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  3. homamiyaさんのレビュー一覧

homamiyaさんのレビュー一覧

投稿者:homamiya

40 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本カラフル

2008/05/29 01:12

軽い文体で、さらりと大切なことが書いてある

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

死後の世界をただよっていた「ぼく」が、抽選に当たったとかいうワケわからん理由で、再び現世に戻り、自殺した「小林 真」少年として、生きることに。
本来なら「ぼく」は、生前の罪とやらのため、二度と生まれ変わることができない魂なんだとか。

が、このチャンスをものにして、「小林 真」として生き、その間に、自分の生前の罪とやらを思い出すことができたら、輪廻の輪に戻してくれて、ふたたび生まれ変わることができるという。

そう説明してくれたのは、天使。
この天使にいろいろアドバイスをもらいながら、「ぼく」は、「小林 真」として生活をはじめる。

自殺した少年だけあって、「小林 真」の周りはなかなかすさんでいる。周りの人の本性=イヤ~なところがだんだん見えてきてげんなりするのだが、後半、そうではない部分も見えてくる。

これがタイトルにもなっているテーマで、人間は、みんないろんな色を持っている、と。
キレイな色も。汚い色も。

「ぼく」の語り口調による、軽快でユーモラスな文体。すごく読みやすい。
「ぼく」にとっては、所詮、すべて「小林 真」という仮の体の出来事なので、常にどことなくつきはなした、適当~な言い方。その距離感がここちよい。

軽いけども、決して内容がないわけではない。大切なことをあくまで軽~くさらりと、この本はいう。

天使は、人生をちょい長めのホームステイだと思えばいい、と「ぼく」に言う。
ステイ先は選べないし、自分からリタイアも辞退もできないけれど、ルールはない。与えられたステイ先で、せいぜい数十年、好きにすごせばよいのだ、と。
そんな風に考えられれば、楽に生きられるような気がしてくる。

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紙の本王妃の離婚

2008/09/23 02:39

中世フランスの、痛快法廷サスペンス

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

佐藤賢一作品で、ベスト3に入る傑作。直木賞受賞作でもある。
解説で紹介されている審査員の井上ひさしの感想「おもしろくて、痛快で、おまけに文学的な香気と情感も豊か」がまさにピッタリ。

●時は、中世。フランス王ルイ12世は、醜女と名高い王妃と別れ、広大なブルターニュ公領を持つ未亡人との再婚をねらうため、王妃に対して、離婚裁判を起こす。
この時代、カトリックで離婚は認められていない。
離婚したければ、「結婚の無効取消」をねらうしか、ない。

どうすれば、キリスト教の法にてらして、「無効」とできるのか?

主人公は、裁判を傍聴しに田舎から出てきた弁護士。
この著者の作品によくある、昔はかがやいていたダメ中年。この物語は彼の再生物語、でもある。
かつては、パリ大学で英名をとどろかせた学僧だったが、おちぶれて今や片田舎の弁護士。
これが、ひょんな事から王妃の弁護をすることになり、圧倒的な劣勢から、その冴え渡る知性と現場で磨いた凄腕で、裁判をひっくり返そうとする、法廷サスペンスだ。

「インテリは権力に屈してはならない」と、息巻いていた学生時代のように、敢然と国王とその手下たちに楯突く主人公。
「新しい弁護士は、俺だ」と、傍聴席から立ち上がり、後輩である学生達の喝采を受けて弁護席に立ってからは、まさに痛快。

どうすれば、キリスト教の法にてらした「無効」をはねのけられるのか?

専門知識を駆使し、場の空気をつかむ駆け引き。
そして、教会裁判で使われるラテン語で緻密に検事側を追い詰めつつ、記録には残らないフランス語で、「美人じゃないから、やらなかったなんて、どう考えてもインポ野郎の言い訳じゃねえか」と、傍聴席の民衆を沸かす。傍聴席は爆笑しながら、下品な野次で応えてくれる。
検事側はますますうろたえる。
ここらへん、実にエネルギッシュで面白い。

そして。
キリスト教において、夫婦とは、結婚とは、セックスとは?
若かりし青春の日に、最愛の女を失った主人公の考える、考え続けてきた、男とは?女とは?愛とは・・・?

解説にもあるが、登場する2人の女性の描写がこれまたステキ。
主人公の昔の恋人、ベリンダ。美人でおしゃべりで愛らしく、生命感にあふれている。
かたや、王妃。醜女と呼ばれるが、濃い色の地味な服に頭巾をかぶって、印象は暗いが、孤立無援の中、穏やかにしかし頑なに離婚を認めない、高貴な凛とした強さ、そしてその中にひそむ弱さが、後半には愛らしく描かれ、どちらも魅力的。

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紙の本ま・く・ら

2008/09/24 02:55

好奇心旺盛で多趣味な噺家の枕はこうなるのか!

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

噺家・柳家小三冶の、18編のまくら集である。

まくらとは、本人のあとがきによると・・・
「噺の枕というのは、落語の本題に入る前のイントロで、こんなにいろんなこと長く喋るものではないのです。短い小噺をひとつふたつ喋っておいて、ポンと本題に入るのが江戸前てぇなもんです。本題に自信がないので独演会などの時にぐずぐずごまかしのためにやり出したのです。」
とあり、これがしかし、本題の落語より面白い、と言われるほどで、とうとう本になった。
私はこの著者の落語を聞いた事はないが、まくらは確かに面白かった。

まず、噺家コトバそのままの文体が、いい。ほどよい茶目っ気と柔らかさ。
『以前は外国へ噺家が行くなんてこたぁもう、今で言えば月の世界、火星の世界へ行くような、そんな感じがしたもんでございました。』
などと始まり、その内容は、多趣味で好奇心旺盛な著者の性格を反映して、さまざまな分野にわたる。
それでそれで!?と聞きたくなってしまう、著者のとる行動、思考の行く先。
そして、どれだけ多分野にわたっても、一本筋が通っていて、何の話をしていても、ブレない価値観をもっている事を感じさせる。

・日本人は豊か豊かと言われるけど、アメリカの失業者は、失業保険で生活しながら、庭もプールもある生活。失業しているワケを聞くと、「今おれに合う仕事がないから」と。「合う仕事が出てきたらバリバリ働く」。日本人は何人が、合う仕事をしていると言い切れる?

・外国のホテルのフロントで、ルームナンバーが英語で通じた!それだけで、「オー世界に国境はない」と大喜び。ちょっと通じる、くだらないことだけど、とても嬉しい。

・10年かけて映画を字幕ナシで見れるよう、英語の勉強を志す。字幕に出てこないものを見逃したくない。アメリカ人が涙する一言で涙し、笑うとき一緒の笑いたい。五十の手習いで、単身アメリカの英語学校へ。

・今の子供に涼しいものはナンだ?と聞くと、クーラー、扇風機と答えるだろう、でも本当に涼しいのは山の中とか川のせせらぎだ。大人が忙しくてそれを教えてあげられない世になっている。

・人の一生は子どもの時に決まる。後から性格を変えるのは無理。生れついた性格で爪弾きされるなら、開き直ろう、爪弾きされる楽しさもある。

このように、一つ一つは、他愛もないエピソードなのだが、著者の口調で読んでいくと、ハマる。
そして、「幸せって何だろう?」という考察もある。
その結論は、大層なものではないが、この語りの流れで読むと、胸にすとんと落ちて、いい気分になれる。

これを読んだら落語が聞いてみたくなり、新宿・末廣亭に行って来た。
柳家小三冶のナマ枕も(噺も)いつか聞きに行ってみたい。

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紙の本精霊の守り人

2008/06/04 01:58

文化人類学者による、緻密な世界構築、これぞファンタジー

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

新ヨゴ皇国という架空の国が舞台のファンタジー。
もともと、児童文学だったものを大人向けに漢字を増やしたものらしい。

「ファンタジー = 何でもアリ」なのではなく、ファンタジーというのは、いかに「ある世界」を作り出すか?という作業で、文化人類学者である著者は、建国の神話、先住民の伝承、先住民と新しい住民との違い、民俗、社会制度、精霊と人々の関係、などなど実に緻密に、かつ余計なものなく1つの世界を作り上げている。それがまず見事!

また、小説たるもの、世界をつくりあげるだけではなく、その世界でもって、物語をアピールできることが大切。

物語は、年のころは11~12歳の少年皇子が精霊の卵を産みつけられ、それゆえに父帝からの刺客や、卵をねらう魔物におそわれ、女用心棒や先住民の呪術師らと共に、精霊のナゾをときながら、卵を無事に孵そうとする、というモノ。
物語に、作り上げられた世界観がからみ、物語の進行とともに、世界の仕組みが明らかになってゆく。

物語のテンポも早く、先が気になり読み急いでしまう。
女用心棒が敵とたたかう戦闘シーンも、飛ばさずに読めるあたり、文章力もなかなかだ。

いいセリフも出てくる。世界はファンタジーでも、そこに人がいる限り、人の幸せ、不幸せは、やはりある。女用心棒は、その出生のために、追っ手から必死で逃げるつらい生活を送り、育ての親をそれに巻き込んで不幸にしたのではないか?という負い目を感じていた。その育ての親のセリフ。

「いいかげんに、人生を勘定するのは、やめようぜ、不幸がいくら、幸福がいくらあった。金勘定するように、過ぎてきた日々を勘定したらむなしいだけだ」

ファンタジーだから、全てが魔法で丸く収まるわけでは決してなく、どうしようもない事もある。それはこの世界と同じ。
それに立ち向かう登場人物たちの姿が、いとおしい。

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紙の本象は忘れない

2009/02/01 01:53

円熟した著者晩年の作品 レベル高い

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

小説家ミセズ・オリヴァは、ある婦人から、奇妙な依頼をうける。
「私の息子の結婚相手の娘さんの両親は、10数年も前に心中しているのだが、それは父親が母親を殺して自殺したのか?それとも母親が父親を殺して自殺したのか?」
それを突き止めてほしい、という。

困ったオリヴァは友人ポアロを訪れる。
アガサ。クリスティー82歳の時の作品、年代順で言えば、最後に書かれたポアロ作品。
自己顕示欲が強いポアロも歳をとって穏やかになっている。

晩年の作品だけあって、円熟した感じがある。
派手さはなく、ちょっと小粋で、すんなりした展開、ラストに満ちる穏やかな愛。

事件は当時有名なものだった。
立派な夫、愛情こまやかな妻、二人は仲むつまじく、金銭も健康も何のトラブルもない。
だが二人はある日、銃で撃たれた死体となって見つかった。
現場の状況から見て、それは自殺としか言いようがないが、動機もない。
警察もさじをなげて「心中」と片をつけた事件。

果たして真相は本当に心中だったのか?その動機は?
そして依頼者の夫人は何故それを知りたがるのか?


「象は忘れない」

子供たちが小さい頃から聞かされるお話。鼻に縫い針を突き刺された象がそれを何年も忘れず、注ぎにその犯人が通りかかったときに水をぶっかけた、という逸話。
それにちなんで、オリヴァは、昔のことを覚えている人を「象」と呼び、この謎をとくため、オリヴァとポアロは、「象探しの旅」に出る。

この「象」という言葉が、作中、ずっとついてまわり、面白い印象を残す。
勘違いした秘書が、オリヴァはアフリカに猛獣狩りに出かけた、などと勘違いする辺りもおかしみがある。

オリヴァとポアロが様々な人を訪ね、実に巧みに世間話から、事件の話にうつり、その当時のことを聞き出してくる。それが全然真相に近づかないようなどうでもいい話なのだが、最後までいくと、その人たちの話の中に、真実の切れ端がちりばめられていたことが、わかる。

その長々とした会話から、読者を飽きさせる事なく、少しずつ過去を浮かび上がらせる筆の巧みさは、さすが。

心中事件の真相は、深い愛に包まれたものだった。
そのあたたかい余韻にひたりつつ、オリヴァのセリフでラストがしまる。

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紙の本あさきゆめみし 源氏物語 1

2008/08/02 02:54

いつの時代も女性の心は変わらない

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

源氏物語といえば、1000年も前に書かれた、我が国最古の小説。
原文も現代訳文も読んだことはないが、漫画では登場人物もストーリーも覚えてしまうほど読んだ。
それが、この「あさきゆめみし」。絵も美しいのだが、ある場面がすごくキレイで、何度も何度も読み返してしまう。

時は平安時代。帝と身分の低い妃の間に生まれた若君は、光り輝くばかりの美しさ、光る君と呼ばれる。母親は病で若くして亡くなり、のちに帝の元に母親によく似た藤壺の宮が輿入れしてくる。藤壺を母とも姉とも慕い、それはやがて激烈な恋心に変わる。
若君は美しく成長し、光源氏と呼ばれ、決して結ばれない父帝の妃である藤壺への想いを胸にかかえながら、多くの女性とさまざまな恋をする。

とあらすじを読むと、「なによ光源氏って女の敵ね」という印象しかもたないのだが、私はこの本を読んで、紫式部あるいは大和和紀が書きたかった主人公は、光源氏ではなく、光源氏が育て、愛し、一番大切な妻とする、「紫の上」ではないかと思った。

紫の上は、幼少時に源氏に引き取られ、慈しまれて育つ。
美しく成長して、源氏の妻となり、教養もあってこころばえもそれはそれは立派な女性だ。
源氏もあまた女性と関係するが、紫の上は明らかに特別待遇、誰よりも愛している。
が、晩年に、どういうつもりなのか、ときの帝の姫君を正室にもらってしまう。

源氏が自分を誰よりも大事におもってくれていることはわかる。
でも身分が高く、若い姫君に、いつか心がかたむいてしまうかもしれない。
それでも心をみにくい気持ちで満たすのはいや、と思いつつ、悲しくて一晩中泣いても源氏にも相手の姫君にもやさしく接するけなげな紫の上だが、心の中の何かが砕けてしまう。
女ならだれしも逃れられないつらくてたまらない嫉妬から逃れることができない、と。
そしてそれを源氏ですらわかってくれない、と。
どんなにむつみあっていても、男と女、いや、人と人との間には深いへだたりがある、と気づく。

「虚しいこと・・・・・
人生とはかくも頼りないものか
たしかなものなどなにひとつない」

男にはたくさんの恋人がいるこの時代、それでも嫉妬しないことが美徳と言われるが、そんな女の自由のない世界から早く去ってしまいたい、と思う紫の上。

そんな鬱々とした日々が続くある春の日、法会を営む最中に、とつぜん、気づく。
まばゆい光、かぐわしい花々、萌え出る緑、鳥の声・・・・

「この世は何と美しいのだろう」

「生きとし生けるものは
みななんと美しい輝きに満ちているか・・・・!」

「わたくしはこの世と・・・
この世に生きることを
こんなにも愛している・・・・・!」

ここが。すごくキレイだ。
男に左右されない生き方を欲しながらも、それでも人を、この世を愛し、愛されることができてしあわせだったと紫の上は言う。
喜びも悲しみも愛する人だからこそ、もらえるもの。
「あさきゆめみし」ではここがメインテーマになっているように見える。
どれほど原作に忠実なのかわからないが、この漫画通りだとすると、1000年経っても、人間が考えることって一緒なのね、と思わせられる。

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紙の本楽隊のうさぎ

2003/03/23 03:29

ブラス!!ブラス!!ブラス!!!

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

引っ込み思案の中学生・克久は、入学後、ブラスバンドに入部する。先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す毎日。少年期の多感な時期に、戸惑いながらも音楽に夢中になる克久。やがて大会の日を迎え……。

ストーリーは背表紙に書いてある上記のあらすじそのままで、それ以上のことは何も無い。実に平凡でありがちな感じがするが、本の良さは、あらすじだけではないのだという事を改めて感じた本だった。
この本には、リズムがある。

ブラス!!ブラス!!ブラス!!!

例えばこれは第四章のタイトルだが、県大会を目指して、寝ても覚めてもブラス!という夏を送る部員達をとてもリズミカルに表わしている。
わかりやすくリズムのある言葉に導かれて、読み手も克久と共に色々な気持ちを味わい、大会の日を迎えられるのだ。
心を灰色に塗り固め、学校で何も感じないようにしていた入学当初から、部活に入り、個性豊かな同級生や先輩とのやりとり、親とのやりとり、初めての大会で味わう敬虔ともいえる舞台、学年が上がってまた部活三昧の毎日、2度目の大会。
学生時代の部活というのは不思議だ。プロというわけではない。お金ももらわない。しかし、半ば強制力みたいなものもあり、時間をかけて同じ面子で何度も練習をすることになる。みんなで一生懸命がんばって何かを作る、と言葉で書くと何だか陳腐だが、そこから得られるものはなかなか他の時期・場所では得がたいものだと思う。
「うまい演奏や深い演奏はできても、こんな真剣な音は今しかできない」
と克久の先輩が言ったように、それを克久が「温かな生き物の体を抱きしめるように解った」ように、それは経験した人にはわかるのだろう。
そして、本を読んでその経験を疑似体験する読み手にも、わかるような気がするのだ。

登場人物もいい味を出している。
私のお気に入りは、1人は部活顧問の森勉、通称ベンちゃん。
音楽に燃える、クレイジーな先生で、指揮者でもある。部員達は彼の悪口を言い出すと止まらないが、ほかの先生と違って、ベンちゃんの悪口は言えば言うほど楽しくなる。そんな先生だ。この先生は、部活を通して「他者と比べては生まれないような質のプライドを生徒たちの中に作り出してしまう」すごい先生だ。学校でこんな先生に出逢えたらいいなと思わせるキャラクターだ。
もう1人は克久の胸に住む、うさぎ。裃をつけてはっはあと頭を下げたり、歌を歌ったりする。このうさぎが克久の成長に一役買っているのだが、ふつーにこういううさぎが登場するあたり、作者の遊び心と、そのウマさに感心する。

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紙の本ヨーロッパ退屈日記

2009/03/07 18:11

硬質なワガママというかこだわりが、キラキラと粋にきらめいて面白い

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

若かりし伊丹十三監督の、ヨーロッパ暮らしを綴ったエッセイ。
硬質なワガママというかこだわりが、キラキラと粋にきらめいて面白い。

読み始めは、何かちょっとキザで退屈だなー、と思っていたが、しだいに「フムフム」と真剣になり、キザで潔癖なこだわりが、快感になってくる。

あとがきに
「ヨーロッパ諸国と日本では風俗習慣はもとより「常識」そのものにさまざまな食い違いがある。わたくしは、これをできるだけ事実に即して書きたかった。」とあるように、著者の外国での暮らしでふれた実体験が、話題の根っこにある。
そこに思想とこだわりがのっかって、演技、映画、オシャレ、語学、スポーツカー、音楽、酒、料理などについて、彼のあらゆる美学が語られる。

たとえば、スパゲティの正しい食べ方。
スパゲティは、音を立てて食べるのは絶対のタブー。
音を立てないようにするには、フォークに適度な量の麺を巻き取る事が大切、と、正しい巻き取り方について述べる。
その述は、ヘミングウェイの一節に始まり、どこかユーモラスで厳しく、巻き取り方が緻密に伝授され、さいごはヘミングウェイの一節でまた終わる。

たとえば、カクテルについて。
「カクテルというものは、本当は愉しいものなのにねえ。」
晩餐前、夜早い時間に飲むものとして最適という。
ブランデイは食後の飲み物だし、ビールは満腹になってしまうし、ステーキの前に日本酒でもなかろうし、ウィスキーでもよいが女性同伴の場合はカクテルの法が良いと述べる。
そして、

「わたくしは、彼女の、その日の気分や、好み、アルコール許容度、そして服装の色などをおもんぱかって、これ以外なし、というカクテルをピタリと注文する悦びは、男の愉しみとしてかなりのものと考えるのだが、いかがなものであろうか。」

ステキだ。
こんな男性と飲みに行って、カクテルをピタリと選んでほしい。

以下、カクテルに関する覚え書きと、おつまにの記述が続き、ここで私は耐えられなくなって本を閉じる。

いかん。
猛烈に。
美味しいカクテルが飲みたい。

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紙の本太陽の塔

2008/10/07 13:53

愛すべき若者、というかバカ者の、おもしろ切ない青春小説

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
京大農学部休学中5回生、という身分の愛すべき若者、というか、バカ者が主人公の青春小説。

彼の生活は基本的に、女っ気ナシ。
作中の表現を借りて表現すると、

『あらゆる意味で華がなかったが、そもそも女性とは絶望的に縁がなかった。(略)
しかし、私が女ッ気のなかった生活を悔やんでいるなどと誤解されては困る。自己嫌悪や後悔の念ほど、私と無縁なものはないのだ。かつて私は自由な思索を女性によって乱されるのを恐れたし、自分の周囲に張り巡らされた完全無欠のホモソーシャルな世界で満足していた。類は友を呼ぶというが、私の周囲に集った男たちも女性を必要としない、あるいは女性に必要とされない男たちであって、我々は男だけの妄想と思索によってさらなる高みを目指して日々精進を重ねた。』

ハイで皮肉で自虐的な文章が、楽しい。
どう見ても、本当は彼女が欲しいのに、それを表では認めず、見栄っ張りで頭でっかちなムサ苦しい大学生活。
著者が京大の大学院在籍中の作品であり、サークル、飲み会、下宿、研究室・・・・と、その描写は、実にリアル。
私がいた仙台の大学の理学部での生活を彷彿させる。

主人公はしかし、3回生の時に、同じクラブの後輩「水尾さん」とつきあっていた。
そして、フラれた。
決して未練などない、と書いてあるけど、その行動はどう見ても、未練たらたら。
ストーカーまがいの行動にも「これは研究」と理屈をつけて、正当化しつつ、彼女に恋する新しい男とアホな戦争をして、似た者仲間たちと妄想をくりかえし、反クリスマス同盟なぞ結成して・・・・・

で、結局何が言いたいの?というと、水尾さんへの恋と失恋と再生の物語、なのかしら。

アホな生活を送れば送るほど、ちりばめられる水尾さんの描写が、愛にあふれていて切ない。
水尾さんは回想シーンでしか出てこないのだが、彼の回想する水尾さんは、とにかく愛らしい。それが切ない。

『駅のホームで歩行ロボットの真似をして、ふわふわ不思議なステップを踏む。』
『猫舌なので熱い味噌汁に氷を落とす。』
『きらきらと瞳を輝かせて、何かを面白そうに見つめている。』
『何かを隠すようにふくふくと笑う。』

何がファンタジーなのかというと、主人公の妄想世界が、現実アホ世界と折り重なって、境目がよくわからなくなるドサクサに、主人公は二両編成の叡山列車に乗って、水尾さんの夢の中へまぎれこむ。ごく自然に。
ただそれだけなのに、この淡い夢の世界の印象は、あとまで尾を引いて、心に残る。

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紙の本美味礼讃

2009/02/22 22:51

ほんもののフランス料理を日本にもたらした先駆者。その物語は刺激的。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

辻静雄。
「彼以前は西洋料理だった。彼がほんもののフランス料理をもたらした。」といわれる人物。

新聞記者を辞め、まったくの素人から、調理学校に婿入りし、一流ホテルのコックが「テリーヌ」も知らない時代に、フランス料理を学び、調理学校を充実させそれを日本に広め、第一人者となるまでのサクセス・ストーリー。
何もないところから何かを生み出す先駆者の物語は刺激的だ。

食べること飲むことが大好きな私にとっては、作中に出てくる写実的な料理とワインの描写もひどく魅力的。

飾り気の少ない文体は、すっきりと芯がある。その積み重ねが、辻静雄という1人の人間の人生とその哲学、料理にという芸術に対する意識とか葛藤とかを力強く描いていて、それが心に響く。
2年余の時間、辻静雄本人に対する50回をこえるインタビューがこの本の下地にあると知って、納得。しっかりした土台の上に築かれたもの、という感じがある。

半伝記、半フィクションの形式で、本当にそのものがあったワケではないだろうが、その人生を語る上でわかりやすく象徴的なエピソードが、上手にムダなくちりばめられている。

「フェルナンはね、生きているとき、いつもこういっていたの」
史上最高と言われるフランス料理のシェフ、フェルナン・ポワン。彼の亡きあと、その味を覚えていて、レストランを続け、三ツ星をキープした未亡人、マダム・ポワンの一言。彼女は、辻静雄を息子のように愛し、助けてくれる。
「料理をつくる人間のつとめは、お客さんにつねにささやかなうれしい驚きをさしあげることだって。だからわたしもそうしているの」

調理学校を開校したばかりで運営方針が決まらなかった辻静雄にとって、これが、目標となる。
彼も後年、同じ思いに行き着いたのか、こんな記述がある。
「料理を口にした瞬間に客の顔に広がるちいさな驚きの表情を眺めるよろこびは、それを知らない人間には絶対に理解できないだろうと思った。」

フランス料理を理解するため、ひたすらに食べ続けた。
初めに、
「料理というのはつくり方も大事だが、できあがりの味がすべてなんだ。きみはまずそれを知らなければならない。そして、あらゆる料理のこれがそうだという最終のできあがりの味をきみの舌に徹底的に記憶させるんだ。」
というアドバイスを受けたからだ。

後には、日本料理、中国料理についても同じ。その飽食は、やがて彼の健康を害す。
彼にとっては、食べ続けたのは、楽しみのためではなかった。
『いかに満腹であっても、必要のために食べつづけてこなければならなかったのだ。
こうなるまで食べてこなかったら、フランス料理はもちろん、日本料理についても中国料理についても通りいっぺんのことしか理解することができなかっただろう』

なんというか、壮絶。

晩年のシーン。
「結局、人間にできることは、自分がやってきたことに満足することだけなのだ」
手塩にかけて育てたシェフの裏切り。けれど、どんな見返りも、そのシェフからは結局もらうことはできないと気づく。
誰のためでもなく、自分がそうすべきだと思ってしてきたこと、その過程で起こる事は、飽食による肝臓の故障も含めて、すべて認め、受け入れる。
これが、成すべき事を成し遂げた人の行き着くところなのだろう。

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紙の本今夜は眠れない

2008/07/17 01:14

やや子供向けかもしれないが、宮部みゆき作品で1、2を争う名作

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本は、私が学生時代に読んだ、初めての宮部みゆき作品。母上が図書館から借りてきたのを横からつまみ読みしたら、見事にハマった。それは、衝撃の出会いだった。

こんな面白いストーリーを考えられる人が世の中にはいるのか!という衝撃。そのくらい話の進め方が見事。展開が早く、でもわかりやすく、そしてドラマチック。割と薄い本だし、さっと読めるけど、すごく面白い。一流のエンターテイメントと言える。

主人公が中学生男子で、その級友・島崎が中学生とは思えないくらい賢くて冷静なのがまた私好み。

●結婚15年目の両親と、中1の僕。至って平和な(と思われていた)家庭に訪れる、突然の嵐。
それは見知らぬ弁護士がもたらした、遺産相続さわぎ(正確には遺贈というらしい)。
母親が娘時代に、とある出来事で関わった男性が、遺言で母親に5億円の財産を遺すという。
嵐の初めは外側から。マスコミの取材やら、親戚・知人からの干渉、不特定多数のおかした人たちからの脅迫電話。
そして、実はほころびかけていた両親の仲が一気に悪化。
とうとう、父親は家出してしまう。
僕と島崎は、嵐の発端となった、母親と男性のつながりを調べはじめ・・・そしてさらにさらに・・・・!!

これは、ある「賭け」の物語だ。
誰が、どうして、何のために、何を賭けていたのか?
実は最後にやっとわかる。最後に明かされて、すごく納得して、そしてホッとする。
「ああ。そうだったのか」と気持ちよく読み終えられる。

2人の少年が、水族館で出会い、「マダム・水族館(アクアリウム)」と名付ける謎の婦人も、ドラマチックさに色をそえる。婦人との出会いのシーン、すごく映像的で心に残る。

『いくつぐらいだろう・・・・・・四十五歳ぐらいにはなっているかもしれない。でも、とっても綺麗な女性だった。ほっそりと優美で、シンプルな黒色のスーツがよく似合う。僕らに向かってにっこりほほえんでいるくちびるだけが、淡い紅色だった。
(略)
視線をあわせ、そろって言葉を探している僕たちの頭に、代わる代わる、その人はそっと手を置いた。そして言った。「じゃ、またね。坊やたち。きっとまた、ここで会えることもあるわね」
彼女が消えてしまったあとも、しばらくのあいだ、香水の薫りが残っていた。
島崎が、感嘆の面持ちでぽつりと言った。
「マダム・水族館(アクアリウム)だ」
(またここで会えるわね)
たしかに、その約束は果たされることになる。だけど、それはまだまだ、先のお話。』

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紙の本ぬしさまへ

2008/06/08 22:53

人の心の美しいシーンが多いキレイな本

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

しゃばけシリーズ第2弾。
江戸の大店の病弱な若だんなと、それを助ける妖たちの物語。1作目は長編モノだったが、今回は短編集となっている。

1作目のときは、これほど面白いと思わなかったのだが、2作目はすごくいい!と思った。この本を読んで、このシリーズは全部そろえよう、と決意。

若だんなの名推理が冴える謎解きとしても楽しみだし、

<空のビードロ>の松之助が、日々がつらくても「でも生きていればいつか何か、心が浮き立つようなことに出会えるに違いない」と健気に思って、それでもくじけそうになって、でもやっぱりまたこう思えるようになるシーンとか、

<仁吉の思い人>で、妖である仁吉が、「恋しい、ただただ恋しくてたまらないのさ」と思う一途な恋心とか、

<虹を見し事>で、病弱な自分が将来大店を仕切れるのか日ごろから不安な若だんなが、ある事件で、自分の力の及ばなさを痛感して、「私は本当に、もっと大人になりたい。凄いばかりのことは出来ずとも、せめて誰かの心の声を聞き逃さないように」「いつかきっともっと大人に、頼られる人になりたい」と固く思う決意とか、

すごく美しいシーンがある。
きれいな夕焼けを見たときのような、染み入る感動がある。

若だんなにしても、他の登場人物にしても、いい人ばかりで、ちょっとキレイ過ぎるかもしれないけれど、こういう美しい心映えは大切だ、と思わされて、いい。

<虹を見し事>は、まるで夢の中にいるかのような、ワケのわからない状況から、その状況が明らかになり、それと共に若だんなの「大人になりたい」という決意が、ごく自然な流れで描かれていて、ストーリー運びも見事。

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仕事に疲れた平日の夜にどうぞ

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仕事が忙しくて、毎日終電コース・・・・という時、それでも寝る前に、何か読みたかったら、この本がピッタリ。

北大獣医学部の学生たちと、ヘンな教授と動物たちのほのぼのコメディ。
「静かなコメディ」というと変だが、丁寧でキレイな絵と、どこかずれた登場人物たちが、おかしなテンポで静かに笑いを誘う。動物たちも可愛らしい。1話ずつ独立して読めるので、眠くなったら途中で寝よう。

ある平日の夜、文庫版の7巻を読み、101話で爆笑。夜中に一人で声をあげて笑ってしまった。

主人公とその学友が、オペラ「トスカ」にノーギャラでボランティア出演するが、少ない予算、急な代役で混乱する現場に、ストーリーもよくわかっていない主人公たちがドタバタする話。読んだことがある人はニヤリと思い出し笑いするだろう。

「おまえストーリーを知ってるか」
「あんまり」

から始まり、

「なんか不安な舞台だよな」
「余裕のなさが失敗をよぶのよね~」
「貧乏と言うことそれ自体が失敗のもとなのよ~ 経験によると~」

という辺りでかすかに笑い、そのあとのドタバタで爆笑!!
で、幸せな気持ちで眠りにつくのである。

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私の中の何かが洗われたような気になる名作

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小6の3人組男子が、「人が死ぬところを見たい!」という子供らしい発想から、1人暮らしのおじいさんを見張る事にするが、やがておじいさんにバレて、怒られたりからかわれたりしながら、次第に仲良くなってゆく。
小学校最後の夏休みの出来事、みじかいみじかい物語で、あっという間に読めてしまう薄い本だが、これを読むと、私の中の何かが洗われたような気になる名作。

3人の男の子が、子供なりにいろいろ考える。


「ヘンだよなあ。だれだって死ぬのに、どうしてこわいって思うんだろ。やっぱり死ぬまでわかんないのかな」

「オレはまだヒラメのお造りができない。できないうちは死ぬのはいやだって思う。できないうちに死んだらどうしようって思うとこわい。でも、ヒラメのお造りができるようになったら、いつ新でもいいって気になるかっていうと、わかんないけど」

「でも、どこかにみんながもっとうまくいく仕組みがあったっていいはずで、オレはそういう仕組みを見つけたいんだ。地球には大気があって、鳥には翼があって、風が吹いて、鳥が空を飛んで、そういうでかい仕組みを人間は見つけてきたんだろ。だから飛行機が飛ぶんだろ。音より早く飛べる飛行機があるのに、どうしてうちにはおとうさんがいないんだよ。どうしておかあさんは日曜日のデパートであんなにおびえたような顔をするんだよ。」


子供だからってこんなにストレートに言わないだろうと思うが、子供を通じて作者は言いたいことをストレートにぶつけてくる、そのおかげで短い本にたくさんの真理がつまっている。

3人とおじいさんが仲良くなった頃のシーンがすごく好きだ。
いかにも日本の夏っぽい情景で、私も子供のころに体験した夏の庭・・・その空気を思い出すし、大人になってから、既に失った場所や人の思い出として、この情景を思い出したら、なんともいえない切なさがしみるのもわかる。

キンモクセイの木がある庭、乾いた洗濯物がほっこりとつまれ、縁側に腰かけて熟れたスイカを食べる。「入ってますかー」と頭をたたいてじゃれあう。台所からみた庭は、夏の陽にあふれて、四角く切りとられた光の箱のよう。そして・・・

「あ」「雨だ」
乾いた白っぽい土の上に、黒いしみがいくつもできていく。やがてそれは庭全体に広がり、大粒の雨の降る音がぼくらの耳をおおった。湿った土と蚊とり線香の匂いが、強く立ち上がる。

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紙の本笑う大天使 第1巻

2004/02/17 02:08

川原泉の最高傑作

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川原泉の作品には独特のテンポがある。
読者は、「川原節」とも言うべきセリフまわしにいつの間にかハマりつつ、しかしストーリーではほろりとさせられたりする。
この魔術のような川原作品の最高峰が「笑う大天使」だ。

良家の子女を対象に幼稚園から短大まで一貫した教育システムを誇る聖ミカエル学園、由緒正しい名門女子校。それは「大天使(アークエンジェル)の乙女達」と呼ばれるお嬢様たちの集う「綺羅の空間」である。
ミカエル学園の高等部に、3人のお嬢様がいる。
この3人は実はお嬢様のなりそこないだ。
ぞんざいな言葉遣いに、粗雑な動作。
しかし、他人によく見られたい見得の強い3人は大きな猫をかぶって、普段は至って清楚なお嬢様。ふとした事からお互いに猫をかぶっていることが発覚し、仲良くなり、そこから様々な事件に巻き込まれたりするのだが…。
前半はこの3人やその家族とのやりとりや巻き込まれる事件の成り行きにハラハラしつつ、3人の性格や環境がつかめてきた後半ではさらにそれに深入りするようなエピソードになる。この後半のエピソードが珠玉だ。
家族の絆、親しい人の死、友情…といったものが実にさりげなく、しかし印象的に描かれている。
川原泉は人を見る目がとにかく温かいのだろう。
何でもないようなシーンでもこの著者にかかると何とも言えない温かい雰囲気になるのだ。
少女マンガは苦手だという男性もこの作品は一度読んでみてほしい。

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