引っ越そうかと迷っている方へ！さまざまな「引っ越し」を綴った本

占いをきっかけに始まった著者の引っ越し奮闘記が、ほのぼのとしたイラストや写真とともに綴られています。物件探しや引っ越し業者選び、荷造りから、居心地のよい部屋のインテリア、棚作りやタイル張りなどのDIY、そしてカビやダニ、ネズミとの闘いまでもが笑いと涙とともに描かれ、引っ越しがウキウキと楽しみになる一冊です。

大岡昇平の還暦の引っ越し、長田弘の猫を飼うための引っ越し、田辺聖子のあこがれの貸家漂泊人生など、著名な近代作家や画家、評論家が思い入れのある引っ越しについて、さまざまな角度から語ったアンソロジーです。文芸家の懐かしい引っ越しの思い出やこだわりとともに、当時の日本人の家に対する価値観を知ることのできます。

物件を探す先で迷いこんだ非常扉、引っ越しの度に大きくなる母の秘密の棚、社内の引っ越しで紛失した箱など、引っ越しにまつわるゾクッと身の毛のよだつミステリー短編集です。それぞれの物語が解説でつながり、引っ越しの恐怖とともに、奥深さが感じられます。これを読めば浮足立たず慎重に、引っ越しに向き合うことができることでしょう。

小学生のタツルは、叔父の引っ越し屋の仕事を手伝うことになりますが、記念すべき100回目の依頼者であるおばあさんは引っ越しを頑なに拒んでいます。おばあさんの過去や周囲の人々に触れ、引っ越しは荷物を運ぶことだけではなく『次の家に、もっと幸せになりに行くこと』だと気づきます。引っ越しに対してポジティブになれる一冊です。

ちょっと変わった間取りのアパート「第一藤岡荘 五号室」と、代々入れ替わり住んできた13世帯の住人を描いた物語です。ガスの元栓に残った短いホースや水漏れする蛇口など、それぞれが部屋に少しずつ痕跡を残すことで出会わずともつながり、そこに住民たちの人生が堆積してゆきます。引っ越しっていいな、と温かい気持ちになれる小説です。