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  3. 3307さんのレビュー一覧

3307さんのレビュー一覧

投稿者:3307

218 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本熱い書評から親しむ感動の名著

2005/12/04 14:35

私の文章は恥ずかしいので読まないで欲しいけど、他の方々の文章を読んで下さい!

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

bk1の懐かしい評者の皆様、お久しぶりです。
3307と申します。僕のことを覚えていて下さるかたは
どのくらいいるでしょうか。
今は、「元評者」になってしまいました。「はてなダイアリー」の
愛用者となり、本とは離れて、はてな界隈で言うところの
「ちらしの裏(日々の雑感)」を、好きなように書いています。
そのため、すっかり書評の投稿をしなくなってしまいました。
http://d.hatena.ne.jp/book3307/
bk1に書評を投稿しはじめた頃は、ちょうど今のような
寒い季節でした。2001年の晩秋になるでしょうか?
私はbk1に『星虫』の書評を投稿しようとしたのですが、
ログインが上手くできなくて諦めました。
また、評者さんたちの「質の高さ」に足がすくんでしまい、
文章を書けなかったことも、正直に告白します。
しかしある日背中を押してくれた方がいました。
下手くそな書評なのに、「お前の書評いいじゃないか」と
仰っていただきました。
素人の書いた文章を誉めてくれる方の存在に接し、
私はたいへん勇気づけられ、書評を投稿するようになりました。
気がついたら、私が尊敬していた評者さんたちと一緒に
一つの本が生まれました。
あれから1年8か月が過ぎましたが、こんなに嬉しいことはありませんでした。
何故ならば、blogで本を書いて出版する例はあっても、
「尊敬する評者さんたちと一緒に、一つの本を世に送り出す体験は、
本当に本当に唯一の体験だったから」です。
池袋のジュンク堂で行われたトークセッション、こっそり私も参加しました。
もしかしたら、どなたかとお会いしていたかもしれませんね!
その後の打ち上げで、そうそうたる方々とお会いできたのは、
一生の想い出です。その節は、皆様ありがとうございました!>ALL
今、この本に、私が寄せた文章を読み直すと、ただただ恥ずかしい
ばかりです。好きな本について感じたことを、ただ書いただけです。
全力で書きました。
でも、私の文章に限定して言えば、「素人」の感想でしかありません。
しかし、私以外の評者さんの文章は違います。手にとって読んで下さい。
「本が好き」だということの奥深さ、広がり、そして豊かさを、きっと
ご納得いただけます。
「本のある生活」や「本への憧れ」が、各自の書き方で真摯に
書かれています。巧拙ではなく、そんな「本が好きな方たちのハート」が
私には伝わってました。
だから、本書は私にとって、かけがえのない本なのです。
繰り返します。
この本を、ためしに立ち読みなさって下さい。もし、私の文章を
ご覧になった方が「本が好き」でいらっしゃるなら、必ず一人は
「あ、これは、私だ」と思える評者さんを見つけ、「共通するテキスト」を
持つ、見知らぬ誰かと出会う楽しみを味わっていただけることでしょう。
どんな方法でお読みいただいても、ただお読みいただくだけで十分です。
でも、正直に申し上げて、共著者の一人として大変お恥ずかしいのですが、
本書には重版がかかっていないと思われます。
つまり、「貴重」な本なのです。
在庫がなくならないうちに、在庫のあるオンライン書店で入手された方が
無難ではないかなぁと、愚考いたしました。
以上

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紙の本

紙の本アシモフの雑学コレクション

2002/04/23 22:27

特効薬と副作用

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アシモフ氏が本書を世に送り出したのは1979年。
 間もなく四半世紀が経とうとしている現在から見れば、本書の中に取り上げられている「事実」の多くは、あるいは修正しなければならないことばかりかもしれません。
 でも、そんなことは少しも問題じゃないんです。

 なぜって、そんな「事実」をじっと眺めて、それを面白がったアシモフ氏の精神そのものが、本書の魅力なのですから。

 また、本書の「普遍性」は、「編訳」を行ったのが「星新一」さんであることによって、更に強固なものになっています。

 忙しすぎてショートショートさえ読めないけれど、それでも「何か読みたい」活字中毒者さんへの特効薬になりそうですが、「読んだ端から、誰かにクイズを出したくて、落ち着かなくなる」副作用にムズムズするかもしれません。

 何はともあれ、文庫であるコトに、これほど意味のある書籍も珍しいのではないでしょうか。文庫の良さが引き立つ、チャーミングな一冊。

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紙の本

シンプルだから伝わる空気。小さな命と寄りそう、日々の喜怒哀楽。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終えて、むしょうに文鳥を飼いたくなる。

しかし、同居ねこには、珍味美味。人・ねこ・とり、三者とも不幸。
「できない相談」。いつもより多めに、ねこをなでてみる。
ねこは応えて、いつもより多めにゴロゴロ言う。着慣れた平和。

  『ちっちゃなぴーちゃんの体重は24g それは手紙一通と同じ軽さ』
  『余分なものは  いっさい持たない それが飛ぶためのきまり』

厳選されたシンプルな線。おさえた色使い。
だから、ノイズが混じらず、愛おしい空気が的確に伝わる。

『シルクみたいにつやつやで まっしろなプリンス』の、
「ぴーちゃん」を主役として見せる、著者の覚悟。その凄さ。

著者らしき人物は、自画像がブタ。まるで黒子。
にじむような、楕円が表す、ひどく優しいその瞳。
念入りに「脇役」の記号を与えても、幸せな空気は消せない。

・何かを好きになること、とくに動物と過ごす喜びの色。濃厚。
・命を預かる緊張感、確実に自分よりも先に逝く寂しさ。
それらを余さず収めた上で、なおシンプルな絵本。

すぐ読める。繰り返し楽しい。
開くたびに、ほほえましい空気が花開く一冊。

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紙の本

火柱は反撃の狼煙。もう逃げない。育ち、奪還し、回復する。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

その世界は、たとえ唯一無二の存在ではあっても、
四次元を従えたネズミ型万能兵器が居るくらいには突飛で、
被害者がやがて加害者になる暴力の連鎖が存在する程度に身近。

・ルーン=バロット
 感じた痛みを自分から切り離し、やり過ごしてきた少女。

・ウフコック=ペンティーノ
 肉体はマスコット、ハートは二枚目。ネズミ型万能兵器。

・ドクター・イースター
 ハカセ。役どころは「おやっさん」。飄々とクール。

・ディムズデイル=ボイルド
 最強の刺客、バロットたちの追っ手。立ちふさがる壁。

・SFのお楽しみ、思わず欲しくなるアイテムの数々。
・物語の構造は、複数の童話モチーフを散りばめて普遍と接続。
・姑息・サイコ・大人物。敵役も充実、勢いもスリルも完璧。

本書の魅力を挙げれば切りがないけれど、
私にとって、これらの要素も世界も何もかも全ては
上記4人のためだけに用意された、化学変化用のシャーレ。
シンプルなルールが美しく機能するから、ご都合主義は混ざらない。

おとぎ話もRPGも、さらわれた姫は救出を待つことが多いけど、
我らがヒロイン バロットは、自分を自分の手で取り戻す。
剣の代わりにウフコックを肩に、復讐活劇の旅路を行く。

■ 「そいつは良かった」
■ ドクターはいったんウフコックから目を離し、しみじみと
■ コーヒーをすすった。
■ 「何が良いんだ、ドクター?」
■ 「マリッジブルーって知ってるか、ウフコック」
■ 「なんだ、それ」
■ 「一度決めたことに対して、ぐだぐだぬかすことさ。個人的な感情が
■  どうとか、自分は大丈夫なのかとか、何が必然で何が偶然なのかとか、
■ そういったことをだらだら考えるんだ」
■ 「俺がそれだと?」
■ (2巻・P189より引用)

生き延びるために殻をまとったバロットの閉じた世界を薄く包み、
辛抱強く声をかけ続けるウフコックは、彼女のためだけに存在する孵卵器。
生まれ直す卵、温め続けるウフコック。彼らをずっと見ていたい一冊。

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紙の本

この表紙は一見の価値あり

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 bk1に、コミックスの書影が掲載されていなかったので、梱包を開いてみるまで、どんな表紙の作品が届くか分かりませんでした。「凄く面白い」という評判のみを頼りに注文したものですから。

 注文後数日して、ポストにメール便が入っていました。同時にいくつか注文していたものですから、何が入っているか開けてみるまで分からなかったんです。これも、今思えば味な演出でした。

 猫好きのハートを鷲掴みし放題の、無茶な表紙が現れたんです。
 思わず絶句しました。まさか、こうくるとは。

【表紙解説】
 太りすぎた耳の短いウサギのようでもあり、平安ちっくなお公家さんにも見えつつ、それでいて猫でしかありえないこの姿。ミカンを枕に、むっちりと寝ている姿は、体毛の白さも影響して、鏡餅のようですらあります。らぶりー。

 この表紙だけでも、本書を手にする価値は十分にあるでしょう。
 まして、猫馬鹿っぷり炸裂の4コマ漫画もついてくるんですから(いや、それが本体だし>自分)

 まだ猫にくらくら来ていない、潜在的な猫好きさんに、そっと贈りたい一冊。


【オススメ猫本】----------------------------

『ゆずとまま』
竹書房 バンブー・コミックス
ISBN:4-81245-026-8

『ゆず』
秋田文庫
ISBN:4-253-17603-8

『ゆずのどんぐり童話』
エンターブレイン Beam comix
ISBN:4-7577-0337-6

『天国(パライソ)島より』
河出書房新社 カワデ・パーソナル・コミックス31
ISBN:4-309-72681-X

『天才柳沢教授タマとの生活』
講談社 KCデラックス
ISBN:4-06-334339-1

『The Hideki』
朝日ソノラマ 動物生活コミックス
ISBN:4-257-90372-4

『しましまえぶりでぃ』
朝日ソノラマ 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
ISBN:4-257-90285-X

『ねこのてからのおくりもの』
新潮社
ISBN:4-10-430501-4

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紙の本

紙の本少年動物誌

2003/11/19 21:24

いつだって、心の野菜不足を解消します。もぎたて少年時代。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「伝える方法」を獲得した大人による、
胸の中の腕白坊主へのインタビュー集。全10話。
話題は、戦前の豊かな自然に育てられた思い出が中心。

それは、著者の心の中の自然であり、
同時に、ほぼ失われた日本の原風景の記憶。

夏の終わりの墓場探検、不気味な井戸と気配。
「懲りる」ことを学んだ、蛇との全面戦争。
熱にうなされて見た夢と、イタチの足音が与えた回復の希望。

自然だけではなく、家族もまた、今振り返れば貴重な環境。
何人もいる兄弟、鷹揚で毅然とした父親、おおらかで信心深い母親。

暴力も振るうし、病に伏せることもあるけれど、
太陽と風に磨かれた野生児は、どこまでも健やか。

その上、動物との関わりを中心に描いた本書は、
戦前を舞台にしていても、一向に古びない。
1976年以降、読み継がれていることがその証拠。

味が良い上に、いつ口にしても新鮮なまま。

だから、「農薬つきの促成栽培」的な育ち方で
何かとバランスを崩しがちな現代人には、かっこうのサプリメント。

心にもう一つの少年時代と、淡い故郷の記憶を補ってくれる一冊。

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紙の本

紙の本無人島に生きる十六人

2003/11/18 23:46

生き延びる姿に感激。裸族、主食は海亀。遊び心は希望の源。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

太平洋の真ん中で難破した16人を抱き留めてくれた、
無人島「本部島」の鳥瞰図を眺めるだけでも、
本書を手に取る価値はある。

地図は、見慣れた新潮文庫の扉の前に、おまけの
ポストカードのように添付されている。

「ウミガメの牧場」「土俵」「見張りやぐら」
「あざらし半島」「上陸記念井戸」

そんな言葉がちりばめられた、夢のある地図。

実際には、5年・10年待っても迎えは来ないかもしれない
絶海の孤島に、明治男16人が放り出されているのだから
「夢がある」なんて言っては失礼。
これは、過酷なサバイバルストーリー。

でも、水を確保し、カツオの刺身や
ウミガメのステーキを食べ、細かな珊瑚の砂に
包まれて眠るリズムに慣れると、「愉快」に生きるために
探求心を育てる「自然塾」に様変わりする。

珊瑚の森の花畑を見下ろし、熱帯魚の生態を観察し、
海鳥の子育てを眺め、あざらしの群と友達になる。

ギリギリの場所にいるからこそ、夢もある。
極限を生き延びた、キーワードは遊び心。

楽しくなければ駄目なんだ、笑わなければ続かない。
タフで知的な、海の男たちに万歳三唱の一冊。

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紙の本

紙の本クマのプーさん 新版

2003/10/20 23:09

父と子のあたたかな空気を、永遠へ押し上げた言葉たち。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  「プー、きみ、朝おきたときね、まず第一に、
  どんなこと、かんがえる?」
  「けさのごはんは、なににしよ? ってことだな。」と、
  プーがいいました。
  「コブタ、きみは、どんなこと?」
  「ぼくはね、きょうは、どんなすばらしいことがあるかな、
  ってことだよ。」
  プーは、かんがえぶかげにうなずきました。
  「つまり、おんなじことだね。」と、プーはいいました。
(——P252)

底が抜けてるプー、ちいさなコブタ、子沢山のウサギ、
ものしりなフクロ、etc.etc.

1926年、イギリス。
おもちゃ箱のぬいぐるみたちに、
A.A.ミルンは命を吹き込みました。

彼が、クリストファー・ロビンに、聞かせた
クリストファー・ロビンとプーの物語。

子ぼんのうな父親は無数にいるし、
わが子の目を通して出会う「驚きに満ちたおろしたての世界」に
感動できるお父さんも多い。観察眼が鋭いお父さんも、また同様。

ただ、A.A.ミルンが他の父親たちと違っていたのは、
「言葉」を持っていたこと。
普遍的であたたかな世界に、詩人は形を与えました。

  プーってやつはねえ。プーは、あんまり頭は、いいほうじゃないさ。
  でも、けっして、へまはしない。プーが、なにかばかなことをすると、
  それが、ばかなことでなくなっちゃうんだ。
(——P209)

17年かけてようやく、コブタの言葉に共感できた一冊。

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紙の本

紙の本あの頃ぼくらはアホでした

2002/09/04 00:49

小説家を好きになることは

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

——心から楽しめる、エッセイを確保することでもあります。

「アホ」というよりも、無茶。
青春時代の甘酸っぱくて
過剰に一生懸命で、少し愚かなエピソードが
みっちりつまっています。

本書は、東野少年がだんだん成長して、
最も危険な中学で生き延び
高校、大学、そして社会人へ
という場面まで描かれています。

エッセイに収録された対談によれば
「この先は、仁義を守るために、書かない」
(↑引用ではありません、雰囲気だと
 思っていただければ)
ということですが、なーに、時間はいくらでもあります。

東野さん、60歳くらいになったら
さすがに20代の諸々なんて時効ですから
是非、続編を執筆してください。

あと16年、一読者としてお待ちしますので(*^^*ゞ

愉快なエッセイを読んで、作家さんを身近に感じることは
面白い小説をより味わい尽くす、秘訣ではないかと。

お済みでない方は、是非お試しを(*^_^*)

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紙の本

紙の本ある閉ざされた雪の山荘で

2002/08/30 00:36

設定を活かすって、こういうことか会議。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

——すいません、会議はしてません(笑)
「!!!!!」っていう、強調表現と似たようなものと
受け止めていただけたら幸いです。

ではー(^.^)/~~~



……終わってどうする>自分。
妙な書き出しですみません(*^^*ゞ

★何故役者達が登場するのか?
★どうして、雪のない「雪山」が舞台なのか?
★いきなり挿入されるエピソードの理由は何か?

そんな「?」の群が、ピタッと収まるべきところに
収まり、まったく無駄がないんです。大好き(*^_^*)

設定が凝ってて、作品も難解で、読み手の肩も凝る。
そんな作品は掃いて捨てるほどありますが、本書は違います。

設定は複雑で、裏の裏の裏の裏……みたいな
念入りな構造なのに、きわめてシンプル。

「濃厚な味わいなのにのどごしすっきり」とでも呼びたい
奇妙な読後感を是非お試し下さい。

こんな芸当が出来るのは、
東野圭吾さんの作家としての膂力が強いからこそと
ぜーったい納得できますので(*^_^*)


あ、そうそう。
キャラ萌えって意味でもオススメですよ。
意地っ張りの主人公が、実に良い味出してますので♪

ではではー(^.^)/~~~
(どなたに挨拶してるんだ。これはメールなのか>自分)

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紙の本

紙の本ルドルフとイッパイアッテナ

2001/11/27 14:51

「読みたい気持ち」も併せて贈る

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を小さな子に与えてあげて欲しい。綺麗にラッピングして手渡し、その上で、読み聴かせもできたなら最高だ。

 人気作家の作品なので、お子さんは既に読んでいて、知らぬは大人ばかりなんてコトもあるかもしれない。

 それでも、本書を媒介にして、楽しい時間をきっと共有できるはず。26章からなる本書なら一晩1章ずつ読む約束なら、忙しくてもさして時間は必要ない上、一ヶ月も楽しむことができる。

 その本自体が読みたくて、待ち遠しい本は多い。しかし、その本を読み終えたことで、読書欲そのものを増加させる作品は、極めて希だと思う。
 本書は、そんな作品。

 「何でもいいから、何か本が読みたい」そんな気持ちも、併せて贈ることのできる一冊。

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紙の本

紙の本仕事は楽しいかね? 1

2002/06/01 23:57

ポップなソクラテス登場。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポップなソクラテスと呼びたくなる、一夜限りの講師の名は「マックス・エルモア」。
「まんねり」「諦め」「閉塞感」等々にどっぷりつかっていた、作中人物の私(プラトンみたいな立場でしょうか?)が、萎んだ気持ちに活力を得て、翌朝から「挑戦」を再開する物語。
これこそ、大人のための童話です。

どうにも気持ちが「萎んで」しまって、やりきれない方にこそ、お薦めしたい一冊です。

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紙の本

紙の本探偵伯爵と僕

2004/06/05 23:56

凝っても分かり易い、『詩的私的』は伊達じゃない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まじめなのかふざけているのか、それとも真剣にふざけているのか。
飄々とした伯爵、淡々とした「僕」。
二人の関係、この空気は、とてもとても魅力的です。

ミステリーランドが好きです。
その中でも、第4回配本までの12冊なら、森博嗣さんの『探偵伯爵と僕』が好き。

会話・テーマ・設定に惹かれて読み進み、最後の「しかけ」で世界をひっくり返されて、思わずそのまま二周目も読んでしまいました。『探偵伯爵と僕』は、ミステリとしても、児童文学としても、そして森博嗣さんの「私的詩的」な魅力のエッセンスとしても成功しています。

本書を手にとって、ぱっと目に付く魅力を一つあげるなら、伯爵と「僕」の会話になるでしょう。

●引用:P71
■□□「お金ももらったよ。伯爵に会ったら、電話をかけてくれって。」
■□□「何? いくらだ?」
■□□「五百円。」
■□□「小癪な……。」伯爵は舌打ちする。「それで、君は、買収されたのか?」
■□□「売春?」
■□□「違う、買収だ。お金のために自分の主義主張を曲げることだ。」
■□□「よく意味がわからないよ。」

二人の会話はたいてい二重の意味が生じるように書かれています。だからもし、全編を読み終えて、エピローグの高みから振り返ったなら、「あのときの伯爵のズレは、こういう理由だったのか」と、きっと感じることでしょう。
そんな、「今にして思えば」感が、読者の郷愁アンテナを、やわやわとくすぐります。

さて、肝心の物語ですが、夏休みを通して命がけの冒険を体験した「僕」は、伯爵と何度も対話を重ねたことで、ついにこんな考えを抱くようになりました。

●引用:P334
■□□ 一番大事なことは、きっと、自分の命を守るということで、その次に
■□□大事なことは、できるだけ沢山の人の命を大事にすることだと思う。
■□□ 人が人を殺すことは、悪いことというよりは、嫌なことだ。
■□□ 悪いことだからしないのではなくて、嫌なことだからしたくないのだ。
■□□「僕」には、そういうふうに思える。

虫なら殺せる。でも、犬や猫は殺したくない。でも、牛や豚は殺して食べている。
僕らが抱えたこんな矛盾と「僕」が直面した時、傍らに立つ伯爵は「毛とあたたかさ」ってヒントを与えました。

毛の感触と、動物の持つ体温を例に、その動物を抱きしめたなら(抱きしめるような関係になったなら)、もう殺せなくなると示唆しました。

殺された側にとっては、「嫌なことだから殺さない」「嫌じゃないから殺してみた」なんてスタンスはたまったものではないですが、でも、暴力に関する問題を根本から解決するには、一人でも多くの「嫌だなって感じられる子」を増やすのが最も効率的に思えます。

抑止力でも、再発防止策でもなく、素朴に「命の抱きしめ方」を獲得させること。——でも、そもそも僕らはこんなこと、どの場面で学んできたのでしょう……。

・殺すこと、殺されること。
・許すこと、許されること。
・すぐに解決できない問題との向き合い方。

——こんな要素を、「今日は久しぶりに好きなミステリを読んで、どきどきしよう」「児童文学? そんなの大人になってからも楽しめるの?」なんてスタンスで気軽に手に取れる形にまで落とし込んだのは、"森博嗣マジック"です。

森博嗣作品だから、本書ももちろん凝っています。でも、分かり易い。相反する要素がきちんと両立しているのは、「子どもにも、手間さえかければ、分かるように伝えられる」と、森博嗣さんが熟知しているからこそ。

説教せずに、物語の幾つもの層を介して、一気に多くのことを伝えてしまう。こんな作品なら、ミステリはもちろん、児童文学でも森博嗣作品を読む楽しみが増えました。本書は私にとって、熱烈におかわり希望な一冊です。

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紙の本

紙の本愛する源氏物語

2003/10/08 15:21

和歌の光で晴れる、千年の霧。見晴らしの丘の眺め。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  唐衣またからころもからころもかへすがへすもからころもなる  光源氏
  唐衣またからころもからころもいつまでたってもああからころも(万智訳)
  (——P051)

源氏やけくそ。
源氏物語にこんな歌があるなんて知りませんでした。

かろうじて読み通したのは、ダイジェスト版と現代語訳。
あらすじを追うのが中心。和歌が始まれば、またいで通りました。
知っているはずも無いですね。

  795首の和歌を、それぞれの人物の状況と才能に応じて歌いわける
  という技量。その「成り代わり」の技においては、紫式部は、
  恐ろしいほどの力を持っていた。
  795首は、795種でもあるのだ。(——P008)

言葉を圧縮昇華する和歌、駆使して物語る式部。
これは、私にとって新たな視点です。

末摘花、六条御息所、頭中将etc.
名前くらいは知っていても、人物像はのっぺりとした印象。

今回、和歌に触れて初めて、
それぞれのキャラクターの顔を垣間見ました。
不可解で染まる霧、和歌の光ですっと晴れていきます。


私の拙い理解を助けてくれた解説は、無機質と無縁。
俵さんの言葉で語るスタイルは、とっておきの教養エッセイ。

  思ふらん心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ 明石の君
  会いもせぬ私に恋をする人の心は一体どうなってるの   (万智訳)

   思わず拍手、の一首である。これは、光源氏の口先だけの言葉に
  対する強烈な一撃であるとともに、平安時代の恋愛に対する、
  根本的な疑問を含んだ歌でもある。
   この時代の—— (——P101)

本書は、源氏物語全54帖のパノラマを見晴らす丘。
一気に読める。
でも、きちんと雅な一冊。

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紙の本

紙の本ゲド戦記 全5巻セット

2003/06/30 16:57

子供時代の宿題を大人買い。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

たしか、小学五年の頃だったと記憶しています。
ゲド戦記の名を初めて目にしたのは、
岩波少年文庫収録の『ナルニア国物語』の巻末広告です。
私にとって巻末広告は、最も身近なブックガイドでした。

ドリトル先生
メアリーポピンズ
ホビットの冒険
あしながおじさん

どれも夢中で読みました。
期待を裏切られたことなんて、一度もありません。
しかし、ゲド戦記だけは手を出すことが出来ませんでした。

『影との戦い ゲド戦記1』

それは当時の私にとって、↑この書名が
なんとも地味で、重苦しいイメージだったからです。
わくわくの「わ」の字も感じることが出来ず、
読み逃しました。時折、絶賛する評判は耳にしても。

  過ぎたことですが、これが、原題の「A WIZARD OF EARTHSEA」を
  オズの魔法使い(Wizard of Oz)のように直訳して
  「アースシーの魔法使い」となっていたら
  あるいは、手に取れたかもしれません。

しかし過ぎてみれば、少年時代を終えて、たくさん挫折して
ある程度自分が何者なのかを思い知らされたこの時期に
手にすることが出来たのは幸運でした。

与えられた力の大きさに奢るハイタカ(ゲド)が
挫折し、追放され、青年へと育つ姿を理解するには
当時の私は、少し幼すぎましたから。


・少年の成長物語の『影との戦い』。
・少女の成長物語の『こわれた腕輪』。
・師弟間で力の継承が行われる『さいはての島へ』。
・女性・暴力・暮らしを語る『帰還』。
・理解・共生・世界の「区切り」を語る『アースシーの風』。

子供時代に「読み逃した」寂しさと
それを取り戻そうと「大人買い」した5巻セットに後押しされて
2週間がかりで一息に読み終えました。

ようやく、子供時代からの「宿題」を一つ終えた心地よさと共に、
『ゲド戦記』は私の中で、『ナルニア国物語』と同様の位置を
占める作品となりました。

『ナルニア国物語』は、神話や物語、そしてキリスト教を
背景に持ち、「充実した物語を誰にでも分かり易い形」で
世に送り出されたから子供の頃から繰り返し読むことが出来ました。

一方、『ゲド戦記』が背景に持つのはル・グイン氏の
思想と感性になりますので、作者と訳者の配慮から
子供にも読める形になってはいますが、やはり難解な面もあります。
だからこそ、30代・40代……と、この先も関わることで
今は読み落としている部分も、これから気づいていける楽しみがあります。


大人になるのも、時には悪くないと思わせてくれる5冊。

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