世界がちょっと愛おしくなる。日々の生活を丁寧に描写した小説やコミック

中年の独身男性が、とある事情から弟夫婦の赤ん坊「なずな」を預かります。誰かと新たに家族を持った経験がない男性が、いきなり赤ん坊を育てることになった戸惑い。赤ん坊の純粋な生命力、周囲の人々が子育てに協力する過程で明かすそれぞれの人生など、「生きていくこと」の奥深さと力強さを素朴に綴った小説です。

西加奈子の著書としては比較的淡々とした展開で「しょーもない日常」を切り取っています。主人公は『私は、駄目なのか』と自問自答を繰り返し、答えのない悩みを「それでも生きている」という力強さではねのけます。軽快な大阪弁がアクセント。決して派手なストーリーではないのになぜか印象に残る、不思議な小説です。

都会生まれの著者と飼い猫・カボチャが、東北の農村に移住してことによって日常はエキサイティングなものに変わってゆきます。そこで全開になったのは、都会では内に秘められがちだったカボチャの野性味。広大な畑や里山を自由に飛び回り、その姿を著者が生き生きと描写しています。自然の豊かさに焦がれるようになるコミックです。

郊外の家に暮らす夫婦と子ども、3人家族を描いたコミックです。妻のユーモアあふれる性格と娘の豊かな感受性が笑いを誘い、サラリーマンの夫が妻に感謝する気持ちが心を『ぽっかぽか』にしてくれます。妻と娘のヘンテコな会話も必見！「普通の家族」が織りなす愉快な日常は、やさしい気持ちが足りない時の必読書となるでしょう。

著者が夫と過ごした富士山麓での13年間を、発表する予定もないまま素直に記録した「日記」です。ただの記録かと思えば、大自然への感動や家族への思いなどがバランスよく書かれていて思わず引き込まれます。その日買ったものから風景の様子まで、日常を著者の感受性豊かな心で記した、読み物としても魅力的な日記です。