ブックキュレーター哲学読書室
「思考すること」をたえず思考しつづけるために
思考とはいったい何でしょうか。これを「考え」や「思い」などの言葉を使わずに説明することは可能でしょうか。私たちが了解している「思考する」は、「存在する」と同様に深遠なテーマなのかもしれません。この問題を、ご紹介する本とともに思考してみませんか。【選者:横田祐美子(よこた・ゆみこ:1987-:立命館大学専門研究員)】
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「ヒューマニズム」について
マルティン・ハイデッガー(著) , 渡辺 二郎(訳)
ハイデガーにとって「思索」は「存在」との関係のうちにあり、「存在」に促され命じられて可能になるものだとされています。「思索」を別の言葉で分かりやすく言い換えてはくれませんが、それが「存在者」や何らかの結果を目指すのではなく「放棄」に結びつく点に、のちのナンシー哲学への影響を垣間見ることができます。
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限りある思考
ジャン=リュック・ナンシー(著) , 合田 正人(訳)
現代フランスにおいて「思考すること」を最も主題的に論じているのがナンシーです。本書では物と思考することや愛と思考の関係など、哲学史の深い理解のうえに成り立つ思考の問いが論じられています。それにしても、なぜ原題は不定冠詞つきの「思考」なのでしょうか。その答えをぜひ本書から探し当ててみてください。
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思考する動物たち 人間と動物の共生をもとめて
ジャン=クリストフ・バイイ(著) , 石田 和男(訳) , 山口 俊洋(訳)
本書の主眼は、動物が実際に思考するかどうかといった点にではなく、思考がどれほど生や存在と一体となり、飛んだり跳ねたり身を隠したりするような運動性を備えているかという点にあると思われます。動物は思考である、という本書に記されたテーゼをこのように理解すると、読解の幅が広がるのではないでしょうか。
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ひとつではない女の性
リュース・イリガライ(著) , 棚沢 直子(ほか訳)
思考が言葉やイメージから切り離せないとすれば、それがあたかも中性的なものとして身に纏ってきたのは男性的な言葉やイメージだったのではないか、という問いをイリガライは提起します。性的差異の問題を思考の根底に見出し、「女性的なもの」を語る彼女の哲学から、思考のマチズモ体制を反省する契機が与えられます。
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脱ぎ去りの思考 バタイユにおける思考のエロティシズム
横田 祐美子(著)
バタイユの「非‐知」は本当に知の否定なのか。「非‐知」もまたひとつの知であり、思考なのではないか――こうした問題に真正面から取り組んだのが本書です。性愛を論じる思想家として知られるバタイユを、強靭な思考を展開する「哲学する者」として描き直すとき、そこには新たな思考論と哲学の歴史が浮かび上がります。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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