ブックキュレーター哲学読書室
AIの危うさと不可能性について考察する5冊
AIの進展は、暮らしや社会の利便性を高める一方で、私たちを選別・管理し、支配するリスクも広げている。AIはけっして無謬ではなく、客観的でも公平でもない。また、AIは人間ならではの知とは何か?という問いを深めていくきっかけになる。「人間を支配するAI」から「人間と共生するAI」へ――そんな未来へのヒントを与えてくれる5冊。【選者:真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-:出版プロデューサー)】
- 89
- お気に入り
- 4565
- 閲覧数
-
あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠
キャシー・オニール(著) , 久保 尚子(訳)
米国で進行中の実例をもとに、AI・ビッグデータの危険性を指摘する。アルゴリズムによって、人間の能力・適性・信用、さらには善悪や身体といった領域まで「判断」される。そこには誤解・偏見が付き物であるにもかかわらず、ブラックボックスと化しており一般にはわからない。データサイエンティストの著者は、アルゴリズムの監査を強く求める。
-
ネットにアクセスするたびに、個人データが蓄積されていく。やがてその膨大なデータにもとづくアルゴリズムが、「私」を動かし、「私」のアイデンティティにすらなっていく。自分の判断や欲望をマシンが代わってくれる超便利な世界は、恐るべき管理社会でもある。情報が私たちを操る仕組みを理解し、批判するための手引き。
-
AIは人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に達するだろうか?しかし、そもそもこうしたトランス・ヒューマニズム(超人間主義)は、西欧の一神教や哲学の伝統に根ざすものではないか?本書は、ユダヤ=キリスト教やギリシャ哲学までさかのぼり、「AIという仮面をかぶった世界支配の野望」を明るみに出す。
-
〈わたし〉は脳に操られているのか 意識がアルゴリズムで解けないわけ
エリエザー・スタンバーグ(著) , 大田 直子(訳)
AIは意識を持つようになるのか?可能性ありとする考察の背景には、脳が人間の思考・行動を決めているとする「決定論」がある。決定論では、人間に「自由意志」はないことになるが、今日、脳科学の主流は決定論だ。しかし、本書は、人間に自由意志はあり、アルゴリズムでは意識は解けないと、決定論を論破していく。
-
人工知能の哲学 生命から紐解く知能の謎
松田 雄馬(著)
著者は脳型コンピュータの研究者。人間にできてAIにできないのは、「自ら意味を作り出す」ことだ。「意味」は、身体と環境(状況)との関係によって、即興的に作り出されるものなのだから。〈生命・身体〉〈社会性・他者〉といった視点から、今日のAI(弱い人工知能)の限界を見極め、AI研究の新たな地平を開こうとする。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です