ブックキュレーター作家・ジャーナリスト 冷泉彰彦
アメリカのベストセラー、その読まれ方
アメリカのヒット作がそのまま話題になるという時代ではなくなりました。アニメや邦画が独自に進化したように、読書界では良い意味でアメリカの影響が薄くなっています。ただ、アメリカで何が売れ、どう読まれているのかが見えにくくなっているのも事実です。そんなアメリカの出版界の現在を象徴する本を5冊取り上げます。
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ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 スペシャルリハーサルエディションスクリプト
J.K.ローリング(著) , ジョン・ティファニー(著) , ジャック・ソーン(著・舞台脚本) , 松岡 佑子(訳)
発売予告時からベストセラーの1位。押しも押されぬ2016年を代表する一冊。ハリーはもう37歳で、父親としての苦悩が物語の中心。つまり彼の成長とともに育ってきた世代が強く感情移入できる仕掛けです。分厚い団塊三世という人口構成が背景にあります。そして、彼等の持っている「親世代への違和」ということも。
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日本の断捨離本が400万部の大ヒット。日本版が万人向けの「実用書」である一方で、英語版の方は「都市型の高収入層へ向けた新たなライフスタイルの提案」という現象になっています。一部には「禅の精神から来るシンプルライフ」という解説もありますが、あくまで現実的なニーズに当たったということなのでしょう。
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2016年前半のヒット作。イラク戦争からアラブの春、そしてシリア内戦まで現場から貴重なレポートを続けたTV記者の自伝。ブッシュの強硬策とオバマの無策が合わさって中東を「絶望」に導いたという指摘は重たいですが、地域の人々と心を通じさせてきたエンゲルの筆致には、希望を感じさせるものもあります。
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働く女性の孤独、仕事を失う辛さ、男女関係のもろさを横軸に、モノローグに潜むトリックを縦軸にした英国のミステリ。アメリカでも2年越しのベストセラーになり、ハリウッドが映画化しました。30代の女性が自他共に自分を「ガール」と呼ぶことの中にある「ため息」のようなものがジワッと共感を呼んで行ったのです。
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本書は2014年のベストセラー(原題は "Fault of Our Stars")で、映画化もされているのですが、他にも2016年には30代で逝去した医師の自伝がヒットするなど「夭折もの」というジャンルがよく読まれています。若者が多い人口構成が「究極の青春ドラマ」であるこのジャンルを求めているのかもしれません。
ブックキュレーター
作家・ジャーナリスト 冷泉彰彦ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『トランプ大統領の衝撃』(幻冬舎新書)『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』(日経新聞出版)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」を連載中。Newsweek日本版ブログ、週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」(http://www.mag2.com/m/0001628903.html)配信中。
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