救いもある世界なんだよ。寂しさは優しさに変えて未来の自分に遺せるかもしれない。そして過去の自分に未来に在る希望を少しでも送れるかもしれない。
 時々混線する人の心の時間軸は、柔らかなふたつの心と出会う機会を与えてくれる。傷が優しさと出逢いを生んでくれる。「傷-KIZ/KIDS」大人と世界に傷つけられその痛みを制御できないオレが出会ったアサトは人の傷を自分の体に移すことが出来る能力を持っていた。
 無垢な魂と出会い、彼の痛みを、自分の得た痛みをこの世界で…送られた傷、彼と共有した傷、遺された優しさ、一緒に見る穏やかな希望。きっと救いは在る。
 「華歌」列車事故で恋人を亡くした私が絶望する病院生活の中で見つけた希望は、蕾の中で生まれた歌う華の少女だった。故郷、歌、生みも死も、母たちの遺した優しさの中にあった絶望から生まれた希望。出会えばいい、失ったものと得てきたものを。送られたものと遺されたものを、そして人を。

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紙の本碧空

2001/06/09 10:12

碧空が広がって

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 凛一は華道の家元を継ぐ少年、京都の大学でフットボールをしている氷川と恋をしている。ある日、凛一は写真部で現像をしているとき、一つ上の学年の有沢改と知り合う。彼らは揺れる。彼らの周りの人たちと共に…。

 相変わらず、端正で瑞々しく、巧緻極まる細工物のような物語です。そして、何処かフィルターを通したような懐かしさと情景へのデジャ・ヴを感じられます。
 作風は、童話のような少年たちから、どこか希薄だけど、確かな存在を感じられる少年たち、その性を幽かに感じられるものになってきました。
 登場人物、世界観、とても気品があります。そして碧空が広がって…。

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紙の本メイン・ディッシュ

2001/06/09 10:07

読書の『メイン・ディッシュ』にいかがですか

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 さてさて、今回ご紹介するのは、お料理、劇団、連作短編とわたし好みの題材がいっぱい詰まった作品です。張り切ってイキマショー。

 劇団「紅神楽」の看板女優紅林ユリエこと愛称ねこさんの部屋には、もう一匹の猫が同居しています。2本足の猫、ミケさんこと三津池修。ミケさんは料理の魔術師といえるほどの腕前で、美味しそうな描写の数々といったら、じゅるる〜。
 このふたりと、劇団「紅神楽」の代表である劇作家小杉隆一-感情移入が激しい人で、原稿に向かう時は、「我が師チェスタトンよ、我に純粋推理の叡智を与えたまえ」とノタモウテ、作者になりきった時は、凄まじい勢いで書き出す人である。これが江戸川乱歩、横溝正史のうちはいいんですが、伝説の遅筆作家井上ひさしにがノリウツルト劇団員は顔が蒼くなります(笑)。そんなこんなで、独特の推理劇を作ることで劇団を引っ張っていくが、後に作家になります−いかれて好きな人物なので、つい長くなってしまいました。
 この三人が中心となって、事件を引っ掻き回し解決します。そしてこの話と交互に、ある大学生たちのグループの話が挿入されていきます。彼らの内のひとりとミケさんが出会う話が出てきて、ふたつの話が絡み合う時、謎ができます。彼らとミケさんの繋がりとは?

 小杉師匠が自分の創った天才料理人をめぐる夫婦の物語の脚本のラストのどんでん返しに納得いかない話にミケさんが彼の作る料理に言及し、様々な人を魅了する料理の謎に迫っていく話「ストレンジ テイスト」、仲間5人から500円ずつ受け取って絶妙のカレーを作る男の死と、彼のつくるカレーの秘密、仲間だった女の子の失踪に迫る
「アリバイ レシピ」…。

 その他にも楽しい話が満載です。劇団の成長と行末、小杉師匠のいかれっぷり、ミケさんの創り出す料理と謎解き、主人公のねこさんの語り口、どれをとっても素晴らしいです。楽しい物語でした。
 『花の下にて…』に出てくる工藤さんのビアバーの描写がちょこっと出てくるのもファンには嬉しいサービスですね。
 皆さんの読書の『メイン・ディッシュ』にいかがですか

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紙の本花の下にて春死なむ

2001/06/09 10:05

酒とつまみとミステリと

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 三軒茶屋駅近辺にある香菜里屋に、客が持ち込む事件を、マスター工藤哲也が解き明かす連作短編集です。

 孤独死した老俳人の住む窓辺の桜は、なぜ季節外れの花をつけたのか。老俳人の過去から導き出される人生とは。駅においてある本棚のなかにある山本周五郎の文庫に必ず挟んである家族写真は、どんな思いが隠されているのか? 回転寿司屋で鮪ばかり7皿も食べる客、これにはどんな意味があるのか? 俳句、家族写真、多摩川、写真展、老い、交流、都市伝説、赤い手、正岡子規、といった題材と謎を巧みに配した作品集は絶品です。
 度数を変えたビールが4種類あり、マスターが、今日はいいものが入っているんですと言って出す、実に魅力的なつまみ(美味しそうな描写です)、そして客が語る謎、人の気持ちにするりと入り、謎を見事に解き明かすマスター。文も構成も人も、文句無し!! 人の生と死、苦さ、悲哀が心にぐっと来る実にいい短編集です。

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紙の本ブギーポップは笑わない

2001/06/09 10:00

サイブリッド小説の行き先

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 「ぼくは自動的なんだよ」そういって、少女からブギーポップは現れた。

 ミステリ、SF、学園もの、恋愛、二重人格、少年たち、少女たち、食人鬼、5つの時間軸、世界の危機、“炎の魔女”と呼ばれる少女、エコーズ、進化、自殺願望、クローニング、高校生、無意識、夢、叶うはずのない願い、誰も永遠には生きられない、残酷、奇妙、悲哀、ファンタジックで不思議な話、様々な人、5つの物語と、ひとつの事件、そして“ブギーポップ”(不気味な泡)。これら、全てを取り込んだサイブリッド小説。新たな感性、新たな構成、新たな可能性、様々な泡の集合体であるこの物語が、“何処に向かうのか”わたしたちは、見届けることができる。

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紙の本静寂の叫び 上

2001/06/09 09:58

卓越したプロット

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 聾学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが、カンザス州を走行中に3人の脱獄囚に乗っ取られる。リーダー格のハンディの命令により、彼らは廃屋となった食肉加工場に、生徒たちを人質にしてたてこもる。FBI危機管理チームの人質開放交渉担当者ポターとハンディの駆け引きがはじまる一方で、人質のひとりである教育実習生のメラニーの反撃がはじまろうとしていた。

 卓越したプロットで、勝利が8割方決まった作品でしたが、それに加え、人物造形の素晴らしさ、息を呑む展開と一級品のサスペンスと仕上がっています。人質開放交渉の技術的側面の新鮮さ、犯人との心理戦、聾者独自の言語である手話、その文化、FBIと州警察の駆け引き、“ストックホルム症候群”、情報戦、メラニーの心の内面である“音楽室”、聾者の聖人であるドゥ・レペをポターに照らし合わせ支えにするメラニー、メラニーを“協力者”として位置づけ、彼女を知ろうとするポターとの交流、ハンディと会話することにより、彼との同化を図り、その目的、内面を知っていこうとするポター、といった心理面、廃屋となった食肉加工場と一面に広がる小麦畑、聾者の声にならぬ叫びといった映像を喚起させる力、全てにおいて、超弩級サスペンス!! どうぞお読みになってください。

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紙の本極微機械ボーア・メイカー

2001/06/09 09:56

魔法と科学のナノテクノロジー

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 天才分子デザイナーが創った分子機械ボーアメイカーは、適応性人工知能を持ち、宿主の肉体、人の精神、肉体を自由に改変できるナノマシンである。ボーアメイカーが盗み出され、偶然、地球に住む貧民街の少女フォージタのものとなる。そして、ボーアメイカーに脅威を感じる連邦警察との追跡劇が始まった。

 ナノ(10億分の一)メートル単位の世界で機能する分子機械を用いて、原子や分子を自在に組み替えるナノテクノロジーを主題に、人の個としての変化を望む人々と、その思惑を超えた人類としての種の進化を描いた作品といえます。といっても、ハードSFではなく、技術水準が低く、知識の無い貧民街の、違法なメイカーによって体を変化させられた少女フォージタたちの視点による魔法としてのナノテクノロジーと、違法に製造され、死期が迫っている人造人間ニッコーが求める科学としてのナノテクノロジーの側面を描写しており、その対比と、ナノテクをめぐる逃避行が主に描かれています。物造形に少々難があり、それほど共感を持って物語を読み勧められないという欠点もありますがそれを抜きにしてもネット世界の描写、個人の脳にすえつけられた枢房という設定のアイディアは優れていて読ませます。とても可能性も感じさせてくれました。

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紙の本ホット・ロック 改版

2001/06/09 09:51

何故かこの面々が集まると

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 刑期を終え、出所をしてきた盗みの天才プランナー、ドートマンダー。彼のもとに大きな仕事が舞い込む。アフリカのタラブウォ国の国連大使の依頼で、コロシアムに展示されている大エメラルドを盗み出すというものであった。報酬は15万ドル。4人の仲間を巧みに使い、犯罪アイディアを練るが…。

 面白いですよう。ニヤニヤしながら読み勧められる作品です。次から次へと犯罪のアイディアを繰り出すドートマンダーをはじめ、「うまい話があるんだ」と、ドートマンダーに盗みの話を持ち掛け、能天気だが、人集めくらいしか能力がないケルプ、クルマ狂いのマーチ、といったレギュラー、錠前師のチェフウィック、伊達男のグリーンウッド、人の身上調査書作成に何よりも喜びを感じる国連大使アイコー少佐といったゲストたちのいかにも曲者といった個性と、ちょっとずれた会話。何より面白いのが、どんどんダイナミックになっていき、痛快な犯罪のアイディアです。ネタばれになるのでここでは書きませんが、最高ですよう。
 それぞれ能力があるのに、何故かこの面々が集まると不運になる。これってすごく良く分かります(笑)。わたしと友達たちも…。
 そうそう、これを言い忘れてはいけませんね。『ルパン三世』をこよなく愛する人には是非!!

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紙の本セレス

2001/06/09 09:48

東洋的電脳世界

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 サイバーパンク電脳封神演義。マーリン社研究員の幸田亘は、マンダリン社の仮想現実空間《セレス》−唐の長安などの仮想都市群《小セレス》と、特殊なソフトにより神仙の神通力を使える仙境《大セレス》−に没入する。彼はそこで、西夫人と名乗る女性と恋に落ち、元始天尊と名乗る男と対立し、決闘をすることとなる。

 仮想空間でのアイコン操作、マニピュレーションと呼ばれる操作によって、神仙の術、人工生命創作を行なうなど、ヴァーチャルアイディアの面白さ、崑崙十二仙をはじめとする封神演義キャラの名前を名乗り、仮想現実世界で争う人々、生体インターフェイス、疑似脳、電脳世界への転生実験、東洋的なアプローチ、アイディアが凄いです。小説的には、欠陥が多いかもしれませんけど、着想点が非常によかったです。封神演義ファンも楽しめるでしょう。

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紙の本ローウェル城の密室

2001/06/09 09:41

遊び心ゆえの傑作

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 ストーリーはこんな風に始まります。

 主人公? 丹崎恵と笹岡保理はある森へ迷い込む。そこで見たものは、殺された猫がぶら下がった枝、枝、枝。猫好きにはとても哀しいはじまりでした。猫たちのご冥福を祈りつつ…ページをすすめると…。

 彼らの前に現れるものはある洋館と、そこに落ちている『ローウェル城の密室』という少女漫画。そして、奇妙なご老人。
 ふたりに、ご老人は二次元生物の研究に参加してもらうとホザキハジメマス。そして、「二次元生物の生態例じゃ」とふたりに見せたものは、少女漫画のずらりと並んだ本棚。二次元生物の生態(目の占める割合が、顔の3分の1とか、足が胴体部の2倍以上とか)を延々と語りはじめます。

 そして、ご老人は、二次元生物の研究のために、二次元世界に行ってクレイと、「三次元物体二次元変換器」でふたりを少女漫画の世界へ送り込みます。

 少女漫画の世界で、恵はメグ・マーシャルというローウェル城の第一王子に見初められる靴屋の娘に、保理は第二王子ホーリーにそれぞれなりきります。

 ソシテ舞台はローウェル城に。そこで登場人物も増えてきます。女ったらしの第一王子レイク、全身がオレンジ色に輝く美少女、聖なる炎の番人の一族で、メグのおつき、リーレ。他にも、まあ、あとはどうでもいいか…。そして、そのうち密室殺人事件が起こります。

 そこで登場するのは、城にある探偵局の局長、名前は《星の真理を受け継ぐ金の瞳の君》リルル・ラーラ・シスイ・シャーム・ド・ヨゲール・ラルスワード(ブラジル人みたいに長くて素敵でどうでも良くなる名前)通称《星の君》のお嬢さんとワトソン役の副局長爺バヌル伯。お嬢さん、ワトソン役の爺に飛びゲリをかます、めい探偵です。探偵とワトソン役の素晴らしい関係の一例です。

 ミステリ的にも、ファンタジー的にもそんなスゴイ作品ではありませんけど、トリックや、キャラクタアにも遊び心と若さがあふれる、読んでいてとても楽しい作品でした。

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紙の本光と影の誘惑

2001/06/09 09:36

この余裕とユーモアを

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 4編からなる中編集。

「長く孤独な誘拐」
 森脇耕一は息子を誘拐したと連絡を受ける。だが、その要求は、ある家の息子を誘拐しろとのことだった。

 硬質な文体での、甘えのない、ハードな展開の誘拐もの。こういった作品を書ける本格系の人は貴重だと思います。構成も○

「二十四羽の目撃者」
 主人公が勤める保険会社と契約していた男が、ある日、動物園で射殺された。その殺人は状況的に見て、どうやら密室らしい。おまけに100万ドルの保険がおりるので、主人公は調査に乗り出す。

 サンフランシスコが舞台の保険調査員の一人称で描かれた私立探偵小説風の作品。ユーモアのきいたキャラクターと文体が非常に生きている作品。XX染色体独特の勘をもつ上司、主人公がハイスクールの頃に勧めたマルティン・ベックシリーズを読んだために、刑事になった、端正で、不潔で、性格の悪い、よき(?)友人など、出てくるキャラが秀逸。解説の我孫子さんも書いていますけど、この余裕とユーモアはこれからも、もって欲しいです。

「光と影の誘惑」
 競馬場で知り合った男ふたりは、現金輸送車強奪の計画を立てるが…。

 ミステリとしては、もっとも巧い作品。人の持つ情念、ラストのどんでん返し、これがこの人の持ち味なのかな。

「我が母の教えたまいし歌」
 母と子の物語。キャラの心情、謎解き、構成も優れている。共感を誘う非常にいい青春ミステリだと思います。長編化してもおかしくない物語です。

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