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しいこさんのレビュー一覧

投稿者:しいこ

29 件中 16 件~ 29 件を表示

紙の本

紙の本ふしぎの森のミンピン

2002/12/21 18:48

いたずら心が世界を救う!?(文化の違いとそれを超えるものを感じました)

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大好き! ダールの世界中で売れたファンタジー。
ママに怪物がいるから行っちゃダメといわれたのに、一人で森に行ったリトル・ビリー。案の定、怪物に襲われ木によじ登って逃げると、そこは「ミンピン」という小人の世界。鳥の背に乗って飛ぶミンピンたちを見て、ビリーは怪物をやっつける方法を考え出します。自分も大きな鳥の背に乗って、怪物をおびき寄せ、湖に落としてしまう作戦。火を吹く怪物の唯一の弱点は、水だったのです。
細密なスケッチ風のイラストが淡々とした雰囲気で、イマジネーションが膨らみ、ファンタジー気分がさらに盛り上ります。小人、怪物、森、湖、鳥に乗って飛ぶ空中飛行。ファンタジーの要素はばっちり。それにダールらしい悪戯心も。ミンピン一族が木の幹を自由に歩き回り、さかさまになっても落ちない理由として、「ぴったんこブーツ」なるアイテムが登場し、ジャブをきかせてます。
翻訳は、「〜だった」ときっぱりした言い切り調。特に怪物に追いかけられる場面では臨場感高です。ママの怪物の話では、blood thirsty Whangdoodles(血に飢えたあの例のやつ)とか Spittlers(つばをとばすやつ)が登場しますが、翻訳では「ヒトダマシ」、「キュウケツムシ」など、へんてこな名前を日本語で再現。一番ヒットは「チヲスイ・ハヲヌキ・コナゴナニシテポイ」でしょうか。こんなへんてこな名前のおばけに追いかけられても笑っちゃうよな〜と内心思っていたのに、うちの娘は私の腕をぎゅーとつかんで「ひ、ひ…」と声を上げ、ちゃんと反応していました。そして、ちゃんと「チヲスイハヲヌキコナゴナニシテポイってさぁ…」とまっとうに「怖いキャラクター」として覚えています。
それにしても、あの「ハリーポッター」を国教会が禁書にした(理由は子どもが魔法やおばけと仲良くする話は容認できないためだとか)英国だからこそでしょうか、こういう面白いファンタジーが出てくるのは。「だめ」といわれるとますます興奮が増す、「罪深い」ファンタジーの世界。ママが行ってはだめと言ったあの森の名もForest of Sin(翻訳では「あやまちの森」)です。そして、ビリーを森に行くよう誘うのは他ならぬ悪魔でした。「怪物なんかいないさ」、「真っ赤に熟したイチゴだらけだよ」という囁きには、大人だってわくわく…。この罪深さを盛り上げる小憎い演出が、その後の怪物登場のシーンでの怖さを、物理的怖さから、罪の怖さにまで深めています。ここで、「あーあ、ママの言うこときいておけばよかった…」と思わない子はいないでしょう。これが、ちゃんと日本の子どもにも伝わっているのがすごい。本質的な罪の感覚が、ファンタジーの喜びとしてこの物語に織り込まれているのです。それがダールの魅力。永遠のいたずらっ子というか。
怪物をやっつけ小人の世界を恐怖から解放するという偉業を小さな男の子がやってのけ、でも家では「あらまあ、そんなに汚しちゃって」とママに叱られている。そんなコントラストもたまりません。子どものヒロイズムがぐっと高まります。そして、ママに「何してたの?」と訊かれ、「外の木に登ってた」とビリーが答えるとき、子どもは「ウソじゃないもん(もっとすごいこともあったけどね)」という秘密の共有の喜びを味わうことになります。
ところで、ママが、「二度と木登りなんかしちゃだめ」と怒ったのですが、うちの子は「ママと違うね、木登りしなさいっていうでしょ」と一言。そういえば、今まで公園などで木に登れと言ってきたのですが、これは田舎育ちの母として、都会で子どもを育てることに一種恐怖と後ろめたさを感じている自分の「田舎教育」ママ的な側面なんだと気づきました。ミンピンの森は私自身の憧れでもあります。そう、特にピッタンコブーツが欲しいなぁ。私もまだまだリトル・ビリーの仲間です。

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紙の本

モグラのポウさんの白いおともだち(おセンチ度大)

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もぐらのポウさんは、緑かがやくすてきな谷に家族と一緒に住んでいます。
ある日、弱った白鳥の子を見つけたポウさん。動物のお医者さんをしているおとうさんに知らせて、助けてやります。ポウさんの谷ももう冬。南にわたる白鳥の群れからはぐれたかわいそうな白鳥の子と、ポウさんはおともだちになります。いっしょに雪だるまも作ります。モグラの子供たちの作る雪だるまはイマジネーションがいっぱい。雪だるまといっても絵を見ると、車やほかに子供たちの好きそうなものがいっぱいかたどられています。ポウさんは白鳥の雪だるまをつくります。その晩、白鳥の子はポウさんの作った雪だるまに寄り添って眠ります。
木のお医者さんをしているおじいさんの助けも借りて、ポウさんたちは白鳥の群を見つけます。仲間と一緒に飛び立つ白鳥の子。寄り添って飛んでいるのはおかあさん。そう、ポウさんのつくった雪だるまにそっくりなおかあさん…。
こんなセンチなお話を読んでいると、上の子は、「お母さんが赤ちゃん産んで病院にいたでしょ。さびしいときもあったよ…」と、ギューと抱きついてきました。我が家の「おセンチざる」には、大変な効果があったようです。優しいタッチの絵もよかったかな。

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紙の本

紙の本まじょだ!

2002/10/19 15:04

ファンタジックな絵がすばらしい!

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他にもいくつか書評コーナーに投稿していますが、私のは評というより、その本をどう使うか、どう考えるとおもしろいかといったことを中心に書いています。子どもがいますので絵本への投稿が多いです。
さて、この絵本ですが、ボラという名の魔女がキリンを気に入って、魔法をかけて小さくして家で飼うことにしました。普通魔女といえばネコ。もちろんボラもネコをたくさん飼っているのですが、キリンにはなにか特別なものを感じたのでしょう。ボラは、「おとなしくしていないと、スープにいれちゃう」とキリンを脅したので、キリンはおとなしくしていましたが、魔女の家ではふしぎなことがいっぱいで、好奇心から魔女の留守に部屋の中をのぞいてみました。すると冷蔵庫に帽子が! 棚にも帽子がいっぱい。魔女はキリンを叱りましたが、ふとキリンがかわいそうになってキリンをゆるしてやり、実は冷たい帽子をかぶって寝るのが好きなんだと秘密まで教えます。これが気に食わないネコはキリンとおおげんかを始め、魔女はかんかんに怒りますが、また今度もキリンを許してしまいます。二度も魔女らしくない優しいことをしたので、魔女は病気になってしまい…
ほんとは優しい魔女、キリン、ネコたち。ふしぎなとりあわせのキャラクターたちが魔女の家で繰り広げるふしぎな生活。このふしぎな生活を描いた絵が、なんともファンタジックですばらしいのです。各ページを彩る色彩は、ストーリーにあわせて、怖さや不思議さや驚きや悲しみや楽しさを表すよう巧みに構成されています。クレーやシャガール、フンデルト・ワッサーのような不思議な色や雰囲気を色彩を重ねて表現しています。
魔女のお話なので、クモやネコ、ろうそく、旗、怪しい薬ビン、帽子、ドクロ、骨など小道具もたっぷり。とってもきれいな絵なのですが、よくみるとどれもこれもおどろおどろしいアイテムばかりで、うちの子どもは「でもちょっとコワイよね〜」と目を見開いていかにも怖そう!な顔をしながら絵を見てました。
でもあまりにも絵がすばらしいので、「これを描きたい」と、この絵本をお手本にしてクレヨンの色を選んでいました。
上記の画家のタイプの絵が好きな人にお勧めです。ストーリーはかなりとっぴで、魔女自体も日本では、「悪いことしないと病気になってしまう」ほど悪役視されているわけでもないせいか、子どもがそのユーモアを理解しません。やさしいことをすると病気になってしまうこわい話として聞いています。それもおかしいですが。
自分では嫌いなストーリーではありませんが、親としては、世間で思われている「らしくない」ことしてでも本当に大事なことをしなくちゃほんとには幸せになれないよということがわかる本の方が上位と思います。もちろん子どもが読むのですから、わかりやすくないといけません)。
とにかく絵がすばらしいというのが星4つの理由です。

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紙の本

ぜひ贈物に。ひらがなも学べる!名品絵画の中の動物探し

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ルノアール、広重、ティツィアーノ、ホルバイン、クラナッハ、シャガール、ブーシェ、ルソー、ピカソ、ムガル絵画、マッケ…。古今東西の名品絵画が右ページ。左のページには「いぬ いっぴき みーつけた」、「さるのあかちゃん みーつけた」とひらがなで書かれています。
絵の中に描かれた動物を見つける、単純なゲームなのです。子供たちはこのクイズにぐぐーっと引き込まれて、絵の中の世界に入っていきます。
「何がいる?」この質問だけで十分。知りたい、見つけたいと思う気持ちから、子どもは左のページのヒントを必死に自分から読もうとします。「う…ま…??、うま!!」そして絵の中に馬を見つけます。
絵の中にはほかの動物や昆虫や鳥たちも登場します。第二段階では、そうしたほかの動物たちを見つけ、何匹、何頭と数えて行くのです。今まで知らなかった動物も登場します。同じライオンでも絵によって違う表現であることも自然に覚えていきます。自分の気に入った素敵な絵を見つけ、真似して描くこともあります。なぜその絵が好きなのか訊いてあげると、自分の好きな色や形や内容など、自分の言葉で語ることを覚えていくのです。
絵には他にもたくさんの秘密があります。人の頭の後ろに光輪があったり、一人だけ違うしぐさをしている人がいたり、みな違う国の衣装を着ていたり、手をつないで踊っている人たちが後ろの方に見えたり…。観察が進むとますます謎が深まって、もっともっといろいろなことが知りたくなります。子どもと一緒に大人も考えるので、子どもも大人も絵の世界に深く深くはいっていきます。観察すればするほど深く考え、考えればさらに観察も進みます。
そうした過程がみなとても自然なこととして体験できるのです。
きがつくと、ほんの1時間あまりの間に、子どもはひらがなをたくさん覚え、動物の数え方(ひき、とう、わ等)を覚え、観察の仕方を覚え、自分の言葉で説明することを覚え、他にもさまざまなことを身につけています。
ミクルスウェイト構成の、絵の中に何かを見つける絵本シリーズ数冊のうち、一番最初に子供たちと楽しんで欲しい一冊です。4〜5歳くらいから始めるとよいと思います。年齢が進むとまた違う見方、楽しみ方ができるようになっていきますので、子どもが気に入れば、何度でも見返せるよう、シリーズのうちぜひ一冊は手元におかれることをお勧めします。
大人が見ても楽しい絵本です。子どもがいる家庭へのプレゼントには最適かも。

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紙の本

紙の本アコーディオンの罪

2002/01/26 15:51

アコーディオンの罪とは...

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 書名「アコーディオンの罪」の罪とは一体何だろう...。物語の中心に据えられた緑色のボタンアコーディオンは、イタリア系移民となったアコーディオン職人の製作したただの楽器だ。もちろんアコーディオンそのものには罪はない。

 詳しい物語の内容は前書評にある通り。ヨーロッパから移民が持ち込んだ楽器が様々な民族に属する人々の手を経て、移民国アメリカの歴史が展開される。これは誰もが知っていて、でも一つの物語に仕立てることはできなかった物語だ。

 様々な文化的背景、言語をもつ移民たちが大きく、新しく、空虚なアメリカという文化に吸収、迎合を余儀なくされつつも、アメリカ文化そのものを形成していく一大叙事詩でありながら、移民、マイノリティの日常の残酷さが、淡々と、事件の羅列的に語られていく。それでいて五感がぞよめくような感覚、彼らの生の文化をまるで肌で感じ、香りをかいでいるような生々しい感覚を感じさせる、独特の文体に、最初のページからずずずっと引き込まれ、あっという間に読み進んでしまうこと請け合いだ。50ページも読むと、もう人生の大半を経験してしまったかのような消耗さえ覚える。

 コマーシャル映像のようなアメリカ、白い歯の女、そうしたアメリカの仮面の下にあるアメリカの本当の姿、残酷な真実...。それこそが「罪」の正体に他ならないのではないか?

 否定と排斥の連続、しかしそうした過程を経て様々な異文化がせめぎあいを続けながらも融合し、そしてさらに葛藤を続けてきた。アメリカ文化は今なお侵略の危機にさらされ、敵を見つけつづけ、押し潰そうと躍起になっているのだ。アコーディオンは最後の抵抗をするかのように民族の歌を奏で続ける。

 最後には、繁栄する者、成功の後失敗する者、成功することなくただ葬り去られる者、虐げられる者、虐げる者、何もかも混沌のまますべてがアメリカの真実と受け入れられるような気持ちになる。そして気が付くだろう。これがアメリカという外国の話では済まされない、私たち自身の現実に。

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紙の本

紙の本まるごと一冊ロアルド・ダール

2002/02/10 13:44

まさに「まるごと」一冊、かな

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 あのユモリスト、ロアルド・ダールの挿絵付大全集。大きくて重くてゆっくりじっくり読もうと思ったら、一晩で読んでしまいました。そう、やっぱりダールは面白いのです。単行本として刊行されていないもの、書簡、詩なんかも収録されていて、ダール・ファンにはうれしい限り。でも、抄録なので、全集というより、ダールの面白さご紹介本という感じでしょうか。そういう意味では、あの厚さ重さと金額はちょっと割に合わないかな…?
 でも、うちでは子供が全集もの絵本が大好きで、装丁やいろいろなお話が入って挿絵もついているこの本にすっかりわくわくしてますので、子供に少しずつ読んでやったりしてます。おばけモモの冒険が気に入ったようなので(桃の実の中で、ムカデやクモや虫たちと暮らすことになるっていうすごーいナンセンスな設定が子供のお気に入り)、今度は単行本で買って読んでやろうと思います。
 そうはいってもやっぱりダールは大人向けですよね。ユーモアのある大人向け。大好きです。まあ、この本は一つの財産ですよ。

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紙の本

千と千尋のふしぎ世界をじっくり観察!

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「千と千尋の神隠し」、アカデミー・長編アニメ賞受賞、おめでとう!
いやぁ、嬉しいニュースでしたね。授賞式に出席できなかった監督の「神隠しにあったと思ってください」というコメントも微笑ましかったです。
世界中で数々の賞をかっさらい、50年に一度の素晴らしいアニメ作品と言われたこの「千と千尋…」、アメリカでの公開決定までには実はかなりの悶着があったらしいですね。と、前置きはこのくらいにして、本題です。
この『「千と千尋の神隠し」のことばと謎』は、このアニメの主題や設定、ひいては宮崎作品に共通するテーマ性などを、ディテイルにわたり検証、考察していくかなりマニアックな内容の本です(ちなみに版元は私の大好きな国書刊行会! 発行元自体すでにマニアック! 大好き)。
古今東西に渡るさまざまな思想・文学に明るい筆者の時に奔放ともみえる分析が、実に爽やかです。
トンネルの入り口に立つ石人の意味くらいは、この作品を見た人ならすぐ思い当たるかもしれませんが、時計の文字盤や針の方向、何度か登場する月の満ち欠けと時間感覚の矛盾、看板の文字の意味、四季折々の花が一斉に咲き競っていること、二度登場する花の種類は夏の花しゃくなげだったことの意味、他の作品との類似点など、一回や二回観た程度ではとてもそこまで気がつかないかもという細かい部分が本当によく観察されていて、どの頁でも「ヘェ〜」「ホォ〜」「フゥ〜ン」とうなりながら読めるという珍しい本です。
この本を読んでからまた作品を観なおすと、細かい部分にまで演出が行き届いていることが本当によくわかります。
こどもに「ほらね、トトロのあの時と同じ花!」と言ってみたら、「ママってスゴーイ! 何でもわかるんだぁ」と誉められちゃいました。もちろん「そぉよ〜」と威張っておきました。観察するのって楽しいですよね。それがこどもにもわかったみたいです。
ということで、本文は観察の楽しみとして、話のネタとして、作品をもっと深く考えるきっかけとして、もちろん大変に興味深くおもしろいのですが、筆者の知的世界を垣間見られる「注」(各章に非常に丁寧な注がつけられています)は、さらにすごいのです。
シェークスピアの「テンペスト」の設定との対比、ミルトンの失楽園との関係なんて、考えてもみなかったような隠し球が、これでもか、これでもか、と飛び出してきます。きゃー、マニアック。素敵〜!

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紙の本

紙の本しっぽ5まんえん

2002/02/10 13:30

一番大事なものなあに?を教えられる本

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 うちの娘にこの絵本を読んでから、「おまえの一番大事なものは?」と訊いてみると、「お花の模様のドレス!!」と返ってきました。「じゃあ、妹が泥棒につかまって、そのドレスと交換なら返してやろうといったらどうする!?」「イヤダァー!」「じゃあ妹は返してもらえないよねー」「イヤダァー!」と、このあと延々と親子の哲学的対話(レベルはちょっと…)が始まるのでした。
 とにかく、こういう考えるきっかけになる絵本を小さいときに読んであげることも大切なのかなーと思いました。

 大事なしっぽをなくしたら、たぬきのポンは「たぬき」のポンではなくなってしまうくらい大変なのです。しっぽは「たぬきのアイデンティティ」といったところでしょうか。しっぽのないたぬきなんて、とても恥ずかしくってこそこそしなくちゃならないし…。だからお家を売っても、どんなに高くっても、なんとしても取り返さなくちゃならないのです。
 この絵本には子供に考えさせるネタが一杯です。小さい子供のための国語の教科書のように使えます。

 上に書いた「たぬきのしっぽ」をテーマにすれば、自分にとって何が一番大切かを考えるチャンスになるし、しっぽを拾ってえりまきにしてしまういたちのズルさをテーマにすれば、うそをつくことの恥ずかしさや悪さ、ほかの人の大事なものとわかっていてそのままにしておく卑怯さなどについて、子供にとてもわかりやすく教えることができるのです。

 教えながら子供にまた繰り返し読み聞かせてやると、絵本のたぬきが最後にしっぽを取り返して、本当にうれしそうにしている絵が、子供にとってもまたうれしくてならないといったように、きらきらと目を輝かせるようになりましたよ。

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紙の本

紙の本エミリー・ザ・ストレンジ

2003/04/12 19:28

一匹狼娘登場

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赤と黒の強いコントラストが、いかにも「つよい!」印象の絵です。宇多田ヒカル訳とは知らず、思わず手にとってみてしまいました。
エミリーはほんとに変な子なのです。ひとりになるのは怖くない、ほっといてほしい、自分の趣味がちゃんとあって、割と正義感が強くて…。つっぱっていて個性が強いパンクな娘。わたしはわたしよー!という強さが、全体ににじみ出ています。
実は自分の子どもに買ってやろうかと思って手にとったのですが、どの頁も絵の色彩が強くてとんがっているので、小さい子向きではないです。
昔、「赤と黒のエクスタシー」の売り文句で成功した映画(「天と地と」、角川のコピーはさすが、すごいですね)ありましたよね。今ではこのコピーが独り歩きして、いろいろなところで使われています。あれを思い出しました。
赤と黒の配色は、それだけでぐっと人の心をとらえます。見ているだけでドキドキしますね。この本もそうです。眺めているだけでドキドキします。
エミリー自身のキャラクターもそうです。強くてドキドキします。
小さい子供には強いですが、小学校卒業間近くらいになればちょうどよくなってくるのではないでしょうか。
わたしはわたしよー!という強さ、生きていく上で必要な場面が、誰にだって何度か繰り返しあるはずです。この本のドキドキする感じや、エミリーの強いキャラを、そんなときに思い出すことも役に立つことがあるのではないでしょうか。だから、まだ素直にドキドキして、ヘェーと思えて、だけどこの本の強さに圧倒されないくらいの年齢の子にちょうどよいと思います。その年齢は人それぞれだと思いますが。
いろんなことに臆病な男の子や男性にも読んで欲しいですね〜。

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紙の本

紙の本おおかみと7ひきのこやぎ

2003/01/19 02:44

CDがよくできてます

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7匹のこやぎのおはなしCD絵本。小さいサイズ(大人の手のひら大)のボードブックで、絵はマンガ風です。
読み聞かせCDがいくつか欲しくて買ったのですが、CDは読み聞かせというよりはラジメーション的出来上がり。音効もBGMもちゃんと入り、声優さんが吹き込みをしてきちんとドラマ仕立てになっていました。意外だったのは、オリジナル挿入歌が2曲ほど入っていたことです。「おれたちゃわんぱく7ひきこやぎさ…」と調子のよいメロディーと覚えやすい歌詞で、少なくともうちの子供たちの心はしっかりとらえてます。今では毎日歌っていますよ。

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紙の本

マジョーラ、マジョーリ…呪文がかわいいのです

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マジョマジョは魔女です。まほうのほうきが古くなったので、ほうきやさんに出かけます。やまねこのピートリィはまほうのくわばたけの中に住んでいる秘密のほうきやさん。マジョマジョはピートリィに教わって、「よくとぶ草」を煎じた汁を桑の枝にかけ呪文を唱えます。「マジョ〜ラ、マジョ〜リ、マジョ〜ル、マジョ〜レ、マジョ〜ロ〜!」そしてピートリィがほうきをしあげ、朝陽の力で新しいほうきのできあがり! ピートリィは古いほうきをくわばたけに植えて育てます。
まほうのほうきのことはほんとうはだれにもひみつなのですが、ちょっとだけ作り方を教えちゃう、とってもほんわかした絵本です。
ピートリィもマジョマジョも子どもに好かれるキャラクターのようです。
マジョマジョの呪文もなんとも安直ではありますが、それが子供たちに大うけで、「マジョ〜ラ、マジョ〜リ…」というところでは、片言の赤ちゃんまで、もにょもにょと笑顔で合唱。
マジョマジョは近所のおかあさん的外見で、やせていて人のよさそうなメガネのなかの眼がいつもわらっているようなキャラクターです(実は子どもの保育園の担任の先生に似てるのです)。
ピートリィは眼の大きなかしこそうなごきげんなネコ。
全体に楽しい雰囲気のほのぼのしあわせ系の絵本で、大人が最初ページをめくるととくにインパクトはないのですが、一度読んできかせると意外にも子供たちは次の晩も読んで読んでとせがむような絵本です。図書館で見つけたらぜひ試してみて、子どもが気に入れば買ってもよいかも。女の子が好きそうな本です。
ハロウィンの季節の贈り物にもいいですね。自分ではなかなか買わない本で、もらったら意外に子供たちにウケてうれしいという感じでしょうか。

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紙の本

紙の本手塚治虫マンガ音楽館

2003/04/16 03:04

時代は違えどテーマは普遍、手塚治虫はやっぱりエライ

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「手塚治虫マンガ音楽館」というタイトルを見て、すぐに思い浮かんだのは、肺炎で死んだ兄になりすまし男装してワルシャワの音楽院に入学したルイザとショパン、そしてレジスタンスの闘志ヨーゼフの3人の天才ピアニストの運命を描いた「虹のプレリュード」、そして、ブラックジャックの中に出てくる、愛器ストラディバリウスを探して吹雪の中に出て、凍傷で指を失ってしまう天才ヴァイオリニストのエピソードでした。
実はこの2作品がこのアンソロジーの最初と最後を飾る作品になっていました(ちょっとうれしかったので、つい書評コーナーに投稿している私)。
自らもピアノをひくし、クラシックを愛した手塚治虫氏。その作品には数多くの名作が登場します(私はファウストの悪魔の歌のシーンが好きでした)。スターキャラのひとりとして、ベートーベン(さまよえるオランダ人と称していることも)もいますよね。
とにかく、手塚作品には、音楽や楽器、歌、踊りといったものが非常によく登場するのです(火の鳥大和編の湖上の笛のシーンなど、音楽の魅力をコマの中によくも表したものだと思います)。
このアンソロジーは、一応一話完結でよめる短編(抄録も有)ばかりを集めているので、手塚と音楽のつながりを示す作品を網羅したものではありません。が、完結話として読めるものを集めているため、手塚作品を知らない人がはじめて読んでも十分楽しめることは請け合いです。
収録作品は、クラシック音楽に関係したものばかりでなく、当時の時代を映すフォークソング、和太鼓とロック、民謡、楽器、はては鳥の歌までと、幅広いテーマにわたって集められています。また、モーツァルト、チャイコフスキー、バッハへの想いがつづられた、手塚氏本人のエッセイも収められていて、これがまた興味ぶかいものでした(3人の作曲家が挙がってるけど、私は手塚氏は絶対にムソルグスキーが好きだったと思う。単なる直感ですが)。
二番目に収録された実在の名指揮者バーンスタインのベトナム反戦平和記念コンサートのエピソード、同じくヴェトナムに関連した「0次元の丘」(ヴェトコン狩で虐殺された家族の生れ変りの少年少女らが、臨死体験をした指揮者の演奏レコードを聴いて前世を思い出すという話)は、イラク戦争のごたごたに果てしない幻滅感と怒りを感じた経験を経た今また読み直すとまた深い感慨がありますね。
映画「戦場のピアニスト」では、ポーランドの天才ユダヤ人ピアニストが、敵味方問わず、世界の宝である彼を守ろうとする人々に助けられつつも、戦火の中をサバイバルしてとにかく生き延びる姿がすさまじかったですが、「虹のプレリュード」では、天才ピアニストたちがいとも簡単に撃ち殺されて…、なんとも悲しいですね。
音楽関係作品のアンソロジーではありますが、(すでに時代感覚はちがってはいるのですが)戦争、権力、人間同士の争い、愛と生、人生の意味といった普遍的なテーマを、音楽をツールとして描き出す作品を集めた、といったほうがよいかもしれません。そういう点では、今読むことに意味のある一冊です。
不条理には怒りを、本物には愛を、暴力と争いにはノーを。それが、健全な人間のあるべき姿なのですよね。マンガの中に哲学と教養と音楽を詰め込むという常人技ではなかなかできないことをやってのけた手塚治虫って、やっぱりエライと思うのです。

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紙の本

紙の本紙でつくる楽器

2002/10/19 16:29

作るのは簡単、鳴らすのが難しい

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連休に子どもと何か作って遊べるネタを探そうと、小さな子でも楽しめるクラフトの本をあさっていて見つけました。紙とストローでできる! 子どものためというより、もっぱら自分が作って遊びたくなり実践!
作るのは簡単です。
本は非常に細かく、何センチに切って、紙の目に逆らわずに巻け、紙の目の方向の見方は…、音の雰囲気を変えるにはこうする、などと丁寧な記述やイラストつきの解説があり、とても体系的です。先生向けに書かれているのでしょうか。
が、実際音を鳴らしてみるだけなら紙も適当に切ればいいし、ボンドや壁紙用ののりでなく、セロテープで十分。
楽器の種類は、ラッパ、笛が主で、ほかにムチや太鼓もあります。
うちではまずラッパに挑戦。3分でできあがり。あっという間です。
では鳴らしてみましょう。…なかなかこれが鳴りません。
微妙な角度を保ち歯と舌でうまくストローを押さえ、頬に力を入れてプアー! やっと鳴りました。大人ならなんとか。では子ども。鳴りません。ほんの一瞬、プ!
それでも子どもは大満足、鳴った鳴ったと大騒ぎでした。
「紙で楽器を作る」という発想が、クラフト苦手だけど興味はあるけどあんまり面倒なのはいや、という私の魂にコーンと響いてしまいました。
なぜそれで鳴るのかという解説や紙楽器の使い方について詳しい事例の紹介があればもっと役に立つのに、それにカラーの紙でペイントなんかしてあるお洒落な作品の写真か何かあればもっと楽しいのに、という私の勝手な希望が強いため星は2です。
繁下さんという方の、切り抜いて作る楽器という本もあるようですから、今度はそれで試してみようかしら(さらに手を抜くつもり…)。

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紙の本

名品絵画でゲーム。楽しくハイソに数を覚えましょう!

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ミクルスウェイトの名品絵画のなかに「見つける」シリーズ数冊のうち、特に「みーつけた!絵の中で動物たちがかくれんぼ」と並んで、子供たちと一緒に楽しんで欲しい絵本です。
ゴーギャン、マティス、カンディンスキー、国芳、ゴッホ、ルーベンス、スペンサー、ゴッチ、ルソー、レジェ、クラナッハ、ピカソ、フレーゲル、ボッティチェリなど、錚々たるアーティストたちの古今東西の名品絵画が右ページ。左のページには、「ひとつあるものなあに」、「ふたつあるものなあに」とだけ書かれ、それが20まで続きます。
(ことば、俵万智さんの触れ込みですが、それだけです。ちなみに、俵さんが訳した絵本は大抵リズムがよく子どもも楽しんでいます。読んでいる大人も直しながら読まなくてよいことが多く、安心ですよ。ちょっと古すぎる言い回しもあって、直すこともありますが。そう、大抵の翻訳絵本は、かなり直しながら読まねばならないのです。子どもに「きりぎりす老人は…」(おばけ桃の冒険、ダール)なんていっても乗ってきませんよ。「きりぎりすじいさん」でしょう、やっぱり)。
本題に戻ります。
数が少ないうちはいいのですが、多くなってくると大変です。絵画の中で数の多いもの、限られてくる上に、丁度その数のものを探すのは大変です。20あるのは、ボッティチェリの「神秘の降誕」のなかの天使でした。これには感嘆! なかなかのセンスなのです。
ことばの下には数字が大きく書かれています。子どもは数字を読み、ひらがなを覚えます。位置付けとしては、上にも挙げた「みーつけた!」の次の段階にあたります。絵の中に描かれているものをさらによく観察し、それぞれのものの数を数えます。動物を探す「みーつけた!」より、少し難しい作業になっています。細かく絵を見ているので、意外な発見がたくさん出てきます。
絵の中には他のものもあるので、二回目からは他のものの数も数えます。たくさんのものを数える作業は大変辛抱の要る仕事ですが、子どもは目をきらきらさせて、「これはね、いくつあるか!かぞえるからね!」と数えます。
自分の描いたオバケの顔も、数えて見せたりするようになり、数への興味が増していきます。もちろん、「何で3つ描いたの?」と訊いてあげます。すると、「これはね、いまのおばけで、それからこれはおおむかしのおばけ、それからこれはなんだっけ、「みらい」のおばけ…」とおもしろい説明(クリスマス・キャロルです)も飛び出して、自分で工夫して数に意味をつけている様子です。エレベーターのボタンで数を覚えた子にしては大変な進歩でしょう。
小さいときに子どもが出会う本はとても大切です。「お母さんと天使の数を数えた大切な思い出の絵」がある人生を子どもにプレゼントするなんて、とってもお洒落だとおもいませんか。
贈り物にも素敵です。「みーつけた!」とセットにしてもよいかもしれません(私は妹の子供たちに二冊セットで贈りました)。

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