もんきちさんのレビュー一覧
投稿者:もんきち
紙の本
紙の本ジャンケン経営の実践 2度の経営危機を克服した町工場会長の経営問答
2014/08/14 18:47
社会の公器としての企業の経営
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涙の苦労談も経営哲学としてさほど目新しいこともありませんが、まさに著者が更新の経営者に向けて伝えたいことが凝縮されているようです。私自身は経営者でないので実感できないことばかりですが、社会に求められる企業のあり方を実践するための心得帳、と言う感じでしょうか。
第二部のQ&Aの方がよりその思想がわかりやすいかもしれません。社長と呼ばれて金持ちになりたい経営者にはつまらない本と言われそうですが、自分にもし機会が訪れたらこんな経営が出来るようになりたいと思いました。
紙の本
紙の本「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法
2014/01/13 23:52
問題意識はあるが忙しい人、にこそ
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「KY」が流行語になって以来、すっかり定着した「空気」と言う言葉をキーワードに、問題解決のヒントをまとめた本です。本書では「空気」を「それを検討せずに受け入れる、という暗黙の了解」(原文のままではありません)として、それが失敗に至るパターンを4つに分け、さまざまな本からの引用をしながら対策を検討していきます。
それぞれのパターンひとつひとつを見ると、いくらでも詳しい本がありますが、多くの人にとって大事なのは、失敗をより詳細に理解することではありません。それより、問題に直面した時に上手にトラブルを避け、より良い結果を得ることのほうがよっぽど大事です。そういう意味でこの本は「実用」書としてツボを押さえていて、「ああ、このままだとまずいけど、なんか言うと空気が読めないと思われそう」と感じたときの対処法、と言う形でいろいろな知見をまとめてあるのです。失敗の本質について深く考えるより、とにかく失敗の方向に流れが向きそうなときにそれを変えるためのコツを押さえたい人は読んでおくと役に立ちます。
もちろん、失敗回避のための発言がどれだけ有効に働くかは、その人の実績や評価がモノを言います。「上手な言い方」だけで全てがうまくいくわけではありませんので、念のため。
紙の本
紙の本パンダの死体はよみがえる
2013/08/17 16:50
博物学は生きている
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2005年刊行の新書の文庫化、と言うことで初出からすでに8年がたっているが、内容に古さは感じられません。古さはむしろ「学問と言うものは」と言う著者の主張で、いわゆる学者は象牙の塔にこもっていればよい、とも聞こえるものですが、表面的な効率だけを求めて成果を生み出せない日本企業と同じ体質が日本の学術界にもあるようです。
新しいものを掘り起こすのは、混沌の中に埋もれている事実から見つけ出すことが必要です。数学や物理学と比べて、他の学問は新しいことをするのに金がかかる(最近の物理学はものすごい金食い虫ですが)と言われていましたが、金持ちの道楽であった博物学と言うのがその基礎にあったのだな、と考えさせられました。そして、その流れを受け継いで頑張っている人が現在の学者の中にいるのです。
テレビでも時々見る先生ですが、インタビューに答えるおっとりした様子とは違い、文化(とその基礎となる標本)を残していこうと非常に熱く語っているのが印象的でした。ローレンツやグールドの著作と比べると派手なトピックが少ないのですが、研究の現場をリアルに伝えようとした結果かと思います。または、研究者本人が事務仕事までやらされる日本の研究事情の結果かもしれません。
日本も少しづつ自分たちの手で新たな現象を発見してゆこうという姿勢が芽生えてきたようにも思えますが、まだまだ道は遠そうです。こうやって闘いながら学問を支えている人を見て、応援してくれる人や自分で学問を志す人が増えることを期待します。
紙の本
紙の本ぞわぞわした生きものたち 古生代の巨大節足動物
2013/04/07 20:08
貴重な一般向けの節足動物の古生物学
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恐竜以外は情報の少ない古生物に関する貴重な本です。ただ、情報が少ないのは古生物学者も一緒で、その辺の苦労があちこちに見られます。そこをわかっていることとわかっていないことを上手に説明してくれていますが、人によっては、「結局本当のところはどうなんだよ」と思うかもしれません。まあ、ここまでの本を読みたいという人なら、きちんとした情報を求めているはずですが・・。
ひとつだけ難点をあげれば、2章から始まった種別の解説が最後まで続くこと。なんか、読み進めると唐突に終わってしまって、読後感がちょっと物足りなかったことでしょうか。最初からそのつもりで読めばよいだけの話なので、書いておきます。
紙の本
紙の本もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
2010/04/06 01:15
みんなが仲良くしなければチームワークは発揮できないと思っている人に
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この本を読んで、マネジメントとは結局チームワークを発揮させることなんだとあらためて思いました。ただし、そのチームワークは一般に信じられているように「お互いの友情と信頼」によるものではなく、各自が求めるものを手に入れるために比較優位を最大限に活用した「チームワーク」です。熱血高校野球を求める人には物足りないかもしれませんが、チームワークに全人格的にベタベタな一体感が必要ないと聞いて「!」と感じる方にはぜひ読んでみてほしいと思います。
もちろん、これは「教科書」なので、「現実は教科書通りにはいかない」ことを承知しておく必要はありますが、現実に教科書の「公式」をどう当てはめてみればよいか、が非常に分かりやすい優れた教科書です。だって、「マーケティングとは顧客を創造することだ」なんて言われても、「野球部にとって部員も顧客だと考えて、自分の次の行動を考えてみたらいいんだ。」なんて思わないし、それで、どんな成果が得られる可能性があるか、なんて、それこそ想像もつかないじゃありませんか。それがストーリーに乗せてきれいに納得できてしまうのです。
もちろん、マーケティングやマネジメントと言ったところでそれぞれの登場人物の想いや気持ちが計算ずくでコントロールされるわけではありません。むしろ、そういう想いや気持ちを満たしながらどうやって目標を達成する(つまり、幸福になる)のかを考えるのがマネジメントの本質だと再認識しました。
紙の本
紙の本世界屠畜紀行
2013/02/24 21:33
魚はおろせても、肉はなかなか・・
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初出が「部落解放」と言う雑誌、と聞いて「そういう本か」と思ってしまう方も多いような気がしますが、あくまで屠畜の現場を取材して回った、まさに「紀行」文です。著者自身は(私と同様)部落問題とは無縁に育ち、屠畜にかかわる職業差別もあるとは知ってもなんか実感のない状態。実感がないので、強硬な反対論も出てきません。そういう意味では、差別に反対する人が「実態をわかってない」と批判するかもしれません。それでも、知らない人が多すぎるこの話題を、韓国やアメリカをはじめ、国内を含めた食肉産業を自分が見聞きした範囲で正確に伝えよう、という思いが伝わってきます。
日本以外でも屠畜の現場は差別されていたり、差別されていなくても動物愛護団体の標的になっていたりで、取材するにもいろいろ苦労があり、そういう体験の中で食肉産業の置かれている社会的立場が見えてきたり、と言うことはありますが、あくまで中心は「生きている動物をこうやって食肉にするんだ!」という加工技術。著者はイラストレーターでもあるということで、本人が書いたスケッチとともに細かく伝えています。イラストレータの観察眼もあるのでしょうが、知らないことを知りたいという好奇心とあわさり、迫力ある楽しげな文章で楽しく読み進められました。
この本を読もうと思った時に思い出したのは、ヨーロッパの田舎で冬に備えてブタを殺して保存食に加工するドキュメンタリーのテレビ番組。小さな子供を含めた一家で集まって、屠畜、解体、加工をしていました。それまでは、「鳥を絞めるところを見て以来、肉が食べられなくなった」と言うような話ばかり聞いていたのでショッキングだったのですが、考えてみれば、食べているのに殺すことにショックを受けるほうがおかしな話です。もちろん、直接殺す場面を見てショックを受ける人はたくさんいるでしょうし、その感覚を否定するつもりは全くありません。私自身、親が植木の手入れをしていて芋虫を殺しているのを見て「かわいそうじゃないか」と言ったこともありました。だからこそ、こういうことはきちんと知っておくべきだと思います。
ちなみに、国内の取材では衛生検査について、また、BSE問題でどんな作業が追加されたかも書かれています。言うだけならどんな作業でも「やれ」と言えますが、実際の作業を知ると、できる範囲で何をしていくか、と言うことをもっと真剣に考えるべきだと思えてきます。
とは言え、結局は、普段知る機会のない知識と出会えた楽しさが評価の一番の理由。申し訳ないのは、これだけほめておきながら、ハードカバーが出たとき買わなかったこと。とっておきたい本は保管場所の問題もありますからねえ・・
紙の本
紙の本脳のなかの幽霊、ふたたび
2013/01/16 23:49
こちらを先に読みましょう
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
タイトルを見ると、「脳のなかの幽霊」の続編のようですが、あちらは書き下ろし、こちらは講演録です。どちらももちろん面白いのですが、講演だけあって噛み砕いた説明が多く、話題も(多少は)身近なものになっています。とにかく、薄いし。
推薦文を養老孟司氏が書いていますが、それを嫌だと思う人は避けたほうがよいかもしれません。不確かな事実をあたかも真実のように語っている、とか、十分なデータに裏付けられていないと感じるでしょう。序文にも「奇妙な症例を一例だけ調べる研究は、まちがった考えを招きやすいという批判がときどきありますが、それはナンセンスです。」「大規模なサンプルの平均を出すことによって発見されたシンドロームは、私の知るかぎり一つもありません」(p.8)とありますが、新しい理論を構築しようという試みは、そういうスタイルで注意深い観察と直観、厳しい検証によってしか進めるしかないし、そういう取り組みだからこそこんなに面白いんですよ。
で、気に入ったら、「脳のなかの幽霊」はもっとボリュームたっぷりに「濃く」楽しめます。
紙の本
紙の本驚きの介護民俗学
2012/08/19 17:16
生活に密着した民俗学
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シリーズとしては介護の本ですが、介護に興味のある人が読むケースと民俗学に興味のある人が読むケースとどちらが多いのでしょうか。
私はどちらかと言えば後者ですが、親もそろそろ介護の対象になってきてケアの現場に関する情報としても興味深く読めました。文中にもたびたび筆者の行っている聞き書きが介護の効果は不明、とあり、ひょっとするとこのような介護担当者がいたら「おしゃべりばかりして仕事をほっぽりっぱなし」と文句を言う人も居そうだな、と感じました。そういう方はより明確に現状への課題意識と聞き書きの意義が書かれている「おわりに」を先に読むとよいかと思います。
民族学といえば伝承や祭りの研究が代表的ですが、ここで描かれているのは自分たちの知らない歴史的な「日々の暮らし」です。これまでは一部の「自分で書ける人」「書ける人に興味をもたれた人」からしか知られていなかった事実と出合うのはまさに驚きの連続。こういう研究が積み重なると、いままで特別な事例と思われていたことが普遍的だったり、その時代の常識と思われていたことが限定的だったり、と言うこともわかって来そうです。これまでもマンガや都市伝説への民俗学的アプローチもたくさん読んだので、個人的にあまり違和感はありませんが、アプローチ自体への驚きもあるかもしれません。
さらに共感したのは、忙しい中でも思わず利用者の行為の「意味」を考えてしまう著者です。利用者の行為に意味づけができたときの楽しさが利用者への興味、話への興味になっているのでしょう。日々の業務には邪魔になりそうですが、そういう気持ちが学問や技術の進歩を支えているんだろうなあ、とか、考えながら読んでしまいました。
ここに書かれているのは介護施設という特定の状況で集められたケースですが、教育や近所付合いといったいろいろな場面で同じようなことが起こっているようにも思えます。まあ、それでこそ民俗学、ということでしょうか。
紙の本
紙の本ポケットスタディ情報セキュリティスペシャリスト 情報処理技術者試験
2013/01/06 22:57
使いこなせる人には本当に役立ちます
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資格試験のテキストはだいたい似たような内容のものが多くて、せいぜい図表の使い方が好みにあっているのかどうか、くらいのものと思っていましたが、これは一味違います。合格への最短距離、とか、試験に出ない内容は大胆にカット、とか、「はじめに」から飛ばしていますが、本当に合格のためのポイントをきっちりまとめた内容になっていました。ただし、これだけ読んで合格できるかと言えば、ちょっと微妙。本当にポイントだけまとめてあるので、それを理解できるだけの素地が必要です。
私の場合は、テキストや問題集を見ても「これならまあ大丈夫かな?」と思いつつ数回不合格で、それでもどこを勉強したらよいのかポイントが絞り切れていなかったので本当に助かりました。実務をしていてわかっているはずなのに合格できない、といった人には本当におすすめです。おかげさまで購入後最初の試験で合格できました。
紙の本
紙の本子どもに変化を起こす簡単な習慣 豊かで楽しいシンプル子育てのすすめ
2010/05/08 21:27
いちばん役にたった子育て本
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自分が読んだのは2000年に出たハードカバーですが、子供が中学生になる今でもいちばん役に立っている本です。子供を育てるときに直面する問題をどう判断したらよいか、解決するための基準が揃っています。具体例については、当然のことながら米国やキリスト教に特有の事情が反映されている部分があるのですべてを丸のみにしたい人には向きません。ただ、この本は自分の子供をそういう大人に育てたくない人のための本です。自分がどう育ってきたか、自分自身を見つめ直すためにも役立ちますし、もし、自分の親とうまくいっていないなら、親の弱さや欠点を認めてあげるためにも読んでみるとよいかもしれません。もちろん、語り口はやさしくわかりやすいもので、構える必要はありません。書かれている内容の基本的な考え方はハードカバーの書評に詳しい説明があるのでそちらをご参照ください。
ただ、そのぶん内容は重い本で、子育てに疲れて癒しを求めている人(そういう人向けの本があふれかえってます)にはちょっと向きません。また、単純マニュアルを求めている人(そういう人向けの本もあふれかえってます)にも向きません。まあ、本当はそういう人にこそ、この本を読んでほしいと心から思います。
2020/08/25 23:49
謎は解けても、すべてが解決したわけではないミステリ
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ジャンルは安楽椅子探偵もののライトノベルと言った感じでしょうか。あとがきを読んだら、書下ろしだそうで、4編の連作ではあるものの、最終話まで合わせて評価するのがよいように思います。ミステリとしては、若干無理を感じるところがないではありませんし、なんとなく後味の悪い解決になっているのも読んでいる最中には気になりましたけれど、最後まで読むと、「それも合わせて人生だし、生きているってそれほど悪くない」みたいな気になってきます。
私と同じような読後感の人がどれだけいるのかはわかりませんけれど、同じ気持ちを感じてほしいとの思いを込めて5点をつけます。物語の中でまで切ない思いをするのは嫌だけれど、爽快なだけでは作り物っぽくて飽きたかな、と言うときにいかがでしょうか。
紙の本
紙の本宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎
2012/12/01 16:16
現代物理学のガイドマップ
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ニュースで聞く「物理学を塗り替えるかもしれない大発見」とか、何回解説を聞いてもよくわからない人は多いと思います。昔から科学解説書を愛読していた私でもついていけないトピックスはいろいろありますし、理科が嫌いだった人ならなおさらでしょう。
昔、相対性理論が「世界に理解できるのは3人だけ」という話がありましたが、結局のところあれも数式とそれがあらわす物理的事実の関連、モデルと事象のつながりがわかっていなかったということで、要するに地図はあるが地図記号や等高線の意味が分からない、というような状態だったのだと思います。しかし、地図の読み方の解説をしてもらえればそれで理解できること、また、それで地図を読み取った人が「この辺はこんな場所だ」と教えてくれればそれで理解できることがぐんと増えてきます。そんなわけで、今となっては相対性理論がどういうものか、数式で理解している人も、数式では理解できなくてもどういう宇宙が記述されているのかを理解している人も、世界中に山のようにいるわけです。
もう一つの難しさは、個別の理論や発見の位置づけ。何が重要なのか、どれくらい、どんなふうに重要なのかがわからないことでしょう。しかも、素粒子の動きが予想と違っただけで宇宙の成り立ちが説明できなくなってしまう、なんて話があっても素人には何のことやら、という感じ。その理由をこの本では「世界は『ウロボロスの蛇』」と説明しています。そして、その蛇の全身を一通り見てみましょうね、というガイドマップがこの本。どこに立ってみると、どういう景色が見えるのかをわかりやすく教えてくれます。
私自身、CP対称性の破れとか、左回りのニュートリノとか、この本を読んで「そうだったのか」と納得した話がいっぱいあります。もちろん、別のところで蓄えた違う知識が役立っている部分もありますが、自分が知っていることでも「こう説明してあげれば、あの時わかってもらえたかも」と思うことがいっぱいです。今まで読んだ中で最高のわかりやすさ。かなり密度が高くて、かなりの知識がないとななめ読みはむずかしいですが、興味はあるけど結局わからない、という人には心からお勧めします。