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破船
著者 吉村昭 (著)
二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。けれども、中の者は皆死に絶えており、骸が着けていた揃いの赤い着物を分配後まもなく、恐ろしい出来事が起った……。嵐の夜、浜で火を焚い...
破船
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破船 改版 (新潮文庫)
商品説明
二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。けれども、中の者は皆死に絶えており、骸が着けていた揃いの赤い着物を分配後まもなく、恐ろしい出来事が起った……。嵐の夜、浜で火を焚いて、近づく船を座礁させ、積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に古くから伝わる、サバイバルのための過酷な風習“お船様”が招いた海辺の悲劇を描いて、著者の新境地を示す異色の長編小説。
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紙の本
恐ろしき集団行動
2013/08/14 13:05
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まゆげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつの頃からか、海に面した貧しい寒村では、暴風の夜、浜で大きな焚き火をするようになる。
目的は、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取り生活の糧とするため。
その悪行を知られないようにするため船にいた人間は全員、葬る。
ある時、迷い込んできた“お船様”には、綺麗な赤い着物を着た者ばかりが乗船し、食物は少なかった。
その村の人たちはいつものように団結して搾取し、赤い着物を入手。
船は、ばらばらに壊して焼いたり埋めてしまう。
しかし、その船は、当時の不治の病”天然痘”に罹った病人を追放するための船だった。
圧倒的な感染力をもつ天然痘ウイルスは、飛沫感染や接触感染により感染し患者の瘡蓋(カサブタ)は、1年程度経過しても感染力を持つといわれる。
この厄病を積んだお船様のお陰で、その村民は多くが罹患し死んでゆく。
食べ物や着る物を大量に入手できるこの風習・悪業は永くは続かなかった。
紙の本
本屋大賞「発掘部門」で「超発掘本!」に選ばれた作品
2022/06/02 15:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2022年本屋大賞「発掘部門」で「超発掘本!」に選ばれた、吉村昭の長編小説。
「発掘部門」というのは、「2020年11月30日以前に刊行された作品のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本」から書店員さんがこれは!という一冊を推薦し、実行委員会が選出する本屋大賞の一部門だ。
吉村のこの作品は1982年に筑摩書房から刊行され、85年に新潮文庫の一冊に加えられたもので、年数でいえばりっぱに「発掘部門」に入る。
さらに歴史小説作家として定評のある吉村の数多くの名作群には、おそらく、あまり知られることのない作品としても「発掘」された意義は大きい。
物語は北の海に面した貧しい村が舞台。
その貧しさはほとんど食べるものにさえ不自由する有様で、村人は娘を売ったり、時に世帯主である男でさえその労働力を売りに出すこともある。
主人公の伊作の父もまた3年という期間、家を留守にし、成人にも満たない彼が、母とともに幼い弟妹の生計をみることになる。
そんな貧しい村に、隣村には知られてはならない秘密がある。
それが「お船様」という風習。
つまり、村の先の海で難破した船からその積み荷を奪い、村人で分けてしまうというもの。昔からその都度、村人はそうして生き延びてきた。
だが、ある時やってきた「お船様」はとんでもない不幸を村にもたらすことになる。
それは疫病。
物語の前半で村の貧しさや生活の様子が丁寧に描かれることで、後半の災厄の悲劇が高まっていく。
吉村らしい、簡潔な文章表現が、あまりにも切ない。
紙の本
漂流舟がもたらす悲喜こもごものドラマ
2019/10/16 20:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代、貧困にあえぐ漁村に漂流船がもたらす悲喜こもごものドラマを文学的に描く。民俗学的な題材を多く盛り込み、他の吉村作品とは異なる読み応えがあった。
紙の本
2022年 本屋大賞「発掘部門」受賞作。
2022/04/04 16:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nkybgs - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の少年が生まれたのは海辺の寒村。集落は貧しく,村民は身内が身売りして得た金で生計を立てている。そんな貧しい村で村民が待ち侘びるのは「お船さま」だ。お船さまは貧しい村をいちどきに豊かにする。しかしお船さまがもたらす恵みは他者の不幸で成り立っているから,このことは決して他所には漏らしてはならない,村だけの秘め事だ。少年の父が身売りしてしばらく経ったころ,待ち詫びていたお船さまがついにやってくる。お船さまの恵みに喜ぶ人々。ある夜,再びやってきた奇妙なお船さまによって村は悲劇に襲われる・・・。読者は寒村の極貧と悲劇を通じて人間の原罪を見つめ直さざるを得ない。
紙の本
『漂流』と対となる作品
2021/04/17 12:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
・「漂流」と類似テーマかと思って後回しにしていたが
・「漂流」とついとなるような、破船を呼び込む貧しい村の民の話。
・吉村作品においても特に無駄を排しきった描写が印象的で、ページもそれほど多くなく、個人的な好みのかなり上位に入る作品。
紙の本
読み出したら本当に止まらない
2020/08/04 21:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に怖いストーリーです。
普段はとても働き者で真面目な村の人たちが、飢えと貧しさから「お船様」が来るのを祈る。いつもは富をもたらすお船様が、とんでもないことに。
帰りの通勤電車で読み始めたら止まらなくなり、食事と入浴の時間を除き夜中の1時まで読み通しました。
紙の本
無駄のない小説
2021/10/29 10:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃的な小説だったけど、なんとなく伊作ら「お船様」を呼び込む村人たちに同情がわかない。現代的視点になってしまうが、矢張り自分たちが生きるためとは言え、難破船を呼び込んで利益を得る、しかもそのために殺人を犯すということには抵抗感がある。
紙の本
救いはありません
2023/06/15 17:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かめ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭の本のなかでも物語性があるほうで、グイグイ引き込まれますが、話そのもに全く救いがありませんので、体調の良いときに読むことをおすすめします。舞台となっている村の風習が本当にあったのでしょうか・・?1度読んで結末がわかってしまうと、2度3度と読もうと思う本であるかは疑問です。
紙の本
寒村で発生した疫病の悪夢を描く。重苦しい読後感に浸れる1冊
2024/02/15 17:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家吉村昭氏による、寒村を舞台にした「お船様」という風習が招く、疫病の悪夢を描いた小説。
冬の荒天の夜、浜で海水を煮詰めて塩を作る「塩焼き」の風習は、実は荒天を避ける船をおびき寄せて座礁を促し、積み荷を略奪する目的の「お船様」という風習に基づくものでした。食い扶持を減らす「身売り」が村の存続の手段として当然のように行われている中、「お船様」がもたらす米や味噌、醤油などの積み荷は、村にとって数年間の食料を確保できる大変な慶事として扱われていました。
ある年の冬、奇妙な「お船様」が漂着します。積み荷はほとんどなく、残されていたのは赤い衣服を着用した死体だけ。「朱は慶事の象徴」ととらえ、死人が着用していた衣服を「お船様」からの恵みとして分配しました。ところがその数日後、村で疫病がまん延。死体は疫病(おそらく天然痘)に侵された病人だったのです。それらの死体は他村で疫病の拡大を防ぐ目的で、船で送り出され、船内で亡くなった人々のものだったのです。
”村おさ”は村の存続のため、罹患した村人は生きている人も全員、山中で自決する「山追い」を決断するに至ります…。
本書は吉村氏が様々な調査の中で、貧しい寒村の風習としての伝承を小説として再構築したものです。とにかく貧しい寒村の厳しいサバイバルの状況が、これでもかと続く、何とも重苦しい読後感でした。脚色を極力控えた、まるでノンフィクションのような淡々とした吉村氏の描写が、生きるためには手段を選んでいられない寒村の風習と、それがもたらす災厄をリアルに描いています。本書も文庫に収録されて50刷以上の増刷を重ねている吉村氏の代表作です。