ブックキュレーター早川書房 編集者 山口晶
聴いてから読むか、読んでから聴くか。落語本の世界。
半年ほど前、知人の勧めで聴いた瀧川鯉八さんの落語に衝撃を受け、鯉八さんの師匠・瀧川鯉昇のほんわかパワフルさ加減にさらなる衝撃を受け、寄席や落語会に通いはじめた。40の手習いという訳で、目下落語を勉強中。落語家や演芸評論家には筆の立つ方が多く、小説、評論、エッセイ、自伝と傑作が目白押し。その中から5選。
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落語家の居場所 わが愛する芸人たち
矢野 誠一(著)
演芸評論家・矢野誠一が名人たちとの思い出、落語全集の編纂、落語批評などについて綴った本。誠実な文章がいい。基本は回想録だが、読めば明治から昭和中頃までの落語の歴史がすっと頭に入ってくる名著だ。講談や落語の速記本が言文一致運動や出版業の興隆に繋がったという話は編集者としては他人事ではなかった。
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立川流の重鎮・立川談四楼は、『談志が死んだ』や『シャレのち曇り』をはじめとする多数の著作がある。どれも滅法面白いが、インパクトとしてはこの小説が一番だ。何しろ、プロボクサーになってしまう落語家の話なのだ。落語界の内幕ものであり、一流のスポーツ小説でもあるという稀有な一冊だ。
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鯉のぼりの御利益 ふたりの師匠に導かれた芸道
瀧川 鯉昇(著)
ベテラン真打・瀧川鯉昇の自伝。鯉昇の高座を一度でも観ればその愛らしい風貌と独特のテンポに魅了されること請け合いだ。いつも穏やかで、色紙に「ねるほどらくはなかりけり」と書くような癒し系の噺家だが、その修行時代は壮絶そのもの。食べられる雑草を探したり、スポーツ新聞にくるまって野宿したり・・・
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人気真打・桃月庵白酒が、「芝浜」「明烏」など13の主要な演目の演じ方や登場人物の造詣について語る本筋も良いのだが、むしろ学生時代の話や下ネタなどの脱線部分がさらに素晴らしい。爆笑してしまった。脱線部分が本の半分を占めるのではないか。噺家のアウトローな感じがよく出ている。
ブックキュレーター
早川書房 編集者 山口晶編集者。上智大学法学部卒業、コロラド州立大学大学院修了。2003年、株式会社早川書房に入社。主な担当書籍は、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』、コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』、デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』、アンドリュー・ロス・ソーキン『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』、佐々涼子『駆け込み寺の男 玄秀盛』、ほか多数。趣味はランニング、落語/映画鑑賞。
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