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更夜さんのレビュー一覧

投稿者:更夜

201 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本キップをなくして

2016/05/04 18:00

日本版行きて帰りし物語

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の池澤夏樹さんは、イギリス児童文学を目指した(『ホビットの冒険』『指輪物語』
『ナルニア国ものがたり』など「行きて帰る」物語)との事ですが、池澤夏樹さんらしい
スマートさがあるけれど、イギリスの児童文学はもっとしつこくて、こってりしているかも。

 時代は1980年代。
小学生のイタルは趣味の切手コレクションの為に有楽町へ行こうと山の手線に乗るが
降りる時にキップをなくしていることに気がつきます。
その時、年長の少女に声をかけられ、ついていくと東京駅に。
東京駅には「キップをなくして外に出られない子供たち」がステーション・キッズとして
集団生活をしていました。

 イタルも仲間になって、東京駅での生活が始まります。
大体の子は、キップをなくした子ですが、ミィちゃんという女の子はホーム転落事故で
死んでしまった女の子。

 物語はミィちゃんが天国に行くという決心をして函館にみんなで行く所までひろがります。
東京駅からは日本各国どこへでも行けるのです。
ここら辺は北海道出身の池澤さんが子供の頃大好きだったという鉄道の様子が生き生きと
描かれています。

 後半、生と死という児童文学(特に日本)ではタブーとされている事柄について
触れていますので、完全子供向けではないかもしれません。
死んでしまったらどうなるのか?子供たちの素朴な疑問。
それについては、少々、理屈っぽくなっていて、それでも嫌味ではないからさらりと
読めます。

 朝の通勤ラッシュの駅のホームで、目に見えない子供たちが走り回っているのかも
しれません。ネバーランドのピーターパンのように。

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紙の本透き通った風が吹いて

2016/04/21 07:53

大人の事情は高校生にはまだわからない。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

150頁くらいで中編と言ってもいい長さの高校生青春もの。
若い人を描いた本は言葉遣いが私にとってはキーとなるのですが、岡山弁ということで、 言葉遣いは大丈夫でした。
ただ、さらっと読めるのですが、その分、ひっかかるものも少ないという無難さがあります。
分厚い本を読破するのも良し、さらっとさわやかスプライト気分でこういう本を読むのも良し。
高校生には大人の事情はまだわからない、というお話。

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不動の人

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

健康診断の時、鬱病かどうかといった心理的な検査がありました。設問があって○か×をつけるというもの。
その設問の中に「テレビがおもしろくない」というのがありました。私は即○…おもしろくない、にしたのですが、どうやら○だと鬱的傾向ポイント1になってしまうようです。
私としては、面白いと思うものが本当にないのだから。テレビドラマを見ても、なんだこれは…と嫌になってしまう方が多い。
私はテレビ時代の子供だったので、子供時代はよく見ました。結構、本気で見て受け止めていたと思います。
しかし、茶の間というものがなくなってしまった現代で、いつまでも昔のノリのままでいいのか。今時「茶の間」なんて口に出すのは、明石家さんまと紅白歌合戦の司会者くらいです。
ナンシー関は一貫してテレビについてのコラムを書いていました。それを読むと、私が「つまらないなぁ」「なんか不快」「これが“あたりまえ”なのか?」と思いつつも流して見ているテレビのあれこれについてはっきりと理由を書いて、何故、「不快なのか」「不自然なのか」「これで視聴者満足するのか」といったことがかなりストレートに書かれていて納得してしまう部分がとても多いのです。
もちろん好き嫌いからの「好感」「不快感」というのもあると思うのですが、テレビだからさ…という「免罪符」の世界にきちんと対峙しています。その態度は不動のものがあって、ゆるがない意志を感じます。自己主張というより、観察から来る自己表現。ただの悪口ではない冷静な視線でもって、テレビ的ななれあいや矛盾を拒絶しています。
ナンシー関が一番強調しているのは、「節操のないものへの不快感」でしょう。それは「安い」という言葉で表現されます。
流行を作って、テレビから配信して、その流行に踊らされて、また新しい流行を作って、さっさと切り捨て新しい流行にとびつく人たち…の繰り返しにはもう、私はついていけません。(これはテレビに限らないのですが、テレビを媒体にしている場合が多い。
今だに「テレビで言ってたんだけどさ…」という言葉を耳にします)。
特にこの本は、テレビコマーシャルという「宣伝」のあれこれについて書いていますから、短い時間の中に見落としがちな「不自然」「わざとらしさ」「企業のはずれた狙い」というものを鋭く見ています。
私も「じゅわいおくちゅーるマキ」のCMには、閉口したものです。
ただくだらないCMをあげつらうのではなく、常に、これを満足して、又は何も考えないで流してしまう、見る側の低い意識を問うていると思います。テレビという見る人の絶対数が多いメディアであればこその低意識の指摘。
不動の人、ナンシー関は、ブラウン管を通して日本人の特性を見つめています。

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紙の本高い城の男

2016/05/21 14:21

読後すぐよりも時間が経ってからじわじわくる独特の雰囲気

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もし・・・だったらというifものですが、読んですぐよりも時間が
経ってからの方がじわじわときます。
全体を通して「陰の世界」何をするにも易経で占ってからという所に、
現実とは違う戦後の人々の不安と不信を見るような気がします。
そして物語に書かれた世界が、逆(本当の歴史通り)だとしてもどこか違う。その違いが奇妙な違和感となってざらざらとしています。
決して読みやすくはなかったけれど、それでも登場人物たちの憂鬱感は、
著者独特の世界。

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紙の本海うそ

2016/05/04 13:24

静けさとさびしさをなくしてしまった現代

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昭和初め、南九州近くの離島での人文地理学のフィールドワーク。
その行程が土地の人との交流を含め、ゆったりと描かれます。
自然、気象、生活、歴史、地理なんでも調べる事になりますが、主人公は急がない。
期限のない、終わりのない調査。
鳥の声に耳を澄ませ、海うそと呼ばれる蜃気楼を見る。
時を経て、なくなってしまったものを丁寧に書き出しますが、それを元に
戻そうという事もしない。淡々と受け入れる。
そんなしんとした心持ちになる物語。

 梨木香歩さんの小説はだんだんストーリーはシンプルになっていくけれど
文章は奥深くなっていくようです。
架空の島を舞台に、声高ではなく自然や人との関わり合いを描きながら
ふと、さびしくなるような気がします。
鳥が鳴き、カモシカが音なく近づき、山の中は異界という風に
どんどん異界の中へと入っていく。

 昭和の初期から50年後の開発計画真っ最中の時代へ。
昭和初期といっても、明治の時代からすれば変わってしまった離島。
さらに50年、観光地化が進む島。
一時期、気難しくなってしまった梨木香歩さんの小説ですが、
この物語は、気負いなくすんなりとしていて、奥深いけれども
押しつけがましくない。
娯楽性はないかもしれませんが、文学性はある、という物語。

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阿川佐和子さんの対談いろいろエッセイ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

阿川佐和子さんのエッセイや対談集はよく読んでいたのですが、新書でこのタイトルでベストセラーと聞きまして、なんだか薄っぺらいなぁと敬遠しておりました。
この一冊読んだから、即、聞き上手、コミュニケーション力がつくわけない、と考えていたのです。

 この本は自己啓発本にジャンル分けされるかもしれないけれど、興味深く読めたのは阿川佐和子さんが実に様々な失敗を重ねて、長年対談の仕事をテレビ、ラジオ、雑誌で続けてきた、その経験値の高さゆえ。

 象牙の塔の偉い学者とか、ワンマン社長が語る身につかない、面白くもない、コミュニケーション力の本ではなく、いかに対談前に緊張するか、最初は入念な準備をしていたのが、そのやり方を変えていく過程、聞きたくない、聞きにくい事を聞かなければならない時のプレッシャー、様々な失敗や成功、色々な人たちとの話、相槌の打ち方も一通りではなく、相手によって臨機応変に変えていかないといけないといった経験、厳しい経験・・・ああしなさい、こうしなさいはほとんどありません。

 やはり、人に話を聞くというのは相手が100人だったら100通りあってマニュアルはない、ということを阿川さんは自身で十分経験されているから説得力があります。
よく簡単に「傾聴しましょう」なんて言われますけどね。
色々な人のエピソードがありますが、知ったかぶりをしてもすぐにメッキははがれる、という事からデーモン小暮閣下に正直に「ヘヴィメタって何ですか?」という直球質問をした話が好きです。
私も、知らなかった事で、お答えが実に理路整然。

 タイトルで敬遠していたけれど、ヒントになるというより興味深いエピソード集でした。

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紙の本恐るべき子供たち

2016/04/21 23:04

いつまでも子供の王国は続かない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルは知っていても、実はまだ未読だった古典。
いじわるな子供たちが?って勝手に思っていました。
そして、すごく読みにくかったり、難解だったりといった不安もありました。
しかし、読んでみると、ぐいぐいと引き込まれるものを感じました。

幼い子供たちが恐ろしいのではなくて、大人になっても子供のままの恐ろしさでした。
美しい姉弟を中心に裕福だけれど、家族のいない孤独な「子供たち」が肩を寄せ合って、仲良くしたり、喧嘩したり、妬んだり、傷つけあったりする様を麗文でもって描き出します。
登場人物に思い入れはできないのですが、それでも、彼らの作り出す王国は退廃的で、美しいと思います。そ
して美しい悲劇が重なり合うラスト。読み応えありました。

この本ではコクトー自身のイラストがたくさん載っています。

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紙の本リフォームの爆発

2016/06/08 10:05

リフォームを文学する

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「住を素敵にすることが、結局、生活全般の素敵に通ず」
猫についてのエッセイで、熱海に家を買って・・・からはや数年。
かなり無理のある作りの家だなぁ、と思ったのですが、思い切ってリフォームを決意して、終わるまでのいきさつ。
正確には一階部分を全面リフォームするのですが、今までこういった本(建築家のノンフィクションなどはありましたが)はなかったかと。
ただの身辺雑記に終わらせず、リフォーム文学とでもいいましょうか、大変なんだな、と思う事がたくさんありました。
見積もりから、実際の工事まで住まいをよくしたい、生活をしやすくしたいと思う気持が成就するまでの道のりは身近でありながら、決心のいる事です。
町田康さんの文章はどんな題材を描いても町田康さんの文章リズムは変わりません。

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紙の本人生パンク道場

2016/05/21 14:02

人生相談回答者の条件は苦労人

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人生相談はあまり読まないのですが、やはり悩んでいるから
相談するのであって、それに対して弁護士や医師や有名人がとんちんかんな
回答をする、または「気にしない」など一番言ってはいけない言葉で
なぐさめるなんてことはこの本にはありません。

人生相談の回答者になる条件は「苦労人であること」だと改めて思いました。
タイトルにパンクとありますし、町田康さんのいつものぶっとび感覚
からすると不真面目な感じを受ける方もいると思いますが、
非常に真面目に質問に答えています。

 あとがきにもありましたが、非常に悩んだということがよくわかる回答。
人間関係(恋愛など)の質問が多いですが、「他人を変える」のではなく
「自分を変える」ということを書かれています。何を言ってもやっても
他人は変わらないのだ、という諦観に納得しまいした。
いい人生相談。人生相談の回答者は苦労人でないと痛みや悩みがわからない
のですね。

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紙の本シャーロック・ホームズの冒険

2016/04/21 23:07

残酷すぎない所がとても好感。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読書会の課題本。
ホームズはたくさんのファンをいつまでも持ち続ける有名探偵ですが、子ども用にリライトされたものを読んでいたくらいでした。
12短編の完訳ですが、知っていたのは『赤毛連盟』『まだらの紐』という有名どころ。
改めて読んでみると19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の短編にもかかわらず(ホームズは麻薬を吸っているにもかかわらず)時代を超えて読むに値する謎解きの数々でした。
最近流行りの残忍で不条理なグロテスクな殺人とは無縁の世界である、という所が一番好きです。
反面、古色蒼然としている部分もあり、完訳版は読むの時間かかってしまいました。

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紙の本蹴りたい背中

2015/10/04 18:58

一体、誰を蹴りたいか?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者、綿矢りささんがこの作品で芥川賞を受賞されたときは19歳。
見た目もアイドルみたいで、おおいに騒がれたものです。
フランソワーズ・サガンが『悲しみよ、こんにちは』を書いたのは18歳だといいます。
リアル10代の女の子は視線が厳しくて、自意識過剰で、わがままで。
誰もが通ってきた道だと後になって思う訳ですが、当時はわかりません。
主人公の長谷川という女の子は、「自分は人間の趣味がいい」と言い切って
しまうような、群れを作らず孤立した高校生の女の子。

そんな長谷川と同じように孤立しているクラスの男の子がにな川。
ただ、にな川は密かにアイドルに熱中しており、疑似恋愛体験真っ最中。
クラスで孤立しても長谷川ほど、自意識過剰ではありません。
アイドルというはけ口があるから。

そして長谷川と中学の時は仲がよかった絹江という女の子。
今はグループ行動しており長谷川とは距離を置いています。
群れを作るのが当然と笑っていられるような女の子。

この3人は、10代高校生のある典型3パターンを見事に体現していたのだ
と後になってよくわかってその構成に感心してまいました。

長谷川はアイドルに夢中になっているにな川の「背中を蹴りたい」と思う。
痛い目にあわせてやりたい・・・それは絹江に言わせると
「恋愛」なのだそうですが、恋愛以前のある気持でしょう。
私は、自戒を込めて自分をまざまざと思い出す長谷川の背中を蹴りたいと思ったり。
10代の自分には戻りたくない。あんなキリキリ舞いはしたくない。
蹴り飛ばしてしまいたい。

芥川賞受賞作となると「純文学」という冠を無理矢理かぶせられてしまいます。
そのことをうるさく言う人が必ず出て来ます。
私には純文学が何であるか、はっきりと答えられません。
あえて言うなら、この小説の冒頭、

「さびしさは鳴る。」

こういう感覚をあまり振り回すと陳腐になるのですが、
この小説はきちんとした着地を見せます。
こういうのを純文学って言うのかな、とぼんやり私なんかは考えるのです。

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紙の本血と骨 上

2005/03/21 23:29

生き抜くということ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

時代、民族、性別、年齢…関係なくこの本の中の人々の生き抜こうという気迫、それが圧倒的な筆力で描かれています。
生き抜く方法、それが人様々であること、ひとりでは生き抜けないこと、しかし他人に流されていては生き抜けないこと。

また、家族というもののつながりの濃さと微妙さ…家族だから、身内だから…という「ひとこと」ですまされない、人間関係の濃淡もたたみかけるように読む者を圧倒します。

昭和の大衆の歴史でもあります。社会事件など初めて知ること、知っていることでも実際どういう受け止め方をされたのか…今の時代と比べてどうか?
そんなことを考えさせられる気迫の物語でした。

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漫画ならではの動きがいい。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人の勧められて読んでみました。
第一巻から第十五巻まで一気読み。
アイディアがすごいことになっています。メカや角、牙にたよらない巨人の造形がすごいし、怖い。びっくり。
漫画ならではの「動き」をずっと見せる漫画で、原作の勢いったらすごいものがありました。
十巻までは対巨人の戦いなのですが、それから先はおや?と思う意外な展開に。
他に類を見ないSF世界で、人気が出たのは納得します。続きが知りたいなぁ。今も連載中なんですよね。
漫画は読んだら読んだなりに没頭してしまいました。謎の多いストーリーも魅力。

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紙の本老人と海 改版

2016/05/29 11:54

背筋の伸びた文章

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余計な寄り道描写、感傷的な物の見方、冗長な台詞などを一切排した太くて大きな柱が一本、のような小説。
短いながらも、「背景を背負わない」老人がひとり大きなカジキマグロと対峙する様を描きます。
老人の乗る小舟にクローズアップしていて迫力があります。
作家のその背筋には棒が一本入っているかのような、姿勢の良さが際立つ文章です。
学生時代にヘミングウェイは男性を描く作家と習った事があって、余計な恋愛もありません。
出漁する前と後での少年とのやりとりが、さりげなくてとても暖かいものを感じます。

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紙の本考えるマナー

2016/05/04 08:58

マナーは法律ではないものの・・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

自己啓発本のようなタイトルですが、読売新聞に「たしなみ」として12人が書いた
コラムを集めたもの。
町田康さんがいるのだもの、単なる自己啓発本にはなりません。
マナーといっても「そうめんのマナー」とかこういう見方もありなのね、という
エッセイ集に近いかもしれません。

 新聞連載時は最初が佐藤優さんで次が穂村弘さん、鷲田清一さん、
町田康さん、三浦しをんさん、赤瀬川原平さん、平松洋子さん、
楊逸さん、高橋秀実さん、劇団ひとりさん、井上荒野さん、
最後の津村記久子さんが2014年3月まで。
本ではそれがばらばらになっています。

 読んでみるとかなりボリュームがあり、平松洋子さんの視点が非常に興味深く読んだので
まとめて読みたかったですね。
以下、気になったものをいくつか。

町田康さんの「目線のマナー」
私は目線という言葉が嫌いで使わないのですが、町田康さんは逆に視点や視座という
言葉はもう使われないから目線という言葉を使うそうです。
ただし、条件があって
「目線というのは、その特質上、低ければ低いほど尊いのである。そして高ければ
高いほど無礼なのである」
だから「国民目線で・・」というのは逆に国民を低く見ている(使い方によっては)
という「目線」という言葉の使い方の難しさを書いています。納得。

平松洋子さんの「スポーツジムのマナー」
平松洋子さんの書くことは楽しい事ばかりでなく、はっとするような気付きを
促してくれます。
長年通っていたスポーツジムで学んだ事。「古株のお歴々の御機嫌を損ねない」
馬鹿丁寧な言葉使いから、非常に気を使われた事がうかがえます。
人の集まるところ、(ネットでも同じ)常連さんとか古株とか必ずいますよね。
牢名主的存在。序列というか。
気にならない人は気にならないので、威張りまくりの世界というのを鋭く見抜いて
います。

穂村弘「いちゃつきのマナー」
電車の中で人目をはばからずいちゃつくカップルを目にして戸惑う穂村さんが
目に見えるようなエッセイ。
穂村さんは恥の人だから、日本人には「公共の場でいちゃつく」は今の日本では
まだだろう。という考察が脱力していてうなずきつつも笑ってしまいます。

大体が軽いノリで書かれていますが、佐藤優さんは重いです。
「裏切りのマナー」では「裏切りにマナーはない」とばっさり。

楊逸さんは、中国と日本のマナーの違い、こんな所が違うのか、という文化比較が
興味深い。お辞儀、スリッパ、書店のブックカバーやスーパーのボリ袋、割り箸・・・

まとめて読むと結構、空気を読むとか人との距離について考えてしまうので、
前半は電車の中とかぽつぽつ読んでいたけれど、後半は一気読みして
少々疲れました。マナーは法律ではないから人それぞれの部分があって
ただ自分のルールを押し付けるのではなく、マナーを守って人と接する心の広さが
必要なんですね。

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