『火花』のヒントになっているかも？又吉直樹が影響を受けた小説

又吉氏が『平凡な風景も思い出と重なると絶景になる』と語るこの小説は、太宰治が大学進学を機に上京してからの10年間を振り返ったものです。自殺未遂や薬物中毒などの波乱万丈な経験を通し、小説家として生きていく道を選んだ太宰。彼の小説の背景を知ることのできる隠れた名作として、通の間で人気の一冊です。

『火垂るの墓』で知られる野坂昭如が書き上げた渾身の小説です。『文章のリズムを初めて体感させてくれた作家』と又吉氏が評する通り、ブルーフィルム（現在でいうアダルトビデオのようなもの）に携わる関西の商魂たくましい男性たちにスポットライトが当てられ、小説全体が関西弁の軽妙なリズムに満ちています。

又吉氏と同じく大阪出身の小説家で、パンクロッカーでもある町田康の代表作は、伝統芸能の河内音頭の「河内十人斬り」という唄で知られる、明治時代に実際に起きた大量虐殺事件をモチーフにしています。『小説の極致やと思います』と又吉氏が語るほど人間の喜怒哀楽の奥底まで探求することを試みた、現代文学の到達点ともいえる小説です。

『なにを経由したらこんな表現に辿り着けるのだろう』と又吉氏が考え込むほどに実験的な、劇作家・演出家として知られる岡田利規の小説です。特定の登場人物だけに焦点が当てられるのではなく自在に焦点を移動させる手法は、読んでいるうちに不思議な解放感に満ちてくるでしょう。

又吉氏とプライベートでも交流があるという、芥川賞作家・中村文則の小説です。本書には、『「どんなに時間がかかっても、ぜひ読んでください。読む価値があります」と言いたい』という推薦文を寄せています。二つの宗教組織を軸に展開されるストーリーは読者を引き込み、大長編なのですが、すぐに読めてしまいます。