最近ときめいていないあなたへ。大人の恋愛沼にどっぷりハマる小説

恋愛肉食系女子・美緒は、結婚を考えた恋人がいながら、サスケと恋に落ちてしまいます。まわりの迷惑を考えずに突き進む眩しい夏の恋は、2人が関係を深めようとするにつれ、しだいに陰りを見せ始め、「好き」だけでは持続しがたい恋愛の苦みが胸に刺さります。90年代の空気が懐かしい、大人の女性に読んでほしい一冊です。

高校生のときから12年間、だらしないけれど魅力的な孝のことを想い続ける日向子。決して触れ合わない2人の関係は、片思いの苦しさと幸福感、踏み込めないゆえのエロティックさが漂います。同時収録の「小田切孝の言い分」は想われる男目線からの物語で、男と女ならではの気持ちのかけ違いやもどかしさに切なくなります。

大人になって恋に落ちる相手は、既婚者だったり相手がいる可能性が高いですが、この主人公たちもまさにそうです。一目で惹かれあった音楽家の男と聡明な女。ソウルメイトとわかっているのに、互いの人生を尊重するからこそままならない2人の関係は、もどかしくも美しいです。40代の大人の恋愛を堪能できる小説です。

1972年、浅間山荘事件が起こった冬、大学生の布美子が起こした殺人事件。事件の背景には、大学教授の美しい夫妻との抗いがたいインモラルな恋愛がありました。官能に溺れる夫婦の秘密、そして1人の男の出現による関係の終焉。布美子から語られる事件の全容が明らかになるにつれ、まっすぐな愛と狂気に心打たれます。

12歳の頃に好きだった少女と37歳になって再会し、成功と幸福を約束されたはずの男の人生が一変してしまいます。少年の憧憬の象徴だった女性を目の前にし、淡い恋はのっぴきならない不倫へと発展していき・・・。パートナーがいながら恋に落ちる甘美さの一方、犠牲にするものの大きさについても考えさせられます。