ブックキュレーター作家 梨木香歩
本はまた、人と人との間で深まっていく
本をプレゼントする、というのはちょっとした冒険だ。まず相手が本を読む人であるかどうか、知っていなければならないし、読む人であったにしても、当人が面白いと思うかどうかは、読んでもらわないと結局はわからない、すべては賭けのようなものだからだ。それでもときに、あの人にこの本を読んでもらいたいと、強く思うことがある。
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可愛らしい表紙やカラフルな写真満載の中身からは想像しにくいが、かなりの植物好きにも読み応えがある、実力派の図鑑だ。ホトケノザとヒメオドリコソウなど、よく似た花々を大きく拡大してその違いをはっきりさせたり、小さくてよく仕組みのわからない花の美しさを、大写しにして改めて惚れ惚れとさせたり・・・。植物好きの友人に。
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昭和三十年前後に子ども時代をおくった「祖父世代」の遊びや生活が、細密で滋味溢れる絵とともに甦る。夢中になって生きることの喜びがダイレクトに伝わり、「次の時代の話し手は君たちです」という著者の言葉で、「自分の子ども時代」を語る言葉についても、考え込んでしまう。祖父母から孫世代へはもちろん、かつて子どもであったすべての方々へも。
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生の心臓を手探りされるようなインパクトのある絵と、その心臓を鷲掴みにするような力のある文章ーーこの作家が本気で人に訴えようと思ったときの、感情を揺さぶられる凄まじさには声もなかった。この本を誰かにプレゼントする資格があるのは、自分も「かいぶつ」であるという自覚のあるひと。そういうひとだけが、生き難さを抱えていると思われる仲間にそっと手渡すことができる。
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これをプレゼントしたくなるのはどんなひとだろう。近年もっとも感銘を受けた小説。短いスペースでは語り尽くせない。まず自分にプレゼントしてほしい。そしてみんなで語り合いましょう。
ブックキュレーター
作家 梨木香歩1959年生まれ。作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『家守奇譚』『沼地のある森を抜けて』『冬虫夏草』『村田エフェンディ滞土録』『雪と珊瑚と』『海うそ』『僕は、そして僕たちはどう生きるか』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』、エッセイに『春になったら莓を摘みに』『渡りの足跡』『鳥と雲と薬草袋』『水辺にて』『やがて満ちてくる光の』などがある。
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