ブックキュレーター哲学読書室
後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
「創造的であれ、されば成功せん」という自己実現の物語が新たな規範として蔓延する今日、自らの創造性や自発性、独創性といったものまでもが「資本」としてマネージメントの対象となります。後期資本主義時代の創造性というパラダイムを複眼的に理解するための5冊を選びました。 【選者:河南瑠莉(かわなみ・るり 1990- : 近代思想史)】
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資本主義の新たな精神 上
リュック・ボルタンスキー(著) , エヴ・シャペロ(著) , 三浦 直希(訳) , 海老塚 明(訳) , 川野 英二(訳) , 白鳥 義彦(訳) , 須田 文明(訳) , 立見 淳哉(訳)
本書はビジネス書などに表出する文言を分析することで、例えば文芸批評などに顕著であった資本主義批判の言説そのものが、マネージャリズムの修辞句として回収されてきた過程を浮き彫りにします。批判的言説を無効化してしまう資本主義の新たな「精神」を目前に、クリティークはいかに批評性を再構築できるのでしょうか。
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ポピュラー音楽と資本主義 増補
毛利 嘉孝(著)
戦後社会においてポピュラー音楽が資本主義と組んず解れつしながらも共存関係において発展してきた様相を描きます。商品経済を通じて流通する音楽はしかし、必ずしも資本の論理を再生産してきたわけではありません。自発的な文化実践の術はいかに獲得され得るのか、JポップやDIYといった身近な例からも論じた著作です。
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官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則
デヴィッド・グレーバー(著) , 酒井 隆史(訳)
人を規則や制限から自由にすると思われていた新自由主義において、むしろ創造性を封殺してしまう書類仕事や手続きが煩雑化してきたのはなぜでしょうか。単なる官僚制批判に終始することなく、表向きには創造的であれと促す資本主義が、その本質において官僚的なものと分かちがたく結びついていることを指摘した名著です。
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資本主義リアリズム 「この道しかない」のか?
マーク・フィッシャー(著) , セバスチャン・ブロイ(訳) , 河南 瑠莉(訳)
新自由主義を唯一の現実的な選択肢として了解するとき、人の創造力は異なる未来を描く力を失ってしまいます。筆者は映画や小説、音楽実践の中に、後期資本主義を生きる主体が抱える内的矛盾や諦念の兆候を見出しながらも、資本主義が内包する制度的破綻を暴くことで、果敢にも諦めのリアリズムからの脱却に希望を託します。
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怠惰への讃歌
バートランド・ラッセル(著) , 堀 秀彦(訳) , 柿村 峻(訳)
勤労と貯蓄が美徳とされる社会では、額に汗して働くことが模範的な生として理解されがちですが、筆者は労働そのものと豊かさは相異なるものだと述べます。怠惰とは単に不労を称揚したものではなく、有意義な閑暇のあり方を学ぶことです。必ずしも生産性には与しない創造性のあり方を思索するための刺激的なエッセイです。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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