ブックキュレーター哲学読書室
精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
精神分析は、医学、哲学、自然科学、宗教、催眠、そして心霊学などの土壌から19世紀後半に生まれて以来、排斥と包摂の運動を繰り返してきた。その歴史は、何が内部で何が外部かをめぐる議論に満ちている。その周辺と境界に目を注ぐことで生命体としての精神分析が見えてくる。【森茂起(もり・しげゆき:1955-:甲南大学文学部人間科学科教授)】
- 81
- お気に入り
- 4141
- 閲覧数
-
フロイトは、1915年に『メタサイコロジー序説』を構想し、精神分析の基本的枠組みを築くことを目論んだ。しかし全12章のうち始めの5つの章のみが完成され、草稿が発見された「転移神経症概要」以外は破棄された。6編すべてを収録する本書は、「訳者解説」も含め、精神分析とは何かを考えるための基本図書である。
-
フェレンツィの時代 精神分析を駆け抜けた生涯
森 茂起(著)
精神分析運動を牽引しながら晩年に排除され、約50年後に再評価された分析家、シャーンドル・フェレンツィの生涯と理論・実践を、精神分析の地理的状況とともに描く。19世紀後半からナチス政権成立までの時代を背景にしたその生涯は数々の苦闘の跡を刻んでいる。「駆け抜けた」先に、心理療法の広大な世界が見える。
-
サリヴァン、アメリカの精神科医
中井 久夫(著)
フェレンツィとの交流でも知られるサリヴァンは、アメリカ対人関係論の創始者であり、独自の「解離」概念も重要である。手頃な概説書に乏しく、『サリヴァンの生涯』は非専門家には詳細過ぎる。サリヴァンの翻訳を一人で手がけた中井久夫氏の文章を編んだ本書は、内容だけでなく著者の語り口を楽しむことができる。
-
心身医学の祖とも言われるグロデックの主著である。心身総体の中核に位置付けられた「エス」の概念は、フロイトを深く刺激したが、フロイトはグロデックに言及しないまま独自の「エス」概念を提出し両者の間に軋轢を生んだ。精神分析と一定の距離を置き続けた彼は、心身統合療法を追求し、今日の心身医学の先駆けとなった。
-
ザッヘル=マゾッホの世界
種村 季弘(著)
これもまた精神分析の周辺に位置する書である。マゾッホという作家の名が、その特殊な女性関係からマゾヒズムの語源となり、その理論的解明と臨床に多大な影響を残した。この評伝は、マゾッホの人生を、生地ガリツィアの政治的、文化的状況をはじめ、彼が活動したさまざまの地の土地、習俗、時代、宗教などとともに見事に描く。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です