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marekuroさんのレビュー一覧

投稿者:marekuro

90 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

紙の本家を買いたくなったら

2010/07/29 22:06

入門の入門。「○○すべき」というような煽りもなく安心して読める。著者の語り口は非常に穏やか。類書と比較しても好印象の一冊。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

現在、賃貸住宅に住んでいますが
諸事情から家の購入を検討する事になりました。

親元を出て10年と少し。
以降、ずっと賃貸マンション暮らしでしたので
何から手をつけていいものかわかりませんでした。

相手が不動産となると、スーパーで野菜を買うように
気楽に買い物はできません。
そんなわけで、何の予備知識もなく不動産屋を訪れる
勇気もなく、良い本はないかと探していたところ
本書の評判が良かったので購入してみました。

本書の内容を簡単に説明すると

・不動産を購入前に読む入門の入門書。広く浅く
 概論的に住宅取得のかかるアレコレを説明して
 くれる。

・不動産の取得を通して人生を考えるという
 自己啓発的な側面もある。

・著者の語り口は穏やかで「○○すべき」のような
 煽りはない。冷静かつ淡々と解説があり、読者が
 自分で考えて選択する余裕を含ませた文章である。



という感じでしょうか。
したがって、すでに豊富に不動産関連の知識や
取引経験のある方には物足りない内容なのかな
と推測します。

以下、目次。

***************************************************
第1章 「買うこと」を決めるその前に
第2章 「理想の家」のイメージを固める
第3章 「理想の家」を見つけるコツ
第4章  お金の話
第5章  種類別買い方の極意と注意点
第6章  購入後に後悔しないために覚えておきたいこと
※詳細略
***************************************************


同ジャンルの類書もたくさん読みましたが
「ああしろ、こうしろ」と指示的な本が多い中
本書は安心して読めます。

著者のスタンスなのでしょうか、「はじめに」において

  「家は幸せになるための『道具』ではあるが、
   幸せそのものではない」

あるいは他頁においては
  「とにかく貯金をしよう!」
  「焦らなくても家は買える」

と言い切ります。
冷静になって考えたら当たり前なのですが・・・
評者のような小市民にとっては不動産の取得は
人生における大きなイベントです。

ついつい、焦って目的と手段が混同してしまったり
購入を焦って後に後悔したりしてしまうリスクも高い
のではないかと思います。

評者自身の話で申し訳ありませんが
実際に営業マンとやりとりをする中で、購入を焦って
(焦らされて)しまう場面もありました。


本書を読んでおいたおかげなのか、今一歩とどまって
冷静に考える事が出来たのは大きな収穫でした。

営業マンの紹介してくれたマンションで、かつ評者が
購入を焦ったマンションは後々に結構な額の値下げが
されていました。

資産価値が十分に吟味されて値段を付ける不動産の
値段が下がるというのは“そういうこと”だったのでしょう。
危なく高い買い物をしてしまうところでした。
その点でも本書には感謝です。

結論としては
・本書はこれから家を買おうと思っている人には良書
・しかしながら、これ1冊で情報がそろうわけではない。

というところでしょうか。

「家を買おうかなぁ」と思ったら読んでみて
損はないと思います。

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紙の本

新たな発見や喜びは足元にあるのかもしれない

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

のっけから、こんな事を書くと眉をしかめられそうですが
また、普段の生活においても眉をしかめられる事が多いの
ですが、評者は下水道が大好きです。愛情すら感じます。

評者の仕事は下水道関係ではありません。
ですが無類の下水道好きです。

何故か?自分でもわかりませんが、下水道が好きです。
疲れた時など、ボーッと下水に流れていく雨水を眺めている
だけでも結構な癒しの効果を感じたりします。

もしかしたら心理的に病んでいるのかもしれませんが
幼少期から下水道が好きなので、どうしようもありません。
仮に病だったとしても、きっともう治らないでしょう。

雪国において冬季間はほとんどの場合、下水溝も
マンホールも雪の下に隠れてしまいます。
雪解けがすすみ、道路が見えてきた今日この頃。
雪解け水の多くが下水道やマンホールに流れ込んでいます。
下水道好きにとって春の訪れと共に大いに楽しめる季節です。

マンホールと言えば、直接的にも間接的にも下水道
のそれと関係が深く本書もタイトルこそ「路上の芸術」
と控えめですが、下水道のカテゴリーに入ると言っても
許される範囲でしょう。

ですから本書は当然入手して我が家の本棚における評者の
【重要書籍】を集めた場所にしっかりと並べられている
のですが、本書を手にした理由はそれだけではありません。

いつだったか忘れましたが深夜放送の「タモリ倶楽部」
において、本書が大絶賛されていました。
みうらじゅん氏とタモリ氏がそろって大絶賛してたのです。
番組内では「くだらなすぎて素晴らしい」という旨の
発言をされていたように記憶しています。

著者は神奈川県内のすべてのマンホールを写真に撮り
日本中のマンホールを観察してまわっているそうです。
時には車が往来する車道に出て、命に危険を感じつつ
写真を撮り、あるいは人ごみの中でマンホールの写真を
撮りつづけ、奇異の視線の集中砲火を浴びたりもしている
ようです。

正直、脱帽でした。評者にはそのような根性はありません。
冷静に考えるなら「他にやることあるだろ」となりそう
ですが、他者から見て一見理解に苦しむような事で、かつ
何の役にたつのか不明な努力を重ねている人に対しては
ある種の畏敬の念を覚えますし、その気合と根性にあやかり
たいとも思います。

本書の内容ですが
のっけから各地のマンホールのカラー写真が載っています。
それは「スタンダードタイプ」「ご当地もの」「デザイン系」
「ヴィンテージ系」「シンプル・イズ・ベスト系」
「版画もの」「メッセージもの」「その他」
とおそらく作者独自の切り口でタイプ別にマンホールが
分けられています。

本書を初めて手に取った時の感想は、当たり前ですが
「読む人を選ぶ本だなぁ」というものです。
そしてその感想は間違っていないと思います。
著者はのっけから、かなり大真面目かつ真剣に
「マンホールの蓋は芸術である」と述べています。
載せられているマンホールの写真の数々は
確かに手がこんだものが多く、控えめに言っても
デザイン性にあふれていると言えるでしょう。
しかし、多くの人の共感を得られるか?といえば
それは中々難しいのが実状ではないでしょうか。
きっと、誰も日常生活でマンホールの蓋の事なんか
気にしていないでしょうから。

以下、目次
第1章 マンホールの蓋の発見
第2章 マンホールとその蓋
第3章 下水道の歴史
第4章 日本のトイレと下水道
第5章 近代日本の下水道
第6章 阪神淡路大震災と下水道
第7章 現代の下水道
第8章 マンホールの蓋の鑑賞例

目次からもわかるように、マンホールだけではなく
下水道全般についても述べられています。
「マンホールの蓋」だけではネタが足りなかったの
かもしれませんが、しかし、下水道に関するあれこれは
かなり噛み砕いて書いてあり、大変わかりやすい内容です。
外資系企業の面接試験でも頻出される問題である
「マンホールの蓋はなぜ丸いのか」に関しても
かなり丁寧に解説されています。

本書の楽しみ方は、やはりマンホールの写真の数々を
鑑賞する事にあると思いますが、読み物としても秀逸だと
思います。なんと最終章では蓋の鑑賞の仕方まで手ほどきして
くれる丁寧さです。

先にも述べましたが、一体何の役にたつのか不明な
本書ですが、多くの人にとっては普段気にもとめられない
マンホールという存在にたっぷりとスポットライトが
当たっていて、それらを通して新たな気づきをたくさん
あたえてくれます。
余談ですが評者の場合は、こういう本ほど長く本棚に
残る傾向にあります。

本書を読んで考えたことは心踊るような楽しいこと、価値観を
揺さぶるような発見は意外と自分の足元にあるのではないか?
ということです。
遠くを見るのも大切ですが、自分の足元をもうちょっと確認
してみよう。と、そんな気にさせられる一冊でもあります。

新風社から出版されていた本書は残念ながら
会社の倒産によって現在は入手不可のようです。
新風社自体はwikipediaに書かれているように色々と物議を醸して倒産しているようですが
本書はどこかの出版社から復刊してくれる事を
望みたい。そんな一冊です。細く長く入手可能な状態で
いてほしいと思う本は久々でした。

正直、堂々とおすすめするのは気が引ける内容ですが
そこはマイナーなジャンルで強くたくましく誰に物怖じ
することもなく堂々とマイノリティを貫いている著者に
敬意を表し、評者も勇気を持って

      「おすすめです!!!!」

と書いて本書の書評を終えたいと思います。



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紙の本

紙の本少年になり、本を買うのだ

2010/03/22 15:13

読んで食って喋って寝る

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

近親相姦を題材とした小説「私の男」で有名な
桜庭一樹さんの読書日記。

と、書くと「どんなヘビーな日記なんだ」と
思われそうです。
実際に自分も「私の男」しか読んでいなかったので
書店でこのピンクのかわいらしい文庫を見かけたときは

!?

となりました。
先入観ってバカにできません。
そして、評者は「桜庭一樹」というペンネームで
作者を男性だと思ってました。(ごめんなさい)
やっぱり先入観って怖いです。

女性である作者の性別を男性であると
思っていた事に対する言い訳ではありませんが
作者は空手をやっていたらしく、道場にも通っています。
そして自らの課題を「色気」だと書いています。
そして本書のタイトルは「少年になり、本を買うのだ」
です。男性になりたいという願望があるのでしょうか。
一人称が「俺」だったりする場面も多いです。


内容はもうタイトルにもあるように
「読書日記」そのものです。
どうやら桜庭氏はかなりの読書家らしく
しかも、ものすごい読書量だという事です。

そんな桜庭氏は毎日書店をうろつき、大量の本を入手し
編集者や出版社のスタッフと妙にノリツッコミな会話をし
家に帰って本を読んで寝る。

実家にも頻繁に帰省し、その際はダンボール単位で
本を実家に送り、もちろん帰省の道中でも本を読み
実家においても毎日、街の小さな書店をぶらつき
家族ともノリツッコミな会話をして
ご飯を食べて本を読んで寝るという生活を送っています。

東京にいようが、実家に帰省中だろうが
日記のラストが「○○という本を読んだ。○○だった。寝た」
という形で終わるパターンが多く、本当に一日中本を読んで
ばかりいるのだなぁと証拠も確信もないのに妙に納得
させられる日記でした。
そしてうらやましいです。自分も一年位でいいから
読書だけして暮らしてみたいと思い、時々そんな妄想
をしています。
※上記○○にはタイトルや感想が入ります。

もちろんプロとしてのストイックな部分もあり
自分の作品を書いている時は、(本書では)
あるミュージシャンのPVを流しっぱなしにして
大好きな読書を一切せず、自分の作品と、自分が
作ろうとしている作品にマッチした音楽漬けになる
そうです。そして、その際は食事もほとんど摂らず
痩せていくらしいです。
ちょっとストイック過ぎるなぁと思いつつも
氏のプロ意識に圧倒されました。
そして、ちょっと真似出来そうにもありません。

本書の特徴ですが、氏の日記の中で
大量の本が紹介されています。
ジャンル的にはミステリーが多めであるという
感じです。
というより、ほとんどミステリーが主体でしょうか。
ミステリーをたくさん読む方なら自分が読んだ本を
氏の日記の中にみつけるという楽しみと、その本を
氏がどのように読んだのかを知るという楽しみがある
と思います。

今まで自分はほとんどミステリーを読まなかったのですが
本書を読了後、大量のフセンを貼っていました。
すなわち、簡易購入予定リストになったという事です。
そして、ついにミステリーも読むようになってしまいました。
そんなわけで、本書に載っているミステリーをはじめとした
様々な本を一気に買ってしまったのです。

新たにミステリーというジャンルを読み始めた感想は
「もっと早くから読んでいれば……」というものでした。
ちなみに本書の帯には「本が読みたくなる」と書かれています。
自分にとっては、正に、その通りな本でした。
読書において、ミステリーを読むという楽しみが
また一つ増えた半面、書籍代の増加という悩みも増えました。
本書では毎日のように本を購入している氏の記述が見られます
大丈夫なんでしょうか?と思うくらい買っています。
それもまた、真似出来そうにありません。
(うらやましいですが……)


氏の読書量の多さに圧倒されつつ、けっして読書を強要
するような文章ではなく、むしろ「本が好きでたまらない」
という作者の文章を読むと、きっと読者も自然と本が読み
たくなるはずです。

個人的には、自己啓発書にありがちな「本を読みなさい」
というような記述を100回読むより、本書「少年になり、
本を買うのだ」を読む方が、よっぽど本が読みたくなると思い
ます。

読書好きにも、そうでない方にもおすすめしたい
一作です。






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紙の本

紙の本まっくろちゃん

2010/02/19 14:11

ふてぶてしくも愛らしい黒猫の絵本。かわいらしさと迫力が同居した絵が癖になる。残念ながら出版社の倒産が影響してか現在入手しにくく復刊を望みたい1冊です。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙を見て、あまりに我が家の猫に似ている為、購入しました。
ちょっと悪そうな顔をしている表紙がたまらなく魅力的です。

ストーリーはいたってシンプルで、お約束の金魚鉢への悪戯や
獲物に飛びかかるけど捕まえられなかったといったもの。
いわゆる、平々凡々な猫の日常を描写しています。

本作の猫はいちいち表情が豊かです。
それは絵でも工夫されており、匂いを嗅ぐ場面では鼻がクローズアップ
された描写になっていたり、耳をすましている場面では耳が大きく
クローズアップされており、対称読者である幼児に配慮したものだと思われます。
そういう意味では教育的にも使用できる絵本なのでしょう。


この猫「まっくろちゃん」自体が結構なデブ猫だということもあるのですが
見開き1ページで表現されている、ジャンプしている場面は中々の迫力です。
また、獲物を追いかける場面の体の移動の描写は猫が獲物を狙う際の
特徴をよくつかんで描かれており不自然さがなく、ある種の臨場感すら
感じます。

本書、まっくろちゃんは、いわゆる子猫的なかわいらしさではなく
写真家の岩合光昭氏が好んで写真にするような野良猫的とも言える
ふてぶてしいけどかわいい姿が魅力でしょう。

本書は第24回新風舎出版賞ビジュアル部門最優秀賞を受賞した
作品ですが、残念ながら08年に新風舎が倒産しており、その影響からか
現在、入手しにくい状況のようです。
中古で2万円以上の値段がついている所もありました。

かわいらしさと迫力という一見相容れないものがバランスよく同居した
本書。猫好きはもちろんの事、デブ猫や黒猫が好きな人にも強くおすすめ
したいと共に、復刊を望みたい1冊でもあります。

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紙の本

刺繍で描かれたクリスマス。控えめだけど、ありがとうがつまった作品

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

10年ほど前に出版された絵本です。
ストーリーはとてもシンプル。

サンタさんに手紙を出した、しんちゃん。
手紙には

       いっしょにあそべて、おともだちになってくれる
       かわいい かわいい くまさんがほしいです。

と書かれています。その手紙はサンタさんの元に届けられ
くまさんとサンタさんはプレゼントを届けに向かいます。
無事にしんちゃんの家についたサンタさんとくまさんですが…
実は、くまさんはサンタさんのところで言葉を覚えサンタさんが
大好きになってしまい、離れるのがつらくなってしまいました。
そして、くまさんは言います。

         「ぼく…すーっと、サンタさんと いっしょに いたい。
         なんでもおてつだいするし、いいこにするから
         ここに いても いいでしょう?」

そんな、くまさんがどうして、しんちゃんのところに行ったのか
それは本書で確認していただきたいと思います。          

本作はとても心温まるお話です。ですが、押し付けがましい教訓も
押し付けがましい、”泣かせる”という意図が見え見えの感動系
でもありません。
静かに、穏やかに、そして控えめに”ありがとう”が表現されています。
しんちゃんが、くまさんを抱きしめて
        「あったかーい」
という場面は、絵本を読んでいる側にも、ぬくもりが感じられた
ような気がしました。
そして、しんちゃんと くまさんは言います。
        「サンタさん ありがとう」


この絵本の最大の特徴は、絵を刺繍で描いている事でしょう。
すごくシンプルに刺繍で書かれた絵。シンプルなストーリー。
しかし、シンプルが故に訴えかけてくるものも多いです。
そして、それは柔らかさや、ぬくもりを伴っているように感じられます。

丁寧に丁寧に刺繍で描かれたであろう本書。
評者は縫い物や刺繍は不得手なので、やってみようとすら
おもいませんし、正確な事はわかりませんが
本書の絵を刺繍で描くのは、ものすごい
手間がかかっているように思います。

感動や教訓の押し付けが多いクリスマス絵本に
少々胸やけ気味の方をはじめ、多くの人たちにおすすめしたいです。

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紙の本

紙の本ポテト・スープが大好きな猫

2009/11/21 21:01

老雌猫の魅力

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

猫の絵本である事と村上春樹氏が翻訳している
というだけで手にとりました。

本作品のストーリーは
頑固じいさんと、そのじいさんに負けないくらい
頑固な老雌猫の何気ない日常を描いたものです。

おじいさんは、老雌猫をけっこう気に入っているのですが
そんなそぶりを見せません。
そして、老雌猫も同じです。

おじいさんは、老雌猫をいわゆる猫っかわいがりすることは
しませんが、同じベットで寝ていたり、ポテトスープを作ったり
猫を釣りに連れて行ったりします。
すっかり相棒状態ですが、一定の距離はありますし
ベタベタな心の交流も見られません。

お互いが、適度に距離をとりつつ心は大きく離れない。
ある意味、個を尊重する国の作品らしいなと感じました。

ある朝、老雌猫が寝坊して、おじいさんの釣りに同行
できなかったとき、おじいさんの取った言動と、その後の
老雌猫のとった行動が印象的です。
詳細は本書を読んでいただければわかりますが
老雌猫の意地を見ました。

評者も老雌猫と暮らしていたこともあるし、
ひょんな事から、現在も老雌猫が我が家にいます。

訳者である村上春樹氏が、訳者あとがきで述べている

    年取った雌猫はだいたいにおいて気難しくて
    すぐムッと腹を立てるのだけれど、感情が細や
    かで、(きげんの良いときには)とても心優しくて
    深く気持ちを通じ合わせることができます。
    
という箇所に、「うんうん」と頷きながら読みました。
あまり知られていない老雌猫の魅力がいっぱい詰まった
一冊です。

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紙の本

紙の本ルドルフともだちひとりだち

2009/11/03 23:00

成長するという事

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前作が良かったため
「期待を裏切られたらどうしよう」
と、ちょっと心配になりながら読了しました。

1作目は良かったけど2作目でがっかりした

という経験は評者だけではなく
多くの読書家が経験されている事だと思います。

ですが、本作に関しては結果的に良かったと思ってます。
ただ、前作のような良い意味での緊張感は
感じませんでした。
一方で物語にある種の安定感が出ています。

そういう意味では前作の世界観が好きで
なおかつ、登場人物に思い入れのある読者は
読んで得るところがあると思います。

なお前作を読んでいない方は、まず前作を
読んでからの方が物語をより楽しめると思います。

本作においては
前作には出てこなかった猫達の登場。
そしてもう一人(?)の主人公である
イッパイアッテナの出自についても語られます。
読んでいて思わず目頭が熱くなる場面でした。
それにしても30近くなって児童書に泣かされそうになる評者・・・
それも本作品の魅力が故でしょうか。

前作においてルドルフが
・未知の環境に適応する
・教えを素直に受けて成長する
という成長の仕方をしますが

本作では
・教わったことを基本に考える
・そして悩みながら自分の答えを見つける
・それを行動に移す
という成長を見せてくれます。
前作では何でもイッパイアッテナに尋ねていた
ルドルフも自分で考えるようになります。
前作から2年。ルドルフも立派に成長したと
いうことでしょうか。

前作においてイッパイアッテナの名コーチぶりを
書評しましたが、本作では助言こそ与えるものの
前作でのそれに比べると介入が少ないように思えます。

助言は与えるから、自分で考えろってスタイルです。
そしてルドルフも自分で考えます。
女の子の事や猫関係の事など色々と考えても
わからない事も多いルドルフですが

考える→行動する→経験する→考える

の繰り返しで確実に成長していく姿は
読んでいて清々しい物を感じます。

そしてルドルフと必要なだけ適度な距離の取り方をする
イッパイアッテナの名コーチ(および友人)ぶりに
脱帽させられます。
それでいてルドルフと仲間としてはしっかり
連携をとっている。

イッパイアッテナの
友人~コーチ のスイッチのON OFFの切り替えが
絶妙だと思うのは自分だけでしょうか?

経験や年齢層の異なるチームでのコーチングの理想型が
そこにあるような気がします。(誤読かもしれませんが・・・)


そして本作においてルドルフは
自分の住んでいた街に行くことになります。

イッパイアッテナと文字の読み書きの練習をした
成果が現れるわけです。

故郷に戻ったルドルフに何がまっているのか。
そこでルドルフは何を考え、どう行動するのか。

本書の一番の山場だと思います。

ルドルフはイッパイアッテナから
たくさんの事を、しっかりと受け継いでいる。

そう思える結末でした。


また、前作と本作を通して変わらずイッパイアッテナが
言い続けるセリフがあります。それは

「いやだね~教養のない猫は」
という発言です。

本作においては、その”教養”の意味するところを
イッパイアッテナ自身がしっかりと語ってくれます。

これは我々、人間も肝に命じておきたい位に
含蓄のある発言でした(笑)

本書で多くの方々に
立派に成長した彼らを確認していただきたいな
と思った次第です。

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紙の本

メメントモリ

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大学の時に学内の教授について
各地の火葬場を尋ね歩いた事がある。

ついて歩いた理由は色々あったように思うが

評者自身の若気のいたりからくる悪ノリ。怖い物見たさの好奇心。
暇を持て余していた当時の自分。
それらも理由としては大きかった。

けれど結局は未熟ながらに”死”について考える大きな機会となった。
そしてそれは同時に”生”を考える事でもあった。

本書との出会いは、そんな経験から約10年も経った後に
書店で偶然に手に取ることで訪れた。

本書は葬祭施設計画の策定に参加し、なおかつ火葬炉の
技術的な開発を専門としている著者によるものである。

したがって非常に科学的でもある。(もちろんわかりやすく説明している)

火葬の技術のみならず
エンバーミングと言われる死体の保存技術についてや
散骨、お墓等の葬送全体についてふれている。

また、近年の火葬場が抱える問題の数々。
一例として遺体焼却時のダイオキシン問題や
同じく遺体焼却時のペースメーカーの爆発
そういった事例について丁寧に述べられている。

諸外国の火葬の事情にも触れられており
わが国における火葬の技術の高さ、火葬率の
高さをデータで知ることが可能である。

火葬場が仕組みとして出来上がる以前には
「野焼き」として火葬に丸1日以上の時間を要したということ
野焼きの様子は映画「蛍の墓」をイメージしていただくと
わかりやすいと思う。

さらに「タイムマシン」などの著作で有名なH・Gウェルズが
火葬推進委員会に名を連ねていたこと。

日本でも火葬を禁止していた時代があったということ等

とにかく話が陰気にならないように小ネタも散りばめ
ながら火葬をはじめとした葬送についてを
中立的な視点から語ってくれる。



火葬場といえば、働いておられる方には申し訳ないが
おそらく嫌悪施設の筆頭にあがる存在だろう。

火葬場建設をめぐり自治体と住民が衝突!
等というニュースを目にすることもあった。

著者によるとわが国の火葬率は、ほぼ100%なのだそうだ。
という事は、よほど特殊な事情がなければ

誰しも1度は必ずお世話になる施設だといっても過言ではない。
だが、研究者および関係者でなければ普段から火葬場を意識する人は
いないだろう。

評者もその一人である。

しかし、本書で提供される知識の数々によって
自らの経験なども回想しながら
非日常に押しやっている日常を再確認できた。

評者自身が初めて火葬場と出会ったのは
小学校低学年の時である

地方の古い古い火葬場。
鬱蒼とした山の中にあり、高い煙突からは黒煙が
立ち昇っていた。

施設に近づくだけで、鼻をつく独特の臭い。

おそらく昨今の火葬場では中々お目にかかる
機会のないであろう原始的な設備。

扉が開いた時に目に飛び込んでくる
焼け焦げた炉内。

その時のけむり、臭い、亡くなったとはいえ形のあった故人が
骨壷に納められるという様子。


そして、かなり年上の従兄弟に連れられて
火葬炉の裏側から覗いた火葬の様子。

20数年前の事ではあるが
すべてが衝撃的な記憶として
今も鮮明に脳裏に焼きついている。

当たり前の経験だけど
すごい経験だったと思う。
そして本書を読んだことで
より鮮明に細部を思い出した。

決して”快”の部類の記憶ではないが
だからといって”不快”でもない。
何とも不思議な感覚だ。


本書を読み終えて思った事がある。
それは、葬祭施設の新旧の別はあれど
いずれは自分もお世話になるということだ。

そう思った時に強烈に"死”を意識した。
そして、同じくらい”生”を意識した。
大学生の時と同じだ。

結局、あの時と同じで他者を唸らせるような深遠な
言葉は見つからないが
より良く生きる!などというスローガン的なセリフを
本気で意識した時間でもあった。

陳腐な感想かもしれないが、とても貴重な考える時間を
提供してくれた本書に敬意を表して
あえて嫌われそうな話題を書評してみた。

読んだ方が不快な思いをされないのを祈るばかりである。




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紙の本

もう少し、つっこんだ内容がほしかった

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の撮る写真はどうも猫を撮っているというより

景色の中の一部としての猫

という感が否めない。(ただし、これは良い悪いの問題ではない好みの問題だ)

中には瞼にルアーの刺さった猫の写真などもあるが

そんな状態の猫を見たら写真に納める前に

どうにかしてあげれなかったのか?と思う。

そして、本書を読み進めて思ったことがある。

地域猫に対して著者のスタンスが明確にされていない。

同情を寄せている記述もあれば、驚くほど距離をとっている

記述も散見される。キツい言い方をしたら他人事に読めるのだ。

テレビで報道される事件・事故に「かわいそうだね〜」って言っている

のとあまり変わらない印象を受ける。

立ち位置のはっきりしないルポはなかなか読みにくい。

それは「信者」や「アンチ」の立場から書いてほしいという事ではない。

記録者として書くなら終始、中立な立場から書いてほしいし

動物愛護の視点から書くなら徹底的に動物愛護の視点から書いてほしい。

あるいは潜入体験ルポのように色々と著者が経験して

気持ちが揺れていたり、そしてその様子を記述しているのか?

というと別にそうでもない。

要するに著者のスタンスが、そしてその揺れ動き方が

わかりにくいのだ。

そして工場猫という造語をした割には、いまいち”工場”を

絡められていない。

場所により生活環境は左右されるはずだ。

それを記述していない。

本文を見るかぎりでは

背景は工場だが、別にそれは工場ではなくても

どこにでもある公園でも路地でもいい。

人間の生活を見る上で地域特性を無視できないのと

同様に猫もまた然るべきだろう。

工場だからどうしたの?と質問しても

納得のいく回答を本文からは得られない。

著者はあまり猫に対して思い入れがないのではないか?

そのようにも読めた。

あくまで想像の域をでないのだが。

「工場萌え」という写真集が流行った事。

そして、その工場萌えの要素と一定の売上を上げれる「猫」の写真を

一緒にしてヒットを狙おうとしたのではないだろうか?

別に売上を上げようとすることを否定するわけではないが

いち購入者としては、やはり猫に対する愛情

あるいは地域猫問題に対する何らかの提言をしてくれる

著作にお金を払いたいのが正直なところだ。

そういう意味では本書の帯はちょっと煽りが過ぎる。

そして帯の煽りと著者との間に温度差がある。


残念ながら本書のラストは結局何を言いたい訳?的な結末を迎えた。

わざわざ、特殊な場所に足を運んで

工場と野良猫の写真を撮って

最後のメッセージが

驚くほど曖昧だ。

読了後の素直な感想は

あまりにお粗末ではないか?

に尽きる。

本書で述べられる地域猫に関する著者の意見は

「そもそもは人間関係の問題。」
「立場や主張を越えた人同士の信頼関係が大事」

もっともな意見だと思う。

じゃあそれをどのように実現するのか?

その問いに明確な答えを出すことは難しくても

ひとつの意見を述べることは可能だろう。

仮に上記を提案だと解釈するなら

あまりに抽象的ではないか?

上記にある著者の意見は

戦争にも当てはまるし、職場の人間関係トラブルにもあてはまる

環境問題にも当てはまる。当てはまる事柄を探していくと

無数に出てくる。そこが抽象的と表現した所以である。


地域猫という題材を扱うなら、現場を見て感じた疑問

ジレンマ等々色々あると思う。猫が好き嫌いとに関わらず

主張の異なる人同士のキレイ事ではすまない意見の対立も含めて。

当然、ダークサイドも存在するわけだ。

それら含めて今一歩

踏み込んだ解釈や見解。それが難しかったとしても

筆者の心の揺れなどを表現してほしかった。

ただし

個人的には本文中にある猫の保護活動をされていたご夫妻に

そして、猫の治療をされている獣医師には

尊敬の念を感じた。なかなか出来ることではないし

おそらく、本文中には書かれていいない苦労も多いことだろう。


最後に

評者から見ての本書の至らぬ点は厳しく評価したが

それと、本文中で紹介されている方々への気持ちは別であることを

明示しておきたい。


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紙の本

紙の本ことりとねこのものがたり

2009/10/26 22:09

”死”という贈り物

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

悲しいけど勇気をもらえるお話。

物語の概要を説明すると

木登りができず、他の猫にバカにされている「ねこくん」が
かなり高齢の「ことりさん」と交流し、その死を見届けることで
強くなっていくお話。

このお話の魅力は
”死”を悲しい出来事だけで捉える事をせず
”死は遺された者への贈り物”という価値観を
物語に与えている事だと思う。


そして、ねこくんと ことりさんの交流。
本来、空を飛んでいるはずが鳥かごの中にいる、ことりさん。
本来、木に登れるはずが登れない、ねこくん。

そこには、あるべき姿から乖離したものの悲しさ。
そして挫折と不遇な環境を知ることによって
はじめて他者に与えることのできる優しさ
そういったものが言葉少なめに表現されている。

最後に、ねこくんは ことりさんの死から
とてもとても大きな贈り物をもらう。



一方で、ともすればマンネリになりがちな
”死”をテーマとした物語の本書だけど
それを感じさせない。


その理由は

すばらしい絵の存在が挙げられるだろう。
絵でありながら写真のようなリアリティをもって
迫ってくる。ある種の迫力がある。
だが、確実に絵なのである。

自分は絵に関してほとんど知識を持たない。
だけど、油絵のような絵から
ねこくん の心模様まで伝わってきそうだ。

ことりさんが死んでしまって
鳥かごの前で涙を流す、ねこくん

今、見返してもこのシーンの絵は
胸に迫ってくる。


この物語は、約30年前に発表されたものだ。

毎度のように評者自身の話を持ち出して恐縮だが

評者は幼少期に本書を
今は亡き母から読んでもらっていた。

母の死後に実家を片付けていて、押入れの中からひょっこりと顔を出した本書。
そして本書を約20数年ぶりに紐解き

文章から、絵から、表紙から、匂いから、手触りから
それらを通じて亡き母が本書を読み聞かせてくれた
かけがえのない時間が蘇ってきた。


母の死を経験し、その後に
本書を20数年ぶりに再読したことで
”死は贈り物でもある”と
内から湧き出てくるように感じたのだ。
思わず、ねこくんと気持ちが重なった瞬間だった。

もちろん”死”そのものが贈り物であるとしても
それをどのように受け止めるかは
遺されたものに委ねられていて、それ自体が
明確で具体的な何かを示してくれるわけではないのだが・・・


今は役割も代わり本書を読んでもらっていた自分が
本書を読んであげている自分になっている。

読んでいる本はもちろん、20数年前に自分が読んでもらっていた
ボロボロになった本書。

最後に、ねこくんが ことりさんからどんな贈り物をもらったのか?
もうわかってしまった方もいるかもしれないが
それは実際に読んで、確認してもらいたいなと思う。

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紙の本

紙の本ほんやのいぬくん

2010/07/21 14:18

本好きの心の琴線に触れる一冊。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子供の本棚を眺めている内に目に飛び込んできた
本書。

いつも猫の絵本ばかり買っているし、たまには
犬の絵本も良いなぁ。

とか

そういえばbk1のマスコットも犬だったよなぁ等と
考えながら手に取りました。

本書の内容は

本が大好きな、いぬくんが
本好きが高じて本屋を始めます。
しかし、中々お客が来なくて寂しい
思いもするのですが・・・・

というものです。本を読んで幸せそうに
過ごしている、いぬくんを見るとなんだか
心が温かくなります。

あまりえらそうな事を言える立場ではありませんが
本書における、いぬくんと本のお付き合いの仕方や
いぬくんと、みんなの関わりは読書の醍醐味や本と人
との望ましいあり方が表現されているように感じて
なりませんでした。


本を愛する全ての人に一読をおすすめしたい一冊です。

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紙の本

読書の可能性。バリアフリー図書を認知症高齢者と楽しむ。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「赤いハイヒール」~ある 愛のものがたり~
このタイトルを見ると、どことなくクリスマスの
雰囲気が漂っているような気もしますが、この
本は読書のバリアフリーを目指しているLLブック
というものです。

LLブックや読書のバリアフリーに関しては
midoさんや
wildcatさんが
ご自身の専門的な視点から解説されています。

評者も一応、福祉系なのですが、同じ福祉系でも
やや畑違いの分野ですので、その評者がLLブックについて
専門的にあれこれ記述するのは屋上屋を架す感もありますが、
簡単に説明するなら

LLブックの対象としている方は、知的障害者、自閉症、失語症
ディスレクシア、聴覚障害者、高齢者を対照としていて、内容や登場人物、言葉、絵、レイアウト
のすべてに読むことが困難な方々に楽しむように作られています。
そして、それは子ども向けにするのではなく、大人も楽しめるように配慮され
ている点がポイントです。
そして、本書はCD-Rが付属されていて、専用のソフト(CD-Rに収録)を
パソコンにインストールすることで、PCで絵を文字を音声を見聞きできる
ようになっています。

本書のストーリーですが、一言で表現してしまうなら
障害をもった女性の恋愛と自己決定のお話。と表現できるでしょう。
ストーリーの詳細は、評者が自分で記述するのがバカらしく思えるくらい
すばらしいものをwildflowerさんが
本書の書評で伝えてくれています。

評者はこのLLブック「赤いハイヒール」を重度認知症高齢者と共に
楽しみました。
評者を含めて5名の方々でノートパソコンを囲んで、昼のひと時を
本書と共に過ごしたのです。

結論から申し上げますと、援助者側が驚くような認知症高齢者の
反応というのはありませんでしたが、普段は車椅子に座って
見ているか見ていないかもわからない状態で無表情にテレビを
眺めている方が、本書のストーリーをわずかに理解できたのか
「わたしの若いころは勝手に相手を選べなかった」と発言されました。

他にも脳梗塞後後遺症で失語状態の方が、だまってPCの画面を
ながめて、うんうんと頷いていたり、徘徊(その方にしかわからない
理由で起きている限り歩き続ける行動障害)の重度な方で、寝るときと
食事以外では、一所に2分も留まれないのですが、画面を見て
1~2分側に留まって眺めていました。

その後は、皆でお茶とお菓子をいただきながら、先にあった
「わたしの若いころは勝手に相手を選べなかった」という
事をはじめとして、普段はあまり聞くことのできない話などを耳にすること
ができました。援助者としては会話の間に貴重なアセスメント(情報収集)
が出来ましたし、回想法のような、ちょっとしたグループセッションに
近いやりとりでしたが、このような時間を持つことができ、充実した
昼下がりのひと時だったように思います。

これだけで、LLブックに効果があったと言いきってしまうには
少々難がありますしエビデンスも足りないのですが
側にいた評者は、LLブックの効果云々よりも可能性を強く感じた次第
です。

仕事の中で出会う高齢者の中には
「読書は好きだけど、目が薄く(目が悪く)なって読めない」
と読書を諦めている方も少なくありません。

評者自身は本が大好きで、”当たり前の生活”に欠かせないのですが
上記の高齢者のように、目が悪くなって本が読めなくなるのは悲しい事
です。そんな状態を想像するだけでもQOL(生活の質)が低下しそうです。

ですが、このようなLLブックがもっともっと普及してくれたら目が悪くなって
字を読むのに困難を覚える位まで長生きするのも悪くないな、と思います。

LLブック自体は、まだ開発の途についたばかりでしょうし、お世辞にも
普及しているとは言えない状況かと思いますが、今後の展開に強い期待を
抱きつつ今日まで努力されてきた関係者の皆様に感謝と尊敬の念をお伝え
したく本書の書評をさせていただいた次第です。





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紙の本

紙の本クリスマス・セーター

2009/12/17 22:03

一夜と一年。少年が辛い境遇を通して学ぶこと。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルからして季節感たっぷりの物語です。
帯には有名書店の店員による大絶賛の言葉が踊ります。
期待して読みました。読後はちょっと、ほろ苦さもありつつ
しっかりとクリスマスらしいお話のように感じました。

ストーリーを簡単に述べると以下のようになります。

パン屋を経営していた父をガンで亡くして、母を二人で
暮らす少年のある年のクリスマスのお話です。

母親はいくつも仕事を掛け持ちしますが生活は大変苦しい
状況です。

その年のクリスマス。少年はクリスマスプレゼントに自転車を
求めます。そのために、一年間様々な努力をおこなってきました。

しかし、母親がくれたプレゼントは手編みのセーター。
落胆した少年は気分を害してセーターを粗末に扱います。

それを見た母親も気分を害し、二人は険悪な空気の中
母親の実家にクリスマスの挨拶に向かいます。

しかし、それでも気分が収まらない少年。
少年と同じくらい少年らしい心をもった祖父と過ごしますが
楽しい時間はすぐに過ぎ去って、またしても自転車の事が
頭をよぎります。

その事でつらく家族に当たる少年。
泊まっていけという祖父母の提案に反抗して家に帰ることを
主張します。

そのまま帰ることになるのですが、クリスマスまで連日
働きづめだった母親は居眠り運転をしてしまい事故を
起こしてしまいます。

少年が目覚めたとき、母親が即死したことを告げられました。
少年はしばらく放心状態で過ごしますが、間もなく祖父母との
生活が始まります。

しかし、父を亡くし、続けて母を亡くした少年の心は荒れます。
大好きだった祖父母との暮らしも、反抗と反発によって祖父と
ぶつかるようになり、険悪な雰囲気の中暮らします。

そんな時、廃屋になりかけていた隣家の敷地内で
汚い格好をした、少年の住んでいる地域では見かけない
男と出会います。

祖父母と暮らし始めて一年後のクリスマス。
少年は現状に嫌気がさして、家出を試みますが
家出の最中に汚い格好をした男と出会い・・・

というものです。
ラストはしっかりとクリスマスらしい”良いお話”になるのですが
正直、途中は読むのがつらくなる内容でした。

というのもクリスマスのお話にしては”死”の記述が多いこと。
少年の内心にある祖父母に対する愛情と、しかし自分の境遇を
呪い、いけないと思いつつ反発し周囲を傷つけてしまう不器用さ。

これらが、クリスマスのストーリーらしかぬ雰囲気を漂わせ
ページをめくる手の動きを鈍らせました。

特に波立っている少年の心のありようは、元少年である評者にも
記憶に覚えがあり、我が身に置き換えて読んでしまうと
直視に耐えない箇所もありました。

12才の少年が希望していた物の代わりに母親の手作りの
セーターをもらっても素直には喜べないでしょう。
そして、そのセーターに関連して起こる不幸。
評者自身の少年時代を振り返り、この少年の立場を自分自身に
置き換えると、きっと同じような心理状態になったのかなと思います。
それが故に直視に耐えなかったのです。

思えば12歳という年頃は、大人から見ると確かに子供であるのですが
本人の感情的には、大人と呼ぶには若すぎるし、かといって
子供と呼ぶにはちょっと難しくなってくる頃でもあります。
少年から青年への過渡期のまさに入り口なのかなと思います。

今一度、ストーリーに戻りますと、少年は祖父母と暮らすようになって
から育った環境や価値観と対照的なものを多く体験します。

少年の父親は政府の援助を受けて生活している人を見て
    
     「あの人は働けるのに働く気がないんだ。自分で働いて
     稼げる人が他人から援助を受けるのはおかしい」

と言い自身も生活は苦しく、子供に長靴を買えず
スニーカーにビニールをかぶせて登校させていました。
母親も同様で、少年の父親が亡くなった後、祖父母からの
援助の申出を頑なに拒み続けました。

一方、祖父は
   
     ひとりで重荷をしょいこんではいかんのだ。まわりの人間に
     頼らねばならん。・・・・・人間はみんな幸せになるように
     できている。

といい、協力して幸せになる事を志向します。

少年が共に住む祖父母は農場の持ち主であり
牧場や畑の中に居を構えています。そして決して金銭的に
裕福な家庭ではありません。少年が仲良くなった友人は
都会からやってきて新しい家に住んでいて、裕福な家庭です。

家庭環境的には古風ながら家族同士のつながりを志向する祖父母と
一方で友人の家では父親が出張がちで、母親は昼からお酒を飲んでいます。
少年は本人の反抗もあって厳しくなった祖父がいますが
少年の友人は何でも要求が通る家庭環境です。

12~13歳位の少年にとっては、自分の持っているすばらしいものを
認識できず、一方で他人が羨ましく見えます。
誰しも見に覚えのある事でしょう。

このように環境的にも苦しむ少年ですが、ラストにはしっかりと
救いが訪れます。

そして、様々な苦労を経て少年は学ぶのです。

        大切な物はすぐそばにある。

という事を。そして、このメッセージは作中に何度も
語り手を替えて出てきます。

冒頭で述べたように、クリスマスのお話にしては
ちょっと、ほろ苦い内容ではありますが、ラストはしっかりと
奇跡が起きてクリスマス的な”良いお話”になり、読者も救われます。

この場では紹介しきれませんでしたが、祖父が、隣家に現れた男が
少年に関わった人物の多くが、荒れる少年に、その存在を肯定する
言葉を投げかけます。
それは読んでいて、こみあげてくるものがある位、苦しくも暖かい
メッセージの数々でした。

安易な感動の物語りに食傷気味の方にオススメしたいお話です。






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紙の本

やさしさと感謝の連鎖

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大好きな「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの著者の作品だった事
から購入しました。

特に何も考えずに購入したのですが、改めて本が届いたときに
なぜ?クリスマスにペンギン?と首をかしげました。
ペンギン自体は冬が似合うキャラクターではありますが・・・
その謎は本作がシリーズであることによって解消しました。

本作のストーリーの概略は
ある港町にある、カウンターに6人しか座れない
小さいレストランが舞台です。

そのレストランは「ペンギンハウス」という名前であり
12月になると狭い店内のカウンターの上に、とても大きな
ペンギンの置物が設置されます。

ペンギンの置物が置かれるようになったのには理由があり
昔、店の名前が「ペンギンハウス」になる前の事。

ある年の11月最後の日、全然客足がなく途方にくれていた
店主のところに閉店後、ふらりとおじいさんが訪れました。

どうしてもお腹がすいたと言うおじいさんに店主は
「営業時間じゃないから」と無料で食事を提供します。
本作の舞台となっている、みなと町にはホテルがないため
店主はおじいさんに一泊の宿を提供しました。

感激したおじいさんは「来年もまた来る」というが、客がこない
レストランだから来年になったら店はないという店主。

翌朝目をさますと、おじいさんはすでにいなくなっており
かわりにペンギンの置物が置いてありました。

そのペンギンをカウンターの隅に置いた店主。
しかし、それから異変が起こります。
洗っていない皿が綺麗になっていたり、ペンギンの位置や
恰好が微妙に変わっていたりするのです。
そして、夜中になると物音がするようになります。

不審に思った店主は夜中にお店を覗いて
動いているペンギンを見つけます。
始めはしらばっくれるペンギンだが次第に観念し
話し出し、ペンギンと仲良くなる店主。
クリスマスまでの期間ずっとペンギンと仲良く暮らしたが
ところが25日クリスマスの夜に、例のおじいさんが訪れて・・・。

この本の中で印象的で、おそらくは主題であると思われるのが
以下の引用部分でした。
店の主人がどうしてレストランを開こうとしたのかを
ペンギンと話し合う場面です。

        「おいしいものをたべるって、すてきなことなんだよ。
        おいしいものをたべてもらうこともね。そういえば
        きみはなにもたべないね。どうしてたべないの?」

とペンギンに質問する店主に対してペンギンが答えます。

        「そういうことは、ゆるされていない、っていうわけ
        じゃないけど、ふつうのたべものはたべないんだ。」

その答えに対して店主が質問を重ねます。

        「それじゃあ、なにをたべるのさ。」
と。
それに対するペンギンの答えは
       「やさしい心。」
       (中略)
       「そうだ。ぼくは、きみがやさしくしてくれると、それ
        だけで、おなかがいぱいになっちゃうのさ。」
       (中略)
       「それどころか、やさしい心は、だれかにたべられれば
       たべられるほど、どんどんふえていくんだ。
       しらなかったのか。」

というものになります。
    
クリスマスらしいお話です。
いつもは忙しい日常にピリピリすることも多いでしょうが
せめてクリスマスは穏やかで満ち足りた気持ちで過ごそう。
そして他人に優しくして、優しさの連鎖をつくろう。
そう作者に言われているような気がしました。

他の作品でもそうですが、作者である斎藤洋氏は
物語の中に教訓的なエピソードや、教訓的な会話を盛り込む事が
多いように思います。
ですが、なぜか説教臭くなく自然と腑に落ちるのです。
この作者の魅力のひとつであると思います。

本作は挿絵がとてもかわいく、特にペンギン好きでもない
評者ですが、とっても楽しく読む事ができました。
キャラクターとしてペンギンが好きな方には挿絵もツボなのでは
ないでしょうか?

本作のラストで店の主人が、サンタクロースからもらう
ペンギンのコショウ入れが出てきます。
製品化されないかなぁなどと密かに思いました。

読み聞かせには若干、長いのですが
優しい気持ちになって、クリスマスのお話を
子供と楽しむのに良い作品だと思います。

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紙の本

紙の本本日のスープ

2009/11/14 21:26

目ぢから

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スープという名前の黒猫の写真集です。

まず、表紙のまんまるな目をしたスープに
目を奪われました。

まるでビー玉のような目…と表現すると
いかにもという表現になりますが

中を見ていくと、ビー玉のような目をした
黒猫がいます。

そして、黒猫の写真はどこか、おかしくてかわいい。


本の帯にもあって、本書評のタイトルにもなっている

目ぢから

中を見ていくと、確かに”目ぢから”だなと
妙に納得できる写真が収められています。

評者も黒猫と生活しています。

この写真集に影響され、自宅の黒猫を
撮影しましたが、ただの黒い固まりにしか
見えません…

自分でやってみて、あらためて
この作者の写真がすごいなと思った次第です。

ちなみに作者さん宅では2匹の黒猫がいて
一匹は本書にも出てきているスープ。

このスープは後から来た黒猫だそうです。

では先住猫は?というと

同じく黒猫でパンという名前の猫だそうです。

二匹そろってパンとスープ。

何かかわいいですよね。


黒猫が好きな人は見ると心が癒されます。

黒猫好きにおすすめです。

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