ブックキュレーター京都産業大学経済学部教授 玉木俊明
全体を見る目をもった歴史書から学ぶ
すぐれた歴史書は、ある理論に沿って、対象とする時代の全体像を描き出したものをいう。ここでは、そういう書物を厳選して選んだ。比較的古い本が多いが、それはその本に古典的価値があり、資料分析に裏付けられた見事な歴史叙述をしているからである。
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世界史の覇権は最初からヨーロッパが握っていたのではない。むしろアジアの方が経済成長していたのが、近世になり、ヨーロッパが優勢になったのだ。現在では中国がアメリカに逆転しようとしているが、それに成功するのだろうか。
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正統と異端 ヨーロッパ精神の底流
堀米 庸三(著)
ヨーロッパ国制史の大家である著者が、国制史の手法を用いて、正統こそが中世のヨーロッパで異端を生み出し、やがて宗教改革に至ったことを証明した名著。異端は、その純粋性ゆえに自分たちこそ正統だとしたが、そのためかえって迫害されてしまった。
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江戸時代
大石 慎三郎(著)
現在では、江戸時代は経済が停滞していた時代ではないとわかっている。本書はその先駆的研究であり、現在から約40年前に、江戸時代には経済成長があり、農民の年貢負担は低下し、庶民の生活水準が向上したことを資料に基づきわかりやすく実証した名著。
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民衆の大英帝国 近世イギリス社会とアメリカ移民
川北 稔(著)
イギリスからアメリカに移住した人々はピューリタンだとされていたが、本書は、貧民がライフサイクルサーヴァントとして新世界に渡り、イギリスは、国内のさまざまな問題の解決を植民地に押し付けたことを実証し、イギリス本国と植民地の強い関係を示した。
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近代欧州経済史入門
大塚 久雄(著)
大塚久雄の研究は、戦後の歴史学の出発点となった。農村の毛織物工業の発展こそ経済成長の原動力となる。それがもっとも典型的に現れたのがイギリスであり、そのイギリスとの比較でヨーロッパの歴史は語られる。本書を読まずして、戦後の歴史学は語れない。
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近代英国の起源 新装版
越智 武臣(著)
名文を書く歴史家は多いが、美文の歴史家といえば越智武臣をおいて他にない。本書は、越智の目に映った近代英国の実相を、美しい日本語で描く。ジェントルマンを担い手とする国民史としてのイギリスの歴史が、説得力がある文章で綴られるのだ。
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漂海民
羽原 又吉(著)
本書の著者である羽原又吉は、漁場史研究のパイオニアである。そして信じられないほどの熱意で、船に住む人々や漁民の歴史を描き出す。最初に出版されてから50年以上経っても、なお色褪せない実証性と構想力をもった漁業史の古典である。
ブックキュレーター
京都産業大学経済学部教授 玉木俊明1964年大阪生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、京都産業大学専任講師、助教授を経て現職。専門はヨーロッパ経済史、ヨーロッパ海事史、グローバル経済史。
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