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なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか

いま、アクターネットワーク理論(ANT)が多くの人をひきつけている。社会学や人類学はもちろんのこと、経営学、地理学、会計学、組織論など社会科学全般へとその波紋は広がり、哲学や建築学、アートなどでも広く参照されるようになっている。ここでは、社会学的関心から、なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのかを考えるための5冊を紹介する。【選者:伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-:新潟医療福祉大学講師)】

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  • 私たちは、自分の意志だけで行為していない。極めて常識的な直観である。ある種の社会学は、この「何かに動かされて、動いている」という直観から出発しておきながら、階級やイデオロギーといった「社会的なもの」によって盲目的に動かされていると飛躍してしまう。それに対して、ANTは、そうしたマクロなものを一切説明変数にすることなく、人間と非人間(人間以外のもの)との連関のなかに行為を位置づける。私たちがスーパーマーケットで「経済合理的に」振る舞えるのは、棚があり値札がありカートがあるからだ。人間だけでなく、それぞれのモノが、行為をもたらす力(エージェンシー)を有している。アクターネットワークとは、アクター(行為者)のネットワークではない。エージェンシーのネットワークがあり、その結節点としてアクターが位置づけられる。ANTは、能動態でも受動態でもない、「中動態の社会学」であるといえよう。

  • では、そうした人間と非人間の連関をいかにたどるのか。ANTによる解法は「アクター自身にしたがえ」である。行為の源泉がどこまでも不確定ななかで、アクターは事物の連関のなかでさまざまな枠組みを作り出し、「○○に動かされている」などと言って、秩序を作り上げている。外からアクターにひとつの秩序を押しつけるのではなく、アクターの営みを丹念に記述しようとする社会学。それがエスノメソドロジーであり、ANTの大きな理論的源泉のひとつである。

  • しかし、アクター自身にしたがっているだけでは、既存の秩序を再生産するばかりで、今日の分裂と分断を超える秩序は生まれないのではないか。アクターにしたがうばかりで何も批判しないのがANTなのか。ANTは新自由主義の手先なのか。そうではない。分裂と分断を超えるために必要なのは、高所からの批判でなく、アリ(ant)の視点から相互を比較可能にすることである。「権力」などのビッグワードを使って全面的な批判を行う社会学ではなく、アクター自身による行為や批判をもたらす事物の連関を地道にたどり、比較可能にし、アクター自身による新たな集合体の組み直しを実現させること。それがANTであり、このことの意義を明らかにしたのが本書である。権力や支配が強く広く及んでいるならば、それもまた事物との連関によって組み立てられているはずであり、その連関をたどることができなければならない。

  • 果たして、ANTは「科学」なのか。科学社会学に出自をもつANTは、科学をこう再定義する。つまり、科学とは、対象の外在性から自らの客観性を獲得するのではなく、いくつもの人間と非人間の連関をつなぐことで客観性を打ち立てようとするものである(実験室の営みは、科学者とともにさまざまな器具、器械などのモノによって成り立っている)。この主張に対して、ANTは「相対主義」ではないかとの批判がなされたが、本書が指摘しているように、そもそも科学と疑似科学に確固たる境界線はない。そして、ポスト・トゥルースをめぐる動きが見せているように、外在性(単一の真実)を盾にした疑似科学批判は無力である。客観性(オブジェクティビティ)とは、あまたの対象/モノ(オブジェクト)による反論が常に担保されていることを指すのであって、「単一の真実」の同義語ではない―ANTは、さまざまな連関を比較可能にする「相対論的」科学の敬愛者であり、ANTによる記述もまた、対象からの反論によって失敗する可能性を有している。

  • そして、ANTの初の入門書がついにブリュノ・ラトゥール自身によって著された。本書において、アクターとネットワークと理論の語は、すべてハイフンでつながれている。先に見たようにアクターはネットワークと等価であるが、理論もまたアクターでありネットワークである。ただし、ANTはあくまで科学的な記述のための言語にすぎない。外在するアクターネットワークを説明しようと言うのであれば、それはANTではない。ネットワークの網目を勝手に埋めてはならない。むしろ、この変化と変動の時代のなかで、私たちは、ANTによって、「まだ見つかっていない」網目の存在―天文学的に大きい―に敏感になることができる。

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