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  3. 月乃春水さんのレビュー一覧

月乃春水さんのレビュー一覧

投稿者:月乃春水

234 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

紙の本これはのみのぴこ

2010/08/30 16:54

ことばが積み重なり、他者との関係性、出来事が広がっていく、一筋縄じゃいかない説明文?絵本。音読で盛りあがる!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おはなしというより、説明文のようになっている、見事なことば遊び絵本。
谷川俊太郎さんの文と和田誠さんの絵と書き文字のコンビネーションが最高。これ以上のものはない、傑作です。

表紙の手が指さしているのは小さな点。
「これはのみの ぴこ」
これだけで、説明は完成しています。
が、ページをめくるとどんどん広がっていく!

もう一度「これは のみの ぴこ」
ここで描かれているぴこは、「点」ではなく「のみ」。
拡大されているわけです。

「これは のみの ぴこの 
すんでいる ねこの ごえもん」
先ほどのページでぴこがはねていたのは、ごえもんの背中だったことがわかります。

「これは のみの ぴこの
すんでいる ねこの ごえもんの
しっぽ ふんずけた あきらくん」
ねこのごえもんに起こったハプニングが描かれます。

このように、ページをめくるたびにどんどん関係性や出来事が積み重ねっていく…というわけ。
直接の知り合い、というわけじゃなく、一方的なつながりもあります。そこはさすがの谷川俊太郎さん、一筋縄じゃいきません。

文字は左側のページに書かれているのですが、1行からはじまって、どんどん増えていきます。下の空白部分も少なくなって、最後はきっちり埋まります。
これもまた、完成度高すぎて笑っちゃうほどなんです。

しかも、〆ははじまり同様の「のみ」。けれど名前は「ぴこ」じゃない。さて、なんでしょう?洒落てます。

これは、小学2年生に読み聞かせをしたのですが、読み終わったあと、担任の先生が「じゃあ、これに挑戦してみたい人」と子どもたちの希望者に音読させたのです。
ハイッ!と手を挙げた挑戦者。好きなページを、と言われ、最後ではないものの、あとのほう、つまり文字のたくさんあるところを読みました。初読ということもあって、ちょっとつっかえちゃったりしましたが、皆で拍手。

毎月1回訪れている「おはなしタイム」の15分間。読んで終わることがほとんどですが、こんなふうに子どもたちといっしょにたのしく盛りあがることもあります。

ついでなので、その日、この絵本は学校に置いていきました。
いろんな子が挑戦して盛りあがったようです。
先生の機転に拍手!!!


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紙の本

おじいちゃんと孫の男の子の毎日のふれあい、別れ。家族の表情も素晴らしい傑作絵本。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おじいちゃんといっしょに暮らす男の子とその家族の物語。
第53回青少年読書感想文全国コンクール小学校低学年の部の課題図書です。

両親と、おじいちゃんと4人家族の男の子、ゆうた。
おじいちゃんとはとてもなかよし。おじいちゃんは毎日、園のバスが停まるところまで来てくれる。おもちゃも手作り。お風呂でも寝るのもいっしょ。
おじいちゃんのそばから離れないんです。

いつもにこにこ顔のおじいちゃん。ゆうたとお風呂に入って、いつも言うのが
「ごくらく ごくらく」ということば。

ごくらくって「しあわせな きもちに なることだよ」と
ゆうたの疑問に答えるおじいちゃん。けだし名言です。

お風呂の中でのふたりの会話がとてもいい。山の温泉の話をするんです。
お風呂場には鏡があるのですが、ちょっとしたしかけがあって…鏡の中にうつるお風呂は温泉になっていて、さるもいる!頭の中の想像がうつっているんですね。
三男(当時4歳)はすかさずこれをみつけ、「マジックだね」と喜んでいました。

そんな温泉行きもおじいちゃんが病院に行くことになり、中止に。これまでとうってかわった表情のおじいちゃん。
おとうさん、おかあさんの表情にはこれから先がどうなるのか、すべて表れています。
真実を知ってしまったおとなの苦悩が…

おじいちゃんとのやりとり、そして別れ。
「おじいちゃんは ほとけさまのくにへ いってしまった」と表現されています。
三男は「おじいちゃん、死んじゃったの?」

死は、避けては通れないもの。別れはほんとうにつらい。
絵本を通じて死を知る、感じることは、悪いことではないと思います。

それにしても、長谷川義史さんはすごい描き手だと再認識。
表情だけで伝えることは、そう簡単にはできないでしょう。
全体的に暖色で描かれた家の中やお風呂の様子も、家族の温かさを象徴しているようで、素敵です。
カバーの袖に書かれた作者の西本鶏介さんの文「ごくらくは幸せの合言葉」もとてもいい。

何度読んでもじーんとしてしまう傑作絵本です。
子どもを通じて、おとなになってからこの絵本に出会えたよろこびをかみしめています。

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紙の本

紙の本ふがいない僕は空を見た

2010/08/05 05:47

「性と生」を軸に、人間のおかしさ、おもしろさ、せつなさを描く短篇連作集。骨太で濃く、深く、満ち満ちている傑作。2010年ベスト本!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

喉の奥が締めつけられて痛い。胸が押しつぶされて涙が出てくる。読後、しばらくそんな苦しさが続きました。さらりと読めて、感動するタイプの小説とはちがいます。芯のある骨太な、濃く深く、満ち満ちたストーリー。何に満ちているかは、読み手によって受け取り方がちがうかもしれません。
わたしの今年読んだ本のベストです。まだ8月ですが断言します。
人間のおかしさ、おもしろさ、せつなさ。人が生きていくこと。「性と生」を軸に、高校一年の斉藤卓巳をとりまく人々の短篇連作小説です。

第8回 「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作の「ミクマリ」は、卓巳の一人称で書かれています。
一学期の終業式後に向かうのはコミケでナンパされた主婦のあんずのマンション。卓巳は用意されている衣装とウィッグを身に着け、あんずが書いた台本通りにセックスをする。生まれて初めてのセックスをしたときから、コンドームをつけていない。あんずは「妊娠できないから」と言っている。
卓巳の母親は自宅で助産院を開業している。子どもの頃からお産のときの産婦さんが苦しむ声を聞いて大きくなった。産婦さんが許可したときは、お産にかりだされ、仙骨(尾てい骨の上にある平たい骨)をやさしくさすったりする。
高校に入ってからずっと好きだった松永に告白されたものの、あんずのことがあり「少し待ってて」と伝える。
あんずに別れを告げたのに、ある日ベビー用品売り場で靴下を手にするあんずにばったり会って…

以降の作品は、別の視点から、その後が描かれています。

「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はあんずこと里美が語り手。生い立ちから結婚に至るまで、結婚生活に義母が介入してくる様子、そしてなぜコスプレをするようになったのか。ですます調の告白。

「2035年のオーガズム」は松永七奈の立場から。これからうまくいきそう、というときに卓巳は夏休みの市営プールのバイトに突然来なくなってしまう。同級生で同じバイトの福田良太といっしょに卓巳の家を訪ねる。
卓巳のコスプレ画像や動画はネットにさらされ、ばらまかれていた。
避難勧告が出された大雨の日、気持ちをぶつける。七奈は卓巳に、七奈の母親は、子どもの頃から勉強ができたが、大学に入ってからますますねじれ、奇妙な行動をするようになった息子、七奈の兄に。

「セイタカアワダチソウの空」は卓巳と七奈と同級生の福田良太について。背が高く、セイタカアワダチソウにも見える良太は「セイタカ」と呼ばれている。
父親は首をつり、母親は再婚する、と出て行き、たまにお金を置きに、別の日は取りに来る。痴呆症が進むばあちゃんとのふたり暮らしで良太は、朝は新聞配達、夜はコンビニのバイト、その間に学校に通い、毎日の生活を乗り切っている。
コンビニで仕事を教えてくれたバイトの田岡は元予備校の講師で、ふとしたきっかけで良太の勉強を見てくれるようになる。七奈の友だち、あくつは同じコンビニでバイト、良太と同じ団地に住んでいる。ふたりは田岡の作成したプリントをやり、どんどん勉強がわかるようになっていく。

「花粉・受粉」は卓巳の母親の仕事ぶりと苦悩が描かれています。助産院の出産小説としても読める作品。
卓巳の話は、街の大人たちにも伝わっている(前作でその理由がわかります)。元々、この場所に助産院を開くことをよく思っていない人が多い町内会の会合では、誰一人話しかけてこなくなった。メールで罵詈雑言も送られてくる。助産院でお産の介助だけでなく入院中の食事作りを担当して働くみっちゃんは「……しっかし、いちいち、くっだらねー ばかな恋愛したことない人なんて、この世にいるんすかねー」と憤り、あきれつつメールを削除する。
卓巳は二学期が始まっても学校に行かない日が多くなったが、みっちゃんと七奈との関わりで少しずつ学校に行くようになる。けれどいやがらせはやまない。


高校生の男子が主婦とアニメのコスプレをしてセックスをする。それがこの連作集のはじまりですが、5つの作品を通じて、登場人物のバックグラウンド、抱えているものが明らかにになり、季節はめぐり、物語は重層的に深まっていきます。
「セイタカアワダチソウの空」はなんともせつなく、いちばん苦しさを感じるのですが、最後の「花粉・受粉」ではのっちーと呼ばれている高校の担任の先生の出産、卓巳の母が通うようになった漢方薬局のリウ先生とのやりとりも描かれ、もう一度やってくる春の季節同様に、明るさ、希望を感じるラストになっています。

著者の窪美澄さんは、出産後、フリーの編集ライターになり、妊娠・出産を主なテーマに執筆活動しているそうです。
女の子は、生まれたときから卵巣の中に卵子のもとになる数百万個の原始細胞が詰まっているのを知り、ショックを受ける卓巳の姿や、里美と慶一郎夫婦の不妊の原因、更年期障害の七奈の母親の言動など、人間の性、そして生に関わる事柄が登場人物にからめて描かれています。
これらは一連の物語の何本かの軸としてしっかりと機能しています。

「ふがいない僕は空を見た」というタイトルも秀逸。
帯に書かれた「女による女のためのR-18文学賞」選考委員の唯川恵、山本文緒、角田光代 各氏が感嘆しているコメントもぜひご覧ください。

人は完全無欠であるはずがなく、自分でもどうしてこんなことしてるんだ、と思いつつ行動してしまうことがある。特に理由があるわけじゃない。
おかしなことをしてしまっても、その人のすべてがおかしいのではない。思いやりややさしさを持って、他人と関わるし、あるいは何もかもいやになってひきこもったりもする。そうこうしながら毎日をなんとか過ごしている…。
全体を通して、そんな思いがめぐりました。


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紙の本

生き残るためには新書を読め。具体的、多角的な新書読書論。刺激を受け、考え、行動せずにはいられない!

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルが秀逸です。「ベスト新書」から出た『新書がベスト』。
サブタイトルは─10冊で思考が、100冊で生き方が変わる

新書の読み方、買い方、新書を10倍活かす方法、新書のレーベル別にお勧め本とダメ本が紹介されています。

帯には「新書にクソ本なし!」と書かれています。が、要注意。
著者の小飼弾氏は、新書すべてが良書、と言っているわけではありません。紹介されている本には「ダメ本」もあるのです。
しかし、ダメ本に当たる経験も必要で「ダメ本とはこういうことか」と肌身で感じ、ダメ本をつかみ慣れないとたくさんの本は読めない。そこそこ普通の本よりも強烈にダメな本の方が、強い印象を残し、結果的により多くのことを考えさせてくれる、とのこと。

現代において、膨大な情報に取り囲まれている私たち。本を活用しなければ生き残れなくなっている。それはなぜなのか。本の価値は何なのか。 
「生き残る力」を付けるためには、多様なカテゴリーを擁したノンフィクションを読むべき。ノンフィクションは新書で十分、と、著者独特の歯切れよくユニークな理論が展開されています。

◆目次◆
序章 生き残りたければ、新書を読め
 1.なぜ今、本を読まなければならないのか
 2.新書以外は買わなくていい

Part1 新書の買い方、読み方
 1.読書レベル0からの【初級編】
 2.なんとなく読みはじめてからの【中級編】

Part2 新書を10倍生かす方法
 1.タイトルから本の出来を測る
 2.ダメ本も味わう
 3.疑うことを楽しむ
 4.洗脳されずに自己啓発本を読む
 5.話題の本とは距離をおく
 6.ジュニア向け新書はこんなに楽しい
 7.複数の新書を同時に読む
 8.本で得た知識を活用する
 9.「超」整理法で本を整理する
 10.ウェブを使って本を読む

Part3 新書レーベルめった斬り!
 1.貫録のある老舗レーベル
 2.新書界の革命児たち
 3.科学を楽しむ新書レーベル
 4.セットで買いたい新書レーベル
 5.色が定着してきた熟成期レーベル
 6.テーマの鮮度が命の上昇中レーベル
 
終章 新書と電子ブックの未来

コラム
 1.文字だけの本とコミックの違い
 2.英語圏での本の常識

ジャンル別 逆引きインデックス

(数字の表記が実際の目次とは異なります)

読書の意味、価値、そして本の読み方。
刺激を受け、考え、なにかしらの行動に出ない人はいないのではないか。それほどの勢いがあります。
わたしも新書をいくつも購入し、読み始めました。(さすがに本文で紹介されている、書店で棚からごっそり「選ばず」「適当に」まとめ買いする方法はできませんでしたが…)

ただ単に、乱読、多読を勧めているわけではありません。目次にもあるように、方法は具体的、多角的です。

たとえば、このような記述があります。
『本を10冊読んだら、ひとつ考えてほしいことがあります。それは本の内容ではなく、自分がどう影響されたかということ。(略)
「この10冊を読んだことで自分はどう変わったか」を感じるのです。
ほんの些細なことでよいのです。本を読んだ自分と、読む前の自分との違いを見つけてください。違いをみつけたのであれば、それは量をこなすことで得た知識があなたの血肉になったということです。』 (P39-40)

読書をこれから本格的にはじめたい人、そこそこ読んでいる人、すでにかなりの読書人、どなたにも得るところ大!の新書です。


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紙の本

紙の本わたしはあなたをあいしています

2010/02/18 16:52

ことばと気持のつながり、相手とのつながり。ティラノサウルスと3匹のホマロケファレが教えてくれます。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ティラノサウルスシリーズの第6弾。5歳の三男が大好きです。「これは雪の本」と覚えているようです。

むかしむかし、おおむかし。せかいじゅう、いろいろなこところに住んでいるきょうりゅうは、色も姿かたちも、話すことばもちがっていた。

雪の降り積もる谷に、丸くなっているティラノサウルスの姿とこんな説明からおはなしは始まります。

雪が降り続き、寒さにふるえるティラノサウルス。何日も食べていません。
空を飛ぶオレンジ色のきょうりょう、タペヤラがティラノサウルスに言います。

「ティラノさん、やまのむこうのずっとむこうの みどりのもりには、うまそうな やつが いっぱいいますよ」

「ほ、ほんとうか。よし、おれさまをそこにつれていきな」

「いいですとも、ティラノさん。さあ、ついてきてください」

緑の森を目指して、何日も歩き続けますが、ティラノサウルスはとうとう倒れてしまいます。
ティラノサウルスに、いいことばかり言い、やさしいことばをいっぱい言っていたタペヤラは、最初からティラノサウルスを欺いていたのです。

ようやく緑の森にたどりついたティラノサウルスは、そこでうまそうな3匹のホマロケファレに出会います
ホマロケファレは、食べられそうになる危機も感じず、「ヒヒヒ……ムシャムシャ食ってやる」といティラノサウルスに「ムシャムシャー!」と叫びながら笑っています。

ここは、ティラノサウルスのことばの通じないところだったのです。

ホマロケファレのことばで、『ムシャムシャ』は『ともだち』という意味。
誤解からはじまり、倒れてしまったティラノサウルスに食べ物を持ってきたホマロケファレの3匹との交流がはじまります。

ティラノサウルスが命名したウーとマーとイー。ことばは通じなくとも、気持が通い合っていきます。

3匹の話すことばは、読んでみると、意味はすぐにわかります。ちょっと甲高い声で言うと、三男は声をあげて笑います(ちなみに最初に出てくるタペヤラは、気の抜けた声で言ってみると、かんじが出ます)。

3匹にいっしょうけんめいことばを教えるティラノサウルス。そのやりとりも笑ってしまいます。おぼえたのは『ウマイ、ウマイ、ウマイ』と『ムシャムシャムシャ』と『ナカヨクシヨウ』だけ。

それでも、お互いの思っていることが少しずつわかるようになってきます。

けれど、このことばがもとで、アクシデントが…


ことばに、気持がこもっていなければ、ことばはただのことばでしかない。
ことばがわからなくても、気持は通じる。

きょうりゅう同士のやりとりを通じて、人と人との深いつながりがわかるようになっているこのシリーズ。

とても好きです。


本についてのよもやま話。□□本のこと あれこれ□□

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紙の本

紙の本かさじぞう

2010/02/07 05:00

いちばん新しい、いちばんおすすめの「いまむかしえほん」。見どころは…

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かさじぞうといえば、有名なおはなしです。小学2年生の教科書にも載っています(「かさこじぞう」というタイトルですが)。
この「いまむかしえほん」シリーズは、よく知られた昔話を、次の世代に伝えていくために再話した絵本なのだそうです。

絵に見覚えがあるな、と思ったら、『じいじのさくらやま』の松成真理子さんでした。
あたたかみがあって、うすっぺらさとは対極にある、ふくらみ、あつみを感じさせる絵、とても好きです。雪になりそうな空模様、山の空気までが描かれています。

お金はなくても、いつもにこにこなかよく暮らしているおじいさんとおばあさん。
明日はお正月、という日、明け方からかさをせっせと編んで、五つこさえたおじいさん、町へ出かけていきます。

年越しの買い物をする人でにぎわう雪の降り始めた町。この様子も見事に描かれています。ひとりひとりの表情をじっくり見たくなってしまいます。おじいさんのかさは売れません。理由も書かれています。

とぼとぼと山みちを引き返して、峠で出会ったおじぞうさま。おじいさんがしたことは、ご存知ですよね。おじいさんのことば、しぐさを表した文章も、とてもあたたかいんです。

おもちが買えず、おかゆで年越しをするおじいさん、おばあさん。もちつきの真似の様子はとてもたのしそう。

そして夜中…
ふとんの中で、不思議な物音を聞く様子。ここは、いちばんの見どころかもしれません。教科書で習ったばかりの二男も、この部分にはいちばん惹かれるようで、見入って、わたしの語りを耳をそばだてて聞いていました。


昔話の絵本はたくさん出ていて、いざ読もう、買おうとすると迷ってしまうかもしれません。
これは、いちばん新しい絵本ですが、いちばんおすすめしたい。見て、読んでいただければ納得がいくと思います。


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紙の本

紙の本またまたぶたのたね

2010/01/11 13:40

ますますおもしろく、おおかみは情けなく…「ぶたのたね」第三弾。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ぶたのたね」シリーズ、第三弾にして最新作です。ますますおもしろさがアップしています。

表紙はおおかみから逃げるぶたの姿。悲壮感も危機感もまったく感じられません。むしろ、たのしそう。
それもそのはず、このおおかみは走るのがとてもおそい。
だからつかまりっこない、と安心してからかっているんです。

「いちどでいいから、ぶたを つかまえて、そいつを はらいっぱい たべてみたいんです」

おおかみの悲願を叶えるべく、きつねはかせは、発明したぶたのたねをひとつぶくれます。
おおかみはおんぼろの自分の家にたねを持ち帰りますが…

ちょっとまぬけな、けれどありがちなハプニングがあり、朝目覚めたらびっくりなことになっていて、そして、またまたハプニング…!

おおかみの運のなさもますますパワーアップ?
たったひとつ残った幸運も、またまたハプニングで…
いったいどうなるのでしょう?

最初の作品から20年、前作からは4年が経過しています。
わが家では、ごく最近知ったシリーズです。この第三弾に至っては、第二弾を読んで間もなく発売を知ったので、とてもたのしみに待っていました。

3作とも、何回も繰り返し読んでいるのですが、昨晩二男(小2)が申すことには、
「おおかみは、走る練習をしたほうがいいんじゃない?」

日頃、自分の世界に入り込み、夢想しがちなドリーマー、二男。
なんとも現実的な発言!に驚いてしまいました。

おはなしは、こんなふうに子どもの思わぬ一面を見せてくれることもあります。
相変わらずのおおかみの情けなさと、この二男の発言に、いつまでも可笑しさが消えない夜となりました。


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紙の本

紙の本ぶたのたね

2010/01/10 14:38

弱肉強食が逆に!同情したくなるくらい情けないおおかみの奮闘。ユーモアたっぷりの絵本。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「大人も子どもも笑顔になるユーモア絵本」として、フェリシモが年間コレクションの1冊としてセレクト。配本されて知った絵本です。

おおかみがぶたを食べる、というイギリスの昔話『三びきのこぶた』(いろいろな絵本がでていますが、わたしはこちらがいちばん好きです。)は、あまりに有名ですよね。

だから、この本に登場する、走るのがとても遅く、ぶたよりも遅いので、一度もぶたをつかまえられない、食べたことのないおおかみがとてもユーモラスにうつります。ちょっと同情しちゃうくらいに情けない。

そこで出会ったきつねはかせがくれたピンクのつぶは、ぶたのたね。ぶたの実がなるんです。

おおかみのわくわくして、大喜びする表情、そして木にたわわになったぶたの姿!おもわず笑ってしまいます。
木になる、といえば、「アニメおでんくん」で、おじさんといっしょにいるペロくんは、木になって生まれてきたんですよね。そんなことも思い出しました。

おおかみが大喜びしたのもつかの間、アクシデントが…!!
だけど、天はおおかみを見捨てていません。わくわくしながら準備するおおかみですが…ちょっぴり足りないのよね、用心が。

このあとのぶたの凶暴な姿、表情。なんか、けんかするわが家の兄弟によく似てるような…?それを伝えたら、苦笑いしていましたが。

おおかみにとっては、非常に残念な結果ですが、まだ残された望みにかけています。そこもまた、笑えます。

弱肉強食の現実世界では、おおかみはぶたに勝る。それが逆になっているからこそ、おもしろいんですよね。

おおかみがんばれ!と応援したくなるような、ユーモアたっぷりの絵本です。


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紙の本

紙の本檸檬のころ

2010/01/05 05:57

忘れられない瞬間がある、高校時代。痛くてせつない、連作短編集。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

豊島ミホさんの痛くてせつない連作短編集。
県立の北高が舞台となり、語り手は7つの短編それぞれに違っています。語り手は高校生だけではありません。
 
北高出身、28歳の金子晋平は司法試験に落ちること5回。北高グラウンドの傍にある、50年の歴史ある金子商店の孫。

高校生専門の下宿屋の娘、理可は24歳。北高3年の林くんと、南高2年の水野珠紀。ふたりの下宿生の恋愛をどうするか、悩むところ…

数学教師の丹波は、進路指導に頭が痛い。期末試験の問題も明日までに作らなければ。「上」に出す書類の多いこと、多いこと。教師なんて本当にむくわれない。これだけやった結果が「ハゲ」「ムカツク」だなんて…
北高にいた頃は、坂口安吾を数学の授業中に読んだものだった…

なんともせつないのは『ルパンとレモン』、そして最後の『雪の降る街、春に散る花』。
 
『ルパンとレモン』の語り手は野球部の西。
野球部のエースでムードメーカー、佐々木富蔵は秋元加代子に夢中。加代子は西と同じ中学出身。富蔵と話している時に西と目があうと、申し訳なさそうな顔をする…
遡って中学時代。同じ中学から北高を受けるのはふたりだけ。「一緒に勉強しない?」と言って頬を赤くし、放課後の図書館通いがはじまった。
「ルパン」のテーマソング、リップスティックのレモンの香り…
 
『雪の降る街、春に散る花』の語り手は加代子。
東京の第一希望の私立大学に合格。つきあっている佐々木くんは、第一希望は神奈川の国立大。「悪あがきだろうけど、受けてみる。」
「なあ加代ちゃん。もし落ちてたら、キスしてくれる?」
加代子が上京の日。駅のホームでふたり…

この2編の間に挟まれた『ラブソング』もとてもいい!
音楽少女の白田恵。音楽ライターになるのが夢。同じクラスで軽音楽部の辻本くん。ある日気づく。この人は音楽を知っている…
さりげなく登場するのは「林くん」、「加代子さん」、語り手にはなっていないけれど、何回も姿を現す藤山剛史(いるいる、こういうヤツって)。こんな工夫もたのしめます。

この本を手に取ったのは、単行本が発行になったばかりの2005年春のこと。
子どもが小さく、毎日の暮らしに手いっぱいで、過去を振り返る暇なんてない頃でしたが、読んでみたら、いやぁ…痛い…そしてせつない…
高校時代のことを久しぶりに思い出しました。
地味で、情けなくて、かっこ悪くて、自意識過剰で。
あの頃のわたしに出会ったら、よしよしと頭をなでると同時に、どうどうと鼻息荒いのをおさえてやりたい。
だけどそんな高校時代に、忘れられない瞬間がある…

とても好きな、大切な一冊です。


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紙の本

紙の本いもほりやま

2009/12/13 19:23

いもほりが冒険になっちゃう。いきいき、わくわく、ドキドキのたのしい絵本。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

紅葉した秋の山のふもとに、大きな大きなおいも?
それにしては大きいぞ。うちの息子たち、これは「う●ち?」なんて言っていましたが。たのしくって、びっくりしちゃう、さつまいもほりのお話です。

たけしは、おにいちゃんとおねえちゃんと畑でいもほり。
大きいのをほろうと、たけしは「よーし ぼくだって……」
つるをひっぱると、あれれれれ?

おいもが出るまで、つるをたどっていきます。
山に入って、川を渡って。

「えっさか ほい ほいさか ほい」

かけ声もおもしろい。山の動物たちもついてきますよ。

そうして、どうなるの…?
ページをめくるたび、わくわくしちゃう。

大きなおいもが出てくるかな…?というのは想像できますが
ちょっとひとひねり、あるんです。
それは、読んでのおたのしみ。

秋の山の様子がとても丁寧に描かれています。
たけしたちも、山の動物たちも、とてもいきいきとして。

さつまいもを植えて、秋に収穫する、というのは多くの幼稚園や保育園で行っているようです。わたしも大昔、経験したのをおぼえています。

最近では、一年前に参加していた青空保育で3種類の苗を買ってきて、三男と一緒に畑に植え、秋にはいっしょに掘りおこしました。

どのくらい大きなおいもになったかな…?
ドキドキしながら、つるをたどって、土を掘る。

そんな経験が呼び起こされる、
「えほんのぼうけん」というシリーズ名ぴったりの絵本です。


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紙の本

紙の本新参者

2009/11/04 05:39

人と人との関係、つながりを軸に描き出された、最高のミステリ作品。ミステリ敬遠者にもおすすめします。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

特にものすごいミステリファンでも、東野圭吾作品をすべて読破しているわけでもありません。刑事・加賀恭一郎流に言うなら、いわば「新参者」であるわたしが言うのもなんですが、これまで読んだミステリの中でも、いちばん好きです。ベストな作品です。

江戸の匂いも残る日本橋。この町の一角でひとり暮らしの女性が絞殺された。着任したばかりの所轄の刑事、加賀恭一郎が事件の謎を解き明かすため、付近を歩き回る。そこで出会う人たちが章立てになっています。
様々な人間の思い、ことば、人と人との関係。それぞれが絡み合い、ドラマを見せてくれます。じんとしてしまうのは、そこなのです。

人形町にある煎餅屋の『あまから』の娘、菜穂。母の代わりとなって育ててきた祖母、聡子は危篤状態になり、退院したばかり。入院給付金支払いの手続きのために、診断書を取りに保険外交員の田倉が訪ねてくる。嫌疑のかかった田倉は、警察に正直にアリバイを話さなかった。(第一章 煎餅屋の娘)

料亭『まつ矢』の小僧、修平は主人の泰治にたびたび頼まれることがある。誰にも内緒だぞ、と念を押され、人形焼を十個買うのだ。餡入りが七、なしが三。その人形焼が被害者宅で見つかった。ひとつは、なぜかワサビ入りだった。(第二章 料亭の小僧)

嫁姑問題でもめている最中の瀬戸物屋『柳沢商店』。被害者の三井峯子はこの店を時折訪れていた。誰かにプレゼントするため、箸を注文。品物はまだ届いていない。峯子は嫁の麻紀にメールを送っていた。頼まれたものを買っていたのだ。被害者宅では、江戸時代から続いている刃物専門店『ききみや』で購入し、包まれたままのキッチンバサミがみつかっている。(第三章 瀬戸物屋の嫁)

『寺田屋時計店』にはがんこな店主、玄一と妻の志磨子、ひとりの職人がいる。ひとり娘の香苗は高校卒業と同時に駆け落ち。柴犬、ドン吉をいつも夕方に散歩に連れて行くのは、娘を許していない玄一だった。散歩の途中で玄一は、被害者とときどき顔をあわせていた。事件当日、三井峯子と会った公園を加賀は何度も確認する。(第四章 時計屋の犬)

洋菓子屋『クアトロ』で閉店時間間際にやってきた常連の女性客。きょうは買いたいと思っていたゼリーが売り切れ。どうしようかと言っているときに女性の携帯電話が鳴る。

小さな劇団で舞台セットを汗だくで固定している清瀬弘毅のもとに、父親の直弘から電話が入る。峯子…母親が殺された、と。弘毅は大学を中退して家を飛び出して以来、母とは二年間会っていなかった。その後、両親は離婚している。
浅草橋に恋人の亜美と住む弘毅は、遺体が見つかった現場まで行き、そこで加賀に会う。母が小伝馬町に引っ越してきた理由は、自分とは関係ない、単なる偶然だと弘毅は話すが、そうではなかった。(第五章 洋菓子屋の店員)

事件当日、三井峯子の部屋を訪ねる約束をしていた吉岡多美子。約束の時間を変更してくれと電話をしていた。ふたりは大学時代からの友人で、峯子が離婚を考えたとき、翻訳の仕事を手伝って、と頼み、「翻訳家として独り立ち出来るまで私が面倒を見てあげる」と言っていたのだった。ところが、多美子はプロポーズされ、ロンドンに行く話が持ち上がり、二人の友情がぐらつきはじめる。
峯子の部屋を訪れ、床で倒れている姿を発見、通報した多美子は、自分とてつもなく大きな過ちを犯したと、悲しみと後悔と自責の念に苦しんでいる。
後日、加賀と多美子は『柳沢商店』に向かい、峯子が誰かにプレゼントするはずだった箸を手にとって見る。(第六章 翻訳家の友)

峯子が馴染みのない小伝馬町で暮らすようになったのは、重大な意味があったと知った清瀬弘毅は、せめて母が死の直前まで何を考え、どんなふうに生活していたのかくらいは知っておきたいと思う。峯子は離婚の際、弁護士を間に立て、その人物とは時折メールのやり取りをしていたという。弘毅は弁護士に会いに行く。

直弘は清掃会社を興して二十七年になる。大学の一年後輩の岸田に財務全般を管理してもらっている。これまで口出しは一切してこなかった岸田だが、行きつけのクラブでホステスをしていた女性を社長秘書にしたのだけは露骨過ぎる、と忠告しているが、直弘は意に介さない。

弘毅は社長秘書の宮本祐理を呼びとめ、父との関係を単刀直入に訊く。警察が父を犯人ではないかと疑っている、自分も父親をあまり信用していない、という弘毅に、祐理は、ほんとうのことを知ってもらうしかない、ときっぱり言い放つ。(第七章 清掃屋の社長)

藤山雅代は人形町に民芸品屋『ほおづき屋』を出して二十四年。加賀は独楽を買った人を探しているというが、最近売れたのは、事件が起きた後だった。

岸田玲子と5歳の息子のところへ義父の要作が訪ねて来る。後日、玲子が銀座での買い物から帰ってきたところへ、刑事が再び訪ねて来て、義父が来た日の様子を詳しく話してくれという。玲子はその日の夜、殺人事件があったと知り驚く。加賀は岸田が孫に独楽を持って来た日を確認する。(第八章 民芸品屋の客)

日本橋署の刑事、上杉博史は、今回の捜査はなんだかおかしい、とぼんやりと思っている。有力な手がかりが得られないまま、容疑者をリストアップすることさえ難しい状況だった。事件発覚時には不可解とされていた問題がいくつか解決されているが、「関係ないことが判明した」と説明されただけ。
ある人物の元へ向かう上杉に、加賀が自分も一緒に行っていいか、と声をかける。

後日、加賀は上杉を浅草橋の劇団の稽古場に連れて行く。次は、小伝馬町にある洋菓子屋へ。加賀は、順を追って話し始める。(第九章 日本橋の刑事)

このように、人と人とのつながりを軸に描かれているのが特徴です。
ちょっとした偶然や誤解、見逃しが、人を事件に巻き込んでしまう…そんな恐ろしさが底辺にはあるものの、人と人との関係を丁寧に描き出しているのは、従来のミステリ作品との違いで、大きな救いになっているのではないかと思えます。

事件の第一発見者で、被害者の友人の吉岡多美子に、ひとつの謎解きを見せたあとの加賀と多美子のやりとりが、とてもいいので、ご紹介します。

「加賀さん、事件の捜査をしていたんじゃなかったんですか」

「捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手立てを探しだすのも、刑事の役目です」

このミステリはNo.1。最高の作品、とミステリを敬遠している人にもぜひ、おすすめします。


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紙の本

紙の本ポップアップはらぺこあおむし

2009/09/01 15:36

お値段以上の価値あり。見事なポップアップは通常版を見た人もそうでない人も必見。プレゼントにも最適です。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

あの『はらぺこあおむし』がポップアップブックに!
これはゼッタイに見たい!と迷わず即座に購入決定。大正解でした。
お値段は張りますが、それだけの、いえ、それ以上の価値がありますよ。

すべてのページがダイナミックにポップアップします。
それだけではなく、ひっぱったり、めくったりという参加型のたのしいしかけもあります。

あおむしがいろんなものを食べる様子は、英語(原書)では "He ate through"と表現されています。そのことを知ったときにはおもわず感動してしまいました。
食べてくぐり抜けたという様子が「through」という単語ひとつに表わされている…!
日本語の「たべました」だけではちょっと足りないかんじ。
穴あき絵本であることで、カバーされていましたが、
今回、このポップアップブックで立体化されたことで
あおむしが食べる=くぐりぬけるという様子がよくわかります。もう完璧、言うことなし!

あおむしが食べたものだけではなく、木やおひさまもポップアップ。
特にさなぎと蝶はものすごく素敵なんです。

三男(5歳)は絵本を読まないと眠れないのですが、
ある日、繰り返し読んでいたこの本をまた読んだときは、いつもより眠くて不機嫌。

そこへ、わたしがあまりにも「すごい!」「うわぁ~」と声をあげるので怒られてしまったことがあります。

何度見ても、おもわず声がでてしまう、すごい絵本。プレゼントにも最適です。


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紙の本

紙の本月の小屋

2008/10/06 15:58

女性の人生を正面から描いた小説。魂の奥底から共鳴できる、凄い本。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『昔の女性はできていた―忘れられている女性の身体に“在る”力』 『オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す』 などの著書がある、リプロダクティブヘルスを専門とする疫学者三砂ちづるさんの「小説」です。

作家の高橋源一郎さんが激賞して言うことには

『事件が書いてある、お話が書いてある、情報が書いてある、そういう小説は多いけれど、三砂さんの作品のように「人生」が正面から書いてある小説は、ほんとうに少ないのだ!』

(帯文より)


六篇の「女の話」が収められています。


東アフリカで国際協力の仕事についてくれる人を探していた“私”。“彼女”に話を切り出すが、あっさりと断られてしまう。その理由は…
『母の夢、オセチアの夢』

ラテンアメリカ人の夫から子どもを連れて逃げてきた“彼女”が都心のファミリーレストランで“私”に語る、十年間の生活。
『石鹸』

「おりいってお話があるんです。できれば二人きりでお話したい」と“彼女”が“私”に相談した妊娠。逡巡は続く。“私”の祖母が高校の頃に語った記憶が重なる。
『逡巡、あるいは骨の記憶について』

三十八歳になった年から断固として十二月二十四日から年末休みを取ることにした“彼女”のクリスマスパーティーに誘われた“私”。見事な料理がどうやって作られることになったのか…
『詰めもの』

自分の部屋のそうじが苦手な“私”が紹介された家政婦の“彼女”。見事に仕分けされた本と書類とこまごまとしたもの。どうして“彼女”がそういう仕事をするようになったのか?
『そうじする人』

祖母の代から助産師の“彼女”に案内された故郷のいまは使われていない「月経小屋」。祖母に聞いた話を聞く“私”。
『小屋』


同じ経験があるわけではないのに。大きな事件が描かれているわけではないのに。
どしんと響くものがあるのは、どうしてなのでしょう。

その理由は「人生」が「正面」から描かれているから。まさに至言です。

どれも、魂の奥底で、深く共感を覚える物語。DNAに訴えてくるようです。
本を読んで、こころを動かされたことは何回もありますが、これまでとはまた別の部分が響いてくる…
そんな、凄い本です。

男性が読んだら、どのように感じるのだろう。ぜひ聞いてみたいものです。

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紙の本

親が子をかわいいと思う気持ちは…?しろくまのポロと北極の仲間たちのかわいいしぐさ・描写に注目。13カ国で訳されたミリオンセラー絵本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ベルギーの絵本で、13カ国に訳された、世界で100万部のベストセラーだそうです。
リアルでありながら、とても愛らしい表情としぐさの動物たち。ユーモアも感じられる素敵な描写です。
二男は1歳の頃、お店でくまのぬいぐるみにひと目惚れして、抱きしめて離さなかったことがありますが、今回は4歳の三男がこの本に同じ状態に。ひと目でお気に入りとなった絵本です。

しろくま(ポーラーベア)のポロが悲しく、心配でたまらないことは、ママもパパも、最近ちっともかまってくれないこと。
ママはぼくのことすきじゃなくなったのかなあ…

ポロはともだちに相談します。
トナカイのカイちゃん、オオカミのカミカミ、アザラシのゴマちゃん、ペンギンのペンペン。ネーミング(翻訳)が絶妙です。

それぞれ、親身になって考えてくれるのですが、「ママがふだんとちがっているってこともあるかも」というカミカミのアドバイスを受け、ポロはママをよーくみてみます。

すると… ママのおなかがふくらんでる!

ママがポロに、親が子をかわいいと思う気持ちを海にたとえて話をする
シーンにはじーんとしてしまいます。

あかちゃんを迎えるとき、親も、お兄ちゃん、お姉ちゃんになる幼い子もなにかと不安定になりますが、そんなとき、読んでみたい絵本です。


カバーには訳者の灰島かりさんによる「ポロがごきげんで歌っているはな歌」の歌詞が載っています。

♪ポロッコ ポロポロ ポロロッコ
 ぼくは ちいさい しろくまだい
 こおりの おうちは あったかで
 ママは もっともっと あったかい
 ぼくの すきなの ママなんだい
 ポロッコ ポロポロ ポロロッコ

♪ポロッコ ポロポロ ポロロッコ
 ぼくの すきなの おさかなだい
 うみから おさかな もらうんだい
 いっぱい たべて おおきくなるぞ
 パパと おなじに なるんだい
 ポロッコ ポロポロ ポロロッコ


これをラップ風に歌ってみたら、三男、大喜び。
二男はすぐさま歌詞を覚えてしまい、いっしょに歌っています。


自分が愛されているのか、確認したくなるのは生きている性なのかもしれません。

その確認をするかのように、わが家でもこの絵本は、何回も何回も開かれています。

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紙の本

紙の本きんのたまごのほん

2008/05/21 16:05

とにかく綺麗な花や植物!ひとりぼっちのうさぎがみつけたたまごはどんな色?気持ちが豊かにふくらむ素敵な絵本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とにかく綺麗な絵本です。色とりどりの美しい花、植物に惹きつけられます。
表紙はリボンに包まれている大きなたまご。そのたまごに花や蝶が描かれているのです。
大きなたまごの下に描かれているうさぎは、たまごに寄り添うように、そっと手を伸ばしているように見えます。

見開きいっぱいに描かれたうさぎ、鳥、ネズミやかえるにも目を奪われます。
次のページはまっしろ。
そして「きんのたまごのほん」と、中表紙があります。
うさぎがリボンをほどき、おはなしのスタートです。

本文でもやはり、ページいっぱいに綺麗な植物や生き物。文字が描かれているのは、白いたまごの中です。

いっぴきのちいさいおすのうさぎが、たまごをみつけます。
たまごのなかで、なにかが動いている音が聞こえます。
なんだったのでしょう?

もしかしたら、とうさぎは考えます。
ちいさいおとこのこかな。ほかのうさぎかな。
ぞうかな。ネズミかな。
小さなうさぎにはわかりません。
たまごをふってみて、あしでおして…いろいろやってみても割れません。

そうこうしているうちに、なにかがたまごのなかから出ようとしています。
そのときのうさぎ。静かに神妙にしている姿がとてもかわいらしい。
緊張し、集中しすぎたのでしょうか。それからあくびをして、寝てしまうんです。

まるで赤ちゃんの誕生をたのしみにしていたのに、もう生まれる、という肝心なときに寝てしまうお兄ちゃんやお姉ちゃんになる小さな子(もしくはお父さんになる男性?)みたいです。

そうして出てきたのは…?(なんだったのかは絵本を見てくださいね)
小さなその生き物は、うさぎを見て、いったいぜんたいなんだろうと思います。

ぐっすり眠っているうさぎに、小さな生き物がやったことは…
笑っちゃうんです、ほんとうに。

目を覚ましたうさぎに、この生き物が言うことばがとても素敵です。

「どこからきたの?」といううさぎに
「そんなこと、気にしなくていいですよ。わたしはここにいます」
こう、言うんです。
大切なのは、「いま、ここにいる」ということ。

ひとりぼっちだったうさぎに友達ができて…というハッピーエンド。

おはなしとしては、奇想天外でもなく、淡々としているのですが、
なんでこんなに豊かな気持ちになるのかといえば、やはり絵の魅力と、そして生まれてきた生き物が言いったひとこと。それゆえかもしれません。


小学1年生、30人にこの絵本を読んだところ、「うわぁ!絵が上手!」なんてことばが飛び出しました。
読み終えたわたしが「『きんのたまごのおはなし』でした」と締めくくった後に「あれ、でもたまごは金色ではなかったね」とふともらすと、

「たまごはグレーだよ」「青っぽーい!」

そんな声のあとに、ある男の子が言うことには

「きらきらと光っているからじゃない?」

…なるほど。
原題は「THE GOLDEN EGG BOOK」。「GOLDEN」は必ずしも「金色」というわけではないんですね。

なんとも素敵な答えに、ますますうれしくなり、この絵本が大好きになってしまいました。

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