プチとまとさんのレビュー一覧
投稿者:プチとまと
8 件中 1 件~ 8 件を表示 |
紙の本バートさんの大ぼうけん
2001/09/25 15:31
ちょいとドジで、赤いほっぺのバートさん。ほのぼの愉快な冒険談てんこもりの絵本。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
短い笑い話が次々と披露され、まるで「バートさんの大ぼうけん」という演題の寄席か小劇場にでもやってきた気分になれる絵本。主演は、いかにもお人好し、という風体の中年男性バートさん。思う存分笑ってください。
本題の3つの笑い話に入る前に、オチをきかせた小話「こんにちはバートさん」で、読者を巧みに「ミスター・バートの笑いの世界」へと引き込む手法はなかなかのもの。身をのりだして、次の話が聞きたくなります。冒険談の第1話「バートさんとシャツ」は、うちでラガーシャツを着ようとしたバートさんが、頭が襟ぐりにつっかかり、よろけて階段ふみはずし、外までごろごろころがって、落ちたところがトラックの荷台。とうとうスコットランドまで運ばれちゃった・・という不運なお話。頭にシャツをかぶったまんまのバートさん。水玉模様のトランクスに穴あき靴下のお姿で、はるかスコッランドまで遠出とは、ああ、お気の毒、お気の毒。でも、他人の不幸は密の味。思わず笑ってしまいます。
第2話「バートさんとソーセージ」、第3話「バートさんとダンボール」も、バートさんの身にふりかかった事件のお話。どんな目に遭おうとも、元気いっぱい、のんきなバートさんを、「スノーマン」でおなじみの画家ブリッグズが愛嬌たっぷりに描きます。
紙の本シャイン・キッズ
2001/08/07 13:19
中2の少女と全盲の美形高校生との恋物語。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
中2の少女と全盲の美形高校生との恋物語。BGMはアマチュアバンドの演奏曲。思い出すでしょ、純愛していたあの頃を。
主人公の前田ひかるは、中学2年生。自称、「一重まぶたでまさに日本人って顔」の元気ガール。美少女の転校生まゆかと親友宣言したばかりなのに、ある日彼女がチョー美形の青年と親しげに歩いているのを目撃して大ショック! 「まゆかって二重人格ね」と、さっそく電話で抗議したのだけれど・・。
実は彼はまゆかの実兄で、盲学校に通う高校2年生。大病がもとで全盲になってしまったという。あわてて謝るひかりに、まゆかは「今度、兄のひろちゃんを紹介させて」と笑って言った。
ところがその翌朝、雨上がりの初夏のにおいにひかれて公園に出かけたひかるは、白い杖をつきながら、木々の葉っぱにふれ、香りをかぎ、ゆっくりゆっくり歩いてくる青年を見かける。彼はポケットから小さなテープレコーダーを取りだすと、今浮かんだメロディーを口ずさみ吹き込んでいる。ひろちゃんだ!「長いまつげにほりの深い目。見えないことが信じられないほど美しい目」。ひかるは食い入るように彼を見つめる・・。
これが2人の恋のはじまり。その後、ひろちゃんの作った曲にひかるが詩をつけ、できた曲のタイトルが「シャイン」。メンバーを集めてバンドを組み、彼氏がギターで彼女はボーカル。秋のミュージックコンテストをめざす猛練習の中、2人は急速に惹かれ合っていく・・。実に期待通りにすすんでくれるラブ・ロマンスだが、恋のお相手が「全盲の青年」という薬味が利いている。「ひかりというレンズを通して、いろんなことが見えてくる」と彼が言えば、「ひろちゃんがいると、目に見えるものの深さがわかる」と彼女。たまたま好きになった相手が全盲だっただけ、というピュアな感じもいい。「バリア・フリーの恋愛」だ。例のキムタク主演のドラマ『ビューティフル・ライフ』風かも。
「彼をもっと知りたいから」というひかりの目を通して、読者も自然に点字ブロック、点字、音声変換ワープロや、彼らの心の声に耳を傾けることができそうだ。恋に憧れるお年頃の少女たちにおすすめの1冊。すすけちまったあなたのハートには、一服の清涼剤となるでしょう!
紙の本おみまい
2001/05/22 17:13
あなたの家の飼い猫が、知らない首輪をつけて戻ったら・・?猫だけが見てしまったあのできごと。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
女の子が歩いていました。「だあれもいないみちばたの かきねにさいてた あかいバラ」。女の子の手が、スーッと伸び、こっそりバラを摘み取ります。おばあさんを喜ばせたくて盗んでしまったのです。でもね、ほら。1匹の猫が、女の子のしたことを、ちゃあんと見ていましたよ。
女の子はあわてて猫に頼みます。「ネコさん ネコさん このバラ とったこと だれにも いわないで。だって おばあさんのおみまいに なんにも あげるものがないのですもの」。けれどもネコは、なんにも言わず、女の子を見返すだけ。とうとうネコは、女の子に首をつかまれ、「おまえも おみまいにしてしまうよ」と、おばあさんのいる部屋に連れて行かれてしまいます。
おばあさんは、バラもネコも喜んで受け取り、2人と1匹はたっぷり遊びました。そして女の子が帰るとき、今度はおばあさんが女の子とネコに、素敵なおみやげをくれたのです。
この「おみまい」は、おばあさんに喜んでもらえて大成功だったはず。なのに、女の子の表情が最初から最後まで悲しそうなのはなぜでしょう?盗んでしまったバラの棘が、心にちくりとささりましたか? 不思議な読後感を残してくれる絵本です。
紙の本おこりんぼママ
2000/12/26 13:23
がみがみママとしかられ坊主の、身につまされる、あるペンギン親子の絵本です。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ママがすごい勢いでぼくをどなった。あんまりひどく怒鳴ったから、ぼくは体がばらばらにちぎれて、とんでいっちゃったんだよ。頭はビューンと宇宙に飛び出した。おなかは海におちて漂い、つばさはジャングルの中でまいご。くちばしは山のてっぺんに着陸し、おしりは知らない町の中さ。なんと、ぼくは足だけになっちゃたんだ。
足だけになったぼくは、ばらばらになった体を探しにでかけた。でもね、目がないから見えないし、「助けて」って叫びたくてもくちばしがないから声もでない。助けて、助けて!ぼくは、ただただ歩き回って、くたくたになっちゃったんだよ。
冒頭ページで、母さんペンギンがぐわっと怒鳴ると、 ペンギン坊やびくっと飛びのき、怒鳴られたショックで坊やの体が、一瞬にしてばらばらになってしまう意表をつく展開。とぼけた味のある画風でついつい笑っちゃう。テンポもいいし愉快愉快。だけど、本当はこわ〜い絵本でもある。「ママ、怒鳴らないで。僕の身体がこわれちゃうよ。」という、子どもの叫びが聞こえてきてどきっとする。
ラストは、大きな船で救いにきたママが、ペンギン坊やのかけらをかき集めて縫いあわせ、「ごめんね」といって坊やを抱きしめハッピーエンド。このオチも愉快だけど意味深で、なかなか憎い絵本だ。
ある小学2年生の授業で、話の流れから「今までにこの世がいやになったと思ったことある?」と聞いたことがあったが、その時、「親にひどく叱られた時」と答え子が何人もいた。親が子どもの心を壊していることって、おとなが想像する以上にあるのかもしれない。
紙の本満月をまって
2000/10/13 12:59
父さんは山ザルじゃない。立派なかご作り職人だ!」。バーバラ・クーニー最後の絵本。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
今から100年以上前、ニューヨーク州のハドソンからそう遠くない山間にかごを作って暮らす人々がいまいた。町の人は、年に数回ハドソンの店に売りに来る彼らのかごがとても丈夫で美しいということはもちろん知っていましたが、その一方で不気味な山奥で暮らす身なりも貧しい彼らを「山ザル」と呼び、さげすんでもいたのです。
ぼくは、父さんが大好き。父さんの手は魔法の手だ。木を切り倒し、丸太を木づちではぎ取りながら作った木のリボンでかごを編む。父さんが木のリボンを満月の形に組んでかごを編み出すと僕は夢中でのぞき込む。ぼくは生まれてからずっと山から出たことがない。だから父さんがぼくをかご売りの相棒と認め、一緒に町に連れて行ってくれる日を本当に待ちこがれていたんだよ。
とうとう9才になったある満月の日に父さんは言った。「一緒に来てもいいだろう」って。やっと父さんに認められたんだ。父さんと初めて行ったハドソンの町は、煉瓦と商業のにおいがした。かごが売れ、母さんへのおみやげもたっぷり買えた。記念すべきぼくの初めてのハドソン!なのに、帰り道に聞いたあの声が何もかも台無しにしてしまった。「おんぼろかご、くそったれかご、山ザルが知っているのはそれだけだ!」と大声でどなるあの声が・・。
山の木が語る話や風の声を聞きながら、静かな情熱を傾けてかごを作り暮らしている人々の物語を、アメリカの著名な絵本作家バーバラ・クーニーの絵で描き、彼らの心の内の深い思いまで伝えてくれる。悲しいことに、これがクーニーの最後の作品になってしまった。
紙の本トロールのばけものどり
2000/08/04 18:17
ノルウェー民話をもとに生まれた、豪快で愉快な大型絵本
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
山の巨人、トロールが飼っている大きなトロール鳥は、夕暮れになると動物たちをさらっていくので谷間中で恐れられていた。
さて、ある夕暮れ、4人の子ども、オーラに ニーナに シーナに トリナが、まるまる太った年寄り馬のブラッケンと一緒に森に行くと、ばけもの鳥に出くわした。
あわてて谷間に逃げ帰るが、トロール鳥はまんまと家まで追ってきた。オーラは銀ボタンを弾にしたラッパ銃をひっつかみ、ばけもの鳥に向かい立つ。
なにしろ、一声鳴けば森中の木々を震わせる怖ろしい鳥だ。奴が翼をばたつかせ風をおこすと、子ども達は煙突の中を通って、屋根の上まで吹き上げられる始末。それでも、ようやくオーラの銃が、奴をしとめたのさ。
─── めでたし、めでたし・・と、終わりそうだが、これから先がもっとスゴイ!
しとめたどでかい鳥を、農場のあらゆる動物達(馬、牛、やぎ、羊、豚など数十匹!)で引きずって運び、羽をむしり丸焼きにして食べてしまう。近所の人や動物・妖精達で飲めや歌えやの大宴会だ。ところがそこへ、自分たちの鳥を探しに、巨人トロールの夫婦が山をギーギーきしらせてやってきたからまあ大変!・・まだまだ話は終わらない。
目を離せないストーリー展開。 エンピツ画の挿し絵も表情豊かで迫力満点。
アメリカで1976年に生まれた絵本だが、ちまちま生きている今の日本人に、ドカンと出会わせたい。
2000/08/01 14:58
アフリカのお医者さん、子ゾウの患者に大弱り
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
アフリカの大草原にある、ちいさな動物病院でのお話。 とぼけた表情たっぷりの挿し絵が楽しい。
小学校2〜3年生から、喜んで読めそうだが、動物たちと心をかよわせ、のんびり暮らす、この生活は、せわしく生きるおとなにも魅力的。
この病院で、働いているのは、人間のジョンはかせただ一人。めったに患者の来ない、ひまな病院だから、なまけもののジョンはかせは、ぐうたら昼寝ばかり・・。
ジョンはかせはもちろん人間。だけど、ここの患者が、ちと変わっている。
「さかなのウロコが、のどにひかかちゃったー」と、泣きつくペリカンだの (ホネじゃないんだ。ウロコだよ!全く、軟弱なペリカンだ)、「鼻のなかに、おできができたよー」という、オオトカゲだの。
どんなにあきれた患者でも、ジョンはかせは、まことに親切に治療をほどこす。おでき持ちのオオトカゲには、鼻の穴から、先に薬をつけた草をつっこんで 、しっかり塗りこんでやったりする。
しかし、ある日のこと、さすがのジョンはかせも、ビックリする、困った患者がやってきた。
「おっちゃん、あそぼうよ」と、昼寝を邪魔するやいなや、診察室のくすりを かたっぱしから飲んで、「おいら、ぽんぽが いたぁーい」と、涙目で、うるうる訴える、くいしんぼうの子どものゾウだ。
この子ゾウ、はかせがあわてている間に、洗濯場に入り込み、腹痛のくせにセッケンを食べようとする始末。 (いるよねぇ、こういう目の離せないガキンチョ・・。と、思わず、はかせに同情・・・)
こいつが、ふらりと訪ねてきた、かめの ポ(名前)が持ってきた、「うっかりならすと、大変なことがおこる、ふしぎなラッパ」まで、食べようとして、うっかり吹いてしまったから、さあ大変だ! (あとは、読んでの お楽しみ!)
本書は、「ジョンはかせのどうぶつびょういん」.「ジョンはかせのたんじょう日」に続く、シリーズ3冊目。1冊ずつ、別々に読んでも楽しめる。
紙の本プレーリータウン
2000/07/19 20:45
懐かしきホームタウン(うちの町)
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
100年くらい前のアメリカ中西部のプレーリータウン(大平原の町)のようすと、1年間のひとびとの暮らしぶりを、季節を追いながら、ち密で、温かみのある銅板画で、丹念に描き出した絵本。
ヨーロッパから新しい国に移住してきた人びとが、西へ西へと開拓を始めていた1900年代の始め、アメリカ合衆国では、いくつかの会社が、その広大な土地に鉄道線路を通した。
大草原のまっただ中、出来たての線路沿いに人々が寄り集まってできた町は、たっぷりとした小麦の実りに支えられ、どんどん大きくなっていく。なにもなかった地平線上に穀物貯蔵塔(穀物を貯めておく背の高い塔)が、すっくとそそりたった。
草刈りや種まきであわただしい芽生えの春。刈り取り機械が農場をくるくると廻り、穀物貯蔵塔も大忙しの夏。秋のおまつり。新学期の学校の子ども達。週末の夜の町中のにぎわい。道も裏庭もすっぽり覆い隠してしまう吹雪。うんざりする雪かき・・。
日本とアメリカ。国柄も風土も違うのに、ゆっくりとページをめくり、絵を眺めているうちに、何ともいえぬ懐かしさがこみ上げてくるから不思議。季節や天候の変化と上手につきあいながら、精一杯働き、町中がひとつの家族の様に暮らしていた頃の日常生活だ。
8 件中 1 件~ 8 件を表示 |