ブックキュレーターHONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞
歴史という迷宮~鳥瞰世界史
宇宙開闢以来の全歴史を語る一冊から、化学物質や都市文明から歴史を探究する書、そして太平洋戦争における日本の失敗と成功まで。読めば一気に引き込まれていく歴史書を紹介する。
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本書は137億年を全42テーマに分け、生物学、天文学、地球科学、政治学、そして芸術など、人類の知の営みを統合して物語る、学際的な歴史書である。連綿とつづく宇宙と地球、生命の永い歴史を感じながら、人間の知の営みの豊かさ、そして文明の未来と人類の行く末についても思いが及ぶ一冊。子どもから大人まで、それぞれに発見があることだろう。
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化学物質から世界史を捉えようとする本だ。本書の面白さは、世界史談義と化学談義が同居し、相補的にからみ合って話が進んでいくことにある。たとえば、第一章で取り上げらるのは胡椒だ。世界史談義の後に『黒胡椒も白胡椒も活性成分はピペリンで、分子式は・・・』といった化学談義がひとしきり続き、『辛い分子ピペリンとコロンブスの物語は、彼がインドへの西回りルートを発見できなかったということで終わるものではない』と世界史談義に戻っていく。歴史的には偶然に見える発見も、化学的に見ればなんら偶然ではない。人類の歴史はすべて化学的必然性によって成り立っているかのように思えてくる。
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メソポタミア、古代ギリシャ、ローマ帝国、アメリカ合衆国、中国など、有史以来、人間が築いてきた都市文明を「食糧帝国」ととらえ、あたかも試験管の中の様子をじっくりと観察するような視線で、その興亡の支配要因を歴史的に探究してく作品である。著者は、カナダ人の社会学者とアメリカ人のジャーナリスト二人組。本書が堅い研究書に終わらず、一篇の歴史物語にまで高められているのは、二人の共同作業による成果かもしれない。
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日本軍はミッドウェイまで負けてはいなかった。むしろ勝ち続けていたというのが事実だ。本書は、これまであまり取り上げられてこなかった「日本が勝っていた期間」、アメリカ側から見れば「連戦連敗の6ヵ月間」を丹念に描き出す。個別の戦闘の詳細を描きながらも、そこで行われた残虐行為や、そこに至る国家の思想や価値観なども描かれている。引用されている日本語の文章はすべて当時の軍隊記法のままなので、重厚で緊迫感が伝わってくる。訳はもちろん、使われている図版やソースコードなども丁寧で適切だ。
ブックキュレーター
HONZ代表・元日本マイクロソフト社長 成毛眞1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『2040年の未来予測』(日経BP)など著書多数。
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