私（西加奈子）が22歳で出会いたかった本

堅苦しく排他的なフェミニズムではなく、柔らかで開かれたフェミニズムは、女性だけではなく男性も救うのだ。みんなが「こうあるべき」から解放されたら、きっともっと素敵！私たちが唯一大切にしないといけない「べき」は、「幸せになるべき」なんだと、アディーチェは教えてくれるのです。

今は、みんな「何者」かにならないといけない社会なのかもしれなくて、だからか、やっぱり苦しい。社会に出る前にこの小説を読んで、「何者」という概念を劇的に破壊して、そして自身で作り直しておいてほしい。あなたはたったひとりのあなたで、あなたの人生はあなたのものでしかないのです。

何かに嫉妬すること、自分の才能の限界を知ってもがき苦しむこと、運命というものに抗おうと闘うこと。それらを「みっともないことだ」と言う大人がいるかもしれない。でもそんな大人は無視してこの小説を読んでください。それらすべてが美しいのだと全力で叫んでくれています。

若さって何？老いって何？そもそも年齢って何？社会の常識や、「常識とされてきたこと」を、いつもユーモアを持ってからかってくれるこの著者ならではの年齢小説。年を取るのが怖い人も、早く大人になりたい人も、ぜひこの鮮やかさに触れてほしい。ニヤニヤしながら常識を笑おう！

星野さんの本を読むと、いつも「若いうちに読みたかった！」と思います。どれも、若いうちに出逢えば出逢うほど体に染み込んでゆく、そして、なかなか出てゆかない類のものなのです。それは星野さんご自身が新鮮で清潔なお心を持っているから。わたしたち大人が誇れる、数少ない大人のひとりです。