ブックキュレーターエッセイスト・小説家 山崎ナオコーラ
これぞ日本の名随筆
本には、小説やドキュメンタリーなどドラマティックに攻めてくるものもあるし、新書やビジネス書などの向上心を満たそうとしてくるものもある。だが、この世には、エッセイというジャンルもあるのだ。特別な人間ではない作者が、たいしたことのない日常を綴る。しかし、面白くてたまらない。ページをめくっていくと、「よくこんな文章が書けたな」と退けぞってしまう。時には、「この本があるから生きていける」とまで思わせる。「うまい随筆」というのが、確かにある。「これぞ日本の名随筆」と唸ってしまう本をご紹介したい。
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石原吉郎詩文集
石原 吉郎(著)
第二次世界大戦後にシベリア抑留を経験した詩人・石原吉郎。極限状態の中で言葉が絞り取られ、失語状態に陥った期間もあるという。帰国後に書いたエッセイは絶品。短い文章でも、これだけ重い読後感を与えられるものなのだな、と感服する。エッセイというのは、ストーリーとか、描写とかではなく、迫力だ。どんなに短い文章でも、研ぎ澄まされた言葉と、他者への温かい視線があれば、世界が生まれるのだ。
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犬が星見た ロシア旅行
武田 百合子(著)
夫の武田泰淳と共にロシア諸国と北欧を旅した際の旅行記。今で言うところの「天然」な文章で、どのシーンでも大笑いしてしまう。どんなに頭の良い人でも書けない、百合子のみが書くことができる、唯一無二の文章だ。団体旅行のため、様々なキャラクターが登場するのも面白い。特に「銭高老人」という同行者のキャラが際立っていて、腹がよじれる。
ブックキュレーター
エッセイスト・小説家 山崎ナオコーラ1978年生まれ。性別はない。國學院大學文学部日本文学科卒業。卒業論文は似ている人たちをカテゴライズする不思議さについて書いた「『源氏物語』浮舟論」。2004年に「人のセックスを笑うな」で文藝賞を受賞しデビュー。2023年、『ミライの源氏物語』で第33回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞(選考委員:俵万智)。「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書く」が目標。『源氏物語』の現代語訳が夢。 【Bunkamuraドゥマゴ文学賞】 https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/winners/33.html
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