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しのはらさんのレビュー一覧

投稿者:しのはら

52 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本ターシャからの手紙

2012/05/18 02:31

写真書簡集とでも呼ぶべき?ターシャからアンへの友情の手紙が、美しい本に。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんて嬉しい本でしょう!!!!!!
ターシャ直筆の手紙が、そのまま写真で見られるなんて!!!!!!
・・・と「!」マークを6個も並べたのは、実はターシャの手紙のマネ。(本当は下線も4本くらい引きたいところ)

 本書は、絵本作家にしてガーデナーの憧れ、ターシャ・テューダーが、友人で編集者のアン・K・ベネデュースに書き送った手紙をまとめた書簡集。
でも、ただの書簡集ではありません。なんと、すべての手紙が、文字が読めるサイズの美しい「写真」で収められているのです。(手紙の下にお手製ブラウスや南仏柄のスカーフなど敷いて、眺めるだけでもキレイ。写真書簡集とでも呼ぶべき?)
だから、雪解けの喜びにこれでもかと並ぶ「!」マークと下線たちも、しばしば描き添えられる可愛らしい素描も、すべてがリアルに私たちの目に飛び込んで来ます。
アンに差し出されたターシャの気持ちが、まるごと全部ね。これは嬉しい。

 あ、「そのまま」といってもご心配なく。もちろんちゃんと訳文付き。
手紙写真と訳文、思い出をつづったアンのコラムがワンセットになり、女同士の長年の友情と交流が、よーく伝わって来るつくり。(英語の勉強にも良さそう)

 収められているのは64~86歳までの手紙ですが、とてもそうは思えない!
そのお年での前のめりの行動力に、「お見逸れしました。さすが、ターシャ・テューダー!」と、ひれ伏したい気持ち。(南仏で数ヶ月過ごすのに自力で犬と猫とオウム連れて移動して、ジムで懸垂なんかしてる!)

 と、いつもパワフルさが話題になるターシャですが、本書ではむしろ、彼女独特のユーモアやお茶目な明るさが印象的でした。
 「コーギの渋滞が起きています」などの楽しい言い回しや、南仏の田舎で(彼女の服装ゆえ)地元民に間違われ、なりきったまま写真を撮らせて上げたエピソード。また、ときおり動物たちに成り代わり彼らの名前で手紙を書くなど、ターシャのいたずらっぽい笑顔が行間からあふれて来るようです。
 それに、友人からのプレゼントには、すぐに喜びいっぱいの礼状を書く、感謝の気持ちを忘れない姿勢。アンの好きな花を覚えていて、カードにさりげなくその花のイラストを添えるような気遣いと温かい人柄。
うーん、見習いたい。

 これは想像ですけれど、ターシャのような活動的なおばあさんがそばにいたら、周囲の人たちは振り回されたり心配したり、たいへんな事もあったのではないかしら。
けれども、彼女のユーモアや思いやりある人柄、嬉しさを隠せないこどものような可愛らしさに、「しょうがないなあ」と許せてしまったのでしょう。
そんな妄想をしてしまうほど、ターシャが身近に感じられた一冊なのでした。

 お馴染みリチャード・W・ブラウン氏の手になる美しい写真の他、アンの撮影した思い出の写真やターシャの描く色鮮やかなイラストも多数。
ファンには、きっと宝物となる事でしょう。

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紙の本パラレル

2012/05/18 02:23

「余白のひと」長嶋有が描く、パラレルな人と時間の物語。あなたにとって「はしたない」事って何ですか?

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

長嶋有さんは、「余白のひと」だと思っています。
ことば選びが巧みで、選び抜いたことばを「ここしかない」場所に置くそのセンスは、説明や描写を削ぎ落として際立つ「余白の美」とでも申しましょうか。
そして、文章だけでなく物語においても、「人生の余白」のような時期を扱ったのが、本書です。

 主人公の七郎は、成功を収めたゲームデザイナーの仕事をやめ、妻とも離婚。
仕事にも家庭にも縛られない、エアポケットに落ちたような時を過ごしています。
 相棒は、学生時代からの友人、津田。
マイペースで独特の世界を持つ七郎と、ゲームでも現実でも立身出世や高得点を求める津田は、好対照。同じゼミを受講しても、連れ立ってキャバクラに行っても、彼ら二人はずっとパラレル。
 起業して社長業と夜遊びに励む津田の座右の銘は、「なべてこの世はラブとジョブ」。ラブの方は、複数の女性を「パラで走らせ」るような津田。(いつか誰かに刺されるよ、と私も思った)
ラブもジョブもない七郎が、奔放な津田と付き合う内に出会う「ひとびと」、そして「できごと」・・・。

 物語は、この「現在」と「学生時代」そして「離職&離婚の頃」と、バブル崩壊を挟んだ三つの時間を行き来しながら平行(パラレル)に進行してゆきます。その行きつく先は・・・。

 冒頭で「ことば選びが巧み」と書きましたが、今回、特に「はっ」としたことばが、ふたつ。
 ひとつ目は、「敵か味方か峰不二子」。
キャバクラ勤めのサオリの謎めいた様子を表わすのに、会話でなく地の文にこれを入れるとは憎い!これひとつで、その女性の得体の知れなさだけでなく、七郎の世代も趣味嗜好も分かる。まさに長嶋マジック。
 もうひとつは、「はしたない」ということば。
七郎は、離婚届を出すため「市役所にタクシーで乗り付けるのは、はしたない感じがする」という。
そして、結局バスで行く。妻と二人で、バスに乗って行くんですよ。離婚届を出しに。

 この「はしたない」ということばに象徴されるように、七郎には彼なりのストイシズムというか美意識がある。
それゆえに、仕事をやめる事にもなったのです。しかし、それがあるからこそ七郎は、ラブもジョブもある津田から羨ましがられる存在であるのです。

 大島弓子さんや高野文子さんのイラストを表紙にして、しばしば読者に「単行本ジャケ買いの罠」(=文庫が出ても軽々に買えない精神的プレッシャー)を仕掛けてくる長嶋本だけど、この文庫は、そんな迷いを吹き飛ばす。
というか、「文庫本解説買いの罠」が仕掛けてあるのだ。
 この文庫版の解説は、ゲームデザイナーにして「ベストセラー本ゲーム化会議」「ふいんき語りシリーズ」でお馴染み、米光一成さん。
なんと解説中で、ご自分とこの小説との重大な関わりをカミングアウト。
そうだったのか・・・。

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この人これからどうなるの?心配とも期待ともつかないこの気持ちは何?もしかして愛?続編待望の「北国負け犬泥酔日記」

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、北国在住独身女性フリーライターの、酒と酒の日々をつづった泥酔日記です。ネットの日記サイトで人気だったとか。
 前半、「三十七歳の日々」も、すごく面白い。
 「回れ右」を「曲がれ右」といってしまう父と、「シンポジウム」の鉢植えを丹精している母と、「おねえちゃん、扇風機くべる?」と尋ねる妹と、忙しさをデシリットルで表す恋人と、犬と猫に囲まれて暮らし、キャバクラへ行けば、ついた女の子は同級生の娘で、飲んだくれて目覚めると枕もとに靴がきちんと揃えて脱いであり、手の甲にマジックで「お前バカ」と書いてある。
 話を面白くしている向きも伺えるけど、ふつーに、「日記サイトのすごく面白い日記」としてオススメできる。文章の間合いも小気味良く、笑える。
 でも、後半「三十八歳の日々」は、またひと味もふた味も違います。
前半のノリで油断して読んでたら、穴に落ちた。
 宮沢賢治や川上弘美や、もしかしたら宮崎駿も訪れたであろう異世界に、この人も片足突っ込んでる!いやそれどころか、自在に出入りしてる!
日常の中に紛れ浮かんでは消える「夢とうつつの境目」を、気がつくと一緒に越えている。「河童の巣開き」「春洗い」「影の手入れ」など、摩訶不思議な風習のあるもう一つの北国へと連れ去られる。
けれど、彼女は昨日の続きの「なんてことない」日として、それをつづる。
 「世界は混沌とし曖昧でありさらに混乱している」
 「すべてを手に入れることが完璧な幸福ではありませんからな」
と、この場所で語られると、ココロから納得。
 私も住んでるこの北国の、裏側に滑りこむ入り口が、いったいどこに隠されていたのか。
自分では見つけられない人も、この本があれば大丈夫。キミコさんが案内してくれます。
一升ビンを片手に。
 あとがきによれば、あと二年分の日記が、すでに寿郎社の土肥さんの手元にあるらしい。
キミコさんとキミコさんの文章世界は、これからどうなるのか?興味津々。続編、お待ち申し上げております。
 それにしても、「鴨ちゃんの今日も煮え煮え」も出版した寿郎社。類は友を呼ぶのか、酒飲みが集まってくるのか、寿郎社。

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昼酒ライター・北大路公子さんの「ゆるオモ旅日記」と「絶品秘蔵短編」がコラボした贅沢な一冊。酒と肴を用意して、お楽しみください。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

北国の昼酒ライター・北大路公子さんが旅に出ると・・・。
なんという事でしょう、朝湯・朝酒・二度寝ライターに大変身~。(小原庄助さんかよ!)
変身というか、いつもと同じというか、さらにパワーアップというかダウンというか、旅に出ても日頃の(飲酒の)たしなみを忘れず、妄想劇場も全開。ブレない公子さんです。

いっておきますが、この旅日記に「名所旧跡ご当地グルメのお役立ち情報」を期待してはなりませぬ。なぜって、旅程も参加者もゆるゆるのグダグダで、史実やデータより公子さんの妄想の方がたくさん書かれているんだもの。
だからこそ、とっっっても面白い!
(あ、旅日記にちりばめられている、老眼に厳しい写真とキャプションは、隣の部屋に眼鏡を取りに行っても、きっちりご覧になってくださいね。後になるほどボディブローのように効いてきて、腹筋が震えます)

 このように旅日記もたいへん「ゆる面白い」のですが、さらに注目して頂きたいのが、さりげなく収録された5編の「ぐうたら夜話」。
これ、元は三題話。お題である三つの言葉を織り込んで綴られたショートストーリーなのです。
一見、日常と地続きのようにも見えるなんとも不思議な世界が、独特の小気味良い文体で語られ、奇妙な味の文学作品に仕上がっている。

そう、日記やエッセイで常に挿入される「公子妄想劇場」を読んで、もっと早く気付くべきだったのです。
日常の隙間に、ふと開く異世界への扉。北大路公子さんは、それを自由に開閉する事のできる数少ない人間の一人で、巫女のごとくイタコのごとく、私達に中の様子を語り聞かせてくれる。旅日記とはまた違った、別の旅に連れ出してくれるのです。

 「ぐうたら旅日記」は、「ゆる面白い旅日記」と「絶品秘蔵短編小説」がコラボした贅沢な一冊。
酒と肴を用意して、ゆるりと味わってみてはいかがでしょう。

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街歩き・路上観察愛好者必読。面白物件満載。そして、これはまさに『吉村智樹の』本なのです。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

テレビで司会者や出演者の名前がタイトルにつくと「冠番組」って言うけれど、本の場合は何て言うのかな?
単純にジャンルで言いますと、「VOWモノ」「路上観察モノ」といわれる、街で見つけたヘンなものを写真入りで紹介する本なのですが、本書の場合、メインディッシュは間違いなく吉村氏の文章の方。
 吉村さんて、物知り博士!古今東西の雑学知識がてんこ盛り!
一枚の看板写真をきっかけに、吉村氏の脳内を超高速パルスが駆け抜けて、百億の引出し千億のお蔵を開けまくっているに違いない。
や〜らかい、お馬鹿なコラムを読んでたはずが、「実は」「思えば」「そもそも」といった言葉にいざなわれ、気がつけば「へぇ〜」の連続。話はきれいに輪を描いて、ネタ元の写真に着地。う〜ん、名人芸。
その知識の広さ豊かさと、鮮やかでいて可笑しみを誘う話の持ってき方は、中島らもさんを彷彿とさせる部分もあり。
 また、自分は吉村さんと同年代。懐かしい死語や細かい時代風俗のピックアップ技が、いちいちツボに刺さって抜けません(涙)
『吉村智樹の』という冠が、だからこの本には欠かせないのです。
本書がネットのブログから生まれたという事も、興味深いです。
「ただでネットで読めたものを、お金を出して買うやつがいるのか」って?
ここにいるぜ!その価値はあるぜ!
いつ消えるかも分からない電気信号の、儚いネット世界に咲く一輪の花。実体化させて持っていたいのが人情よ。

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紙の本フンガくん

2012/05/18 03:07

懐かしい昭和の風景と、あたたかい母子ブタの暮らしをカラフルに描いた傑作絵本

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フンガくんは、きかんぼうな子ブタの男の子。おねだりしたり、ヘソを曲げたり、かんしゃく起こしたり。
それなのに、あら不思議。あっけらかんとしたお母さんの愛情に包まれて、いつのまにかご機嫌が治ってしまいます。
ああっ、こんなお母さんになりたいわ!
 そして、この本のもう一つの見所は、なんといっても背景に描かれた懐かしい昭和の風景。
ご近所が軒を寄せ合う路地には、朝顔や盆栽の鉢植えとヨシズの日よけ。縁側にブタの蚊取り線香。引き戸の玄関脇には牛乳箱。家の中には畳と障子と襖。アルミのフタの炊飯器。銭湯のお風呂上りにコーヒー牛乳・・・。
 といってもセビア色にくすんだ過去の記憶ではなく、そこにあるのは、カラフルで生きいきとした現在進行形の生活なのです。
パパもママもおじいちゃんもおばあちゃんも、きっと、お子さんと一緒に楽しめますよ。

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紙の本日本文学ふいんき語り

2012/05/18 02:24

誰もが知ってるあの日本文学をゲーム化!?架空の企画を練る内に、面白書評のでき上がり。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、読書好きの有名ゲームデザイナー3人が、ある本をテーマに座談会形式で語りまくり、最終的には、その本をゲーム化する企画(架空の企画です)を作っちゃう、というふざけた(→ほめことば)書評本。
いや、正確には、「その本をゲーム化するため、あらゆる角度からつつき回している内に、奇しくも非常に深く掘り下げた読み応えのある書評本になってしまった」と言うべきか。

 これがホントに面白い!
好評につきシリーズ化されているのですが、中でも、本書「日本文学ふいんき語り」は、誰もが知ってる文豪作品やベストセラー本を取り上げており、どなたさまでもとっつきやすい作りに。

 例えば、夏目漱石の「こころ」では、まず「未亡人と娘の下宿に男子学生が友人連れてきて、今なら『めぞん一刻』みたいなラブコメになる設定なのに、なぜこんな暗い話になるのかな」と、現代青年としての素朴な疑問を。
また、三島由紀夫の「金閣寺」に至っては、「みしまっち」という育成ゲームにすると言い出す始末。「みしまっち」のお世話は、たいへんそうだわ・・・(汗)

 でも、これらの考察は単なるおふざけではなくて、本当に真面目にその小説と作家について考え抜いた結果なのです。(考えすぎて分けが分からなくなるほどに)皆さんとてもお忙しいはずなのに、テーマ本だけでなく他の作品まで、きっちり読み込んで座談会に臨む姿勢には頭が下がります。
そうして生み出された、これまでの文学批評にはありえない角度からの論評は、新鮮で、とても分かりやすいのです。

 その上、さすがゲームデザイナー。
村上龍と村上春樹の作風の違いを、「龍はファイナルファンタジーで、春樹はドラクエ」という前代未聞の表現で、しかし的確に言い当てちゃうんですから。
そして、春樹本のゲーム化企画は、なんと・・・。
いやいや、言えねぇ言えねぇ、もう言えねぇ。
ここから先は、お手に取ってお読みください。思い出しても頬がゆるむわ。むふふふふ・・・。

 同じメンバーの「ベストセラー本ゲーム化会議」「恋愛小説ふいんき語り」も、オススメです。

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「はぐれ旅」に人生の極意を見た!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

村上春樹さんを隊長とする『東京するめクラブ』の面々の、かなりはぐれた旅レポート。目的地もはぐれていれば、旅人自身もはぐれてる!
美しくも奇妙な写真満載、安西水丸画伯のイラストに、言いたい放題の座談会もついた福袋本。村上エッセイファンには、待望の一冊。

 地方都市の辺境、時代の辺境、流行の辺境、意識の辺境、ツーリズムの辺境。
いろんな意味での辺境が、『するめクラブ』のお好み。

 実は最初の名古屋編を読みながら、「いまさら名古屋?」感は否めなかったのですが、読み進むうち自分の間違いに気がつきました。
これは、「今すぐ使える知っ得情報」のガイド本じゃないんだもん。
むしろ歴史書や百科事典に近い、過去のトリビアな知識から普遍的な哲学を得るたぐいのモノなのでした。
 旬も流行も関係ない。目的地を決めるのはアンテナじゃなく旅心。だからこそ、「はぐれ旅」なんじゃないの。あたしってバカね。

 さあ、あなたも、ひと癖ある趣味人の集まり『東京するめクラブ』と共に、おバカでゆるいはぐれ旅を楽しみましょう。
名古屋でミイラの呪いにかかり、ハワイの寿司屋でピーナツバター餅を食べ、サハリンの昆布草原を素足で歩き、清里で「エラ・フィッツジェラルドの唇」パンを焼こう!
 あなたのおツムはあらぬ世界を彷徨い、いつか知らず「面白き事もなき世を面白く 住み為すものは心なりけり」という人生の極意を会得しているのです。

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爆笑昼酒作家・北大路公子の原点がここに。ただの泥酔日記じゃない!虚虚実実、面白不思議キミコワールドをご堪能あれ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とんと昔、新世紀になって間もなく、まだブログという言葉もなかった頃、公開日記サイトに綴られた、北国独身女性ライター酒呑み日記があったそうじゃ。
何ともいえぬ面白さが寿郎社社長の目に留まり、2005年に刊行された。それが旧版の「枕もとに靴」じゃったー。
 あ、すみません、なんだかすごく昔のような気がして、ついついこんな口調に。
も、ホントに大好きで、旧版のレビューも書かせて頂いた(http://honto.jp/netstore/pd-book_02592794.html)本書でしたが、いつしか入手困難に。
それが、このたび増補新装版としてお目見え!ファンには、この上ない喜びであります。

 世紀のロマンスも地球の危機もなく、37歳(当時)キミコさんの北国実家暮らしを淡々と書き綴っているだけなのに、何度読み返しても引き込まれます。笑えます。
家族犬猫恋人友人酒酒酒酒の些細な日常から、小気味良い文章に乗せられて、ぶっ飛ぶイマジネーション、広がる妄想。(ここだけの話、近年連載されているエッセイたちよりも、キミコエキス凝縮。野趣横溢。毒が強いような気がいたします)

 そして、本書「枕もとに靴」の醍醐味は、なんといっても後半「三十八歳の日々」。
油断しきっている読者を「なんてことのない」日だとたぶらかし、「摩訶不思議な、もう一つの北国」へ迷い込ませてしまう。キミコさんはキツネか?キツネなのか!?
「日記」と銘打ってはいるものの、リアルに軸足置いた「エッセイ」とも、初手からフィクションを前提として書かれた「小説」とも違う。カテゴリもボーダーレスなら、虚実の境ももはや霧の彼方。こんな作品は、後にも先にも本書だけではないかしら。
 増補された巻末の対談では、この辺り(小説的ウソとホントの境界線について)が「北大路公子の魅力」として、山本文緒さんの口から的確な言葉で語られ、まさに我が意を得たり!という気持ち。

北大路公子の原点。可笑しさの背後に隠されたアナザーワールドに、あなたも迷い込んでみませんか。

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紙の本どうすればほめてもらえるの?

2012/05/18 03:28

モヤモヤしてる女子に勧めたいっ!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

たいへん面白く読みました!
まついさんのご本は、いつも、熟練の板前さんの如く包丁捌きも鮮やかに「女の人生」についての様々な切り口を見せて下さるので楽しいです。
 「女のしあわせ」に関しては、たくさんの本がありますが、いろんな個人を十把一絡げにしたり、母性に期待し過ぎたり、反対にそれを否定し過ぎたり、そんな言説が多い中、この本は「まず客観的に自分個人の状態を見てみようね」と表やグラフにしてみたり、非常に分析的なスタンスも面白く、個性的なキーワードに従ってこんがらがった「女のしあわせ」をスッキリ解きほぐしてくれます。
 それでいて、本全体には暖かい愛ある視線が。なにしろこの本を書いた動機というのが「明日が来るのが楽しみな方がいい」からだって。ううううう(ToT)
 後半の、ご自分の血肉を切り分けて見せるような部分、泣けるのを通り越して頭が下がります。
 「モヤモヤしてるおなごはいねが〜」と探して、勧めたい1冊です。

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紙の本恋する女はみんなバカ

2012/05/18 03:23

『愛はめんどくさい』序章ともいえる「見え過ぎちゃって困る」驚愕のまついワールド。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

うっかり「あ、恋愛本ね?」という先入観で読むと、驚愕します。
これ、単なる恋愛本じゃない!
プロローグにもあるように、この本は「恋愛論」ではなくて、「人を好きになるシステムの不思議」について見つめた本です。もちろん、巷に溢れ返る「恋愛マニュアル本」の類でもありません。

 もっと言ってしまうと、この本は「プレ愛はめんどくさい」あるいは「愛はめんどくさい/序章」です。
まついさんご自身は、出版と同時期に離婚なさった訳有りの『愛はめんどくさい』を「ターニングポイント本」っておっしゃってたけど、違う。
すでにこの『恋する女はみんなバカ』から、「笑う出産ワールド」とはヒト味もフタ味も違う、寒気がするような冷徹な眼差しで、恋愛・友情・セックス・暴力・生活・結婚・不倫・社会・家庭・家族・家などについての考察を展開しています。
文体も非常に恬淡として、ご自身に言い聞かせているかのよう。特に後半。
「こんなにモノが良く見え過ぎてしまって、まついさんは大丈夫だろうか。しんどくならないだろうか」と心配になるほど、全てを看破しています。

 これ、恋愛中の独身者はもちろん、むしろワタクシのような結婚経験者にこそググ〜ッと来ます。相当に。
だって「結婚には減数分裂が必要」って言われたら「えあっ!?」となりますよ。
「そ、そうか、そうなのね、そうだったのね、どうりで〜!?」って。

帯の「テツガク者まついなつきの真骨頂」は、けだし名コピー!
すでに『愛めん』を読まれた方は、ぜひこちらも。
本書を読んだら、次は『愛めん』を。

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祝★「ダイエットのお宝本」文庫化!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本は、と〜っても素晴らしいオススメ本だったのに、出版社の都合で、もう入手できなくなっていたのです。
その「お宝本」が文庫化とは、これから買う皆さんはなんてラッキーなの!?

 本書は、まついなつきさんの断食体験が、お馴染み「まつい節」の漫画と日記で、とってもリアルに伝わって来る「楽しいダイエット本」。
 しかも楽しいだけなく、社会背景やココロの問題などに触れた深い部分もあり、凡百の「ダイエット本」とは一線を画したモノになっています。
単にマニュアルだけにとどまらず、読後に残るものがあるのです。
 また、断食をむやみに勧めるわけではなく、断食に臨むための「12の掟」がきちんと明記してあり、さすが!という感じ。

 私は、この本を読んで、まずココロがダイエットしました。
「不要なものを無意味に摂取しない」という精神が、とても参考になったのです。
「見た目を細くする」以前の「健康なカラダで生きる自分」をやっていくために。

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ゲームが当たり前にある世界で生きる世代の、極大極小視点ゲームエッセイ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なにはともあれ、祝!文庫化。
今回のこの「ちくま文庫」版、まず表紙で吹きました。
タイトルが、セルジュ・ゲンズブール監督映画「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」のパロディなのにちなみ、ゲンズブール風の男のイラストが。
 それから、カバー見返しを見て、また吹いた。
そこには、ゲンズブール風のコスプレ(?)をしたブルボン小林氏が。(ボンズブールというらしい)それがまた「惚れてまうやろ~!」と叫びたいほどカッコいい。(眼鏡を外したら突然可愛くなる乙女チック少女漫画の主人公ですか!?通常モードのボンコバ氏をご存知ない方は、ぜひ画像検索なさってください。面白さが倍増します)

 表紙はこのくらいにして、内容を。
本書は、コラムニスト・ブルボン小林(=作家・長嶋有)氏によるゲームエッセイ。これは、あくまでも「エッセイ」と呼びたい。
 いや、もちろんゲーム評というかレビューもしているのですが、ボンコバ氏の視点は独創的で、「ゲームセールス」の世界からは遥かに高く遠く、ゲームの定義から、プレイする人間や社会環境にまで思いを馳せ・・・かと思うと、ものすごーく細部の末端の「そんなとこ見てんの、あなただけだから!」とツッコミたくなるようなこだわりを述べてたり。
 だからこそ、何年経っても、そのゲームソフトやゲーム機や開発会社がこの世から消えてしまっても、面白く読めるのです。ゲーマーはもちろん、ゲームをあまりした事のない人が読んでも、面白いのです。

 また、作家・長嶋有氏としての文章は「引き算」をイメージさせる渋くとぼけた味わいですが、コラムニスト・ブルボン小林氏としての文章は、とぼけた根っこは同じでも、饒舌で過剰でサービス精神にあふれたもの。自分ツッコミの数々に、腹筋が悲鳴を!
 だいたい、ゲームのカテゴライズで「クソゲー」「エロゲー」までは、まあ言いますけれど、「怒られゲー」って!それに、「ときメモ・ガールズサイド」の自分キャラの名前、「スキマカゼフクコ」って!(『スキマーカゼ』とカタコト音声で呼ばれてツボっていたボンコバ氏は、今、「DS・トモダチコレクション」での変なイントネーションの会話を、さぞかし堪能しておられるのでは・・・)

 そもそも東京オリンピック以降生まれの者にとって、ゲームは時代の空気のようなもの。こどもの頃から、多少の差はあれ様々な形で、身の周りにゲームの影はあったのです。
「まるでゲームなんてなかったかのような社会の記録」はたくさんあるけれど、本当は、「ゲームがそこら辺に当たり前にある世界」で、私たちは生きてきたのです。それゆえ「ゲームは時代を映す鏡」とも言えるのです。
そういう意味で、このエッセイは、とてもリアルな「時代の記録」といえるでしょう。

文庫化に際し、大幅加筆増補。連載当時は酷評過ぎてボツになったものまで読めまする。

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まつい家の、とれとれぴちぴち小学生ライフを、そっと覗き見。

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「『笑う出産』の、あの赤ちゃんがもう小学生に!? こっちが年取るわけだわ〜。」と、全国推定1000万人のおばちゃん読者が、感涙にむせんだ事でしょう。

 まつい家のお子様方、見事に育っています!
育ったら育ったで、またたいへんです!
入学準備、PTA、宿題、学童保育、地域社会、ゆとり教育、おこづかい、性教育…。
今時の小学生を取り囲むさまざまな問題を、まついなつきさんらしい独自の視点で観察し、例によって活気のある漫画と文章でセキララにつづった、まついファン必読の書。
そういえば、普通の小学生ライフをこんな風に普通に紹介した本って、これまであんまり見かけなかったかも。

 本書を読んだ時は未就学児童の母でしたので、「まだ見ぬ遠い新大陸のガイドブック」をドキドキしながら読んでいる、そんな感じだったのですが、特に山場の「宿題事件」「花火事件」「借金事件」の下り、グッとリアルに迫って来て、一喜一憂、手に汗握って読みました。同じ子を持つ母として、とても冷静ではいられません。

もちろん、まついさんのご本ですから、実用書としてだけでなく読み物として面白いのは当然です。
「いまなにしていますか?“翼くん”調査」とは何か?
「小児暗黒暗唱団」とは何か?
なぜ国語の時間に亀が必要だったのか?
かあちゃんが、ひらひらした服を着て家の中をうろつくのはなぜか?
すべての答えは本書の中に。
「長めのあとがき」も、しっとりした後味でGOODです。

 我が子の入学。
その日の来るのが楽しみなような不安なような、そんな母心に本書を捧げます。
学校や地域によって事情の違いはあるにしろ、小学生母としての覚悟を決める『予言の書』として、心強い一冊になるでしょう。

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紙の本ターシャの庭

2012/05/18 03:02

ガーデナーの憧れ。たいしたばあさんターシャ・テューダーの、思わず唸る庭と人生。

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ターシャ・テューダーは、たいしたばあさんだよ!
お名前はかねがね。でもこの本で初めて彼女の庭の全貌を見、プロフィールを知り、唸ったね。唸りつづけたね。
 外国の昔話に出てくるような、御年90歳(当時)のおばあさん。白い髪をスカーフでまとめ、木綿の長袖ロングスカートワンピにエプロン。時には長靴、時には裸足で、美しく広大なナチュラルガーデンを歩きまわる彼女に、まとわりつくのは犬・猫・山羊・少女。まるで彼女の本業である絵本の1ページのよう。
 その「庭」というのがまた、庭と呼んでいいんですかこれ?
アメリカはバーモント州の山奥を切り開いた30万坪の敷地。古風な農家のコテージガーデンからコツコツ広げていったという、花と緑のサンクチュアリ。自然に寄り添った秘密の花園。それがターシャの庭。
彼女はそこで、19世紀の農家のようなシンプルで静かな暮らしを守っています。
 ボストンのお嬢ちゃんが両親の離婚から人に預けられ、15歳で一人暮らし。結婚して離婚して、その時代にこども4人育て上げ、今のこの暮らしに至るまでの女の人生を思うと、もう頭が下がるどころか一回転してでんぐり返しですよ。
 考えてみれば、そんな風に生き抜いてきた根性とパワーがなければ、こんな庭は作れないし、こんな暮らしはできません。
だって今でも、池の睡蓮を見るために、樹皮製のカヌーを一人で漕いで行くんだよ?水が嫌いなくせに。なんてパワフルなばあさんだ。
 庭の花々もさることながら、彼女の圧倒的な存在感で、どのページもどのページもすべてが絵になる。
本書は、ターシャの人生がにじみ出た珠玉のフォトエッセイ集。
ターシャ自身が描いた庭全体のイラストマップ付き。

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