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garuhiさんのレビュー一覧

投稿者:garuhi

44 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本ねこ

2015/08/22 04:26

There is no room to swing a cat in. ネコのいない世界はとても息苦しくて・・・・

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この小さな本の中には、日本中のネコが・世界中のネコが、集合しています。岩合さんが撮る写真は背景がとても美しい。でもね。やっぱりネコがいとおしい。1ページ1ページ、本当にページをめくるのがもったいないっていう感じでした。

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紙の本桜桃

2015/09/30 00:37

不安な魂とさくらんぼ

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「子供よりも親が大事」で結ばれるこの奇妙な小説。中には『涙の谷」という言葉に代表される私生活のこもごもが描かれている。普通でないのは
「私は黙って立って、六畳間の机の引出から稿料のはいっている封筒を取り出し、袂につっ込んで、それから原稿用紙と辞典を黒い風呂敷に包み、物体でないみたいに、ふわりと外に出る。
もう仕事どころではない。自殺の事ばかり考えている。そうして、酒を飲む場所へまっすぐに行く。」
一九四八年五月に雑誌『世界』に発表される。翌月六月一三日未明行方不明となり、一九日玉川上水で溺死体となって発見される。
六月一九日は誕生日に当たり、生きていれば四十歳になるはずであった。太宰にとっては四十歳まで生き延びる事は凡人の証明であるかのごとく、直前に「非凡の証明として」自らの命を最後的に絶ったのであった。

戦中・戦後を通してそれなりの作品を残し、流行作家としての地位も確立したにもかかわらず、私生活は滅茶苦茶、破滅状態。敗戦直後の混乱の中、進駐軍による占領下にありながら、政治的アナーキーの内から階級闘争が高揚してくる中、太宰は方向感覚を失っていたのかもしれない。

けれども、太宰一流の天才的嗅覚でもって、時代精神をくみ取ってはいる。何十年ぶりかに読み直してみて、「それがなにか」と思う一方で、太宰はやっぱり天才だとも思う。

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紙の本スティーブ・ジョブズ 1

2015/09/30 01:33

スティーブはやっぱりスティーブだった

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伝記物を読むのは比較的好きな方である。月並みな話ではあるけれど、小学生の時、野口英男の伝記を読んで感動し、少しでも人の役に立つ生き方をしたいと思ったのを覚えている。最近では他ならぬこの facebook を立ち上げたザッカーバーグの立身出世伝まで読んでいるのだからちょっと手のつけようがないというべきか。普段なら、結構主人公に感情移入して一気に読んでしまうことが多い。ところがこの『Jobs』ときたら、第1巻の三分の一ぐらいまで読んだら、もう読むのがいやになってしまった。こんな奴が同僚や上司だったら辟易としてすぐに逃げ出すだろうとしか思えない代物なのだ。こんな人間の56年間の立身出世伝とつきあうなんて、ちょっと信じられない。何度も投げ出しそうになりながら、それでもやっぱり最後まで読んでしまった。読後感も書く方も書く方なら読む方も読む方だ、といったものでしかない。
むしろ、逆にこれほど社会性が欠落し、異常といえるほどの自己顕示欲の塊のような奴が、なぜ、Appleというような大会社の経営者として成功したのか謎が深まったとしかいいようがない。確かにアップルが生み出した諸製品は生活のあり方を変えたほどのインパクトを持った製品が多い。それは認める。けれども・・・・・・。

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紙の本錨のない船 上

2016/07/03 04:04

暗号は解読されていた

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第二次世界大戦(大東亜戦争)の勃発の直前にルーズベルト大統領・ハル国務長官を向こうに回し、平和交渉を行う外交官来島平三郎の苦悩を、ノンフィクション的フィクションという手法を通じて書き上げた大作として、本書は重厚であり、重い主題が畳みかけるように読者に迫ってくる名作である。それとは別に評者は、以前より、真珠湾攻撃・パールハーバーアタックがアメリイカ=ルーズベルトによって仕掛けられた謀略であるとする説をとっている。その根拠として、日本軍の暗号がかなり以前よりアメリカ軍によって解読されていたとする説を真実と考えている。なぜなら、ヒットラー・ドイツの宣戦布告は常に電撃作戦の後になされていた。にもかかわらず、日本軍の奇襲だけが卑怯なジャップの行為として非難されるのは、歴史的事実として不自然である。参戦に消極的であったアメリカの世論を一気に開戦に持って行くために、ルーズベルトは真珠湾攻撃=奇襲に日本軍が出てこざるを得ない経済制裁等の環境を作り、その奇襲を暗号解読を通じて重々承知していたにもかかわらず、わざと日本軍に攻撃させて、アメリカ世論を一気に開戦に持って行くための策謀であったと、評者は信じるものである。勝手な言いぐさだが、本書によってそれが多少裏付けられたと思うものである。いわゆるリアリズムの勝利である。大東亜戦争を再考する上での良書である。

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電子書籍やすらかに今はねむり給え/道

2015/11/24 04:31

やすらかに今はねむれない

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「通称三菱兵器大橋工場」へ学徒動員された「N高等女学校」の少女たちの昭和二〇年五月二一日から八月九日までの「日常」が淡々と再生されている。妙子の日記と無田先生の工場日記に基づいて、原爆投下前の人々の意識に寄り添って、選び抜かれた硬質の言葉だが、ごく普通の描写として淡々と綴られている。それは、あの悲劇と呼ぶにはあまりに酷たらしい破局に向かう地獄への道。現在から見れば、米国による原爆投下は狂気である。そして、現在で言えば中学生、一四・五歳の少女たちを、兵器生産に動員せざるを得なかった「神国日本」もまた、尋常ならざる日常の中にあった。それを林京子は、ごく普通の言葉で淡々と書いた。それもあの日から、三五年も経ってから。
 それは、悲劇と言うよりカリカチャーに近い。違和感を抱えながら読み続け、読み終わった。
 読み終わった直後には、それほど強かったわけでもない胸の中に澱んだ得体の知れないものが、時間の経過に比例して大きなものに、無視し得ないものに育っていく。それはなんだろう。
 林京子自身も言っている。「自分は原爆に遭わなかったら文章は書かなかった」と。中上健次に「原爆ファシスト」と命名されても、それを敢えて引き受けて書き続けざるを得なかった、林京子の「何か」を引き受けて生きていきたいと思う。

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世界はどうしてこんなにも矛盾に満ちあふれているの

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一方では、アメリカの軍事費が「二〇〇七年の数字で、なんと五五三〇億ドル(約五〇兆円)」「さらに二〇〇九年の数字ではイラクやアフガニスタンへの派兵の影響なので、アメリカの軍事予算は六六五〇億ドル(約六〇兆円)に増加しています。」P106。他方では、コンゴ共和国では「15歳以上の国民のうち、、文字が読めない人の割合は約33%。国民の三人にひとりが、生きていく上で大切な『文字を読む』という行為ができません。」「また安全な水を、住んでいる場所から一キロメートル以内で得られない人の割合は、五四%。そうした人々の多くは、日常生活の多くの時間を、重い水を運んで歩くことで費やさざるを得ません。こうした作業のほとんどは、女性や子どもの役割とされていることがふつうです。」P163。こうした現実には、驚きよりも怒りがこみ上げてくる。人類の年代記には、二一世初頭は貧富の格差の極大化、戦争と抑圧の狂気の時代として書き記されだろう。

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紙の本福島 原発と人びと

2015/09/30 01:11

怖れていた核破局が他ならぬ日本で起こってしまった

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優れたルポルタージュであることに間違いはない。3.11直後に現地入りをしてそこで苦悩し煩悶している市民・漁民.農民を写真入りで発信している希有の書である。地震・津波の破壊力のすさまじさもさることながら、福島第1原発の大爆発がもたらした災厄が生々しくリポートされている。しかし本書は『DAYSJAPAN』の編集長として多忙を極めているにもかかわらず、「チェルノブイリ子ども基金」のメンバーとして多年にわたってチェルノブイリを報道しまたその子どもたちとの交流を通じて、原子力発電所事故の取り返しのつかない壊滅性・残虐性を身をもって体験した筆者ならではの危機感と焦燥感と怒りが随所に散りばめられている。かくして本書は「二つの世界を描こうと試みてきた。一方には土地を守り続けてきた人びと、生命につながる作物を作ってきた人びと、土地や森や海の恵みを大切にしてきた人びとがいる。その人びとは今、その地から引きはがされ追放されていく。そして子どもたちをどのように守ればいいのか何を食べればいいのかうろたえている。/もう一方には原発事故後が放射能という牙をむいてあらわにした、この世界を支配する原子力産業という巨大な構造がある。その力に操られる医学者たち、メディア、政治家たちがいる。特に医学者たちの罪は大きい。彼らは自分たちがこれまで行ってきた医学調査が、多くの限界を持つことや、また異論を持つ多くの医学者たちがいることを無視し、限られた経験と知識とを絶対の真実であるかのように振りかざし、安全と危険の線引きをしている。そしてまだ結果が現れていない領域を、無理に『安全の領域』に組み入れようとする。」p210あとがきより。福島第1原発の大惨事は広島級原子爆弾の死の灰の三〇発分を一挙にまき散らした物であり、その災厄は将に計り知れない。チェルノブイリの今日が福島の明日である。このことを彼は渾身の怒りを込めて暴露し、既成ジャーナリズムの腐敗を弾劾する。
そしてついには、「放射能から自分を守るということは、何を意味するのであろうか。それは、放射線医学の権威者から身を守ること、原子力産業の発展を目指すIAEAから身を守ること、原子力推進施策をとる政治から身を守ること。推進ではないけれども結果的に妥協を繰り返そうとする政治家やメディアから身を守ること、放射能は安全だという学者から自分たちを守ること、そうした機関によって封じられた『事実とデータへのアクセスする権利』を得る手段をなんとかして手に入れること。そして、それを妨害しようとして『風評、デマに窓わかされるな、安全だ、ただちに健康への影響はない。』などの言葉を用いる人間たちから身を守ることである」p189という驚くべき?!!結論に到達したのであった。
おそらく、どちらが正しいかは歴史が明らかにするであろう。けれども、人間はモルモットではない。歴史がそれを明らかにるまで待ってはいられない。世紀の核惨事を透徹した理性で見通しているジャーナリスト広河隆一の身を投げ打った警鐘に我々もまた、真摯に向き合うのでなければならない。

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紙の本原発はいらない

2015/09/30 00:53

敗北の歴史を噛みしめる

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『原発のウソ』の続編です。官房長官(当時)枝野や原子力安全保安院・東電の「大本営発表」がいかにインチキで非科学的な代物であったのかも、本書を読めば一目瞭然です。内容を少しだけ引用したいと思います。「燃料棒が溶け出すのは約2800度になった時です。圧力容器は厚さ約16センチの鋼鉄製で1535度で溶けます。したがって、溶融した核燃料は圧力容器の底を溶かし外側を覆っている原子炉格納容器に流れでます。格納容器は、事故があった時に放射能を閉じ込める最後の砦ですが、これも鋼鉄製で、しかも厚さ3センチしかありません。溶融した核燃料は、この格納容器も溶かしてしまいます。この格納容器を覆っているのは建屋ですが、今回のように吹き飛ばされてしまえば、高濃度の放射性物質が環境に漏れ出ることになります。」p57「浜岡原発は、想定東海地震の震源域のほぼ中央にあります。したがって浜岡原発の原子炉は津波がくる前に、大地震のエネルギーによって壊滅的な被害を受けると予想されます。」「その被害の大きさは一目瞭然です。風向きによって被害状況は変わりますが、東京方面に風が吹けば首都圏を中心に192万人、関西方面に吹けば約102万人が、放射能汚染によってがんを発症し、死亡すると予測されています。」p106「私は40年前から原発を廃絶したいと思いながら、結局は力及ばず福島第一原発事故を防ぐことが出来ませんでした。私の歴史は敗北の歴史でしたし、福島第一原発事故は私にとって決定的な敗北でした。」
科学的で量子的な小出氏のような方の意見にもっと耳を傾け真実を突き詰めていかなければならないのでは無いでしょうか。

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紙の本洟をたらした神

2015/09/30 00:44

土に生きた一農婦の残したもの

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このまことに見事なエンディングに思わず息をのんだ。吉野せいは「満月の青く輝く戸外にとびだした」我が子の後ろ姿に「洟をたらした神」を見いだしたのであった。吉野文学の特徴は1.彼女の周囲に繋がる人間への深い洞察力と限りない信頼と愛情である。そしてトートロジーの観は免れえぬけれども自分自身に対する峻厳な厳しさである。2.阿武隈山系の麓においてその生涯を厳しい開墾生活に賭したにもかかわらず、いやそうであるが故に自然に対する無条件な尊厳と愛情、これである。あの無類まれなる鮮やかな色彩色豊かな自然描写はここから生まれいずると思う。3.現代社会に対する峻烈なる反逆。
一九二〇年の秋に隣村の社会主義者・八代定義の静観室にて当時発禁本だったクロポトキンの『パンの略取』を「魂の本だよ」と言って渡されて、読後吉野は「私は新しい眼をひらかれた。自分の習作している身辺雑記みたいな小説なんか、実に 情けない程くだらなく思った。もし書くなら全く客観の立場から深い社会思想をとり入れた一大ロマンでなければならぬ」と書いているが、正しく五〇年の星霜を経て其れが結実したものと見て間違いはないであろう。

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60兆個の細胞よりなる君たち

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「私たち人間はおよそ60兆個の細胞からできている。なにやら国家予算を思わせる数字だが、一個の細胞に大きさは約十マイクロメートル、一ミリの百分の一程度である。
この一個一個の細胞のなかには、遺伝子の本体であるDNAという紐が収まっている。一個の細胞の中にはどのくらいの長さのDNAが詰まっているのだろう。もちろん誰も実測はできないが、計算から約一.八メートル、人間の背丈ほどもあることがわかっている。
前記新書にも書いたことだが、『一とりのもっている遺伝子DNAを一直線に伸ばしたら、どのくらいの長さになるのか?』と問うてみる。なんと総延長は一千億キロメートル。実に 地球と太陽を二,三百往復もできる長さになるのである。
『60兆個の細胞よりなる君たち』と呼びかけて午後の講義を始む 『風位』」p182

「まことにアバウトな話であるが、一個の動物細胞の中には、数万種類のタンパク質が、約八十億個も存在している。それも時々刻々壊しては作りを繰り返しているのである。活発に働いている細胞では、実に一秒間に数万個のタンパク質が作られ、また壊されている。
タンパク質はアミノ酸が繋がったものだということくらいは、高校の生物でかすかに習った記憶があるだろう。平均すると一個のタンパク質は数百のアミノ酸が紐のようにつながっている。数百個のアミノ酸を、遺伝子に記された設計図どおりに順序正しくつないで一個のタンパク質を作る。そんなタンパク質を、個々の細胞が一秒間に数万個のスピードで作る。驚かないだろうか。」p183

われわれ人類は、約百五十億年の宇宙の自己運動の産物としての地球という惑星の表面に生活している。宇宙は有限にして無限な存在である。そして人間存在もまた上記のようなものとして、無機物の有機物への転化が場所的に創造されているという意味においても有限にして無限な存在であり、一個の宇宙的な存在と言っても過言では無いであろう。そして、世界を構成するこの二つの契機を内在化し、この現在を常に超え出ようとする意識、人間の思惟活動もまた、根源的には物質の無限性に規定されて、一つの宇宙的な性格を刻印された存在であるだろう。

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紙の本たとへば君 四十年の恋歌

2015/09/30 00:09

私をさつて行つてはくれぬか

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歌人であるふたりの出会いから結婚生活、そして河野裕子のガンとの闘い、病没までの夫婦の営みとその濃厚な時間が「相聞歌」とエッセイで綴られている。短歌とは無縁な生活を送っている僕にとってはとても新鮮だった。
たとえば君
ガサッと落葉すくふやうに
私をさらつて行つてはくれぬか
歌は遺り歌に私は泣くだらう
いつか来る日のいつかわ怖る
言葉の深み、それはどこが違うのだろうか。

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われわれもまた「われは忘れず」

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「われは忘れず」歌人河野裕子が死の間際に呟いた言葉だという。
本書は歌人一家としてつとに有名な永田家のリレーエッセイである。河野裕子(母)、永田和宏(父)、永田淳(息子)、植田裕子(淳の妻)、永田紅(娘)が産経新聞に連載した。これはあたかも、母河野裕子を中心とした家族が、河野の末期の344日の間に交わした相聞歌である。なぜかこれを読んでいると、多くの懐かしい言葉を思い出す。それぞれがそれぞれを思い語り合っているにもかかわらず、ぞれが海面に突き出た一角でしかなく、多くの語られざる言葉が胸中を駆け巡っているのを感じる。それを感じさせるのが本書の荘厳さであろうか。最後の女性歌人と称された河野裕子の歌をわれもまた忘れじ。

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紙の本おりん口伝

2015/09/25 02:30

戦後を代表する「やま」文学

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本書は間違いなく松田解子の代表作であり、また最高傑作である。没落地主の娘おりんが口減らしのため、秋田荒川鉱山の土木作業を請け負う東畑家の末息子に嫁ぐところから物語は始まる。雪深く隔絶された飯場での日常生活と地底労働の過酷さが、秋田方言を交えて生き生きと活写されている。りんの夫千太郎が仲間の事故死・それに対する会社側の過酷な対応を通して、憤激し、永岡鶴蔵に共鳴していく。その夫が鉱山の小役人に惨殺される。幼いこども2人を抱えたおりんは生活のため再婚する。このように書くと身も蓋もないが、日露戦争を背景としたやまの生活、とりわけその中でも“弱い”存在であるおんなの理不尽な、しかし土性骨の座った生き様が見事に描かれている。「おりん口伝」という私小説的な様相をとりながらも、作者の綿密な調査と筆力によって個を超えた・時代を超えた命にあふれ、おりんの恥辱と憤怒が読むものを突き刺す。
おりん三部作の内の第一部である。

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80年間以上も信念を貫きとうした人の顔は美しい

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写真で綴るという形式を取っているので、松田解子の99年を現象論的に跡づけるという限界はいたしかたないだろう。けれども、松田の人生のいさぎよさ、老いてなおはつらつとした人生を生きた彼女の美しさは充分堪能できる。松田解子という気骨の漲った作家の入門となる良書である。喜寿を過ぎてからの松田の顔はどんどん穏やかになり、信念を貫き通した人の厚みと落ち着きが出てきているように見える。内面が写真にすら現れていると言うべきか。

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網野善彦は宮本民俗学をいかに受容したのか

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本書は直接には網野善彦が神奈川大学短期大学部で10年以上にわたってテキストとしてこの『忘れられた日本人』を使ってきたことを基礎として、そのガイストを解説するという体裁を執っている。けれども、結果的には戦後歴史学の広範な領域に渡る批判と問題提起を含む、網野史学と呼称されるかれの学問的成果の鳥瞰図となっている。それはいわゆる網野史学が、宮本常一が民俗学の領域で提起した問題を、歴史学者網野善彦がいかに受けとめ昇華していったのかという問題抜きに語ることができないということを意味している。その意味で、本書は膨大な網野史学のコンパクトな入門書となっている。

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