ブックキュレーター哲学読書室
読み、抵抗し、問う
哲学には、過去を引き受け、ときに抵抗し、そのうえで新たな思考の可能性を問うようなところがあります。デリダも、そうした姿勢をとても大切にしていた哲学者です。そうした彼の実践と、その背景にあったフランスの思想状況を考えるヒントになる5冊を紹介します【選者:松田智裕(まつだ・ともひろ:1986-:立命館大学初任研究員)】。
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遊星的思考へ 新装
コスタス・アクセロス(著) , 高橋 允昭(訳)
マルクスとハイデガーに依拠して独自の遊戯論と技術論を展開し、『グラマトロジーについて』でデリダも援用したアクセロスの論文集。彼の思想は近年、再評価されつつあり、著作もフランスで続々と再刊が進んでいます。本書のほかにも、『技術の思想家マルクス』、『マルクスとハイデッガー』などが日本語に翻訳されています。
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フランス現象学の現在
米虫 正巳(編) , ディディエ・フランク(ほか著)
フランス現象学をテーマに、海外の研究者のものも含めて多彩な論考を収めた論集。フッサールやハイデガーを端緒とするドイツの「現象学運動」をメルロ゠ポンティ、レヴィナス、リクール、アンリ、デリダといったフランスの哲学者がどう受けとめ、なにを議論していたのかを考えるうえで、多くの示唆を与えてくれる一冊です。
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解体と遡行 ハイデガーと形而上学の歴史
村井 則夫(著)
長大な歴史のなかで生まれた数々の哲学思想。それを単に繰り返したり、破壊したりするのではなく、歴史に向き合ったうえで、そこに潜在する潜勢力を響かせ、内的な変容をはかる――こうした視点からハイデガーを論じたのが本書です。デリダにもつながる論点が多数あるので、脱構築に関心のある方にもぜひ読んでもらいたい一冊です。
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弁証法、戦争、解読 前期デリダ思想の展開史
松田 智裕(著)
「戦争」という主題は哲学の歴史を繙くとヘラクレイトスにまで遡ることができます。本書ではこの「戦争」という主題を軸に、デリダがなぜあれほど「読むこと」にこだわったのか、そしてそれを支えたフランスの思想風景はどのようなものだったのかを明らかにしようと試みました。
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ジャック・デリダ 1930−2004
ジャック・デリダ(ほか著)
拙著では哲学用語としての「戦争」に焦点をあてましたが、デリダは実際の戦争(それに伴う他者への暴力)にも深い注意を向けています。本書に収録された論考「赦し、真理、和解」では、南アフリカ真実和解委員会が考察の対象とされ、人種主義、紛争による人権侵害、移行期正義など、今だからこそ考えるべきテーマが議論されています。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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