ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
本で遠くを照らしたい。心に残る灯台の本
港の人はロゴマークに灯台を使っています。鎌倉の出版社ですが、鎌倉に灯台はなく、鎌倉港という港もありません。という具合に少しずつすれ違っているのですが、この社名とマークには深い意味と大いなる愛着があるのです。広がる海にひとり向き合う灯台、遠くへ光を投げかけ、船を導く灯台。そんな灯台への憧れをかき立てられる本です。
- 47
- お気に入り
- 5578
- 閲覧数
-
おーい、こちら灯台
ソフィー・ブラッコール(さく) , 山口 文生(やく)
灯台が登場する絵本はいくつかありますが、灯台の姿、海、風、そして灯台守の暮らしが最も美しく描かれている絵本だと思います。朝や夜、夏や冬、嵐や夕焼けの中に立つ孤島の灯台。オイルランプから電灯へと移り変わる頃の物語です。最後に置かれた著者のあとがきも、灯台と灯台守への思いにあふれていて素敵です。
-
ライトハウス すくっと明治の灯台64基 1870−1912
野口 毅(撮影) , 藤岡 洋保(解説)
明治期に建てられた灯台64基をコレクションしたコンパクトな写真集。長年、波と海風に対峙しながら、どの灯台も堂々としていて凜々しい。日本で最初の灯台は約150年前、その歴史は明治期の西洋技術の導入を起点にしています。巻末では日本の灯台の歴史がしっかりと解説してあり、内部やレンズの写真も充実している本。
-
灯台へ
ヴァージニア・ウルフ(作) , 御輿 哲也(訳)
ラムジー夫妻と8人の子どもたちとお客たちが過ごす島の別荘。明日、みんなで灯台に行こうと言い合う1日のことが語られ、それぞれの心模様、家や庭の様子や会話が流れるような文体でつづられます。灯台の姿がこれほど強く心に焼きつけられる小説はほかにありません。灯台好き、必読の小説です。
-
灯台守の話
ジャネット・ウィンターソン(著) , 岸本 佐知子(訳)
この小説では、灯台は、物語を生み育てる生き物のよう。あるいは、物語そのもののようだと言うべきでしょうか。灯台の光は暗闇を照らしますが、照らされていない部分は怖いほどの深い闇となります。光と影が交錯する寓話的なストーリーと、灯台や周囲の海や町の美しい描写を味わってほしい小説です。翻訳もいいです。
-
ムーミン一家はムーミン谷を出て小さな島の灯台で暮らし始めます。パパが灯台守の仕事をするのですが、なかなかうまくいきません。人生に挑戦し、家族を引っ張っていこうとするムーミンパパの奮闘は、トーベ・ヤンソンの父親を反映していると言われています。物語のラストで灯台が光る時の感動は、大人のほうが深いはず。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です