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ぱせりんさんのレビュー一覧

投稿者:ぱせりん

83 件中 46 件~ 60 件を表示

紙の本天使な小生意気 10

2009/07/02 14:00

めぐに夢中!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 坂月さんが美木に仕える理由が愉快でかわいい娘を守りたいからだったり、藤木が飛び込む土手で河童が手招きしていたり(細かいところなので、ぜひ見つけてください)安田の「何でこんなにがんばるんだろう?」から「だからがんばっちゃうんだよ」の流れとか、小林の「強くなってよかった」という自信をたたえた静けさなどなど見ごたえ満載の最終巻です。

 容赦ない岳山ゲームの中で、それぞれの「男の中の男とは?」という自分なりの答えを見つけていくところがすばらしく、つくづく西森博之は目には見えないものを描写するのが上手いなとうなってしまいます。

 小悪魔は願いを叶えたのか?
 そもそも小悪魔はなんだったのか?
 そして、めぐは男なのか?女なのか?

 アニメ版は途中で原作に追いついてしまったためオリジナル展開になってしまいますが、原作ではきちんと納得のいく大団円が用意されています。
 一読だけではわかりづらいくらいあちこちに伏線が張り巡らされていたことに気がつかされるすばらしいラストです。

 今回初収録の外伝も本編をきっちり補完するもので必読です。

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紙の本狼には気をつけて 第1巻

2009/04/20 11:44

ファンへのご褒美

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 遠藤淑子の文庫にはたいてい書下ろしがありますが、この巻の書き下ろしはファンなら必見です。

 物語の後日談であり、ファンへのご褒美ともいえるサプライズが用意されています。
 内容はここには書けませんが、きっとみんなが希望していた幸せな結末です。
 二人のあの選択は正直意外だったのですが、妄想の余地も残してくれていて、本当に読めてよかった。
 買ってよかった。

 さあ、あなたも幸せのおすそ分けにあずかろうじゃありませんか。

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付属のレシピ本に飽き足らなくなった方に

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ナショナルのホームベーカリーを使用したレシピのようですので、多機をお持ちの方は実際に作るときは微妙な修正が必要かもしれません。

 ムック本ですので紙も薄くて気軽にぱらぱら眺められるところが良いですね。
 この手のレシピ本は、配合と出来上がり写真くらいしか載っていないものが多かったりするのですが、この本では要所要所での工程写真が載っているところがありがたいです。
 失敗例とその改善策も写真付きで載っていますし、ホームベーカリー付属のレシピ集に飽き足らなくなった方の最初の1冊としてはまさにうってつけだと思います。

 雑誌「Mart」の別冊ということから、どちらかというと小さなお子さんがいらっしゃるご家庭は特に重宝なさるでしょう。
 出来上がったパンを使用したレシピも載っていますし、ホームベーカリーをお持ちの方なら買って損はしないレシピ集だと思います。

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紙の本虹の谷のアン

2009/04/07 15:21

たとえ考えなしの行動に思えても

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は一応アンシリーズではありますが、どちらかというとアン一家のご近所の牧師さん一家メレディス家の子供たちが主体です。

 しばしば神様の国に行ってしまいぼんやりとして育児放棄をしている牧師の父に手間をかけさせまいと、自分たちで自分たちのしつけをしようとがんばるメレディス家の子供たちがけなげです。

 子供ながらの純粋さと浅知恵がかわいらしいやらかわいそうやら。
 それでも、どんなときでもユーモアと楽しみを忘れない精神は大事ですね。
 考えなしの行動に見えても、子供なりに懸命に考えた末の行動であったりすることを我々大人は覚えておかなければいけないと思います。

 昔の新潮文庫版は薄くてかなりカットされてあったようですが、こちらは完訳ですので読んだ覚えのないエピソードが結構あってうれしかったです。(現在出ている版では新潮文庫版も補完されているとか?)

 ラストは今までのアンシリーズには珍しく、これから世界的規模で巻き起こる混乱と悲劇を予想させますが、それゆえに余韻を引く美しいイメージです。

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紙の本アンの愛の家庭

2009/03/27 13:57

かつて子供だったあなたに

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは、原題が”Anne of Ingleside”ですのでいわゆる「炉辺荘のアン」です。
掛川訳のタイトルを眺めていて「ん?炉辺荘がない?」と思ってしまった方も多いと思うのですが(私もその一人)、きちんと収められているのでご安心ください。

村岡訳がすでに浸透しているし今更タイトルを変えるのは良くなかったのではと個人的には思います。
「完訳」と銘打っていても「炉辺荘のアン」の方が合っているような気もするのですが・・・。


あの小さかったアンもいつの間にか6人もの子供のお母さんになりました。
家庭を切り盛りしたり親戚に苦労させられたり、いつの世もそんなに変わらないんだなあと思います。

特に小さな子供たちの悩みはどこもあまり変わらないようで、嘘をついてしまったときのこの世の終わりのような苦しさや、お母さんに喜んでもらおうと精一杯のことをしたつもりでもそれは子供の浅知恵に過ぎなかったときの悲しさなどはじんわりと身にしみます。

私には残念ながらアンほどには優しい母親はいなかったのですが、それでも「どこかにはアンのように思ってくれる人もいる」という考えはとても慰めになったのを思い出しました。
今回改めて読んで、子供には子供なりの救いが、大人には大人なりの癒しが潜んでいるように感じます。

相変わらず未熟で子供の気持ちを思いやってあげられていない。
理不尽に他人に当たったりしない立派な大人になっているつもりだったのに。
それでもかつての自分が傷つき目指していたことを思い出すことは大変うれしいことでした。

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たかが鯛焼き、されど鯛焼き

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

巷では鯛焼きがちょっとしたブームだそうです。
不況の時は粉ものが流行るという法則でしょうか。
そんなTVニュースの報道を見ていると、「およげ!たいやきくん」世代としてはなんとも懐かしくどうにも食べたくなってしまいました。
すぐに食べられないのならせめて形だけでも味わいたい、と手を出したのがこの本です。

最初「鯛焼きの魚拓」と聞いて、鉄板に墨を塗ったのかなと思っていたのですが、焼きあがった鯛焼きに墨を塗っていたので仰天しました。
「食べ物に、なんてもったいない!」
ですが、筆者にも当然その思いはあったようで、一応きちんと配慮はしてあったので安心しました。

魚拓だけではなく店主の話やその店の鯛焼きの感触などにも触れていて、本当に鯛焼きへの愛が詰まっています。
食べ物を供する仕事を選んだ人たちの矜持にもほのぼのとあったかい気持ちになりました。

考えてみるとあんこが入って手づかみでホクホクと食べられる食べ物ってなんてステキなのでしょう。
しかもおめでたい鯛の形を模していて、眺めて良し、食べて良し。
これからも力強く生き残っていきますように。

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わかりやすすぎないのが良い

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タケルくんとデートをしたりミドリちゃんが選挙に出たり、秋姫たちの高校生活は楽しく続きます。
何気ない日常をまったりと楽しむだけでももちろん面白いのですが、それだけでは終わらないのがこの作品の凄さです。


メロンパンとウサギを持ったミドリちゃんの選挙ポスターに秋姫が
「私の大好きなものが全部かわいく写っている」
というところで、
「メロンパンがかわいいってどういうこと?」
というツッコミが入ります。
このツッコミがあるために読者はあやうく「メロンパンをかわいがるなんて、秋姫の感覚は変でカワイイな」と誘導されかけてしまうのですが、選挙ポスターの写真には、何よりもまずミドリちゃんが写っているわけで、ここは秋姫がいかにミドリちゃんを好いているかということを読み取れば、二人の関係がぐんと愛おしく思えてくるでしょう。
秋姫に単純に「ミドリちゃんが大好き」と言わせる方がわかりやすいのですが、この作者はあえてそうはしないことによって味わい深くするとともに、女子高生の普段の会話の何気なさまで再現してしまいます。
凄まじい漫画力です。
何でもわかりやすくすれば良いというものではないのです。

随所にそういった工夫があり、一読しただけでは気がつかなかったことが何度も読み込んでいくと「ああ、この台詞はこれにつながっていたんだな」という発見があります。
それがなんとも心地よい。
普通に読むだけでも十分面白いのに、じっくり読み込むとまた違った解釈が浮かび上がってきます。
これぞ、物語を読む快楽でしょう。

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紙の本勝てる読書

2009/03/09 12:52

書物という宇宙を星座になぞらえて

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

広い広い書物の宇宙に漂っていると、ある本を読むとその本があたかも読書ガイドかのごとく他の書物に導いてくれることがあります。
本書はそんな繋がりを星座に見立てたブックガイドです。

副題に「14歳の世渡り術」とありますが、子供向けと侮るなかれ、そこはやっぱりいつものトヨザキシャチョー節。
大人になるために、自分に世界に負けないために読むべき本と思考の仕方を示してくれます。
けれど、実は14歳の倍以上の年月を生きている私でも、読んだことがない本が結構ありました。
それは私が本をあまり読まないからではおそらくなく、読書というものが孤独なものだからです。
他者の知に触れる行為が孤独だというのも不思議なことですが、読書を続けていくと広く情報を集めているつもりでもどうしても傾向が偏ってしまうから。

このたび、トヨザキシャチョーの星座に触れることで、おかげさまで私の「いつか読むリスト」は膨れ上がりました。
感謝!

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こんな田舎で暮らしてみたい!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

架空の村である雨無村に大学を卒業して就職のため銀ちゃんが帰ってくるところから物語が始まります。
新しい職場は、村役場。
定額給付金支給の例をとるまでもなく、一番フットワークが軽く住民のことを考えている自治体は村役場なのかもしれません。
新卒の銀ちゃんは、経験が浅いながらも村の良いところ、みんなのすごいところを若さゆえの素直さで感じ取り、村にずっといるという覚悟を決めていきます。

雨無村は猟友会のおじさんがうろうろしていて、少子化のために16歳で出来婚した弟がありがたがられて、親戚でもないのに同じ苗字の人たちがたくさんいて、誰が何したという情報が半日もしないうちに周知の事実になって・・・というよくある田舎なのですが、そういったステロタイプの田舎は、いっそファンタジーの世界にも感じられます。
とはいえ、村役場の仕事や村社会を形成するおじさんおばさんの造形が異様にしっかりしているものだから大変リアルでもあり、その塩梅が絶妙なのです。
おそらく作者にとっては、雨無村はほとんどリアルなのではないでしょうか。
考えてみるといわゆる「よくある田舎」というのはNHKの朝ドラなどで知らず知らずのうちに教育された田舎に過ぎず、私にとってはすでにファンタジーだったのです。
それが岩本ナオの手にかかると途端にリアリティをまといキラキラと輝き始めるのでした。
「こんな村で暮らしたい!」と思えるほどに。

幼馴染のメグや澄緒との複雑な三角関係もドキドキもの。
恋のために行動しなくていつ行動するの?という気にさせられます。
特にぽっちゃりとしたメグちゃんのかわいらしさにはうれしくなってしまいます。
容姿ではなく行動でかわいらしさを表現できているところがすばらしいです。

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神など、いない。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

クヌートの「この地上に楽土を築く」という思いは、まさに王の思考であり、強大な力を持ち得る者は贅も尽くすが民のために住みよい国を作り統治もするという覚悟であって、神への挑戦でもあります。
このように人々が苦しむ世界をただ見ているだけの神ならいらぬ。自分が理想を作ってやるというクヌートには惚れ惚れします。
もうクヌートが主人公でもいい感じ。

その主人公トルフィンですが、やっと二つ名をつけてもらってちょっとは主人公らしくなっているのでしょうか。
でも「侠気のトルフィン」って・・・かっこいい・・・のか・・・な?「のっぽのトルケル」よりはかっこいいかも?
トルフィンのモデルといわれるヴィンランド移住を果たしたソルフィン・カールセフニ・トールズソンのカールセフニ(=侠気)から来ているようですが。

ビョルンの最期をし損んじることでアシェラッドがビョルンの友情を知るというところがうまいなと思いました。
これでアシェラッドは自分の手駒を完全に失ったわけですが、クヌート軍の中でどのように立ち回っていくのか、知略だけなのか仲間が増えるのか、トルケルは依然自分の軍というものを持っていることはアシェラッドとの関係にどう影響するのか、まだまだ色々楽しみです。

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紙の本アンの夢の家

2009/02/23 14:50

新婚時代のアン

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

無事にギルバートと結婚式を挙げ、新婚時代のアンの日常です。
さまざまな隣人と出会い、小さな夢の家でギルバートとの生活を開始します。

ミス・コーネリアの義侠心には惚れ惚れします。「男のやりそうなことじゃありませんか」といつも言うのは、実は男性に対する深い信頼と期待があるからでは、などと思ってしまいます。

そして悲劇の世界に閉じ込められているレスリーとの出会いは、アンの世界にいっそうの深みをもたらします。
それまで幸せに暮らしてきたアンの周りにはいなかったタイプのレスリー。
アンを襲う不幸に深い同情を示しながらも、アンに不幸が訪れたからこそやっと仲良くなれると打ち明けるレスリーには親近感を感じずにはいられません。
不幸を背負うと、それが誰のせいでもないのに誰かのせいにしたくて、どうしようもないのに他人の幸せを妬んでしまうところが私にもあるからです。
それでもやっぱりアンの世界ですからきちんとロマンチックなハッピーエンドは用意されていますのでご安心を。

ジム船長の人の一生というものについての深い愛情が物語をきっちり締めてくれます。

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紙の本アンの幸福

2009/02/20 15:25

レベッカ・デューのメイド魂を見よ!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

個人的に一番好きな巻です。
昔、婚約時代のみずみずしさにとても憧れて、省略されたアンのラブレターが読みたくて読みたくて、原書では書いてあるに違いないと思い、何とか原書を手に入れて一生懸命読んでみたことがあります。
当然、原書でもその部分は省略されていたのですが、当時は村岡花子訳しかなく、しかも抄訳であるという噂を聞いて、てっきり勝手に省略されたのだと思いこんでいたのでした。
大人になった今読むと他人のラブレターはさほど読みたいものでもなく、あの部分は省略されているからこそ上品で想像力を欠きたてられるものであるとしみじみと思います。


アンが良かれと思って敵に塩を贈る思いで行った行為が、はからずも相手方には脅迫じみた行いに受け取られるも、それがきっかけであらゆることが雪解けするという図式が風刺がきいていて面白いです。


このたび読んでみて改めて思ったのは、働く女性の悩みには時代も国も関係ないのだなあということ。
それでも、前向きに人間関係の円滑さを心がけていけばたいていのことは道が開けるはずというアンの姿勢を見習いたいです。

ミネルバ・トムギャロン嬢の壮絶な家系といちいち親切な怪談話はユーモアがありますし、サマーサイドでアンを取り巻く人々は本当に個性豊か。

そしてなによりレベッカ・デューのメイド魂!
彼女のいる下宿で過ごして働けるのならたいていのことはがんばれてしまえそうです。
ラストもレベッカ・デューが締めます。
彼女なりのせいいっぱいでのお見送りは泣けますよ。

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書物をたどるうれしさよ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ブックガイドとは本の紹介、手引書、案内書のことです。

この本は、漫画でありながらブックガイドでもある、という離れ業をやってのけています。
本を深く読み込み、自分なりの解釈を練ってまとめ上げるということだけでも大変なのに、さらにそれをキャラクターに落とし込んで、漫画ならではの エピソードを絡めてお話を作り、漫画に仕上げているのです。
その作業の困難さを思うと、ため息が出てしまいます。

主人公の草子の日常は決してやさしいものではなく、子どもゆえの矮小な世界にいます。
けれど、本の中はまったく自由で、草子は読書によって世界中を旅し、いろんな感情を味わい、気付きを得ます。
それはまるで現実に出ていく準備をしているようです。
少し顔をあげて、周りを見渡し、人と知り合う勇気を得たら草子がどのように成長していくのか、とても楽しみです。

読書好きなら必読。
そうでな人も必読。
読書の喜びを真っ向から表現していて素晴らしい。

本と本はあたかも星座のように繋がっており、それを辿る嬉しさが胸に迫ります。

たいへんな労作です。
漫画はここまで来たのですね。

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大変な労作です。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「新宝島」から日本の戦後漫画が始まったという歴史的事実に異を唱えるという人は今更いないとは思いますが、そういえば私たちは神様となった手塚の名前は知っていても共著として名が上がっている酒井七馬についてはほとんど知らなかったのでした。

 私は今回初めて酒井七馬の絵をきちんと見たのですが、そのあまりの達者さに驚きました。
 ペンと筆を巧みに使い分け、絵柄も丸っこい子供好きのするデザインからシャープな大人向けの線などまさに変幻自在。
 さすが神様・手塚の師匠筋です。

 そこまでの仕事をしていた人ですら、100年もしないうちに忘れ去られていくという時間の無情さを感じます。
 それでも可能な限り当時を知る人たちとコンタクトを取り丹念に酒井の人物像を追っていくのは大変な労力だったことでしょう。

 ただ、一人の人間の生き死にを取り上げる伝記とはいえその最期を自死ではないかと書くのは評者としては僭越ではないでしょうか。
 また、最終章が「大団円」なのですが、それは酒井七馬の生涯についてではなく、作者の洞察が当たっていたことに対するものでいささか自画自賛が過ぎるように感じました。

 ともあれ、あとがきにもありますが、酒井七馬の生涯をなぞるということは、そのまま戦後漫画の復興をなぞることでもあり大変に読み応えがありました。

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漫画を愛するすべての人に

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 藤子不二雄A先生の「まんが道」を読まれた方にはおなじみの雑誌「漫画少年」。
 数多の漫画家を輩出しすでに伝説でありながら、国会図書館にすら3冊しかないという幻の雑誌です。

 本書はその「漫画少年」を生み出した名編集者加藤謙一氏の息子さんによるもので、いかにしてこの雑誌が手塚治虫を含む超一流の漫画家を世に出しえたかが書かれてあります。

 それは漫画に対する明るい愛情と、世の宝たる子供の教育への熱意がぴったり合わさってこその奇跡であり、漫画の黎明期に加藤氏のような名編集者が居合わせたことはまさに僥倖であったと思いました。

 加藤氏の信念を持って一つのことをやりぬく清らかさには、頭が下がる思いです。


 手塚治虫が加藤氏の葬式の際に受付をかってでたことや、寺田ヒロオ(テラさん)が「漫画少年史」を編纂した際に借用した雑誌に火事などもしものことがあってはならないとしてストーブの使用すら控えた、といった「漫画少年」を愛した人たちのエピソードも満載で大変読み応えがあります。

 漫画を愛するすべての人に読んで欲しい本です。

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